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Channel: 上がり3Fのラップタイム検証
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2015 日本ダービー 回顧

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随分と遅くなりましたが、今年の日本ダービーを振り返っておきましょう。上位4頭だけですが個別ラップを採ってありますのでご覧ください。

着順馬番馬名タイム200400600800前4F1000120014001600中4F1800200022002400後4F2300Goal
1着14ドゥラメンテ2:23.212.9 11.4 11.8 11.9 48.0 12.0 12.2 12.4 12.4 49.0 12.3 11.4 10.9 11.6 46.2 5.7 5.9
2着1サトノラーゼン2:23.513.2 11.2 11.8 12.0 48.2 11.9 12.1 12.5 12.4 48.9 12.2 11.4 11.2 11.6 46.4 5.7 5.9
3着11サトノクラウン2:23.513.4 11.5 12.1 11.9 48.9 11.9 12.2 12.4 12.2 48.7 12.1 11.4 11.0 11.4 45.9 5.6 5.8
4着13リアルスティール2:23.813.1 11.7 12.0 11.9 48.7 11.8 12.2 12.4 12.3 48.7 12.1 11.6 11.1 11.6 46.4 5.7 5.9


Mahmoud計測RL2:23.212.6 11.0 11.6 11.8 47.0 11.8 12.2 12.6 12.6 49.2 12.4 11.7 11.3 11.6 47.0



公式RL2:23.212.7 10.9 11.8 11.7 47.1 11.7 12.5 12.5 12.4 49.1 12.4 11.9 11.0 11.7 47.0



レース前半は比較的良く流れ、前半部分での追走負荷はそれなりにあったと思われます。しかしペースが落ち着くタイミングが少々後ろ寄りになり、その分4コーナーを回るまでペースが上がらず、最後の直線での一気のスパート戦という様相でした。


まずはリアルスティールから書いてみましょう。レース後、左前剥離骨折が判明しましたが、その影響に関しては前エントリーのコメントで書いた通りです。「骨折の影響は何かしらあったのではないか」という論調を良く見掛けますし、そんな気持ちは分からんでもありませんが、あからさまに感じ取れる走りの異変が見付からなければ影響は皆無と考えるべき、というのが私のスタンスです。

さて、リアルスティールは好スタートを切りしばらくは一つ外枠のドゥラメンテと併走。しかし前半100mを過ぎた辺りで行き脚を抑え込む形。すると見る見るうちにドゥラメンテとは差が開く一方でした。このシーンで「ああ・・・」と落胆する多くの声が聞こえたような気がしました。1周回ってきた最後の直線でも同じようにドゥラメンテに突き放され、後方に陣取ったサトノクラウンにあっさり交わされた以上、何を言っても後の祭りではありますが、リアルスティールを本命にされた方は、そのシーンを見て「それはないだろう」と思ったんじゃないでしょうか。あるいは、「やっぱりな・・・」と早々とあきらめの境地に達したとも感じます。

では、共同通信杯からこの日本ダービーまでの、このリアルスティールの前半1000mの走りを完歩ピッチとラップタイムで比較してみましょう。



スプリングSはテンから相当ゆっくりした流れだったので完歩ピッチのグラフの波がギクシャクしていますが、それでも徐々にユッタリとしたリズムに移行していく様は共同通信杯、皐月賞と同様。しかし今回の前半の走りのリズムは明らかに異質ですね。前述の通り前半100m過ぎで抑え込み、200~400mは11.7程度と早い段階でペースは落としているのに、完歩ピッチはなかなかユッタリとしていきません。鞍上のレース後コメントで「スタートはいつも通りだったけど1コーナーでハミのかみ方が変になった」とありましたが、その様子を裏付けるのがこのデータとなりますね。

前回の調教エントリーでもわかるように、リアルスティールは一気に完歩ピッチを速めてスパートする典型的なピッチ走法ランナーです。その爆発力を生かすためには、道中いかにユッタリとしたリズムで追走しスタミナを温存するかがポイントになりますが、さほどスピードが上がっていないにもかかわらず、これだけ小刻みに脚を速く回転させていてはスタミナ温存度に大きな影響を及ぼしたと考えるほかありません。しかも勝ち馬ドゥラメンテより後方の位置取りでもあったわけで、非常にロスの大きい前半戦だったと思われます。実際、中間点から1F12.4を刻んだ区間では、平均0.452秒/完歩という、新馬戦以来となるほどユッタリとしたリズムで走れていたんですけどね。

何故こうなってしまったかは、我々外野の出る幕ではない分野だと思いますが、このデータと映像から次のような事が推測できるでしょうか。

●ゲートオープンから皐月賞に近いレベルで、馬の行く気が高まっていた。

●その様子から、鞍上が早々と抑え込む意識となってしまった。もちろん、これは鞍上のレーススタイルによるところも大きい。

●行き気マンマンだったリアルスティールは、抑え込まれたことに当然反抗した。

●レース終盤、前が空くと自らピッチをグッと速めるのがリアルスティールの特徴だが、1~2コーナーでは馬群の大外に位置し前が空いている状態。どんどん走りたくて仕方がないまま時が過ぎてしまった。


枠順的に難しい状態だったとはいえ、皐月賞のように前に馬を置く形になれば、早い段階で走りのリズムがゆったりとしたと思うんですよね。テンから脚を使わせて好位置を取りに行った共同通信杯も、内枠からの発走で自然と前に馬を置く状態になっていました。しかし、今回は映像から見るに抑え込む意識は高くとも、馬の後ろに付けさせる意識はあまり感じられませんでした。また、リアルスティールの特徴的にはほぼ100%不可能だと思うものの、折角最大の敵ドゥラメンテのすぐ内にいたわけですから、そのまま併走していけば1~2コーナーで確実にドゥラメンテが距離ロスする形にもなったでしょう。

ちなみにドゥラメンテをマークする指示が出た云々という話がありましたが、形的にはマークっぽいとはいえ、とてもアクティヴなマークとは言えない形だったとも思います。日本ダービーという晴れの舞台で、競馬における負け方の美学という意味においては、非常に残念な競馬になってしまったなという想いが強いです。


・・・といろいろ厳しい事を書いてきましたが、このリアルスティールのスタートダッシュにおける完歩ピッチの速さは、スプリンターやマイラーに多く見られる傾向でして、そもそも論として2400m戦に対する戦略というのは、結構シビアなところがあったと思います。したがってハナから抑え込もうというスタンスもわからなくはないですし、非常に厳しい戦いに挑んだという点は付け加えておきたいと思います。また、どう転んでも勝ち戦だった新馬戦を除けば2勝2敗みたいなモノであり、サトノクラウンのルメール騎手に至っては0勝2敗みたいなモノですから、そんな比較論で言えばこんな形となっても仕方がないと思ったり・・・。


2着のサトノラーゼンは、2走前のはなみずき賞からどんどんパフォーマンスを上げてきた形。ドゥラメンテのスパートには付いて行けなかったものの、ゴール板まで良く踏ん張っていました。ハナ差とはいえ2着を死守した価値は大きいです。特に鞍上岩田騎手の好騎乗が光りました。


3着サトノクラウン鞍上のルメール騎手は、レース後こんなコメントを発していたようです。

「最後はスタミナがなくなって、長く脚が続きませんでした」

ああ、そうでしたか・・・。

ここで上位4頭の100m毎における平均完歩ピッチの推移を見て行きましょう。



1F毎のラップと平均完歩ピッチから、1F毎における1完歩の平均ストライド長が割り出せます。距離ロスは考慮していませんが残り600mにおける各馬の平均ストライド長はこんな値となります(単位はメートル、5cm刻み)

7.55 - 7.85 - 7.60 ・・・ ドゥラメンテ

7.35 - 7.50 - 7.45 ・・・ サトノラーゼン

7.40 - 7.60 - 7.60 ・・・ サトノクラウン

7.20 - 7.40 - 7.30 ・・・ リアルスティール

最初の値はコーナー区間を含んでいるので、ドゥラメンテやサトノクラウンは0.1m程度上乗せして考えた方が良いと思いますが、基本的にはスパート時で最高速をマークする残り400~200m区間でストライド長は最大となります。そしてラスト1Fは狭くなりつつあるのも基本。サトノクラウン以外の3頭はまずまず常識的なストライド長の推移となっていますが、サトノクラウンのラスト400mでのストライド長はほぼ一定でした。

全開スパート時のサトノクラウンは完歩ピッチをグイッと上げてスピードに乗り、その後完歩ピッチが緩くなる反面、力強いフットワークで大きなストライドのまま減速率を抑える走りが特徴です。レース映像上からはゴールまで良く伸びているような印象でしたが、少なくともこの日本ダービー出走馬と比較すれば、末脚の持続力は最も優秀な内容だったと思われます。要は脚を余したレースをしたと言えなくもないレースぶり。上記のルメール騎手のコメントには首を傾げるばかりです。前走皐月賞に引き続き、この日本ダービーでも好結果を出すことができなかった自らの騎乗内容を棚に上げてるなと私は感じました。

僚馬ドゥラメンテとは少し水をあけられた感は否めませんが、スタミナ負けで3着に甘んじたとは正直考えにくいです。相手関係からすれば菊花賞の方が楽だと思うのですが、今秋はその菊花賞に向かわず天皇賞・秋に出走するようです。2000m戦より2400m戦でのジャパンカップの方が適性は高いんじゃないかと私は見ています。

今月発売された【サラブレ 2015年9月号】において、ディープインパクトとキングカメハメハの走りの特徴について執筆しておりますが、そこでもストライド長について触れております。併せてご覧いただければ何かとおもしろいんじゃないかと思います。

https://www.enterbrain.co.jp/product/magazine/sarabre/15000054


サトノクラウンまでのくだりは日本ダービーが終わった10日後くらいに書き終えていて、ドゥラメンテについて何を書こうかといろいろ考えている間に超多忙になるわ、当のドゥラメンテが故障するわで延び延びになってしまいました。しかし、故障は返す返すも残念。もうタラレバでしかありませんが、あのTreveに対して末脚比べのガチンコ勝負に持ち込んで、互角、あるいはそれ以上の戦いができると思っていたのですが・・・。

残り500mからの末脚は皐月賞同様、強烈過ぎるほどの伸びでした。その一方、残り200m辺りから後続勢と同じ脚色になったのはある意味不自然とも言えるものであり、ソラを使ったのか、後に判明した骨折の影響でもあったのかはわかりませんが、ケチを唯一付けるとしたらこの辺りの内容でしょうか。まあ、それでも負けようがないレースだったのは確かで、着差以上の完勝という走りでした。

折り合い付いて走ればこれくらいの末脚を発揮するのは戦前からわかっていたわけで、この日本ダービーでのドゥラメンテのハイライトは前半の走りだと私は思います。ではリアルスティール同様、前半1000mのラップと完歩ピッチを過去走と比べてみましょう。



見るからに引っ掛かっていた共同通信杯は完歩ピッチからもその様子が伺えます。ミルコ・デムーロ騎手に乗り替わった皐月賞では調教の段階からそっと走らせ、実際のレースでも折り合いを最優先とし後方からゆっくりと走らせていました。今回の日本ダービーは距離延長となる2400m戦ですから、基本的に皐月賞の流れを汲んだレースをさせるのが、ある意味常識的な見方だったと思います。ところがミルコ・デムーロ騎手は普通に出して行き、いわゆる『勝てる位置取り』でレースを進めました。引っ掛かってもおかしくないギリギリのところでしっかりと抑え込み、バックストレッチの入り口、前半800m辺りで8番手。勝負はココで決まったといっても過言ではないでしょう。ラップ、完歩ピッチ的には実にスムーズな前半の走りだったセントポーリア賞を上回る積極的な追走劇。冒頭で書いたリアルスティールとは実に対照的な前半戦となりました。


このような『勝てる位置取り』というモノを凄腕の外国人騎手に何度も見せられるわけで、何というか国民性の違いかなあと思わなくもないのですが、じゃあ日本人はダメなのかというと、一概にはそう言えないのもまた然り。というわけで競馬ではなく先頃行われた世界水泳選手権を例に見て行きましょう。

今回の世界水泳選手権で最も印象的だったのが男子400m個人メドレーで金メダルを獲得した瀬戸大也選手のレースぶり。この種目はバタフライ、背泳ぎ、平泳ぎ、そして自由形(クロール)を、それぞれ50mプールを1往復して100mずつ泳ぎます。最初のバタフライの前半50mは飛び込み区間となりラップタイムの比較が難しくなるので除外して、背泳ぎ以降の3種目、100~400m区間における50m毎のラップタイムを表にしてみました。



http://omegatiming.com/File/Download?id=00010F020000041102FFFFFFFFFFFF02

おそらく後半にラップを上げにくいであろう平泳ぎはさておき、1位の瀬戸大也選手は背泳ぎと最終種目の自由形において、ほぼイーブンラップに近い形で前後半を泳いでいます。過酷な練習の積み重ねに基づいているのは言うまでもありませんが、決勝の舞台で己の力をきっちり発揮する会心のレースをやってのけました。精神力も含め、真のトップアスリートと感じさせる見事な泳ぎだったと思います。これこそ、『勝つレースをした』典型例でしょう。一方、2~5位の選手はその2種目どちらも後半50mが速く、特に2、4、5位の選手はラストの自由形で後半1秒以上もラップを上げています。瀬戸大也選手は今大会ケガで欠場した萩野公介選手と熾烈な争いをしているレベルにある選手であり、また前大会の同種目のチャンピオンですから、他の外国人選手が実力差を感じつつ後半重視の着取り的なレースをするのは戦略的にベターだったのかもしれませんが、これは競馬で言うところの脚を余したレースそのものでもあるんですね。ただ、水泳競技の場合、コースを大きく隔てた他の選手との間隔差が掴みにくい側面があります。瀬戸大也選手の隣のコースを泳いでいた3、6位の選手はラップの後傾度が少なく、特に6位の選手が自由形で唯一前傾ラップとなっていたのは、瀬戸大也選手との差を認識できていたため追っ掛けようとする意識が高かったのではないかと考えられます。


競馬はジョッキーが競走馬を操る形である以上、『自分のレース』と言えるような適性値の高いペース配分でレースをするのは非常に難しい事だと思います。ですから文字通り相手と『競う』要素が大きいのが競馬。今年の日本ダービーは、如何ともしがたい実力差が大きかったとはいえ、ドゥラメンテに何らかのプレッシャーを与える馬がいなかった点が残念でした。もうちょっと迫力あるレースを期待していたのですが・・・。

今回はこのあたりで。

常識的なラップとは

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Twitterで今年の新潟記念の公式ラップに関していろいろ書いたのですが、6年前の過去エントリーでも新潟競馬場の公式ラップの怪しさに触れたことがあります。というわけでこの新潟記念の公式ラップを基に、常識的なラップについて少し書いてみましょう。

まずは今年の新潟記念のレース映像から、先頭馬がラスト200m地点を通過したタイミングを見てみましょう。

バーチャルラインを引くならこの角度で塩梅が良いと思います。内外のハロン棒とともに、ラチの形状や馬場の蹄跡を組み合わせれば、ラスト200m地点通過のタイミングが判別できるでしょう。









公式ラップにおけるラスト400m区間の200m毎のラップ推移は10.5 - 13.0という発表。200m毎の平均時速に直すと68.57km/h - 55.38km/hとなります。落差は13.19km/h。このスピードの落ち具合は風を切って走るバイクや自転車のライダーならイメージできるんじゃないかと思いますが、この10.5 - 13.0というラップをどう見るかの大きなポイントは、ゴール前の400m区間であるという点。要は全精力を注いで競走馬が走っている区間でマークされたということです。このラップ推移がスタート後の200~600m区間でマークされるのとは全くワケが違います。

もしスタート後の200~600m区間で10.5 - 13.0というラップが刻まれたとしたら、前半400~600m区間での13.0というラップはスピードコントロールされた値ということになります。この200m区間でグッとペースダウンした後は、概ね一定のスピードで走っていると推測できますが、ラスト200mで刻まれる13.0というラップは、スパート終盤での力を振り絞って走った結果、徐々に減速していく形になるはずなんですね。少々乱暴な仮定となりますが、ラスト400m地点で最高速をマークし、その後一定の速度で減速して10.5 - 13.0というラップを刻む場合、ラスト400m地点とゴール間際ではどんな速度となるのでしょうか。そこで、このラスト400m区間を10m毎に分けてスピードの推移をグラフにしてみました。前述の通り200m進むと13.19km/h減速しているということは、10mで0.659km/hずつ減速していくことになります。



ラスト400~390m区間の平均時速は75.066km/h。このスピードを200m区間でのラップタイムに換算すると9.59秒。カルストンライトオがマークした公式ラップにおけるJRA最速ラップとほぼ同じですね。そしてゴール前10m区間の平均時速は49.365km/h。200m区間でのラップタイム換算値は14.59秒。ラスト400m区間での始点・終点のスピード差は物凄く大きいですね。最速地点の200m9.59秒というスピード感はさておき、最遅地点の200m14.59秒という遅さは、全く脚が上がらないバテバテになったようにイメージできるんじゃないかと思います。ちなみに100m毎のラップ推移は5.00 - 5.50 - 6.12 - 6.89となります。

この仮定例は暴論かもしれませんが、2.5秒のラップダウンは如何なるものかを捉えるにあたっては悪くない考え方だと思います。ラスト400~200m区間での始点・終点のスピード差は200mでのラップタイムで言えば9.59 - 11.51となりますが、もし実際にこの区間を10.5で走ったとしたら、始点・終点のスピード差はもっと小さくなると考えるのが妥当でしょう。とすると、その後のラスト200~0m区間で減速していく様は、このグラフ以上に落差のあるスピード推移になるわけです。例えばゴール間際では45km/h程度のスピード、即ち200mを16秒も掛かるほどのスピードになるといった、そんな状況に陥ってしまうのです。したがって、新潟競馬場のラスト200mに高低差10m以上の勾配があるとか、風速20m/sほどの強烈な向かい風が急に吹くとか、あるいはいきなりドロドロの極悪馬場になっているとか、そんなありもしない状況下でなければ、こんなラップ推移など起こるわけないと考えるのが常識的だと言えるでしょう。もし物理学とか運動生理学に詳しい方がいらっしゃったら、この辺りの話を専門的にフォローしていただけると幸いです。

まあしかし、今年で15年目を迎えた現新潟競馬場の公式ラップを常に眺めている方は、今年の新潟記念での公式ラップに違和感を覚えないのもまた事実です。ちなみに1986年から今年の9/6までの間、ラスト400~200m区間とラスト200~0m区間での公式ラップの落差の最大値は+2.9秒。今年の新潟記念での+2.5秒は史上9位タイになります。また後半800mでの200m毎のラップ推移は2009/08/02燕特別と全く同じでした。この新潟記念だけが異常だったわけではありません。

この公式ラップの落差が2.0秒以上というのは141レースで記録されていますが、現新潟競馬場での開催が始まるまでは12レースしかありませんでした。また、現新潟競馬場で記録された114レースは、そのほとんどが直線1000m戦を含めた芝外回りコースでの物。また春開催だと14レースしかない点もおもしろいところ。今年の新潟記念のメンバーの内、7頭が重複出走となった5月の新潟大賞典では、公式ラップのラスト200mが11.5で私が計測した値は11.3であり、その差は0.2秒。そしてこの新潟記念では13.0と12.2でその差は0.8秒でした。どちらのレースも先頭馬は外目を通っているのにこの違い。いろいろ考えさせられる部分であります。

で、改めて今回言いたかったのは誤差云々ではなく、例えば同じ200m13.0秒のラップがどの区間でマークされたのかで、その値の持つ意味は大きく異なるということです。競馬に限らず、値そのものだけを独り歩きさせるのは非常によろしくありません。半ば脊髄反射的に値がどうのこうのというのは以ての外ですし、発信された値のバックグラウンドをも十分踏まえてこそ、その値を使いこなす価値が生まれると私は思います。というわけでもう1例書いておきましょう。

今年、昨年のアイビスサマーダッシュの公式ラップは次の通り。

◆2015年
勝ちタイム:54.1
上がり800m:42.0
上がり600m:32.0
12.1 - 10.0 - 10.4 - 10.1 - 11.5

◆2014年
勝ちタイム:54.3
上がり800m:42.7
上がり600m:32.6
11.6 - 10.1 - 10.5 - 10.5 - 11.6

勝ちタイム、上がり800m、上がり600mは電光管により自動計測されていますので、この3要素から弾き出された前半0~200m、200~400mの区間ラップは正しい値と考えたいところですが・・・。

では次の画像をご覧ください。今年の高松宮記念の映像です。




電光管計時による前半600mのラップタイムが表示されています。33.9ですね。




電光掲示板の表示は勝ちタイム1:08.5、上がり600mは34.5。リアルタイムで画面表示された前半600m33.9とは計算が合いません。これ、10分の1秒以下のタイムの端数計算のアヤでこうなった物と考えられますね。勝ちタイムから前半600m通過時のラップタイムを引いた値が、上がり600mのラップとして表示されているんだと思いますが、100分の1秒単位の値を切り捨てるものとすると、勝ちタイムが100分の1秒表記で1:08.50だった場合、前半600mを33.91~33.99で通過しても上がり600mが10分の1秒表記で34.5になります。したがって最終的な公式前半600mのラップは【1:08.5 - 34.5】= 34.0になったものと推測されます。

では先のアイビスサマーダッシュに当て嵌めて考えてみましょう。2015年の勝ちタイムが100分の1秒表記で54.10だったとすると、10分の1秒表記の上がり800m42.0、上がり600m32.0となるためには、前半200m通過が12.01~12.10、前半400m通過時が22.01~22.10の場合に成り立ちます。この100分の1秒単位でのラップタイムから差し引きして算出される前半200~400mのラップは9.91~10.09だった形になります。2014年も勝ちタイムが54.30だったとして、同様の計算で弾き出される前半200~400mのラップは10.01~10.19。この区間での公式ラップは2015年が10.0、2014年が10.1となってはいるものの、場合によっては2014年の方が実際には速かった可能性もあるわけです。

JRA全レースでこのようにラスト800~600mのラップが自動計測からの計算値として弾き出されるのですが、動画でラップ計測をしていると、この区間が0.1秒近くしっくりこないケースに時々見舞われます。したがってこの区間の前後にあたる200m毎のラップは、私が実計測した値をより自然なラップ推移となるよう調整して発表するケースもあるのです。

ラップタイムは速いか遅いかを簡単に見極められるツールであるのは確かですが、その値の背景を無視して論ずるのは愚の骨頂。今回例として取り上げた新潟記念の公式ラップ推移は、私のようにラップを計測する術がなくとも、ちょっと起こり得ない数字だと判断できるわけですし、また新潟競馬場の春開催と夏開催での違いを何となくイメージできれば、大まかな補正値を思い付くことも可能で、少しでも競走馬の現実の走りに近付けるんじゃないかと思います。また、私がタイム競技であるスポーツを競馬的にTweetするのはみなさんご存じだと思いますが、陸上競技のみならず、水泳やスピードスケートのラップを紐解くと、競馬に関する考察力が必ず進歩するでしょうし、そうなればより一層、競馬の楽しさを感じることに繋がるかと思います。

今回はこのあたりで。

2015 スプリンターズS 回顧

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暫定ラップという形で既にTwitterで数頭の個別ラップを紹介しましたが、改めて全頭個別ラップを掲載しておきます。

着順馬番馬名タイム200400600前3F80010001200後3F公式後3F
1着2ストレイトガール1:08.112.4 10.9 11.6 34.9 11.2 10.9 11.1 33.2 33.1
2着4サクラゴスペル1:08.212.2 10.9 11.5 34.6 11.2 10.9 11.5 33.6 33.4
3着6ウキヨノカゼ1:08.313.0 11.0 11.3 35.3 11.0 10.7 11.3 33.0 32.8
4着13ミッキーアイル1:08.312.0 10.8 11.4 34.2 11.311.1 11.7 34.1 33.8
5着12ウリウリ1:08.312.7 11.0 11.4 35.1 11.0 10.8 11.4 33.2 33.1
6着1リッチタペストリー1:08.312.0 11.2 11.6 34.8 11.1 11.0 11.4 33.5 33.4
7着11レッドオーヴァル1:08.412.4 10.9 11.3 34.6 11.0 11.1 11.7 33.8 33.6
8着5スギノエンデバー1:08.612.9 10.8 11.5 35.2 11.3 10.8 11.3 33.4 33.4
9着9アクティブミノル1:08.711.7 11.0 11.5 34.2 11.1 11.3 12.1 34.5 34.2
10着16ティーハーフ1:08.813.1 11.1 11.4 35.6 10.8 10.9 11.5 33.2 33.1
11着3リトルゲルダ1:08.812.5 11.0 11.5 35.0 11.2 11.1 11.5 33.8 33.7
12着8ハクサンムーン1:08.811.7 10.7 11.7 34.1 11.1 11.4 12.2 34.7 34.7
13着7ベルカント1:08.911.9 11.1 11.5 34.5 11.2 11.2 12.0 34.4 34.2
13着15コパノリチャード1:08.912.5 11.0 11.4 34.9 11.0 11.1 11.9 34.0 33.9
15着14フラアンジェリコ1:09.213.3 11.1 11.2 35.6 11.1 11.0 11.5 33.6 33.4


Mahmoud計測RL1:08.111.7 10.7 11.7 34.1 11.1 11.4 11.5 34.0


公式RL1:08.111.7 10.7 11.7 34.1 11.2 11.2 11.6 34.0


今回は各馬の公式推定上がり3Fも載せておきました。0.1秒速いか遅いかくらいはどうでもええんですが、0.1秒どころじゃない値のおかしさとなった馬がいます。道中2、3番手を進んだアクティブミノルとミッキーアイルがそれです。公式ラップ上、アクティブミノルの前後半は34.5-34.2、ミッキーアイルは34.5-33.8となっており、残り3F地点では34.1で通過したハクサンムーンと0.4秒差ということになっていますが、実際にはほぼ差のない状態で残り3Fを通過しています。タイムコード付のレース映像のスクリーンショットを数枚貼っておきますので、他馬のズレも含め確認してみてください。また、リアルタイムでの前半3F通過は34.0と表示されました。上がり3Fが34.0となった関係上、前半3Fは最終的に34.1となりましたが、これは前エントリーで書いた通り、10分の1秒以下のアヤで変更された形ですね。















以前のエントリーである【2015 アメリカジョッキークラブカップをちょっと振り返って】と同じ状況かと思います。上がり3Fの値でスピード指数補正等をされている方にとってはシャレにならん事象ですね。

http://ameblo.jp/mahmoud1933/entry-12000845645.html

今年のスプリンターズSは前後半が34.1-34.0となり、正直こんなラップバランスになるとは全く考えていませんでした。ただ、この一つ前の10R1000万下勝浦特別での前後半33.9-34.1と一見似ていますが、その内容は大きく異なります。後傾ラップとなるほどの緩い流れと端的に表現するのはあまりよろしくありません。ポイントは逃げたハクサンムーンが刻んだ前半3F11.7-10.7-11.7というラップ推移。

2F目から3F目にかけて1.0秒のラップダウンとなっていますが、この区間が1.0秒以上ラップダウンした例は1986年以降の中山芝1200m戦で1,158レース中70レース。その中には今年と同タイムの勝ち時計となった1995年ヒシアケボノが勝ったレースも含まれています。ニホンピロスタディが大外枠からハナを奪った前半3Fは11.9-10.0-11.0。2F目が中山最速の10.0からの11.0ですから、今年の10.7-11.7とはまるでわけが違います。この1秒以上ラップダウンした70レースの内、2F目が10.7以上のレース数は22。今年のスプリンターズS以外は旧400万下を含む500万下2レースと新馬、未勝利戦で勝ちタイムも1:10.0オーバー。今回の3F目の11.7、および2~3F目の400m区間が22.4というのは異常とも言うべき遅さでしたし、これが走破タイムの遅さの大きな原因となったようです。では、この前半3Fの走りがどうだったかを細かく見るために、先行3頭、上位3頭、および上位人気で負けたベルカント、ウリウリの100m毎の完歩ピッチグラフをご覧ください。また参考として2013年同レースで2着となった時のハクサンムーンも加えてあります。おそらくスプリンターたちの完歩ピッチのデータを公開するのは初めてかもしれません。スプリンターらしさがわかるデータとなっています。



テンで強烈にダッシュを利かせた2頭の完歩ピッチの速さがよくわかることでしょう。どれくらい脚の回転力が凄いかを例えると、押さないとエッチラオッチラとテンを走ってしまうゴールドシップが10完歩走る間に、この先行2頭は13完歩近く脚を回転させています。

まずはハクサンムーンを見てみましょう。2013年と今年のテンの1F区間におけるタイムコード入りレース映像ののスクリーンショットを貼っておきます。









ハクサンムーンの2013年のラップはこんな感じです。

◆走破タイム
1:07.3

◆前後半3F
32.9 - 34.4

◆1F毎のラップ
11.8 - 10.6 - 10.5 - 11.2 - 11.2 - 12.0

2013年のテンの1Fは11.8、2015年を11.7としましたが、どちらも11.7くらいで良さそうとも思います。差があっても0.1秒以内でしょうね。しかしほぼ同タイムと言っても完歩ピッチの推移は少し異なります。見た目の通り、2013年は早い段階でハナに立ったため前半100mを過ぎてからピッチを緩めていますが、2015年はようやくハナに立てた前半200m地点までピッチを緩めていません。この段階で2013年時ほどのダッシュ力がなかった即ちピーク時のデキになかったと判断できるでしょう。

前半200mをビッシリ全開で走らせているので、ハナに立ったらできる限りペースを緩めたいという鞍上の気持ちは良くわかります。ただ、この酒井学騎手、2013年の際もハナに立った後に若干緩め過ぎたところがあり、前半300m辺りの3コーナーから後続馬のプレッシャーを受け、少しピッチを上げているシーンがあります。そして今回は3コーナーで思いっ切り緩めています。まるでマイル戦に挑んでいるかのよう。とても1200m戦での光景とは思えません。

ハクサンムーンにハナを譲る形となったアクティブミノルも、前半500m辺りまでハクサンムーンに劣らずどんどんペースを緩めています。その状況が一変したのは半ば暴走マシンと化したミッキーアイルがアクティブミノルを交わしにかかってから。ミッキーアイルに煽られる形でアクティブミノルもピッチを上げハクサンムーンに迫っていきます。ハクサンムーンが11.7となるラップを刻んだこの後半800~600m区間、ハクサンムーンの背後の2頭は後半700mからの100mで一気にハクサンムーンに並び掛けました。その結果、ハクサンムーンは残り600mから、アクティブミノルに至っては残り700mからのロングスパートみたいな形を強いられることとなり、極めてギクシャクしたレースをしていたと考えられます。もしミッキーアイルの存在がなければ残り400mまで、レースペースは更に遅くなっていたかもしれません。

ハクサンムーンの完歩ピッチの推移を2013年と今回で比べれば、その質の違いが明確に出ています。どちらがスピードを武器にしたスプリンターらしいレースなのか、一目瞭然でしょう。ミッキーアイルも含めた今回の先行勢3頭は三者三様ながらも、1200m戦G1を戦う体をなしていなかったように感じました。ほぼ似たような前後半のラップバランスだった一つ前の10R勝浦特別の方が、同じスローの流れとはいえ遥かに1200m戦らしいレースだったかと思います。下手を打てば、いかにペースを落とそうとも無駄となる典型例と言えるでしょう。まあ、なかなか珍しい物を見せてくれました。

単に前半からガンガン行けば良いわけではありませんが、この中山芝1200m戦において、ある意味至高のラップといえば、2002/03/02オーシャンSで逃げ切ったショウナンカンプが刻んだラップになるでしょう。公式ラップはこんな値でした。

◆走破タイム
1:07.3

◆前後半3F
32.0 - 35.0 35.3

◆1F毎のラップ
11.5 - 10.2 - 10.3 - 11.3 - 11.4 - 12.6

まさにスピードを前面に打ち出した強烈なレースでした。

勝ち馬だけは少し触れておきます。後半特化型の脚を使ってヴィクトリアマイルを勝ったストレイトガールは、前半が速い流れになった際に戸崎騎手がどう対応してくるのか注目していたのですが、この緩い流れですからハマるのは当然といったところ。しかし最後の直線で進路をようやく見付けたのが残り200m地点で少々危ないシーンもありました。その影響で最速完歩ピッチ区間は残り200~100m区間。急坂を登る前の段階でまだスピード全開となっておらず、良い意味で脚を余しての差し切り勝ち。レース映像上は大外のウキヨノカゼとともに伸びてきたように見えたかもしれませんが、実際のラスト200mの伸び脚は段違い。着差以上の完勝でした。昨年の雪辱を期しての次走香港スプリントで頑張って欲しいものです。戸崎騎手とのコンビは、香港シャティン競馬場の最後の直線がピタッとハマる予感があります。

最後になりますが、10/13(火)発売の【サラブレ 2015年11月号】において、秋華賞、菊花賞、天皇賞・秋の展望記事を書いております。いつものように参考レースのラップや完歩ピッチのデータを掲載しております。字数上、割愛した部分もありますので、ご質問等ありましたらblogのコメントあるいはTwitterでリプライいたします。レスポンスに時間が掛かるケースがあることをご了承くださいませ。

https://www.enterbrain.co.jp/product/magazine/sarabre/15000056

今回はこのあたりで。

2015 秋華賞 回顧

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サラブレで展望記事を書いておりますので、簡単ですが回顧エントリーを起こしておきます。まずは注目すべき数頭の個別ラップをご覧ください。

着順馬番馬名タイム2004006008001000前5F12001400160018002000後5F
1着18ミッキークイーン1:56.912.3 11.3 11.9 11.7 11.5 58.7 11.9 11.7 11.9 11.3 11.4 58.2
2着9クイーンズリング1:56.912.7 11.2 12.1 11.9 11.5 59.4 11.7 11.7 11.7 11.1 11.3 57.5
3着6マキシマムドパリ1:57.112.3 11.1 11.6 11.5 11.5 58.0 12.4 11.7 11.7 11.6 11.7 59.1
5着17アースライズ1:57.212.5 11.6 12.0 12.0 11.4 59.5 11.6 11.7 11.7 11.3 11.4 57.7
6着11タッチングスピーチ1:57.213.1 11.5 11.8 11.9 11.5 59.8 11.6 11.4 11.9 11.2 11.3 57.4
8着7トーセンビクトリー1:57.412.6 11.2 11.9 11.8 11.4 58.9 12.0 11.6 11.9 11.4 11.6 58.5
11着8ホワイトエレガンス1:57.812.0 10.9 11.4 11.9 11.6 57.8 12.4 11.7 11.7 11.8 12.4 60.0
15着16ノットフォーマル1:58.212.1 10.6 11.1 11.6 12.0 57.4 12.3 11.9 11.9 12.2 12.5 60.8
17着10レッツゴードンキ1:59.812.3 11.1 11.4 11.4 11.4 57.6 12.4 11.8 12.1 12.5 13.4 62.2
18着15テンダリーヴォイス2:00.912.0 11.1 11.7 11.4 11.5 57.7 12.5 12.0 12.4 12.8 13.5 63.2


Mahmoud計測RL1:56.912.0 10.7 11.1 11.6 12.0 57.4 12.3 11.9 11.9 11.9 11.5 59.5


公式RL1:56.912.0 10.5 11.3 11.6 12.0 57.4 12.3 11.9 11.8 11.6 11.9 59.5


逃げ馬が好走するためにはハナに立つことよりも、ハナに立った後、いかに早くマイペースに持ち込めるかがポイントになります。出脚の良い馬ならサッとハナに立ち、早い段階でペースが落ち着きやすいのですが、今回のノットフォーマルのように出脚が良くない馬が逃げしか頭にないという競馬をすると、ハナに立つまで時間を要し、その結果、過剰なまでのスピードアップとなってしまうことが往々にしてあります。仮に内目の枠で進路が開かなければ自重するケースもあるのでしょうが、今回は外枠。スタート後の最初のコーナーまでハナに立つチャレンジをするスペースが存分にありました。しかも好スタートを切ったホワイトエレガンスが両サイドから挟まれる形で掛かってしまい、1コーナーまでスピードが随分と乗ってしまった関係上、交わすのに苦労したノットフォーマルはかなり外目から1コーナーへ進入。大回りでのコーナリングによって減速しづらい状況でもありました。約半周回った前半4F通過が45.4というラップは、馬場差の違いがあるものの先日のスプリンターズSに例えればミッキーアイルの一つ前の3番手という位置取りに相当。このノットフォーマルは桜花賞での、空前絶後の超スローペースの立役者の一員だったわけですから実におもしろいものです。

こうなるといつぞやのシルポートみたいに他馬が逃げ馬と全く関係性のないレースとなりそうなものですが、私が期待していたホワイトエレガンスも単独2番手ながらバックストレッチまで掛かり通し。そして暴走マシンと化したような馬がもう1頭、ペースを緩めることができずグングン上がっていきました。

そのレッツゴードンキの鞍上岩田騎手はバックストレッチで2番手ホワイトエレガンスの後ろに入れたかったのだと思いますし、仮にそうできたとして抑えが効いたかどうかは微妙ですが、実際には内にもう1頭張り付いていました。全然勝負処ではないのに、レッツゴードンキに交わされるものかと言わんばかりに鞍上に追っ付けられながら走っていたテンダリーヴォイスがそれ。えらく意図的なモノだったと感じるほどの煽りっぷりでした。レッツゴードンキに対するヒットマンが派遣されたのでしょうか。

そんなこんなで実質的にペースを握っていたのはマキシマムドパリと言っても良さそうです。前半2Fを除いた後半8Fでは1F平均11.7を切るくらいのペース。また、後半5F最速は最後方のタッチングスピーチの57.4ですから、昨年の勝ち馬ショウナンパンドラが57.2だったことを考えれば、後方からも十分差し届く流れだったことでしょう。ただ、いかんせん後半ペースを上げる余力のない先行勢がいたので、残り3F辺りでは前が詰まり気味。やはり位置取りの悪さが響いた馬は何頭もいました。

では、サラブレに掲載した前半2Fのデータと同じ形式の表を貼っておきます。前走と比べテンをどう走っていたのかを考えると、いろいろおもしろいことがわかるかと思います。ノットフォーマルは全く脚を緩めていないこと、折角上手にスタートを切ったホワイトエレガンスが脚を緩める地点が遅くなってしまったこと、そしてタッチングスピーチはやはりとか・・・。例外なのはレッツゴードンキの300~400m区間で完歩ピッチが一気に緩んでいる点。これは鞍上がガッツリ抑え込んだ影響であり、折り合いを欠いている一つのパターンとも言えます。



勝ったミッキークイーンはしっかりゲートを出て中団の追走。常識的に勝てる位置を頑張って取りに行きました。追われ始めた残り2F手前では反応が悪そうに見えましたが、最後の直線に向いてからはキッチリ伸びてきました。このコーナーでの反応が良くないところは同じ秋華賞でのジェンティルドンナを思わせる内容。直線こその馬でしょうし器用さのない分、良い意味で軽さを感じないタイプと言えるかもしれません。デビュー以来、1走毎着実にパフォーマンスを上げてきており今後は実に楽しみな馬だと思います。

2着のクイーンズリングはM・デムーロ騎手が皐月賞でのドゥラメンテを思わせるような4コーナーでのコース取り。この残り2Fの手前となる地点では他馬を含めて非常におもしろいシーンが見られました。ルメール騎手鞍上のタッチングスピーチは、ラップタイムが示す通り川須騎手鞍上のアースライズに外へ張られてこの時点で終了。これも皐月賞でのサトノクラウンと良く似ていて、彼の弱点とも言える一面でしょうか。そして川須騎手のガッツ溢れるファイトの代償は、すぐ前にいたアスカビレンとの間隔を空けてしまった事。その生まれた空間をM・デムーロ騎手が一気に突いて行きました。パトロールビデオで確認すると良くわかることでしょう。皐月賞でもこんなコーナリングをするつもりだったかと思われます。

3着のマキシマムドパリは好内容でしたね。バテない後半の粘り強い脚色はなかなかの物。バテるはずの先行4頭を上手く捌けるタイミングがあれば大仕事の可能性があったかもしれません。

今回はこのあたりで。

2015 菊花賞 回顧

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菊花賞を簡単に振り返ってみましょう。上位3頭だけですが、まずは個別ラップをご覧ください。手抜きですが値をベタ打ちにします。


◆1着キタサンブラック

前5F:61.6
13.0 - 11.8 - 11.9 - 12.5 - 12.4

中5F:63.4
13.1 - 13.2 - 13.5 - 11.5 - 12.1

後5F:58.9
12.1 - 11.8 - 12.2 - 11.3 - 11.5


◆2着リアルスティール

前5F:61.7
13.2 - 11.7 - 12.0 - 12.4 - 12.4

中5F:63.0
13.1 - 13.4 - 13.2 - 11.5 - 11.8

後5F:59.2
12.3 - 11.8 - 12.2 - 11.4 - 11.5


◆3着リアファル

前5F:60.5
12.6 - 11.2 - 11.9 - 12.5 - 12.3

中5F:64.2
13.2 - 13.5 - 13.7 - 11.8 - 12.0

後5F:59.3
12.2 - 11.8 - 12.1 - 11.5 - 11.7


◆レースラップ

前5F:60.2
12.6 - 11.1 - 11.7 - 12.4 - 12.4

中5F:64.2
13.2 - 13.5 - 13.8 - 11.8 - 11.9

後5F:59.5
12.2 - 11.9 - 12.1 - 11.7 - 11.6


この日の京都競馬場は北からの強い風が吹いていたようです。

http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/view/10min_s1.php?prec_no=61&block_no=47759&year=2015&month=10&day=25&view=p1

したがって2コーナーは追い風、4コーナーは向かい風だったのではないでしょうか。ホームストレッチは向かい風気味、バックストレッチは追い風気味だと思います。そのため芝は超高速馬場だったはずですが、走破タイムに対する影響は大きかったと思われます。昨年と比べて1.5秒ほど時計が掛かる状態だったように感じます。

テンでガリガリやってハナに立ち、その反動でペースを緩めようとするのは当たり前ですが、その緩め方が過剰すぎる形となった構図はスプリンターズSと全く同じ。結果的にはその昔のテレビ馬と同じでハナに立つ事が全てだったようです。コーナー区間と言えど、これだけの速い馬場状態で尚且つ追い風を背に受け、2コーナーで1F13.9までスローダウンするのは尋常じゃない事象。まあ、その甲斐もあって非常におもしろいレース展開になりました。

1F13秒台のラップに突入した2周目1コーナーでは、2番手リアファルの鞍上ルメール騎手も抑えるのにやっとという状態。そこからどんどんペースが緩めば押し上げる意図がなくとも自然に前を交わすくらい、後続馬の勢いは止まらなかったと思います。アルバートドックが火を点けた形でしたが、他の馬も極々自然な感じでスピードを上げて行きました。しっかり抑えていたように見えた勝ち馬キタサンブラックでさえ、13.5から11.5へ2秒もペースアップしていましたから、それだけ非常識的なペースだったと思われます。

残り1400m地点からはほぼ1F12秒前後で推移。そこからハナに立ったミュゼエイリアンの鞍上は横山典弘騎手ですから、最後の直線までペースを上げないのは当然の形。末脚勝負は4コーナーの見えない内ラチからの400m強の争いでロングスパート戦の様相はありませんでした。ただ、スパート余力が各馬かなり削られた流れだったのは確かでしょう。

クビ差の決着となった1着キタサンブラックとリアルスティール。最後の直線でのラストスパートで明暗が分かれました。細かく見て行くと、どちらも全開スパート区間は残り250~200m地点。しかし明らかにガツンと追われ始めた区間は10完歩少々キタサンブラックが早かったですね。大型馬特有のトビが非常に大きいキタサンブラックも残り300~250m辺りで内から外目に進路を変える若干のロスがあったと言えなくもないですが、その時点でほぼトップスピードに引っ張り上げていたのが良かったのでしょう。一方リアルスティールは進路をすぐに確保できずスピードに乗り遅れ、この段階でキタサンブラックに交わされてしまいました。その後はじりじりと追い詰めましたが僅かに届かず。しかし、最後の直線に向くまで前に壁を置き、概ね上手なスパートができていたと思います。長く脚が使えないキタサンブラックがゴール前で脚が止まっていたのをスパッと交わせないのは、こちらも脚が長く使えない、スパート余力がかなり殺がれていたと考えられると思います。そして勝つ事だけに神経を注いだキタサンブラック鞍上北村宏司騎手の乾坤一擲の騎乗を褒めるべきではないでしょうか。


今回のリアルスティールの走りは前半にも見るべきところがありました。日本ダービー回顧と同様、前半1000mでのラップと完歩ピッチを見て行きましょう。



最初の100mでやっと0.400秒/完歩を超えてきました。1周目の坂の下り、1週目の最後の直線で掛かるシーンがありましたがこの馬の気性を考えると仕方がない部分。そのため完歩ピッチはギクシャクしたところがあるものの、全体的に見れば過去走より遥かにゆったりと走らせていました。「それくらいやって当たり前だろう」と何処からか聞こえてきそうですが、今回の福永祐一騎手は勇気をもって序盤を攻めていたと考えたいです。要は抑え込む事なしにスタートを切り、掛かれば力で抑え込むというスタイル。先行馬の数から言えば位置取り的にも問題なし。それでも遅れたスパートにキレや力強さが感じられなかったのは距離的な問題でしょう。あくまでも私の物差しに過ぎませんが、皐月賞、日本ダービー、そして菊花賞と、ホンの僅かですが少しづつパフォーマンスを落としています。成長曲線を考えるとその落ち具合はもう少し大きいかもしれません。3000m戦に適性を見い出す馬が他にいなかったこと、元々の力量が上であるマージンを使えるレベルにあったという点が好走の要因だと思いますが、このレースを機にもう一段パワーアップして欲しいですね。また、レース選択等において、オールマイティさを求めない方が良いと思います。


本命に推したリアファルは3着。書きたいことがいろいろありますが時間がないので今回は何も書きません。どこかで時間があればということで・・・。それにしても、2番人気リアルスティール4.3倍に対して3.1倍の1番人気とはよく売れましたなあ。その要因ではないと思いますが、随所で良く見られたのが神戸新聞杯で刻んだ公式ラップの優秀性。あんなラップを本当に刻めるのなら、負けることなどありません。阪神芝外回りコースの残り600m区間において、コーナー部と直線部がどのくらいあるのか、そして勾配がどうなっているのか、それを基に100m毎のスプリットタイムを推測してみてください。その後、再度レース映像でルメール騎手の挙動と照らし合わせれば、大いなる違和感が生じます。端的に言えば馬がかなりの余力を持ちながら走ったことになります。こちらも時間があればコメントでフォローいたします。

今回はこのあたりで。

エイシンヒカリ 全出走データ

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天皇賞・秋に出走するエイシンヒカリの全出走データをまとめてみました。個別ラップおよび完歩ピッチの値とグラフを貼っておきます。

レース名走破タイム残10F残9F残8F残7F残6F残5F残4F残3F残2F残1F後半5F残100mGoal
20151011 毎日王冠1:45.6
13.0 11.3 11.7 11.9 12.0 11.7 11.2 11.3 11.5 57.7 5.70 5.80
20150614 エプソンC1:45.4
12.8 11.4 11.4 12.0 11.6 11.6 11.2 11.5 11.9 57.8 5.85 6.05
20150516 都大路S1:45.7
12.6 11.1 11.2 11.9 12.0 11.9 11.5 11.3 12.2 58.9 5.80 6.40
20141213 チャレンジC1:46.8
12.6 11.3 11.5 11.6 11.8 11.6 11.2 11.8 13.4 59.8 6.30 7.10
20141019 アイルランドT1:58.313.1 11.3 11.3 11.0 11.5 12.0 12.3 11.9 11.7 12.2 60.1 5.90 6.30
20140928 ムーンライトH1:59.612.7 11.5 12.1 12.1 11.9 12.0 11.8 11.7 11.6 12.2 59.3 5.80 6.40
20140607 三木特別1:47.8
12.7 11.7 12.6 12.7 12.8 12.5 11.2 10.5 11.1 58.1 5.30 5.80
20140518 3歳500万下1:45.5
12.3 11.1 11.2 12.2 12.4 11.8 11.7 11.3 11.5 58.7 5.60 5.90
20140426 未勝利1:45.7
12.6 10.8 11.4 12.2 12.3 12.1 12.1 11.1 11.1 58.7 5.40 5.70
※サイレンススズカ1:44.9
12.7 10.8 10.9 11.4 11.9 12.1 11.70 11.60 11.80 59.1 5.80 6.00
※エルコンドルパサー1:45.3
12.9 10.9 11.1 11.6 11.8 12.0 11.65 11.65 11.70 58.8 5.80 5.90








テンの2Fが速かったのが意外なことにデビューからの2戦。デビュー戦では唯一逃げずに競馬をしましたが、これはテンが良く流れたからこそできた芸当かもしれません。2戦目でも番手からの競馬を試みましたが、制御不能となり結局ハナに立ちました。

唯一の敗戦となったチャレンジCでは、最後の直線でかなり強い向かい風をモロに受けていたようです。ただ、それは他馬にとっても同じことで、このレースの敗因としては道中もう一つゆったりと走れず、スパートの始動も早かったことが挙げられるでしょうか。残り400mからも脚の回転力は高いのですがストライド幅が全く伸びず、坂の下りでも減速する形となっていて、坂を駆け上がる余力はなかったようです。このレースと似たレーススタイルだったのがエプソムCですが、こちらは何とか後続を凌ぎ切りました。この手のタイプの逃げ馬を扱う鞍上の手腕の違いが出たとも言えますし、チャレンジCはデキが良くなかった可能性も高いでしょう。いずれにせよ現状では、チャレンジCとエプソムCとの狭間にエイシンヒカリのボーダーラインがあるように感じます。

しかし、アイルランドTのレースぶりはなかなか興味深いところです。前半200mからハイスピードでどんどん行ってしまったのですが、ストライド幅を大きく豪快に走っていたのが印象的でした。ゆったり大きく走らせればペース耐性力を上げていけそうにも感じます。また、ラストスパートはガツンと弾けるところが多かったのですが、毎日王冠では持続的なスパートをさせていました。武豊騎手が1走毎、良い方向への走りに向かわせているのを感じます。アイルランドT、毎日王冠2レースの良いところ取りができれば、ワンランク上のパフォーマンスが期待できるでしょう。

このエイシンヒカリの活躍に伴い、比較する形でサイレンススズカの名が再び見られるようになりました。というわけで久しぶりにあの伝説のレースを検証してみました。そして改めて、あの2頭のオバケぶりを強く感じてしまいました。

エルコンドルパサーの完歩ピッチはラスト1000m分のみですが、いかにもピッチ走法という形。しかもラストまで脚をよく回転させています。今回の天皇賞・秋に出走するスピルバーグも似たところがありますが、根本的な相違点が明確にあります。スピルバーグは道中の追走に苦労していますが、これはスパートまでの余力の残し方に大きな影響を与えていて、その余力を長い区間にわたり使うことによって息の長い末脚を繰り出します。一方エルコンドルパサーは、このペースでも楽々追走できる上で長い末脚を繰り出すことができます。ラップタイムはサイレンススズカとの比較上、細かく表現してみましたが、残り500~100mまでほぼ一定のスピードで走っており、また、坂を登り切った後は息を吹き返したように感じるところもあります。追走力が高くピッチ走法ながらも息の長い末脚を繰り出せるという、競走馬の理想的な1頭と言えることができます。翌年欧州でビッグパフォーマンスを見せてくれましたが、この毎日王冠でその片鱗を十二分に見せていたわけです。凱旋門賞ではもう1頭の怪物Montjeuに差されてしまいましたが、今年の勝ち馬Golden Horn相手なら、軽く完勝するだろうと思います。末脚の失速するレベルがまるで違うことでしょう。

サイレンススズカはスタートからゴールまでリズム良く走り切る印象がありましたが、こうやって完歩ピッチを採ってみると、まさにそのイメージ通り。1F12秒ほどにペースを落とす区間でも、その脚を運ぶリズムはあまり落ちません。生身の競走馬というよりもレーシングマシンといったイメージでしょう。

通常、レース中盤でペースを緩める際は脚の回転力を落とし、ストライド幅がやや小さめになるという形なんですが、サイレンススズカはスピードの上げ下げをストライド幅の調整で行う割合が非常に高いです。また、ラスト100mでエルコンドルパサーに0.1秒ほど差を詰められましたが、前述の通り極めて図太い末脚の持ち主に迫られただけであって、サイレンススズカ自身も失速率は非常に低い走りでした。その正体もストライド幅の調整というところにあります。ラップタイムと完歩ピッチから計算される200m毎の平均ストライド幅はこんな感じとなります。前半200mからの1600mにおける値です。

7.60m【10.8秒】- 7.65m【10.9秒】- 7.46m【11.4秒】- 7.14m【11.9秒】- 7.08m【12.1秒】- 7.23m【11.7秒】- 7.28m【11.6秒】- 7.42m【11.8秒】

サイレンススズカの影を踏むことができない理由の一つがこの走りにあったことと思います。


あくまでも私が算出した値ですが、この1998毎日王冠を基準にすると、今年の毎日王冠は0.6秒ほど速い馬場となります。59kg背負ったサイレンススズカはエイシンヒカリの8馬身前方でゴールを駆け抜けたことになります。現在とは異次元の空間で戦いが行われていたわけです。

今回はこのあたりで。

2015 チャンピオンズC 回顧

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チャンピオンズCのレース当夜にTwitterを見ていると、コパノリッキーの鞍上武豊騎手のコメントや、オーナーであるDr.コパ氏のTweetが話題になっていました。というわけでコパノリッキーの走りにスポットを当てていろいろ書いてみましょう。

チャンピオンズCと同コースで圧勝した今年の東海S、チャンピオンズCと同様に後続馬に絡まれた格好となりバテてしまった日本テレビ盃、そして今回のチャンピオンズCのダート1800m戦3レースを比べてみたいと思うのですが、まずは日本テレビ盃が行われた船橋競馬場について触れておきます。

過去エントリーかTwitterで書いたように思うのですが、船橋競馬場はタイム計測の計時開始地点までの助走距離がJRAより長く取られています。今回のチャンピオンズCと日本テレビ盃における助走距離の違いをタイムで見てもらいましょう。ゲートオープンと同時に動き出すタイムコード【黄色】とレースタイムを表すタイムコード【白色】の2種類挿入した画像となります。


【チャンピオンズC】









【日本テレビ盃】








ゲートオープンからチャンピオンズCは約1.46秒後、日本テレビ盃は約1.83秒後に残り1800mのハロン棒(≒計時開始地点)を通過している形となります。日本テレビ盃の方がよりスピードに乗った状態で計時開始地点を通過しているので、テンの1Fのラップは速くなるのが普通。また、これも過去に何度も書いたことですが京都ダート1800m戦では、ハロン棒が邪魔になりゲートが通常位置より後ろに置かれています。今年のみやこSではゲートオープンからちょうど2秒後に残り1800mのハロン棒を通過する形でした。このダート1800m戦でオープンクラスのレースがよく行われている阪神競馬場と京都競馬場では、テンの1F目の公式ラップの差が非常に大きいのはご存知かと思います。助走距離の違いに加えて、阪神競馬場はスタート後に坂を登りますから、なおさらラップに差が出やすい環境下にあります。そしてチャンピオンズCの舞台である中京競馬場も阪神競馬場同様、スタート後に坂があります。つまりチャンピオンズCと日本テレビ盃とのテンの1F目のラップ差はあるのが当然、という感覚で、以下の表を見て行きましょう。コパノリッキーの100m毎の平均完歩ピッチのグラフと200m毎のラップとなります。



今回のチャンピオンズCはコーリンベリー、そして日本式計時換算値で1F平均11.53秒となるAW1650mでの快時計をマークしているガンピットの参戦があり、程度はともかくとしても、そこそこ速い流れになると多くの方が想定していたと思われます。コパノリッキーはハナありきという戦略だったのか、スタートダッシュでかなりピッチを上げていましたが、何とかハナに立てたという1コーナーの進入時に問題のシーンが訪れました。スタートから1コーナーまではおおよそ300mほど。300~400m区間での完歩ピッチの速さがその状況をよく表しています。武豊騎手的には「お前ら、何やねん!」みたいな心境で再度コパノリッキーを押すハメになっていたようです。

クリノスターオーのレーススタイルからして、ある程度前目にに付けたい気持ちが鞍上のボウマン騎手にあったのは当然ですが、外からグイグイ押されながら勢いよく迫ってきたガンピットにあそこまで張り合った要因の一つは、コパノリッキーがポンと抜け出していなかった、違う言い方をすればコーリンベリーの存在が気になったようにも感じます。コパノリッキーもスピードタイプと評されるところがあるでしょうが、短距離路線組のコーリンベリーのそれとはレンジが違います。猛然とダッシュを利かせてハナに立とうとしたコパノリッキーとは対照的に、軽々とハナを奪えそうなくらいの雰囲気でコパノリッキーと併走していたのが印象的でした。もしコーリンベリーが早々と抑え込んでいたのなら、ボウマン騎手はガンピットを放っておいてクリノスターオーを内に向かわせ、コパノリッキーの後ろに付けるべく形をとっていたかもしれません。これも一つの展開のアヤだったと思います。

テンの2Fの公式ラップは12.5 - 10.7。このコースで本当に前半400m通過が23.2なら、コパノリッキーの外から迫った2頭は悪意のある襲撃というしかないでしょう。しかし実際にはそこまで速くはありません。通常映像にサンビスタが前半400mのハロン棒を通過したシーンがあったので、それと併せて次の画像をご覧ください。







阪神競馬場で行われていたジャパンカップダートで、大外枠から一気にハナを奪って勝利した2011年トランセンドも公式ラップはエライことになっています。コースこそ違えど今回のレースと比較するのに値した内容だったでしょう。こちらの過去エントリーもご覧ください。

◆2011 ジャパンカップダート 回顧

http://ameblo.jp/mahmoud1933/entry-11099101554.html

【10.7】という値を独り歩きさせてはロクなことがありません。


いずれにせよ、前半3Fのコパノリッキーの負荷が大きかったのは確かです。特に1コーナーから再び加速するような形は、大げさに言えば改めてスタートダッシュを効かせるような物。鞍上武豊騎手はかなり無理を強いられた状態なのを体感しているわけですから、できる限り長い区間でペースを緩めたい、特に遅い段階まで息を入れる形に持って行きたかったのでしょう。ここで非常に細かい値での話になりますが、逃げずに2番手とはいえ東海Sでは800~1000m区間、3コーナーの入り口まで完歩ピッチを落として走っていました。しかし今回と日本テレビ盃では、その前の区間より完歩ピッチが速まっているのがわかるかと思います。日本テレビ盃ではクリソライトがプレッシャーを掛け、今回はクリノスターオーがそれに該当していますが、クリノスターオー自身も後方からプレッシャーが掛かった要素がありました。ここで上位3頭とホッコータルマエの個別ラップを見て行きましょう。

着順馬番馬名タイム200400600800前4F10001200140016001800後5F
1着4サンビスタ1:50.413.0 11.4 11.8 12.2 48.4 12.2 12.4 12.6 12.2 12.6 62.0
2着1ノンコノユメ1:50.613.4 12.0 12.2 12.1 49.7 12.0 12.2 12.2 12.0 12.5 60.9
3着2サウンドトゥルー1:50.713.6 12.1 12.4 12.0 50.1 11.9 12.1 12.3 12.1 12.2 60.6
5着13ホッコータルマエ1:50.713.0 11.2 11.9 12.3 48.4 11.9 12.3 12.6 12.6 12.9 62.3
7着7コパノリッキー1:51.212.7 11.0 11.8 12.4 47.9 12.3 12.3 12.5 12.7 13.5 63.3


Mahmoud計測RL1:50.412.7 11.0 11.8 12.4 47.9 12.3 12.3 12.5 12.7 12.7 62.5


公式RL1:50.412.5 10.7 12.3 12.5 48.0 12.2 12.3 12.5 12.5 12.9 62.4


ホッコータルマエは800~1000m区間で11.9までラップを上げています。その後方では追従する形でローマンレジェンドも動いて行きました。コパノリッキーの終盤の失速は前半3F、2コーナーまでの攻防が大きな要因だったのですが、それが全てではなかったと思います。もし3コーナーまでのバックストレッチでペースを緩めることができたなら、何とかなった可能性はゼロではなかったと私は思います。

その後ホッコータルマエは外からグイグイとコパノリッキーに迫り続け、いかにも早仕掛けという雰囲気が感じられる一方、勝ったサンビスタは内ピッタリを追走。ラップ推移からみれば4コーナー、残り3F目で脚を溜めた格好になっています。この2頭の鞍上の読みが明暗を分けたと言えそうなのですが、パトロールビデオを見ればそうとは言い切れません。

3コーナーの入り口から、サンビスタ鞍上のM・デムーロ騎手は激しく押し始めています。コーナーを回る際、右前方にいたコーリンベリーの内を死守する意図もあったのでしょうが、本質は外から進出し始めていたホッコータルマエやローマンレジェンドに遅れまいとする意図だったように思います。その後、前方のニホンピロアワーズがスピードアップできない状態だったので、結果的に4コーナーを回るまで脚を溜める形になった側面もあったのでしょう。ホッコータルマエらとの対極的な鞍上の導き方と見えがちですが、4コーナーまで終始脚を溜めていたわけではありません。勝負処という意識はあまり大差なかったのではないかと思うのです。また、ホッコータルマエの押し上げが早過ぎたのは確かですが、序盤は速い流れだったもののバックストレッチではペースがそれなりに落ち着いたと鞍上が感じるところもあったのでしょう。最大の標的コパノリッキーが先頭にいる以上、あのように乗るのは至極当然だったとも思いますし、そんな勝負を挑むべき立場でもあったことでしょう。

コパノリッキーの東海Sは、ラストスパートでラップこそ上がらなかったものの完歩ピッチの推移を見ると非常に余力があったことが伺えるわけで、今回くらいの流れで逃げても凌ぎ切ると思っていた私の見立ては全くの見当違いでした。個人的にはガックリくる結果でしたが、レースの見応えとしては迫力ある良い内容だったと思います。いわゆるズブズブっぽいレースでしたが、過去のG1ではさらに激しい前潰れのレースもあったわけで、前のめりに勝ちに行こうとする姿はええもんやと私は思います。

今回はこのあたりで。

2015 香港マイル・カップ 回顧

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最後の直線の前半でAble Friendに一旦差されたものの、ラスト1Fで差し返すという、いかにも「強い!」と唸らされるような快勝劇をモーリスが演じて見せた香港マイル、そして2002年のクイーンエリザベスII世カップと同じように、日本馬が華麗にワンツーを決めた香港カップを振り返ってみたいと思いますが、まずはレースタイムの計時方法について、香港シャティン競馬場とJRAでの違いを検証してみましょう。過去に何回か同様のエントリーを起こしていますが、改めて考えてみたいと思います。

助走距離を経てレースタイムの計測がスタートするJRAにおいては、エイシンヒカリが勝った今年の毎日王冠を例に採り上げてみましょう。通常映像とパトロールビデオを同期させた以下のスクリーンショットをご覧ください。なお、JRAのタイム計測で使用される光電管は、各ハロン棒およびゴール板の約1m手前に設置されていますが、今回の説明においては各ハロン棒およびゴール板を通過した瞬間で、タイム計測のスタート、ストップがなされる物とします。







黄字のタイム表示はゲートオープンと同時にスタートさせた値です。ゲートが僅かに開いたタイミングに合わせています。






残り1800mのハロン棒を通過した瞬間から、白字でタイム表示をスタートさせています。ゲートオープンから1.46秒後にレースタイムが計測される形となっています。また、ゲートの設置位置と残り1800mのハロン棒との間隔、即ち助走距離は、この画像からだと5mほどあると見て良いんじゃないでしょうか。






エイシンヒカリが残り1600mのハロン棒を通過したタイミング。公式ラップの1F目は13.0となっていますが、実際には12.9くらいだと思われます。




エイシンヒカリが残り1400mのハロン棒を通過したタイミング。前半2F目を11.3程度のラップで走っていると見て良いでしょう。


前述のように助走距離が5mだとすれば、エイシンヒカリはゲートオープンの瞬間から205mを14.38で走っていることになります。次の2F目が11.3程度ですから、この残り1600mのハロン棒辺りでは1F12秒を切るスピードが出ていたのではないかと思われます。仮に1F11.0なら5mは0.275秒、1F12.0なら5mは0.3秒掛かるので、エイシンヒカリはゲートオープンの瞬間から200mを14.1秒前後で走ったと推測できます。つまり、ゲートが施行距離通りの位置にあってゲートオープンと同時に計時がスタートする場合、JRAでの計時方法より約1.2秒遅くなると考えられるのです。

ただ、もう少々考慮しなければならない点があります。以下のスクリーンショットはモーリスが勝った香港マイルにおいて、ゴール板通過時を勝ちタイムである1:33.92に合せたタイム表示となります。











ゲートが開き始める約0.2秒前から計時がスタートしていることになります。ゴールドシップが大きく出遅れた今年の宝塚記念の際に話題となりましたが、スターターがゲートオープンのボタンを押してから、ゲートが実際に開くまでのタイムラグがある一方、タイム計測はボタンを押すタイミングとしっかり同期が取れていると考えていいでしょう。したがって前述の1.2秒にプラス0.1あるいは0.2秒すると塩梅は良くなるのですが、これはあくまでもレース映像から推測した考え方。複数のカメラ映像が全て同期が取れていてこそ、となります。

日本式の換算タイムにするにあたり、やはり過剰に引いてしまっては元も子もありませんので、少し控えめだというニュアンスで1.2秒引いた形を私は採用しています。今年の高松宮記念の頃でしょうか、香港でのタイムは1秒引けば良い、という話を目にするようになりましたが、さすがに1秒引くだけでは少な過ぎますね。香港競馬のサイトで1000m戦、1400m戦、1800m戦での最初の1Fのラップを眺めれば、JRAでの同区間のラップとの差が1秒よりもっとありそうだと気付くはずです。

では香港マイルを見て行きましょう。1.2秒引いた日本式の換算タイム、そして10分の1秒単位で表した1F毎の個別ラップはこんな感じです。

◆1着モーリス

走破タイム
1:32.7

前後半4F
47.2 - 45.5

上がり3F
33.6

13.0 - 10.9 - 11.3 - 12.0 - 11.9 - 11.3 - 11.0 - 11.3


◆3着Able Friend

走破タイム
1:32.9

前後半4F
47.5 - 45.4

上がり3F
33.4

13.2 - 11.0 - 11.3 - 12.0 - 12.0 - 11.1 - 10.8 - 11.5

★香港マイル Sectional Time
http://www.hkjc.com/english/racing/display_sectionaltime.asp?racedate=13/12/2015&Raceno=7&All=0

最後の直線に向いて外からAble Friendが一気に伸びてモーリスを交わした時は、さすがAble Friendはめっちゃ速いなあと感じましたが、モーリスは単にトップスピードで後れを取っただけで、それがイコール勝敗の結果とはなりません。非常に力強い末脚で差し返してくれました。

★モーリス VS Able Friend
http://ameblo.jp/mahmoud1933/entry-12013600839.html

このエントリーも参考にしつつ、モーリスのマイルCSと香港マイル、そしてAble Friendの昨年、今年の香港マイルでの完歩ピッチをグラフにしてみましょう。



Able Friendは今年も昨年同様のリズムで走っていましたが、今年は弾け方が今一つだったように思います。序盤で少々不利を受け押されながら追走するシーンがあり、その影響があったのかもしれませんが、モーリスをマークし最後の直線で早々とモーリスを捉えにかかったというのは、つまるところモーリスの土俵に乗ってしまったわけで、こうなると横綱モーリスに捻じ伏せられてしまう形となりました。

それにしてもモーリスの末脚は力強いそのもの。その証拠となるデータはストライド長にあります。ラップと完歩ピッチから計算できる1F毎の平均ストライド長を残り2F目、1F目と順に書くと、マイルCSでは7.89m - 7.88m、香港マイルでは7.65m - 7.72m。ゴールに近付くにつれ当然ピッチは落ちるものの、ストライド長は全く衰えませんし、今回は少し伸びるくらいだったかもしれません。短期的な瞬発力全盛の今の日本競馬において、昔の馬かと錯覚するくらいの、非常に太い末脚が魅力的。溢れんばかりの重厚感がありますね。素晴らしい馬だと思います。

まだ多くのデータを調べたわけではなく、感覚的な物を含めての私の感想となりますが、鞍上ムーア騎手が乗ると、どこまでも伸びて行くように思えるほどの末脚を爆発させる機会が多いと思います。最初にインパクトを感じたのはラトルスネークの新馬戦。ゴール前のあの伸び脚からすると、末脚のエンジンの掛け方をゴール寄りにさせているのかなと思ったのですが、完歩ピッチを採ってみると別に終盤で脚を速く回転させているわけではなく、他馬と同じようなリズムでスパートしていましたし、ムーア騎手の挙動を見ても早い段階からガッツリ追っているように見えます。でも馬は尋常じゃない伸びを見せます。この謎は前述のモーリスと同様、ストライドが落ちないように走らせているフシがあると感じられるのです。昨年のメルボルンカップでもそうでした。モーリスに関してはムーア騎手云々という馬ではありませんが、もしムーア騎手を徹底解明しようと考えている方がいらしたら、この辺りの話を参考にしていただけると良いでしょう。


次は香港カップ。舞台となる香港シャティン競馬場の芝2000m戦は、スタート後1Fも行かない内に1コーナーに突入するというコース。東京競馬場芝2000mコースも早々とコーナーを迎えますが、シャティン競馬場ではそのまま180度回るところが大きな相違点。テンでスピードに乗せられないコースゆえ、2000m戦としての走破タイムが速くなりづらいと言えるでしょう。

残り1700m地点と認識できるポイントがズレていることもあり、1~2コーナー区間での距離が正しいのかどうかあやしいと思ったりもしましたが、エイシンヒカリの完歩数から考えると問題はなさそうです。また残り1800m地点、前半200m地点が認識できないので、テンの1Fのラップは前半100mのラップと完歩ピッチから推測した値となります。上記香港マイル同様の日本式換算値はこんな感じとなるでしょう。


◆1着エイシンヒカリ

走破タイム
1:59.4

前後半5F
60.2 - 59.2

上がり3F
35.3

13.1 - 11.8 - 11.9 - 11.6 - 11.8 - 12.0 - 11.9 - 11.7 - 11.4 - 12.2

★香港カップ Sectional Time
http://www.hkjc.com/english/racing/display_sectionaltime.asp?RaceDate=13/12/2015&Raceno=8&All=0#Race8

コース形態を考えると平均ペースの逃げを打ったという形になるでしょうか。2F毎のラップ推移は上げ下げのないキレイな物となっていますが、向こう正面ではじわじわとペースを落とし、最後の直線ではしっかりスパートさせていました。さすが武豊騎手の逃げでした。

★エイシンヒカリ 全出走データ
http://ameblo.jp/mahmoud1933/entry-12089180150.html

このエントリーのデータに天皇賞・秋、そして香港カップを加えてみましょう。

レース名走破タイム残10F残9F残8F残7F残6F残5F残4F残3F残2F残1F後半5F残100mGoal
20151213 香港カップ1:59.413.1 11.8 11.9 11.6 11.8 12.0 11.9 11.7 11.4 12.2 59.2 6.00 6.20
20151101 天皇賞・秋1:59.112.9 11.8 11.8 12.2 12.2 12.0 11.5 11.3 11.5 11.9 58.2 5.80 6.10
20151011 毎日王冠1:45.6
13.0 11.3 11.7 11.9 12.0 11.7 11.2 11.3 11.5 57.7 5.70 5.80
20150614 エプソンC1:45.4
12.8 11.4 11.4 12.0 11.6 11.6 11.2 11.5 11.9 57.8 5.85 6.05
20150516 都大路S1:45.7
12.6 11.1 11.2 11.9 12.0 11.9 11.5 11.3 12.2 58.9 5.80 6.40
20141213 チャレンジC1:46.8
12.6 11.3 11.5 11.6 11.8 11.6 11.2 11.8 13.4 59.8 6.30 7.10
20141019 アイルランドT1:58.313.1 11.3 11.3 11.0 11.5 12.0 12.3 11.9 11.7 12.2 60.1 5.90 6.30
20140928 ムーンライトH1:59.612.7 11.5 12.1 12.1 11.9 12.0 11.8 11.7 11.6 12.2 59.3 5.80 6.40
20140607 三木特別1:47.8
12.7 11.7 12.6 12.7 12.8 12.5 11.2 10.5 11.1 58.1 5.30 5.80
20140518 3歳500万下1:45.5
12.3 11.1 11.2 12.2 12.4 11.8 11.7 11.3 11.5 58.7 5.60 5.90
20140426 未勝利1:45.7
12.6 10.8 11.4 12.2 12.3 12.1 12.1 11.1 11.1 58.7 5.40 5.70




ハナありきでガッツリとスタートダッシュさせていることが伺えますし、ハナに立ってすぐ緩めていることもわかります。何よりも1~2コーナーを上手く利用できていますね。武豊騎手のコメントにあった通り、向こう正面に入ってから掛かり気味になっていたようですが、何とかなだめて走らせていました。道中もう少し緩めたかったのかもしれませんが、その分後続馬とのマージンを失うことがなかった意味も大きかったでしょう。後半のスパートは武豊騎手が初めて手綱を取った都大路Sと似ているでしょうか。残り100mほどで早くも勝ちを確信できるほどの、見事な逃げでの快勝劇でしたし、逃げる構えを見せ切ったのが大きなポイントだったかと思います。


2着のヌーヴォレコルトも良い走りをしていました。前後半は62.4 - 57.2程度。60.2 - 56.8で走った昨年の秋華賞以上となる後傾型のラップ推移となり、もうちょっと位置取りが前なら勝機があったかもしれませんが、ラスト1Fで甘くなることが多い同馬ですから、前半じっくり溜めてゆっくりスパートを掛けた今回のレースは、まずまず持ち味を生かした内容だったと思います。4Fでの強烈なスパート力の持ち主Designs On Romeを相手に、そのラスト4Fのラップで上回ったのは立派でした。


最後にお知らせとなりますが、【サラブレ 2016年1月号】にて、有馬記念の展望記事を書かせていただいております。後半1000mのデータを盛りだくさんに掲載しておりますので、是非ご覧くださいませ。またエリザベス女王杯のレースインプレッションも書いております。

https://www.enterbrain.co.jp/product/magazine/sarabre/15000058

今回はこのあたりで。

2015 有馬記念 調教データ

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連闘で挑むトーセンレーヴを除いた15頭の調教の様子を、100m毎の平均完歩ピッチのグラフで表してみました。赤字が直前追い切り、参考として黄字が前走(オーシャンブルーのみ3年前の有馬記念時)における上がり3F区間の完歩ピッチとなっています。また日付に星印が付いている値は、調教コースでのゴール板を過ぎて100mほど追われていたケースとなっています。このデータを踏まえて追い切り映像を見ると、何かしらの特徴が掴めてくると思います。

































トラックサーフェスの違いも関係しているのでしょうが、基本的にレースでのスパート時より、調教時の方が完歩ピッチは断然速くなっています。ゴールドシップの1週前追い切りなど、ストライド走法とは思えないほどかなりピッチを上げて走っています。同馬はガッツリ追われたらこうやっていつもしっかり反応しているのです。とても気分屋の走りという風情はありません。その一方、キタサンブラックの直前追い切りは、追われても反応できずバタバタになっていました。デキが良くないのかどうかまでは判断できませんが、何らかの理由があったのでしょう。

この一連の調教の中で目を引いたのはゴールドアクターの1週前追い切り。現代としては異例とも言える長目から時計をしっかり出していました。4コーナーを回る段階でかなりピッチを上げていましたが、少し一息入れた後、追われて再度反応していました。さすがにラスト1Fは12秒前半止まりでしたが、非常に熱のこもった調教。直前追い切りも抜群の反応を見せていました。前走時から横ばい的に見えるメンバーがほとんどの中、この馬だけはいかにも全力投球という雰囲気を感じさせていたと思います。

ステイヤーズSを圧勝して挑むアルバートのラップデータは、今まで何も書いておりませんので、前走のラスト5Fを今回紹介しておきます。

58.7 : 12.1 - 11.5 - 11.9 - 11.7 - 11.5 [ 5.65 - 5.85 ]

完歩ピッチでも示す通り、残り300m、要は最後の直線に入ってから一気にスパートしていました。施行距離、馬場差を考慮した上で、今年の日経賞組のアドマイヤデウス、サウンズオブアースと比較すれば良いんじゃないかと思います。

ラップが自動計測される坂路調教でラスト1Fが最速となると、必ずと言って良いほど評価されますが、例えばサウンズオブアースのようにじっくり溜め、ラスト1Fを切ってからGOサインが出るような追い切りをすれば、ラスト1F最速となるのは当たり前の事なんですね。悪く言えば負荷をあまり掛けてない調教とも言えるわけで、デキが良いかどうかは関係のない話です。また、ラブリーデイなどは直前調教で4Fしか時計を出していませんが、ゴール板を過ぎてもまだ脚を使わせているわけで、調教時計だけで判断するのが難しいタイプでもありますね。

今回はこのあたりで。

ヴァンキッシュラン降着の件

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正面からのパトロールビデオを見る限り、F.ベリー騎手に科せられた制裁については何も異論はないでしょうが、ヴァンキッシュランが降着になったという点においては賛否両論あるんじゃないかと思います。

私がレース映像を見たのは結果を知ってからのこと。ヴァンキッシュランとレーヴァテインが同タイムの入線で、上がり3Fはレーヴァテインの方が0.2秒速いことから、最後の直線のどこかで不利を被ったレーヴァテインが猛然と追い込んで僅かに届かず、みたいな事象かと想像しながらレース映像を見ました。ところが、この2頭の脚色は終始ほぼ同じ、どちらかと言えばヴァンキッシュランの方が良く見えるくらいで、この降着はえらく思い切った裁定だなという印象を持ちました。


残り600m地点でヴァンキッシュランが0.2秒先行。その辺りから2頭とも軽くGOサインを出され序段スパートを開始しています。最後の直線に向いてまもなくヴァンキッシュランは全開で追われ始め、一方レーヴァテインはまだ楽な手応え。鞍上のルメール騎手の手が激しく動き始めたのは残り300m辺りでしょうか。そして残り100m辺りから、ヴァンキッシュランが外のレーヴァテインを押圧しながらゴール入線となりました。

では、残り400、200、100mとゴール地点でのスクリーンショットを見ていきましょう。ヴァンキッシュランは白帽1番、レーヴァテインは緑帽8番です。










残り400m地点で2頭はほぼ同じ位置。この200m区間でレーヴァテインは0.2秒差を詰めています。その後の残り200、100m地点でもほぼ差のない状態ですが、残り400~200m区間のどこかで先にスピードに乗った形のレーヴァテインが僅かに前に出るシーンがあったようにも思います。この2頭の上がり3Fの内訳はこんな感じでしょう。

11.3 - 10.9 - 11.0 ・・・ ヴァンキッシュラン

11.1 - 10.9 - 11.0 ・・・ レーヴァテイン

10分の1秒表記ならば、ラスト400mのラップは全く同じになりますが、ヴァンキッシュランのラスト1Fが11.0ちょうどとすれば、レーヴァテインは11.05くらいとなり、ラスト50m少々で僅かに差が広がったような形だと思います。

次に上がり3F区間における100m毎の完歩ピッチの推移を見ていきましょう。



鞍上の挙動とは裏腹に、完歩ピッチのピークはヴァンキッシュランの方がゴール寄りになっています。2頭ほぼ差が付かない状態だった、残り100mで馬体がぶつかるまでの約300m区間においては、ヴァンキッシュランがレーヴァテインに追い付いたようなイメージとも言えます。また、ラスト100mでの完歩ピッチの落ち込み度はレーヴァテインの方が若干大きいです。これがヴァンキッシュランの押圧に因るものだとすれば、本来ならゴールまで全くの併走状態になるところを妨害したと明らかに言えるでしょうし、あるいはヴァンキッシュラン以上の脚色になっていた可能性も否定できません。しかし、脚の回転力のピークをレーヴァテインの方が早く迎えている点からすると、もし押圧とは関係のない部分でどちらの脚色が先に衰える可能性が高いか推測すれば、それは当然レーヴァテインになると私は考えます。したがって、「走行妨害がなければ、8番レーヴァテインは1番ヴァンキッシュランより先に入線したと認めたため」と判断するには難しい事象だったと思うわけです。少なくとも10分や15分で結論を出せるレベルではない、微妙なシチュエーションだったのではないでしょうか。もっとも、約100mにわたり外に斜行し続けレーヴァテインを押していた事実を踏まえれば、入線順のまま着順確定するのは少々腑に落ちない気もします。ヤリ得を放置するのは良くないですからね。ですから、今回のような事象なら、馬券確定は入線順とし、最終的な成績確定は事後でも良いんじゃないでしょうか。双方の意見を聞いて審議する時間が掛かるのは当然ですし。

今回はこのあたりで。

サトノダイヤモンドは加速ラッパーなのか

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サトノダイヤモンドはデビューからの3戦連続で、レースラップのラスト2F⇒1Fが加速ラップとなるレースを差し切ったことで評判になっているようですが、先のコメントリプライで書いたように、ラスト2F目のレースラップを刻んだ馬より遥かに速いスピードで走る馬が、残り1F地点辺りで入れ替わるように先頭に立てば、自ずから加速ラップになるわけです。現にサトノダイヤモンドは3戦とも、残り1F地点辺りで先頭に立っています。あくまでも先頭に立つタイミングの問題であり、レースラップが加速ラップとなることに価値は別にありません。また、加速ラップを差し切ったからといって、その馬自身が加速ラップを刻んだとも言えないのです。昨年のエリザベス女王杯など、その典型例でしょう。

しかし、サトノダイヤモンドが繰り出した末脚に対して、いかにもグンと加速していったようなイメージを持たれた方がほとんどだったのではないでしょうか。それではサトノダイヤモンドの3戦の個別ラップと、100m毎の平均完歩ピッチをまとめてありますのでご覧ください。

レース名走破タイム残10F残9F残8F残7F残6F残5F残4F残3F残2F残1F後半5F残100mGoal
新馬2:03.813.1 12.2 13.0 13.5 12.4 12.2 12.6 11.9 11.5 11.4 59.6 5.65 5.75
3歳500万下2:03.813.1 12.2 13.4 12.8 12.9 13.0 12.5 11.9 10.8 11.2 59.4 5.45 5.75
きさらぎ賞1:46.9
12.9 11.5 11.7 12.3 12.4 12.0 11.7 11.3 11.1 58.5 5.50 5.60




新馬戦は道中ギクシャクした流れでしたが、1頭だけ明らかに違う脚色で余裕十分の差し切り勝ち。ゴール前は流すような走りでしたが、自身も加速ラップを刻んでいました。現3歳馬の中距離新馬戦においては、リオンディーズと並んで秀逸な内容だったと見ています。

続く500万下は舞台が阪神内回りコースに変わりましたが、サトノダイヤモンドは新馬戦よりやや遅いペースで追走。その分、上がり3Fをグンと伸ばしましたが頑張ったのはラスト2Fだけ。坂を下って急坂を登る阪神の直線では、さすがに加速ラップとはならないものの、残り300mを過ぎてからは猛然とピッチを上げ1F換算10.6程度にスピードアップしていたのではないかと思います。時計の掛かる馬場を考えれば非常に高いスピードレンジを見せていました。

きさらぎ賞の公式上がり3Fは34.2でしたが、四捨五入レベルで34.1と採ってみました。そして自身も加速ラップとなる形。見たままの素晴らしい末脚を繰り出していました。自身が加速ラップとなるのは、それだけスパートを遅らせていることになるわけで、坂路調教では良く見られる光景ですが、実際にレースにおいて加速ラップで走るというのは、競い合う相手がいても調教と同じ様に走れる、つまり、それだけ他馬と比べてスパートまでの余裕度が段違いという意味になります。これが新馬戦ならまだしもG3の重賞ですから、あきらかに力量が抜けているという結果でした。着差以上の価値があると見て良いでしょう。また、脚の回転力はゴールまで徐々に落ちていますが、ストライド長はしっかり保っていることも伺えます。この終盤までストライド長を落とさないスパートというのは、昨年の年度代表馬モーリスの特徴と同様。長い末脚とイコールという意味ではありませんが、末脚の重厚さは十分感じられるモノだと思います。

サトノダイヤモンドに惚れ込んだ方は、このデータを見て更に惚れ込んでもらえば良いでしょうし、穴党なら弱点を見付け出して、そこに付け入る可能性を持つ馬を想像してもらえば良いと思います。この後は皐月賞に直行とのこと。現3歳勢は他にも楽しみな馬が多くいますから、今年のクラシック戦線は大いに盛り上がることでしょう。

最後にお知らせです。2016年02月13日発売の【サラブレ 2016年3月号】において、恒例企画となる望田潤さんとの『ラップ論×血統論』が掲載されます。今回は2015年下半期G1回顧の後編となります。また、特別企画として、『Secretariat VS クロフネ VS American Pharoah』という読み物も掲載されます。是非ご覧くださいませ。

https://www.enterbrain.co.jp/product/magazine/sarabre/15000060


今回はこのあたりで。

ドゥラメンテの追い切り

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昨年の有馬記念の調教エントリーと同様の形で、ドゥラメンテの調教時における完歩ピッチの推移をグラフにしてみました。復帰戦となる中山記念の1週前追い切りが紫、直前追い切りが赤のラインになっています。



ここ2週の追い切りは、3歳時に比べてスパートまで余裕を持って走らせ、その分ゴール板通過後も緩める度合いが少ない様相となっています。2015/05/21での日本ダービーの1週前追い切りほどの負荷は掛けていないと思うものの、2016/02/17では長めの時計を出しているのも事実。

ちなみに美浦・南Wでのラスト1Fのラップはこのようになっていました。

2015/04/16:12.6
2015/05/21:12.5
2015/05/28:12.5
2016/02/17:12.8
2016/02/24:12.1

追い切り映像から私が計測したラップで速い順に日付を並べるとこうなります。

2015/05/28
2016/02/17
2016/02/24
2015/05/21
2015/04/16

日本ダービー直前の動きが抜群だったのは当然としても、長めから行った2016/02/17でのラスト1Fは結構速いです。おそらく12秒を僅かに切ったくらいかと思われます。少なくとも末脚のキレ具合に関しては、骨折の影響を感じるところはありません。長期休養明けとなる復帰戦としては、まずまず上々の追い切りと言えるでしょうか。

今回はこのあたりで。

2016 中山記念 回顧

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ドゥラメンテは骨折長期休養明けということもあり、2011年のヴィクトワールピサのように前半は無理をせずゆっくりレースを進めるだろうと思っていたのですが、鞍上ミルコ・デムーロ騎手は押して好位置を取り、堂々たるレースぶりで完勝しました。思えば昨年の日本ダービーでも掛かることを恐れず、勝ち切るための位置取りをしていたわけです。ミルコ・デムーロ騎手にとってはごく当たり前のレースをしただけだったかもしれません。そんな今年の中山記念を簡単に振り返っておきましょう。

それでは上位3頭の個別ラップと100m毎の完歩ピッチの推移を見ていただきますが、参考として前述の2011年ヴィクトワールピサのデータも加えておきました。今回改めて計測し直したので、2011年当時に紹介した値を若干修正しております。

着順馬番馬名タイム200400600800前4F10001200140016001800後5F1700Goal
1着9ドゥラメンテ1:45.913.2 11.9 12.0 11.6 48.7 11.4 11.5 11.6 11.0 11.7 57.2 5.75 5.95
2着10アンビシャス1:45.914.0 12.0 11.9 11.5 49.4 11.3 11.4 11.6 10.9 11.3 56.5 5.55 5.75
3着2リアルスティール1:46.013.4 11.8 12.0 11.6 48.8 11.5 11.5 11.6 11.1 11.5 57.2 5.65 5.85
参考
ヴィクトワールピサ1:46.013.7 11.9 11.6 11.8 49.0 11.7 11.4 11.4 11.0 11.5 57.0 5.60 5.90


Mahmoud計測RL1:45.912.7 11.9 11.9 11.5 48.0 11.4 11.6 11.9 11.3 11.7 57.9



公式RL1:45.912.6 12.0 11.9 11.6 48.1 11.3 11.6 12.0 11.1 11.8 57.8





中山競馬場では毎度のことですが、ラスト800mから差を詰めた形となる馬たちは、公式発表の上がり3Fの値が実際より速くなっています。以下のスクリーンショットでその様子がわかるかと思います。




先頭馬のラスト600mハロン棒通過は自動計測で1:10.0。挿入してある外ラチの赤の縦線は自動計測用の光電管が置いてある場所です。




ドゥラメンテのラスト600mハロン棒通過時。ドゥラメンテの上がり3Fは34.3。




リアルスティールのラスト600mハロン棒通過時。リアルスティールの上がり3Fは34.2。




アンビシャスのラスト600mハロン棒通過時。アンビシャスの上がり3Fは33.8。


上位3頭は前半600mまでゆっくりとしたペース。バックストレッチに入ってからずっと1F11秒台半ばにペースアップしたままの、大枠で言えばラスト1200mのロングスパート戦となるでしょうか。後方に陣取ったアンビシャスに至っては、そのラスト1200mを1:08.0、1F平均11.33で走破していました。マイル戦ならラスト1200mで1分7秒台に入れてくる馬は時々見かけますが、1800m戦でこのレベルまで速く走る馬を見ることは非常にまれです。

参考として挙げたヴィクトワールピサのラップを今年のレースに当て嵌めるとなかなかおもしろいです。前半400mまではリアルスティールとアンビシャスの中間辺りの位置取り。前半600m地点でリアルスティールに並び掛け、3コーナー手前の前半1000m、ラスト800m地点ではアンビシャスと同じ位置取り。今年はバックストレッチ区間が厳しい流れだったと言えるでしょう。

今年と2011年はほぼ似たような馬場差だったと私は判定しました。タイム差、斤量差を踏まえても、今年のドゥラメンテの走りはヴィクトワールピサと同レベルにあったと見て良いかと思います。当時のヴィクトワールピサは次走で自ら動いてドバイWCを制覇。そんなチャンピオンクラスと同等の力をドゥラメンテは見せてくれました。今回、骨折長期休養明けが割引材料となる状態だったとしたら、今後は非常に楽しみになることでしょう。


アンビシャスはラスト600m地点ではリアルスティールと0.3秒差。最後の直線の入り口でもその差は変わりませんでしたが、その後ラスト200m地点までの100m区間で、リアルスティールとの差を一気に0.2秒縮めていました。末脚は非常にキレていたと思います。その勢いならドゥラメンテにもっと迫っても良かったのですが、ラスト100mは少々脚が上がり気味とも言えます。斤量2kg差、中山内回り1800m戦という、ドゥラメンテに先着できる格好の条件だったと思いますが、少し足りませんでしたね。3歳時と比べて力差はあまり縮まっていないと感じますが、それでも良く走っていました。これだけのスピード能力を見せてくれた以上、もし2400m戦に向かうくらいだったら、マイル戦の方が合うんじゃないかと思います。


リアルスティールは良く頑張ったのか、それとも消化不良的だったのか判断は難しいですが、上手に走らせるのがシビアな馬なのはイメージできるかと思います。スタートから1コーナーまでは、基本的に日本ダービーと同じでドゥラメンテに前を行かれるという形。良い悪いは別として、ミルコ・デムーロ騎手と福永祐一騎手のレースに対する感性の違いがある以上、こんな形になるのは仕方のないことです。今回は対ドゥラメンテで斤量2kg差だったので、ドゥラメンテの後ろに陣取るのは良い選択と言えなくもないかも。実際、ドゥラメンテやアンビシャスと比べ、インで脚を溜める形になったので結果オーライになる可能性はあったのでしょう。

ここで完歩ピッチのグラフを見てもらいたいのですが、3コーナーの入り口、ラスト800mから500mまで、ドゥラメンテはどちらかといえばピッチをやや緩めるくらいで走っています。アンビシャスは一旦ピッチを速めつつ再度緩めています。一方リアルスティールはその2頭に比べピッチを速めたままラストスパートに入っていました。レース映像的にも、ラップタイム的にも脚を溜めている様相でしたが、完歩ピッチ的には先に序段スパートを仕掛けているような形。上位2頭みたいなキレのある末脚を使えなかった一つの要素だったと言えるでしょう。これが馬の能力によるものなのか、あるいは・・・。

リアルスティールは前が空くとスッとピッチを速めてしまうところがある馬で、3コーナーからは外目にドゥラメンテがいるものの、自らと同じコースを走る前方の馬とは間隔が開いていました。また、ラスト600mのハロン棒を過ぎてしばらく後、少し気合を付けてもいました。その割にはゴール板までしぶとく脚を動かし良く踏ん張っていたことを考えると、もうちょっと何とかなったのではないかと感じるところがありますね。先着を許した2頭における馬と鞍上の一体感と比べると、いささか見劣っていたと言わざるを得ないと思います。リアルスティールは非常に敏感な馬だけに難しいのは重々承知の上での見解となりますが。したがって今後リアルスティールが復権のチャンスを得るにはエピファネイアパターンになるかなと思っていた矢先、来るドバイのレースではムーア騎手が手綱を取ることになったようです。どうなるか見物ですね。

今回はこのあたりで。

2016 ドバイワールドカップデー 回顧資料

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今晩22:45辺りからツイキャスで今年のドバイワールドカップデーをサクッと回顧してみます。

http://twitcasting.tv/mahmoud1933

以下に幾つか資料を置いておきます。

【資料1】



【資料2】



【資料3】
レース名タイム残10F残9F残8F残7F残6F残5F残4F残3F残2F残1F前3F後5F後3F
2015皐月賞1:58.412.7 11.2 11.8 12.0 12.1 12.0 12.1 11.7 11.1 11.7 35.758.6 34.5
2016中山記念1:46.0
13.4 11.8 12.0 11.6 11.5 11.5 11.6 11.1 11.5 37.257.2 34.2
2016ドバイターフ リアルスティール1:45.4
13.2 11.2 11.5 11.6 12.0 11.7 11.3 11.1 11.8 35.957.9 34.2
2016ドバイターフ レースラップ1:45.4
13.0 11.2 11.4 11.6 11.8 11.8 11.3 11.5 11.8 35.658.2 34.6



【資料4】



【資料5】

2016 桜花賞 回顧

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桜花賞の1、2着馬に絞って簡単に振り返っておきます。チューリップ賞と今回の桜花賞での個別ラップと完歩ピッチのグラフをご覧ください。

レース名タイム残8F残7F残6F残5F前4F残4F残3F残2F残1F後4F
ジュエラー チューリップ賞1:32.812.9 11.0 11.7 12.2 47.8 12.0 11.2 10.5 11.3 45.0
ジュエラー 桜花賞1:33.413.4 11.2 11.7 12.4 48.7 11.7 11.1 10.6 11.3 44.7
シンハライト チューリップ賞1:32.812.7 11.2 11.7 12.2 47.8 12.0 11.1 10.6 11.3 45.0
シンハライト 桜花賞1:33.412.8 10.9 11.7 12.3 47.7 12.0 11.3 10.9 11.5 45.7




シンハライトは前半2F目のラップタイムでわかるように、残1400~1300m区間で桜花賞の完歩ピッチがやや速くなっています。好位置を取りに行ったというか、馬を抑えず流れに乗せて序盤を走りました。また、中間点辺りでペースが遅くなり少々掛かっていました。前走チューリップ賞に比べて末脚の爆発力が落ちたのはこの二つの要素の影響でしょうが、非常に良いレースをしたと思います。僅か2cmの差に泣いたのはハードラックとしか言いようがないでしょう。

ジュエラーは前走と一転、スタートダッシュを効かせず前半2Fを前走比プラス0.7秒の走り。前走よりさらに後半勝負に徹したわけですが、注目ポイントはラストスパート時の完歩ピッチの推移。通常、位置取りが後ろの馬の方が、前に追い付くためスパートのピーク時は早くなるのですが、一気に吹かせることなくじわじわとピッチを上げ、最速ピッチ区間をラスト300m以降に持って行き、前方のシンハライトよりスパートのピーク時がゴール寄りとなりました。

シンハライト鞍上の池添騎手は、この本番でより積極的でスタンダードな差し勝負で挑み、一方ジュエラー鞍上のミルコ・デムーロ騎手は、伸るか反るかのバクチを打ったとも言えるでしょう。しかし、大胆な作戦とはいえ、針の穴を通すような冷静さも同時に兼ね備えていました。それがゴール板通過時の首の上げ下げに味方したのかもしれません。

今回はこのあたりで。


2016 皐月賞 3強調教データ

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皐月賞上位人気3頭の調教時における完歩ピッチの推移をグラフにしてみました。

レース名に*が付いているのは、ゴール板通過後100mのデータが含まれているという意味です。したがって、サトノダイヤモンド、リオンディーズについては、ラスト1Fの調教タイムが該当する区間は残り300~100mとなります。








この後、22:45くらいからツイキャスで皐月賞展望を行う予定です。この調教の様子はツイキャスで触れます。お時間ある方は聴いていただければ幸いです。

http://twitcasting.tv/mahmoud1933/

2016 皐月賞 回顧

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今回は回顧という内容ではなく、バックストレッチでリオンディーズが先頭に出た部分を細かく見ていきましょう。

前半1000m通過が自動計時で58.4。勝ちタイムが1:57.9に対し後半800mが48.0なので、1000~1200m区間のレースラップは計算で弾き出される11.5となりますが、強い向かい風の中、この11.5というラップはかなり速い印象を受けたかと思います。

この自動計測については過去のエントリーで触れたことがありますが、この皐月賞においては100分の1秒単位で考えると、前半1000m通過は58.40~58.49、勝ちタイムは1:57.90~1:57.99だったと思われます。ところが後半800mが48.0というのは、勝ちタイムから前半1200m地点の通過タイムを引いた値が48.00~48.09という意味であり、前半1200m地点の通過タイムは最も速いケースなら1:57.90 - 48.09 = 1:09.81、最も遅いケースなら1:57.99 - 48.00 = 1:09.99。したがって1000~1200m区間のレースラップは最速で1:09.81 - 58.49 = 11.32、最遅なら1:09.99 - 58.40 = 11.59となるんじゃないかと推測されます。間接的な自動計測区間と言えども、結構タイム幅があります。

また、最寄りの船橋観測所のデータで平均風速7.0m/s、最大瞬間風速15.1m/sとはいえ、レース中は風が強くなったり弱くなったりして、場面によって風の影響度は一定ではないでしょう。その一方、昨年の皐月賞はほぼ無風状態の中で行われ、逃げたクラリティスカイの鞍上は、ペース配分に非常に長けた横山典弘騎手。というわけで、2コーナーを回り切る少し手前の前半800m地点から前半1400m地点における、2015年クラリティスカイと今年のリオンディーズの各ハロン棒通過時をタイムコード入りのレース映像のスクリーンショットで確認してみましょう。また、各ハロン棒設置位置が同じ場所であることも、背景から確認してみてください。









30fpsのコマ送りで100分の1秒単位云々を考えるのは意味がありませんが、一応上記画像のタイムコードから計算される200m毎のラップと100m毎の完歩ピッチがこちらとなります。



800~1000m区間は少しコーナーを含んでいますがずっと下り坂。その下り坂は1000mを過ぎて終わります。クラリティスカイの完歩ピッチの推移からすると、1000~1200m区間は800~1000m区間より僅かに短い印象があります。その後の1200~1400m区間はコーナー部分であり、同じスピードを維持するために完歩ピッチを速めたと考えても良いのでしょうが、僅かながらこの1000m地点のハロン棒はゴール寄りにズレているかもしれません。ただ、例えズレていたとしても時計にして0.1秒程度の物でしょうが。それにしても、やはり1000~1200m区間におけるリオンディーズの11.3~11.4というラップは確かに相当速いです。ここで上位3頭のデータも見てみましょう。



注目すべきはマカヒキの同区間のデータ。道中ではラップで11.7~11.8という、ほぼ一定とも言えるスピードを維持しているように見えますが、完歩ピッチはこの問題の区間が最遅。ここで少しタメを作っていたと考えて良いでしょう。つまり、バックストレッチでは強い向かい風がずっと吹いていたのではなく、各馬が1000~1200m区間を走る間、風は弱くなっていたと推測できるかもしれません。200m毎のラップをどう捉えるかは非常に難しいところだと思います。

少なくとも言えることは、南南西の非常に強い風が吹いている以上、中山芝2000mなら追い風区間の方を長く走ったことが確かです。人間の体感的な発想からなのか、向かい風の時の負荷を殊更強調する意見を良く目にしますが、仮に同じ強さの向かい風、追い風で同距離走ったとしたら、プラスマイナスゼロと考えるのが筋だと私は思います。

最後に、この中山競馬場で残り800mから後方勢が追い上げてきた際の恒例行事となりますが、先頭馬のリオンディーズ、ディーマジェスティ、マカヒキが残り3Fのハロン棒を通過した時のスクリーンショットを貼っておきます。



JRA発表の上がり3Fはディーマジェスティが34.0、マカヒキが33.9となっていますが、そんなわけないやろ、というのがわかることでしょう。この時点で後方2番手だったミッキーロケットの位置から上がり3F33.9の脚を使えば、ディーマジェスティと同タイム入線となります。

今回はこのあたりで。

2016 日本ダービー 旧3強調教データ

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皐月賞時と同様の形で、旧3強の調教時における100m毎の完歩ピッチグラフを貼っておきます。前走時より熱のこもった調教の雰囲気が伝わることでしょう。

内容については今週末ツイキャスで話す予定です。







2016 日本ダービー 個別データ

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noteにデータを追加していくつもりでしたが、全く時間が取れず中断したままで申し訳ございません。

ディーマジェスティ、マカヒキ、サトノダイヤモンド、エアスピネル、リオンディーズ、マウントロブソン、そしてロードクエストに関してはExcelファイルを更新しましたので、以下のリンク先からダウンロードしてご覧ください。ダウンロードパスワードは必要ありません。

http://ux.getuploader.com/Mahmoud1933/download/43/2016%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%B7%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%89%E5%80%8B%E5%88%A5%E3%83%87%E3%83%BC%E3%82%BF_20160527.xlsx

また、青葉賞の上位2頭の個別ラップ、ラスト1000m区間における100m毎の完歩ピッチは次の通りです。

ヴァンキッシュラン
13.2 - 11.8 - 12.1 - 12.8 - 12.4 - 12.0 - 12.1 - 11.8 - 11.5 - 11.2 - 11.5 - 11.8【5.85 - 5.95】
ラスト5F:57.8
【0.416 - 0.419】【0.415 - 0.410】【0.408 - 0.397】【0.401 - 0.409】【0.414 - 0.414】


レッドエルディスト
13.6 - 12.0 - 12.4 - 12.8 - 12.3 - 12.4 - 12.0 - 11.6 - 11.4 - 11.2 - 11.2 - 11.5【5.65 - 5.85】
ラスト5F:56.9
【0.434 - 0.432】【0.430 - 0.429】【0.421 - 0.416】【0.414 - 0.410】【0.420 - 0.434】

本日この後、20:30を過ぎてからになると思いますが、日本ダービー展望等の内容でツイキャスを行います。よろしければお聴き下さいませ。

http://twitcasting.tv/mahmoud1933/

2016 日本ダービー 回顧

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ツイキャスで一通り振り返ったので多くを語る気はありませんが、上位5頭のスタートからの走りのデータを採ったので、それを掲載しつつ改めて少し書いてみましょう。

私はラップを計測する際、例えば11.9か12.0か判断が微妙になる場合、10分の1秒以下を四捨五入的なニュアンスでどちらか決定しますが、ラスト1Fだけは、ほぼ切り上げという判断をします。これは大多数のレースで公式ラップのラスト1Fが実際の値より遅く発表されているので、その乖離差を少なくするための意図でもあるのです。したがってこの日本ダービーの1~3着馬において、ラスト1Fが最も遅かったサトノダイヤモンドに合せて、ツイキャスではこの3頭のラスト1Fを11.3と書きましたが、マカヒキ、ディーマジェスティはおそらく11.2をホンの少し上回った程度。サトノダイヤモンドでも四捨五入すれば11.2と判断できる計測値となったので、今回発表するラスト1Fは11.2という値にします。その分、ラスト2F目は0.1秒加算されています。

また、この3頭はいずれもディープインパクト産駒なので、参考として日本ダービーでのディープインパクトの個別ラップも併せて掲載しておきます。昨年のサラブレ誌上では、ディープインパクトのラスト1Fを11.3としましたが、前述のマカヒキ、ディーマジェスティとほぼ同じの、11.2を僅かに超えた程度でしたから、同様の扱いとしてみます。それでは上位5頭の個別ラップをどうぞ。

着順馬番馬名タイム200400600800前4F1000120014001600中4F1800200022002400後4F2300Goal
1着3マカヒキ2:24.013.4 11.9 12.3 12.4 50.0 12.2 12.4 12.5 12.0 49.1 11.6 11.2 10.9 11.2 44.9 5.50 5.70
2着8サトノダイヤモンド2:24.013.2 12.0 12.3 12.4 49.9 12.2 12.4 12.5 11.8 48.9 11.8 11.2 11.0 11.2 45.2 5.50 5.70
3着1ディーマジェスティ2:24.113.5 12.0 12.2 12.4 50.1 12.3 12.3 12.5 11.9 49.0 11.7 11.2 10.9 11.2 45.0 5.55 5.65
4着5エアスピネル2:24.413.1 11.8 12.1 12.1 49.1 12.3 12.6 12.8 11.8 49.5 11.8 11.2 11.1 11.7 45.8 5.75 5.95
5着12リオンディーズ2:24.513.7 12.3 12.4 12.5 50.9 12.3 12.5 12.2 12.0 49.0 11.4 11.0 10.8 11.4 44.6 5.55 5.85


Mahmoud計測RL2:24.012.6 11.3 11.6 12.1 47.6 12.4 12.9 12.9 12.0 50.2 12.0 11.5 11.4 11.3 46.2



公式RL2:24.012.6 11.1 11.9 12.1 47.7 12.3 12.9 13.1 11.8 50.1 12.0 11.6 11.0 11.6 46.2

参考
ディープインパクト2:23.313.8 11.8 12.2 12.4 50.2 11.9 12.4 12.0 11.9 48.2 11.5 11.2 11.0 11.2 44.9 5.555.65


今年のレースで最も目に付くのは、中団を追走していた馬たちの序盤の遅さ。マカヒキが7番手辺りで1コーナーに進入したことに対し驚きの声が上がったようですが、前半2Fを13.4-11.9の25.3で入っていますから、今回特段頑張ってスタートダッシュを決めたわけではありません。新馬戦から順にマカヒキの前半2Fを書いていくと、25.1【13.2-11.9】、25.3【13.2-12.1】、24.7【13.2-11.5】、24.9【13.3-11.6】。今回はワーストタイです。ゆっくりとスタートダッシュしていたサトノダイヤモンドともども、この程度の速さで7、8番手、しかも好枠なりにインを取れたのは非常に意味があったと思います。また出脚に難のあるディーマジェスティも、最内から少し外に出してもなお、マカヒキ、サトノダイヤモンドの背後に位置付けたのは大きな意味がありました。

2コーナーを回り切る少し手前の前半4F地点。サトノダイヤモンドを筆頭に参考ディープインパクトを含めると0.1秒ずつ遅れて通過。これで馬群の後方に陣取っているのではなく、まさに馬群の中団。これ以上ない前半の入りだったわけです。

一方、発馬からガッツリと抑え込まれていたリオンディーズの前半のラップは相当酷いです。前半4F地点では参考ディープインパクトに遅れること0.8秒。ディープインパクト産駒のお株を奪うつもりだったようです。ちなみにリオンディーズの前後半は75.7-68.8。1F平均1.15秒もの落差。これがどれだけ遅いかというと、昨年の天皇賞・春で最後方をゆっくり走っていたゴールドシップが1周目ゴール板手前にある前半1200m地点を、キズナと並んで通過したラップが75.8。来年の天皇賞・春でゴールドシップの再現をする練習だったかのよう。何というか、さすがのミルコ・デムーロ騎手と言えど、弥生賞からこの日本ダービーでゲートインするまでの間、次々と負の連鎖が起こっていたのでしょう。馬を抑え込むことしか選択肢がない状態にまで追い込まれていたのかもしれませんが、幾らなんでもこれではまるでレースになりません。2F走っただけで勝負から圏外というのはいかがなものかと思います。皐月賞も含め、ミルコ・デムーロ騎手の騎乗ぶりは酷かったの一言に尽きますが、今月13日(月)発売の【サラブレ 2016年7月号】では、一転、ミルコ・デムーロ騎手大絶賛の記事を書いておりますのでお楽しみに。また、発馬で大きく煽ってしまい、しばらくアブミを気にしながら走ったマウントロブソンや、正面スタンドに向かって遊覧走行していたブレイズスマッシュは仕方がないにしても、このリオンディーズより後ろにもう1頭いたのには相当驚きました。

それでは完歩ピッチのグラフも載せておきましょう。リオンディーズのある意味、異次元走行の様子がわかるかと思います。



残り200mに差し掛かる辺りで、エアスピネルとサトノダイヤモンドとの1頭分の隙間にマカヒキが飛び込んだ際、サトノダイヤモンドが外へヨレて行ったのですが、サトノダイヤモンドのラスト1Fの完歩ピッチを見ると、最終的な8cmの差からすれば、このヨレてしまったのが大きな影を落としたと言えなくもないかと思います。要はラスト100m余りで立て直す余力が少し残っていたようにも受け取れます。ただ、勝ったマカヒキも開いた進路がなかった分、なかなかピッチを上げられなかったという部分も伺えます。早い段階で前が開いていれば、もうワンテンポ早くサトノダイヤモンドを捉えていたと考えられます。しかし、ラスト100m、厳密に言えばラスト50mで脚が上がってしまったのもまた事実。この2頭の差はないに等しく、10回戦えば5勝5敗になるのではないかと思えてしまいます。

上記のグラフでは判断できませんが、ディーマジェスティもサトノダイヤモンドがヨレた影響を受けていました。手前を替えてから局所的ではありましたが、再びグンとピッチを上げるシーンがありました。この次元のラストスパート勝負は、マカヒキ、サトノダイヤモンドには絶好の舞台となりましたが、ディーマジェスティにとっては自分の土俵外の戦い。ピッチ走法ではあるものの、スタートダッシュ等でもわかるように短期的な瞬発力勝負は合う条件とは決して言えないでしょう。非常に負けて強しと思わせる内容でした。


さて、今年の3歳牡馬路線は高レベルの戦いだったと思います。役者がきっちり揃っていたのは間違いありません。今回、期待されたほどの勝ちタイムではなかったのは事実ですが、それは前述の通り序盤が極めて遅かったのが要因。ある意味ロングスパートとも言える後半の速さが、レベルの高さを物語っているのは確かです。しかし、「怪物クラスが3頭いた」みたいな話には、私はならないと思います。個別ラップでもわかりますが、こんな表を見れば一目瞭然でしょう。

馬名残2400残2200残2000残1800残1600残1400残1200残1000残800残600残400残200
マカヒキ144.0 130.6 118.7 106.4 94.0 81.8 69.4 56.9 44.9 33.3 22.1 11.2
サトノダイヤモンド144.0 130.8 118.8 106.5 94.1 81.9 69.5 57.0 45.2 33.4 22.2 11.2
ディーマジェスティ144.1 130.6 118.6 106.4 94.0 81.7 69.4 56.9 45.0 33.3 22.1 11.2
エアスピネル144.4 131.3 119.5 107.4 95.3 83.0 70.4 57.6 45.8 34.0 22.8 11.7
リオンディーズ144.5 130.8 118.5 106.1 93.6 81.3 68.8 56.6 44.6 33.2 22.2 11.4
ディープインパクト143.3 129.5 117.7 105.5 93.1 81.2 68.8 56.8 44.9 33.4 22.2 11.2


1F毎のラップを含めて、マカヒキの後半1000mはディープインパクトと酷似しています。またリオンディーズは後半600~1000mでディープインパクトを上回っており、後半1200mでも同タイムです。しかし、更に残り距離が増えていくと・・・。上位3頭の父の壁はまだまだ相当高いんですね。


最後にもう一つグラフを貼っておきます。上記の走行データから割り出せる、1F毎の平均ストライド長です。



1完歩は何メートルだったかを表す値となります。コーナー区間での距離ロスは考慮していませんが、各馬の走りの質の違いをイメージできるのではないでしょうか。

今回はこのあたりで。
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