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Channel: 上がり3Fのラップタイム検証
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2014 宝塚記念 回顧

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ゴールドシップが2連覇を果たした今年の宝塚記念を振り返ってみましょう。まずは全頭個別ラップをどうぞ。

着順馬番馬名タイム20040060080010001200前6F14001600180020002200後5F2100Goal
1着11ゴールドシップ2:13.914.0 11.3 12.2 12.6 12.5 12.2 74.8 12.2 11.7 11.7 11.5 12.0 59.1 5.80 6.20
2着5カレンミロティック2:14.413.3 11.5 12.4 12.8 12.6 12.0 74.6 12.2 11.8 11.7 11.7 12.4 59.8 6.00 6.40
3着3ヴィルシーナ2:14.613.0 11.4 12.3 12.9 12.8 12.0 74.4 12.1 11.8 11.8 11.8 12.7 60.2 6.10 6.60
4着4ヒットザターゲット2:14.613.9 12.1 12.5 12.5 12.4 12.0 75.4 12.1 11.8 11.5 11.7 12.1 59.2 5.85 6.25
5着2デニムアンドルビー2:14.613.7 11.7 12.5 12.6 12.3 12.0 74.8 12.2 11.7 11.6 11.8 12.5 59.8 6.00 6.50
6着12フェイムゲーム2:14.713.2 11.3 12.3 12.9 12.8 12.0 74.5 12.1 11.8 11.7 11.8 12.8 60.2 6.20 6.60
7着7ウインバリアシオン2:14.813.7 11.8 12.5 12.7 12.5 12.1 75.3 12.2 11.7 11.6 11.7 12.3 59.5 6.00 6.30
8着1ホッコーブレーヴ2:14.813.8 11.9 12.5 12.6 12.3 12.1 75.2 12.1 11.7 11.7 11.5 12.6 59.6 6.20 6.40
9着6ジェンティルドンナ2:15.113.3 11.8 12.5 12.7 12.5 12.2 75.0 12.2 11.7 11.7 11.8 12.7 60.1 6.00 6.70
10着8トーセンジョーダン2:15.313.6 11.9 12.8 12.7 12.4 12.0 75.4 12.1 11.7 11.5 11.9 12.7 59.9 6.10 6.60
11着10メイショウマンボ2:15.413.5 11.8 12.6 12.7 12.4 12.1 75.1 12.2 11.7 11.7 11.7 13.0 60.3 6.30 6.70
12着9ヴェルデグリーン2:16.113.9 11.9 12.6 12.7 12.5 12.0 75.6 12.2 11.7 11.5 11.9 13.2 60.5 6.40 6.80


Mahmoud計測RL2:13.913.0 11.4 12.3 12.9 12.8 12.0 74.4 12.1 11.8 11.8 11.8 12.0 59.5



公式RL2:13.912.9 11.6 11.9 13.2 12.8 12.1 74.5 12.0 11.8 11.7 11.8 12.1 59.4



今年もゴールドシップが勝ったわけですから、昨年と比較するといろいろわかってくるかと思います。その昨年はシルポートの玉砕的な逃げがありましたが大勢に影響はなかったので、残り1Fまでは実質的な先頭馬ダノンバラードのラップ、ラスト1Fはゴールドシップのラップを用い、それをレースラップと見なして比べてみましょう。

●2013
13.0 - 11.5 - 11.9 - 12.4 - 12.3 - 12.4 - 12.4 - 11.7 - 11.5 - 11.8 - 12.3

●2014
13.0 - 11.4 - 12.3 - 12.9 - 12.8 - 12.0 - 12.1 - 11.8 - 11.8 - 11.8 - 12.0

昨年と今年の違いですが、まず目に付くのが前半3~5F目。今年はこの3F区間が1.4秒遅い形でした。そして次の2F区間が今年は0.7秒速くなっています。こんなレースラップだと後方勢はバックストレッチでゆっくりと差を詰めるスキがほとんどないわけで、結果通り先行勢が圧倒的有利な流れとなったようです。逃げたヴィルシーナが3着に粘っているように、6Fのロングスパート的なレースとはいえ、その後半のペースは決して上げ過ぎていない絶妙なペース配分だったかもしれません。このペースは鞍上が意図した物なのか、掛かり気味だった2番手フェイムゲームの影響からなのかはわかりませんが。

3強と目された馬では、ウインバリアシオンはこんなペースでやられた1頭と言えるでしょうか。緩めた前半3~5F目区間を1F分、後ろにズレるような展開なら、もうちょっと終いのキレが出たんじゃないかと思いますが、いずれにせよこの位置取りではノーチャンスだったようです。ジェンティルドンナは馬場状態に対する適性度がモロに出たのは確かですが、残り4F目からスピードアップすれば前エントリーで書いたように苦戦必至となる形。ウオッカもそうだったんですが、この手の牝馬が上がり4F戦をガチで挑むのはなかなか難しいんですね。折角1周目スタンド前ではカレンミロティックの真後ろにいましたから、そのままレースを進めた方がもうちょっとマシな結果だったように思います。ただ、それだと岩田騎手を降ろした事と矛盾しますから、まあやむを得ないレースの進め方だったとも言えるでしょうか。コース性質が違いますから単純な話とはなりませんが、自身が勝った2012ジャパンカップやウオッカが勝った2009ジャパンカップは、この牝馬たちの特性を生かした勝因がしっかりあったものと思われます。


さて、1年ぶりのG1制覇となったゴールドシップ。昨年のラップと並べて比較してみましょう。

●2013
13.2 - 11.4 - 12.4 - 12.5 - 12.3 - 12.2 - 12.3 - 11.7 - 11.4 - 11.5 - 12.3

●2014
14.0 - 11.3 - 12.2 - 12.6 - 12.5 - 12.2 - 12.2 - 11.7 - 11.7 - 11.5 - 12.0

テンの1Fが今年は0.8秒遅いのですが、勝ちタイムは0.7秒落ち。前半2F目から非常に良く似たラップを刻んでいます。大枠的には昨年と同じように勝ったな、と見ていいかと思います。しかし、細かい部分では鞍上の競馬スタイルによる相違点がくっきりと浮かび上がっていました。

ゴールドシップの個別ラップ表は更新してあります。ご自由にダウンロードしてください。

http://ux.getuploader.com/Mahmoud1933/download/35/Gold+Ship+Lap+20140629.xlsx

まずは前半4F区間を見てみましょう。ゴールドシップの完歩ピッチの推移はまるで違う形です。前半100~800m区間における100m毎の平均完歩ピッチを抜き出してみましょう(単位は秒/1完歩)。

●2013
0.418 - 0.425 - 0.440 - 0.449 - 0.451 - 0.455 - 0.462

●2014
0.439 - 0.434 - 0.428 - 0.439 - 0.446 - 0.452 - 0.455

鞍上のアクションの違いがデータにもしっかりと現れています。昨年の100~200m区間はゴールドシップ自身キャリアハイとなる猛ピッチでダッシュさせていました。ところが今年はラップタイムでもわかるように鞍上は急かせてダッシュさせようとはしていません。詰まる所、どちらの切り口でもテンの2F目はかなりの高スピードに上がっているわけで、ゴールドシップをどう走らせようかというスタンスの違いが垣間見えて非常におもしろいデータとなりました。

また、ラストスパート時も違いが見られます。後半1000mの完歩ピッチも見て行きましょう。

●2013
0.452 - 0.455 - 0.447 - 0.436 - 0.428 - 0.434 - 0.437 - 0.439 - 0.447 - 0.465

●2014
0.457 - 0.455 - 0.447 - 0.448 - 0.449 - 0.445 - 0.439 - 0.436 - 0.434 - 0.447

昨年は残り700m辺りからスピードを上げ残り600mから一気に勝負を決めに掛かっています。一方、今年は相手なりに4コーナーまで併せ打って、最後の直線でスパートを掛けるという、実にスタンダードなスパートとなっています。ゴールドシップのレースを今回初めて見た人なら、「無尽蔵なスタミナ」とか「超ロングスパート戦法」という、世間一般の見方とは違うイメージを持つのではないでしょうか。


私は菊花賞のレースぶりから古代的なステイヤー要素を感じたものの、それなら皐月賞での末脚との調和性がとれない感じがしていて、それが2013天皇賞・春でのレース内容で何となく裏付けられた感があったのですが、そもそも論として溜めればグンと伸びるのは札幌2歳Sでしっかりと見せていたんですよね。また、「気分屋で走りの質が変わってくる」というイメージを私は全く持っていません。ちなみにゴールドシップ全競走のスピード指数表を貼っておきましょう。



菊花賞以降、2013JCは論外として2014天皇賞・春以外は、上がりが速くとも遅くとも、指数自体は極めて安定しています。

この後は凱旋門賞に挑戦するかもしれませんし、それはそれで非常に楽しみなのですが、ゴールドシップの生産者の「府中のG1を取りたい」というコメントには個人的に賛同したいですね。その術はゼロじゃないんやないかと思います。

今回はこのあたりで。

※2014/07/01 0:37追記

先日、大変おもしろいblogを発見しました。そのblogの作者さんは天才ですよ!

私のblogもネタとして使って頂いているようです。是非ご覧になってください!

馬はどこまで限界を突き破れるのか!?
http://netathoroughbred.blog.fc2.com/

マルゼンスキーの朝日杯3歳S

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先日、新橋のGate J.に3回ほど行ってきました。それぞれ30分ちょっとしか居られませんでしたが、昔の競馬四季報でサクライワイとか往年の名馬のラップを、30数年ぶりに眺めてきました。さすがに記憶違いしている物もあり、幾つかレースラップをメモってきました。

というわけで、伝説となっているマルゼンスキーが勝った1976朝日杯3歳Sを紹介してみましょう。

勝ちタイム:1:34.4

公式レースラップ:12.0 - 11.0 - 11.1 - 11.3 - 11.7 - 12.1 - 11.9 - 13.3

私がこのレースラップを見たのは実際のレースの3年後くらいだったでしょうか。さすがに驚きましたね。当時の芝1400mの日本レコードは、この朝日杯と同日のCBC賞でマークされた1:21.8。そして公式ラップ上におけるマルゼンスキーの1400m通過タイムは1:21.1。日本レコードより0.7秒も速いわけです。そもそも、芝1400mで日本レコードを叩き出したのは、日本の芝2000m戦で初めて2分の壁を破った快速シルバーランドでした。シルバーランドはスピード競馬の代名詞的存在だったわけで、その自身のレコードも大変価値あるタイムだったと思われます。この逸話だけでも、マルゼンスキーの激走ぶりがイメージできるんじゃないでしょうか。

では、いわゆるスピード指数的な考察ができそうなデータも揃えてみましょう。この朝日杯3歳Sが行われた週の中山競馬場芝レースの1~3着馬の走破タイムがこちら(年齢は旧表記)。

日付Rレース条件距離1着馬2着馬3着馬L2F目L1F目
1976/12/112R3歳未勝利1200m1:12.21:13.31:13.611.9 13.5
3R3歳未勝利1600m1:39.11:39.31:39.312.0 13.4
4R3歳未勝利1200m1:11.31:11.41:12.811.5 13.3
5R新馬1200m1:12.21:12.81:12.911.9 13.6
6R4歳以上300万1800m1:51.61:51.61:51.612.4 13.5
7R4歳以上600万1800m1:50.41:50.51:50.512.5 13.8
9Rオープン1600m1:35.81:35.91:36.211.6 13.0
10R特別4歳以上900万2000m2:02.02:02.02:03.012.0 13.0
11R特別3歳300万1600m1:36.81:37.01:37.012.0 13.3
12R4歳以上300万1600m1:37.51:37.81:38.012.1 13.9
1976/12/122R3歳未勝利1200m1:11.21:12.21:12.311.6 12.8
3R3歳未勝利1600m1:36.21:37.41:37.711.9 13.3
5R新馬1200m1:12.01:12.31:12.412.4 13.5
6R4歳以上300万1800m1:51.51:51.61:51.712.5 13.0
7R特別3歳300万1600m1:36.81:36.81:37.212.3 13.5
8R4歳以上600万2000m2:04.22:04.32:04.311.8 13.2
9R朝日杯3歳S1600m1:34.41:36.61:37.211.9 13.3
10R特別4歳以上牝600万1800m1:51.01:51.11:51.111.8 13.0
11R4歳以上900万1600m1:36.01:36.11:36.111.9 13.2


幾つか補足的な話を書いておきましょう。

まずは賞金条件ですが、現行のルールとは少し異なっています。4歳以上300万という表記は、4歳300万下、5歳600万下、6歳以上900万下となります。したがって高年齢馬は条件馬でも勝ち鞍を多く挙げていた馬がいました。例えばマルゼンスキーの2歳上となるスリーパレード。後年、岩手競馬に転出してから大活躍しましたが、中央在籍時は条件戦のみで計11勝挙げていたと思います。

この週のレースでも幾つかありますが、当時は芝戦でも大きく差を付けて勝つシーンがたびたび見られました。各馬の能力差は現代よりも開いていた傾向があったと思われます。参考までに各レースのラスト2Fを書いておきましたが、単なる上がり勝負になるレースはほとんど見かけなかった側面もあります。

どのレースもラスト2F目~1F目の落差が大きいですが、これはおそらくラップ計測のクセが出て、実際にはこれほど落差は大きくなかったように想像できます。当時の他のレースラップを見ると、後傾ラップとなるレースが今より遥かに数多く存在していたという事実もあります。また、当時はテンの1F目が今よりも軒並み速く、タイム計測開始地点までの助走距離が今よりも長かったんじゃないでしょうか。

朝日杯3歳Sの前日に平場オープンを勝ったのがボールドシンボリ。この馬は前年デビューから4連勝で朝日杯3歳Sを制した馬でもあります。

というわけで、ご覧の皆さんはマルゼンスキーがどんなレベルの走りだったのか、各自思いを巡らせてみてはいかがでしょうか。

ついでにマルゼンスキーが出走した各レースの公式レースラップも紹介しておきましょう。残念ながら5連勝目となる、古馬になって初のレースはデータを見付けられませんでしたが。

日付レース名競馬場距離勝ちタイム1F2F3F4F5F6F7F8F9F
1976/10/09新馬中山芝1200m1:11.012.0 10.9 11.4 12.0 11.7 13.0


1976/10/30いちょう特別中山芝1200m1:10.511.9 11.0 11.3 11.8 11.3 13.2


1976/11/21府中3歳S東京芝1600m1:37.912.6 11.5 12.1 12.0 12.4 12.9 12.0 12.4
1976/12/12朝日杯3歳S中山芝1600m1:34.412.0 11.0 11.1 11.3 11.7 12.1 11.9 13.3
1977/01/22オープン中京芝1600m1:36.4








1977/05/07オープン東京芝1600m1:36.312.3 11.0 11.2 11.8 12.1 12.0 12.8 13.1
1977/06/26日本短波賞中山芝1800m1:51.412.5 11.7 12.3 12.0 12.6 13.0 12.6 12.1 12.6
1977/07/24短距離S札幌ダ1200m1:10.111.8 10.3 11.1 11.6 12.2 13.1




マルゼンスキーにとってもう一つの伝説的レースが日本短波賞。このレースラップをイメージしながらレース映像を見ると、どこで何が起きたのか、良くわかるかと思います。

最後にもう少し昔のレースラップを紹介しておきましょう。冒頭に名を挙げたサクライワイは芝1200mで1:08.4という日本レコードホルダーでしたが、デビュー3戦目で勝った函館3歳Sの勝ちタイムは1:21.7。とても芝1200m戦の勝ちタイムとは思えないモノですが、この時のレースラップがこちら。

12.5 - 12.0 - 13.0 - 14.2 - 14.8 - 15.2

昨年の函館開催後半では超極悪馬場が話題になりました。特に8/31(土)の最終レース3歳上1000万の芝2000m特別戦は勝ちタイムが2:15.2、上がり3Fが45.0という、超低速レースでしたね。その超極悪馬場の比較例として、このサクライワイの函館3歳Sが話題に出たことがあったと思います。なので、この当時1973年の函館開催を調べてみましたら、他にも恐るべき超低速レースがありました。

■芝戦で公式ラスト1Fが最も遅かったと思われるレース

1973/09/09 4歳未勝利 芝1800m 勝ち馬シリーズターフ

勝ちタイム:2:07.7
上がり3F:46.2
レースラップ:13.5 - 12.4 - 13.6 - 13.9 - 13.8 - 14.3 - 15.0 - 15.0 - 16.2


■芝戦で1Fの平均タイム、および上がり3Fが最も遅かったと思われるレース

1973/09/15 4歳未勝利 芝1700m 勝ち馬ブレイブジョイ

勝ちタイム:2:00.8
上がり3F:47.2
レースラップ:7.1 - 11.4 - 13.2 - 13.7 - 13.9 - 14.4 - 15.5 - 15.8 - 15.8


どちらも当時のレベル的に疑問符が付く未勝利戦ではありますが、勝ちタイムと施行距離がミスマッチしているような錯覚が起こります。それにしても、ブレイブジョイという馬が勝ったレースのテンは、こんな馬場にしてはかなり速いのがおもしろいところでもあります。

今回はこのあたりで。

サラブレ 2014年9月号

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お知らせです。

2014年08月12日発売となる競馬月刊誌『サラブレ 2014年9月号』(税込900円)にて、血統研究家の望田潤さんと私による、今年の上半期のG1おさらい対談が掲載されることになりました。まあ、おさらいといっても、私の希望で3頭に集中した内容になっていますが。

望田潤さんのblogはこちら。

『血は水よりも濃し』
http://blog.goo.ne.jp/nas-quillo

そして内容はシンプルですが、エピファネイアとビワハヤヒデの比較論も執筆しております。是非ご覧くださいませ。

また、巻末にアンケートはがきが付いております。ご意見、ご感想、ご質問等、お寄せいただければ幸いです。

http://www.enterbrain.co.jp/product/magazine/sarabre/14002609

2014 札幌記念 回顧

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ハープスター、ゴールドシップ2頭の白熱した一騎打ちとなった、今年の札幌記念を振り返ってみましょう。では上位8頭とレースを先導したトウケイヘイローの個別ラップをご覧ください。

着順馬番馬名タイム2004006008001000前5F12001400160018002000後5F1900Goal
1着8ハープスター1:59.113.2 11.5 11.7 11.8 11.9 60.1 11.7 11.7 11.9 11.9 11.8 59.0 5.85 5.95
2着5ゴールドシップ1:59.213.8 11.6 11.7 11.7 11.8 60.6 11.6 11.5 11.8 11.9 11.8 58.6 5.80 6.00
3着10ホエールキャプチャ2:00.013.0 11.4 11.4 11.9 11.9 59.6 11.9 12.1 12.2 12.0 12.2 60.4 6.00 6.20
4着11ラブイズブーシェ2:00.113.1 11.5 11.5 11.7 11.8 59.6 11.9 12.0 12.1 12.2 12.3 60.5 6.10 6.20
5着7エアソミュール2:00.113.0 11.4 11.4 11.8 11.7 59.3 12.0 12.1 12.2 12.2 12.3 60.8 6.10 6.20
6着3タマモベストプレイ2:00.313.1 11.2 11.3 11.7 11.8 59.1 11.9 12.2 12.2 12.5 12.4 61.2 6.10 6.30
7着2トウカイパラダイス2:00.512.9 11.2 11.4 11.8 11.7 59.0 12.0 12.3 12.0 12.4 12.8 61.5 6.20 6.60
8着1ロゴタイプ2:00.712.8 11.1 11.4 11.7 11.8 58.8 12.0 12.2 12.3 12.4 13.0 61.9 6.30 6.70
11着6トウケイヘイロー2:01.712.6 11.0 11.3 11.6 11.9 58.4 12.1 12.3 12.4 12.6 13.9 63.3 6.50 7.40


Mahmoud計測RL1:59.112.6 11.0 11.3 11.6 11.9 58.4 12.1 12.3 12.4 12.1 11.8 60.7



公式RL1:59.112.6 10.7 11.6 11.6 11.9 58.4 12.1 12.3 12.3 12.0 12.0 60.7



上位2頭はラスト2F目よりラスト1F目が速くなっているので違和感があるかもしれません。というわけで個別ラップについて少々補足しておきます。

この札幌競馬場芝Cコースでは最後の直線が269.1m。つまりラスト2F目は約130mほどがコーナー区間となります。単純な言い方をすれば同じ力でラスト2Fを走り続けた際、ALL直線となるラスト1F区間のラップの方が速くなって当然です。しかも、ハープスター、ゴールドシップの両頭は4コーナーでかなり外目を通っており、距離ロスが発生しているのです。完歩数で言えばラスト2F目の方が1完歩弱、余計にかかっています。ラスト2F区間が後傾ラップになっているとはいえ、馬自身のスピードも後傾になっているわけではありません。

そもそも各馬が刻んだラップを1F毎、しかも10分の1秒単位で値としている以上、細かなスピードの増減など判断するのは難しいのです。この程度のラップの値そのものを独り歩きさせて考えるのはよろしくないと思います。今回はたまたま、ラスト4F区間でハープスター、ゴールドシップは全て1F11秒台、他馬は全て12秒オーバーとなっていてクッキリと線引きしやすい結果になっていますが、これが例えば0.2秒ずつ遅いとか速いとかになれば、そのクッキリさはぼやけてきます。

また、上がり3Fは公式の値とは異なっています。上位2頭の公式上がり3Fを基に1F毎のラップを計測した際、ラスト3~2F区間のラップがやけに速くなってしまったんですね。この区間は前述したラスト2F目と同様にコーナーで外目を走っていますから何かおかしいと思い、レース映像から残り3F通過時も計測してみました。

次に各馬の全体的なラップ推移についての考え方にも触れておきましょう。この2000m戦なら中間点を境に前傾か後傾かと判断することが多いと思いますし、私も安易にそんな表現をしてしまいます。しかし、テンの1F目というのはスタートダッシュ途上にあるわけで、かならず遅いラップとなるのが当然であり、その遅さを考慮して全体的なラップバランスを見るのが本筋だと思うのです。ゴールドシップは前後半が60.6-58.6という2秒の落差があり、レースの見た目通り「ポツン最後方はいかがなものか」と感じるのはある意味当然でもありますが、テンの2F目からゴールまでの1800m区間では1F平均11.71で走っているわけで、各1F毎のラップを見ればテンの2F目からはゆったり走らせてなどいないんですね。確かにテンの1Fの遅さは賛否両論あっていいんですが、鞍上はずっとのんびり構えてなどいなかったと言いたいですね。


では個別ラップを掲載した馬たちの、前半100mからの100m毎の完歩ピッチをグラフでご覧いただきながら、勝者ハープスターからいろいろ述べて行きましょう。



ハープスターは新潟2歳S、桜花賞、オークスの3レースではテンの1Fがいずれも13.5程度でしたが今回は13.2程度。しかもかなりピッチを速めてスタートダッシュしています。結局位置取りは後方2番手だったものの、過去走とは違いスタート時点から後方ありきではないレースをする姿勢が伺えました。その結果、馬場差や斤量差を抜きにして話しますが前半3Fおよび5Fは桜花賞より速いラップで通過していきました。

ハープスターのその前半1000mは60.1。阪神JFでの60.3を上回るキャリアハイであり、スピードの絶対値的には0.2秒上回ったに過ぎませんが、施行距離の差を考えると追走力という意味においてはかなりの差があります。阪神芝1600mと札幌芝2000mを比較した場合、前者の方が1Fに付き0.2秒程度速いペースとなるのが標準的です。今回のハープスターは2F目からずっと1F11秒台で追走しており、馬場差も考慮すると今年の桜花賞では前半1000mを58秒前半で通過したくらいの換算値になるでしょう。単騎2番手を進んでいたようなイメージです。それほど以前よりガンガン追走した形になってもしっかり結果を出したわけですから、これは突然先行策を取って2着に踏ん張った2009有馬記念でのブエナビスタと同じ構図なんですね。もちろん、このようなペースでレースを進める適性力の高さがあったからこそではあるんですが、根本的に強い馬という端的な表現が似つかわしいんじゃないかと思います。

また、レース後半のスパートについても見るべき点があります。3コーナーからゴールドシップとともに外目を通って一気に捲っていったように見えましたが、完歩ピッチの推移からもわかるように残り2Fまではスパートの前段階といった走りだったんですね。ビュンと一旦スピードを上げてからは再度ピッチを落とし、鞍上の意のままにスピードコントロールができています。その分、残り2Fからの全開スパートを掛ける余力が十分あったとも言えるでしょう。このラスト4Fのスパートの様は、少々大げさな比喩かもしれませんが、2012有馬記念でのゴールドシップとイメージがダブります。

残り300~200m区間でピッチを少し落としているのは、4コーナーを回り切らない内に早々と手前を替えてしまった影響からでしょう。この地点ではスピードが少し上がり切らなかったので更に外のゴールドシップに被されそうになりましたが、真っ直ぐ走る状態になってからは再度きっちりピッチを上げて行きました。レース映像を見た段階ではラスト1Fが公式ラップ通りに12秒掛かっているだろうな、力を振り絞ってゴールインしたな、と感じていたのですが、データを採ると意外に余裕ある走りとなっていて、「ハープスター、やるなお前!」という感想を持ちました。現時点でも、もう少し上のレベルの走りとなるような、力を振り絞る余地があるんやないかと思います。

さて、来る凱旋門賞の展望ですが、それなりの厳しいペースを経た上でのスパート勝負となった経験は、良い方向に繋がるのは間違いのないところでしょう。問題は後半スパートを掛けるところまでの道中をいかに走るかとなるでしょうね。今回のレースで見せたように、やはりペースが緩まないマイル~中距離戦が合うのは確かなところで、それよりも必ずペースが落ち込むであろう流れをどう対処していくかが大きなポイントになりそうです。また、馬込みでの追走の経験のなさも影響してくるでしょう。最後方からレースを進めればまずまずリラックスして走れるでしょうが、多頭数だと先頭までの差が大き過ぎるわけで、どう戦略を立てて行くんでしょうか。まあ、理想的な事を言えば多くても10頭ちょっとという少頭数のメンバーになる事、スタートからほぼ一定のペースで流れる事、そしてもちろん乾いた馬場。そんな条件が揃えば勝つチャンスは十分あるんやないかと思います。


次はゴールドシップについて行きましょう。スタート後の直線部分があまり長くない事、そして5番枠という内目の枠順をどう対処していくのか注目していましたが、スタートダッシュはそれなりに頑張っていたと思います。しかし置かれ気味になり前方馬群に割って入るスペースなど当然なく、前走のような気合を付けて押し上げるシーンがないままポツンと最後方。こうなると、この鞍上お得意のイーブンペースでの追走劇となりました。中盤でペースが緩めば馬群に追い付けるはずだったでしょうが、後方2番手のハープスターでさえこんなラップを刻めばスタートで後手を踏んだ分の差を縮める隙はありませんでした。

ちょうど中間点を通過する辺りでハープスター鞍上の川田騎手が後ろを振り返った瞬間、ゴールドシップ鞍上の横山典弘騎手が気合を付けながら押し上げ開始したのは非常に見どころがあったシーンでしたね。そこから300mほど掛けてきっちりハープスターの背後まで迫っていきました。鞍上の手は残り3F辺りから激しく動いていましたが、4コーナーを回り切る辺りで僅かながらもピッチを上げて正真正銘のラストスパートに移っていったところはさすがゴールドシップ。ただ、上手にスパートをコントロールしていたハープスターとは違い、ラスト100mは少し脚が上がり気味になったようです。それでも、なかなかの中距離適性を見せた内容だったと思います。

ゴールドシップの過去走は、中盤辺りでグイグイとペースを上げて前傾的なラップになるか、あるいは上がり3Fの比重の高いレースになるかの、両極端なレースばかりでした。しかし今回は前述のように前後半のラップの落差はあるものの、初めてと言っていいくらいのタイムトライアル的なレースだったと思います。実際、完歩ピッチの上げ下げも実に少なくなっています。そのため、走破タイムの質、即ちスピード指数的な値はキャリアハイとなる内容だったと分析しました。このような走りをすれば例年並みの天皇賞・秋なら十分好走できるレベルだったんじゃないでしょうか。

まあ今回は、脚を溜められるシーンが全くなかったわけで、もしゴールドシップが無尽蔵的な脚を使えるのであれば持って来いの展開だったとも言えます。しかしハープスターが強かったにしても捉えきれなかったのもまた事実。やはりセオリー通り、どこかで末脚を繰り出すための”タメ”が必要なんですね。レースの流れの恩恵が必要となるでしょうが、今年の阪神大賞典や宝塚記念のように好位置を取って脚を溜めてスパートする、という王道的競馬がこの馬には望ましいと思います。

次走凱旋門賞は、さすがに今回のような流れにはならないでしょうから、何とか好位置を取り切ってレースを進めて欲しいですね。そして昨年のような一気に急変するスパート戦とはならないで欲しいところです。後ろから迫りくる馬に併せ打ってスパートを掛けられるような展開になれば、良い結果となるんじゃないでしょうか。2012年にオルフェーヴルを結果的に差し返したSolemiaのようなレースができればと思います。


毎日王冠や京都大賞典とは違い、この札幌記念はG1と同じ定量戦という事で、能力が抜けた2頭が後続を突き放す競馬となりました。ガチンコ勝負と言えるようなレースとなったので、これも当然と言える結果だったと思います。仮に斤量1kg差で2馬身影響があるとしても、1Fで見れば100分の2、3秒とかホンの僅かな差でしかありませんが、それが積み重なっていけば影響が出ます。斤量2kgの差は結構大きいものだと思います。

また、斤量57kgだの59kgだのと値そのものが独り歩きして語られることが多いのですが、レースよりも遥かに長い時間走っている調教での斤量はかなりまちまちなわけで、そもそも論として「背負い慣れた斤量」というのは存在しないと私は思うんですよね。この2頭は凱旋門賞でプラス2.5kgとなりますが、その差5kgというのは変わりません。ゴールドシップは59.5kgですから現代の日本競馬的に見れば酷量っぽく感じてしまいますが、それはあくまでも人間側が都合よく考えたモノサシでの話。もしゴールドシップが「今日は背中がちょっと重いなあ」と感じれば、ハープスターも同じように感じるんじゃないでしょうか。ということで、年齢的な伸びしろという点においてはハープスター有利でしょうが、2400m戦という部分ではゴールドシップ有利だと思いますので、凱旋門賞においても今回同様の2頭が噛み合った勝負となる可能性が十分あると思います。好勝負を期待して見守りましょう。


定量戦と言う意味では、皐月賞馬ロゴタイプにはもう少し頑張って欲しかったところです。気分よくスイスイ先行しているように見えましたが、1コーナー辺りではガッツリ掛かっていたようですし、終始暴走気味の走りに伺えました。追われてからも空踏みしているかのような、地面を蹴る力がほとんどなかったようです。どうもこの馬、鞍が合う合わない騎手というのが露骨に出る部分があったりもするんでしょう。そしてもう1頭のG1馬ホエールキャプチャは、上位2頭とは離されたものの3着と貫禄を見せました。マイルG1馬ですが、道中ゆったりしたリズムで追走する術があるからこそ、中距離でも良績を上げている要因かと思います。これはスプリント路線で活躍した祖母や全兄を持つタマモベストプレイも同様でしょう。2000m超のレースでもそこそこ戦えている秘訣はそんな走りからくるものかと思われます。道中ゆったりしたピッチで走る馬は、距離延長に対応してくるケースが多いと考えておいて損はないでしょう。

今回はこのあたりで。

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サラブレ 2014年10月号

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本日9/13(土)発売のサラブレ2014年10月号にて、「秋前半主要コース ポイント解説&狙い馬」という特集で著名なお二方とともにコース特性や狙い馬を取り上げています。毎度おなじみの望田潤さんは当然の事、鈴木由希子さんの解説も必見です。是非ご覧くださいませ。

http://www.enterbrain.co.jp/product/magazine/sarabre/14002610

2014 ヴェルメイユ賞 回顧

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昨年の凱旋門賞の覇者Treve。4歳となった今年の春シーズンは2戦とも敗戦を喫し、体調的に問題を抱えていたという報道もありました。今年の凱旋門賞へ向けて復権できるかが注目となったヴェルメイユ賞でしたが、今回も4着という残念な結果に終わりました。なかなか興味深い内容となったこのレースを少し掘り下げて行きましょう。

勝ちタイムは2:28.22。同日のニエル賞、フォワ賞を含めた2400m戦の中では最も遅い勝ちタイムでした。このロンシャン競馬場ではちょうどマイナス1秒すれば日本式の走破タイムになると思います。換算値は2:27.2程度となりますが、このレースの注目すべき点は後半の速さにあります。ラスト1000mは何と56.79という快ラップ。このラップタイムがどれくらい速いのか、JRAの芝1200~3600m戦と比較してみましょう(1986年以降・公式レースラップより抽出)。ちなみにラスト1000m最速ラップをマークしたレースは何かみなさんご存じですか?当然1200m戦が最も速いだろうとは想像付くと思いますが・・・。


ラスト1000m最速ラップは54.4。1997/04/20京都芝1200mシルクロードS(G3)でマークされました。勝ち馬は逃げ切ったエイシンバーリン。1F平均10.88となります。このように1F平均11秒を切る形となる後半1000m54秒台というレースは10レースのみしかありません。

第2位は2012/09/30中山芝1200mスプリンターズS(G1)での54.7。勝ち馬はロードカナロア。ロードカナロア自身は54.4で走っていました。

この芝1200m戦の抽出レース数は1万を超えます。したがってラスト1000mが同タイムのレースは幾つもあります。前述の通り54秒台の10レースの内訳は54.4が1レース、54.7が1レース、54.8が5レース、54.9が3レースとなっているのですが、この内訳が意味することは結構大きなポイントでして、常識的に考えれば第1位と第2位の差が0.3秒開いているのは驚異的な事となるんですね。つまり、エイシンバーリンは正真正銘の大爆走をしたと言えるわけで、例えロードカナロアであってもこの時のエイシンバーリンを捕まえるのはかなり骨を折ることになるだろうと思われます。今から17年も昔の出来事ですが、日本の競走馬が年々進化しているという考えに異議を唱える一つの論拠になるでしょう。

では、芝1200m戦以上の距離での最速ラスト1000mはどのレースなのかを書いておきましょう。

芝1400m : 55.9 2013/10/12 東京 白秋S 、2014/06/01 京都 安土城S

芝1600m : 56.5 2012/08/12 新潟 関屋記念、2014/04/27 京都 マイラーズC

芝1800m : 56.9 2008/10/12 東京 毎日王冠、2010/07/17 新潟 五頭連峰特別

芝2000m : 56.8 2002/08/18 新潟 阿賀野川特別

芝2200m : 57.6 2012/08/25 新潟 阿賀野川特別

芝2400m : 57.4 2001/10/07 京都 京都大賞典、2013/10/06 京都 京都大賞典

芝2500m : 57.9 2001/12/23 中山 有馬記念、2013/12/25 中山 有馬記念

芝2600m : 57.7 2013/11/09 福島 霊山特別

芝3000m : 57.8 1996/03/09 阪神 阪神大賞典

芝3200m : 57.4 2002/04/28 京都 天皇賞・春

芝3400m : 58.8 2012/02/18 東京 ダイヤモンドS

芝3600m : 58.6 2005/12/03 中山 ステイヤーズS


本題から外れますが、1986年以降、芝2000m以上の距離においてラスト1000mを57秒台で逃げ切って勝ったケースは延べ6例だと思います。その内の2例はタップダンスシチーなのですが、最速は57.3をマークしたグッドスピリッツ。サラブレ10月号で名を挙げておいた1頭です。勿論、馬場状態やペースを考慮して比較しなければなりませんが、素のタイムならこんな結果があります。参考までにトウショウボーイは57.6で1977宝塚記念を逃げ切っております・・・。


本題に戻りまして、今回のヴェルメイユ賞の56.79を上回っているのは何と芝1600m戦までなんですね。日本の馬場よりロンシャンの馬場の方が時計が掛かるというのが一般論だと思いますが、その定説を覆すような今回のヴェルメイユ賞だったのです。”ガラパゴス馬場”って何ぞや?というような話になるわけです。

最後方を進んだTreveは残り1000mの時点で先頭とは約1秒ほどの差。こんな超高速の上がりの競馬になれば勝つのは無理ゲーというモンでしょう。実際Treveは58.5kgを背負って56秒フラット程度で上がっていました。過去に目に付くところではショウナンマイティが55.7程度で走っていましたが、それは東京マイル戦での物。日本の2000m超のレースでは、こんなラップでラスト1000mを上がった馬はおそらく1頭もいません。日本競馬の常識を遥かに超えるレースでした。


ここで話を終わりにすると、いろんな意見が飛び交ってそれはもう楽しくなりそうなんですが、やはり常識を超えることはそうそうありません。前から感じ取っていたことでもあり、今回強烈なラスト1000mのラップタイムがマークされたのでとうとう書いてみます。それは・・・。


このロンシャン競馬場の外回りコースでの残り900~600m区間、このほとんどがフォルスストレートとなる区間ですが、おそらく15m程度、距離が短いはずです。


この区間は各馬の完歩数が必ず2完歩前後、少なくなってしまうんですね。ラスト1000m区間は90度回るだけですし、フォルスストレートの入り口までまだ下り坂が続くので、コースレイアウト的には日本の競馬場より速いラップタイムがマークされる土壌が確かにあるコースですが、ちょっと今回は各馬速過ぎました。0.7~0.9秒くらい加算すればいいんじゃないかと思います。Peintre Celebreが勝ったレース映像なんかと見比べると、その違いらしきものが感じられるでしょう。勿論、スタートからゴールまでの2400mも短いのかどうかはさすがにわかりませんが。

しかし、補正値で考えてもTreveは56秒台でラスト1000mをまとめているでしょう。上がり3Fも33.3程度で走っています。決して悪くはない走りだったと思いますが、上がり3Fの内訳はこんな感じ。

10.8 - 10.9 - 11.7 [ 5.7 - 6.0 ]

見た目通りラスト200mでやや失速気味となっていました。ラスト1000mにおける100m毎の完歩ピッチを昨年の凱旋門賞と比べるとこんな感じとなります。


0.434 - 0.438 - 0.442 - 0.432 - 0.413 - 0.394 - 0.388 - 0.395 - 0.401 - 0.410 ・・・ 2013凱旋門賞

0.424 - 0.426 - 0.418 - 0.418 - 0.386 - 0.376 - 0.383 - 0.391 - 0.398 - 0.409 ・・・ 2014ヴェルメイユ賞


昨年の凱旋門賞は「フォルスストレートで動いて勝つという常識外れのレース」みたいに論じられましたが、昨年の回顧でも書いたようにフォルスストレートで逆にペースが遅くなる流れだったので、当たり前のように走ったら先行馬を捉える形になっただけでした。それが今回のレースでは、昨年の凱旋門賞よりも早い段階で動いているんですね。しかも完歩ピッチ的にはラスト200mも落ち込み度は少ないのです。それでも勝つまでには至りませんでした。

残り500m辺りから徐々に追われ始め、鞍上のT.ジャルネ騎手の手が激しく動いたのは残り400m辺り。しかしその段階でTreveの完歩ピッチは既にMAXとなっていました。「さあ、これからだ!」と鞍上が感じた時には、もう末脚の余力は下降線を描こうとしている状態。これは今年の日本ダービーでのイスラボニータや、エピファネイアの今年2戦での様子とそっくりです。鞍上の意図よりも早く馬自身が全開スパートを掛けていたようです。そして最後まで脚をしっかり回転させていましたが、馬場を蹴る力は失われつつあったんじゃないでしょうか。ラスト200mで思いのほか失速したのはこんな理由だったかと思われます。ちなみにTreveを差し返すような形で3着入線したC.スミヨン騎手は、仕掛けを更に遅らせていましたね。

昨年仏オークスを驚異的なレコードで勝った時は、結構太い末脚が使えるのかなあと思ったんですが、昨年の凱旋門賞ではアッと驚くほどの瞬発力を見せ、そして今年の3戦を鑑みるに、日本馬ライクな感じというか、耐えながら伸びる欧州馬のイメージとは違うタイプでしょうね。また、昨年の凱旋門賞時ほどの力を発揮すれば、例え成長分がゼロとしても斤量増を跳ね返して何とかもうちょっと格好を付ける走りができたんじゃないかとも感じます。

レースの見た目の印象は確かに良くありませんでしたが、負けるべくして負けたレースでもあり、これを叩いて上昇する余地があるのであれば、まだ見限ってはいけない存在じゃないでしょうか。ただ、今年は日本馬にとって手の届かない世界に飛んで行くことはなさそうですね。

今回はこのあたりで。

2014 凱旋門賞 迫る

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今週半ばに引越したりして、ここのところ多忙を極めてまして、凱旋門賞のエントリーを何も起こせずじまいでした。申し訳ありません。というわけで凱旋門賞に挑む日本馬3頭の短評をちょろっと書いておきます。

★ゴールドシップ

2013ジャパンカップを除けば、着順はさておき、ほぼ全レース安定したパフォーマンスを発揮しているのが特徴。皐月賞からG1戦を10戦、G2戦を5戦と休みなく出走し続けているのは、限界領域まで踏み込まずにレースをしているからであろう。大一番凱旋門賞で、そんなリミッターが解かれる走りを期待したいところだ。しかし、フランス美女に両隣を囲まれ、違うリミッターが外れてしまいそうだが・・・。


★ハープスター

強靭な末脚を持つ同馬にとってロンシャン競馬場は最高の舞台。最後方という、いつもの定位置から思う存分伸び切ってくれ。ああ、勝つためには19頭も抜かなきゃイカンわけやね・・・。なんでこんなに頭数多いんやろ。ツカんなあ・・・。まあ、例え差し届かなくても、最速上がり3Fをマークしてくれよな。


★ジャスタウェイ

現役世界最強馬。2400m戦でちょっとパフォーマンスを落としたところで、まだまだ余りあるマージンがあるでしょ。少なくとも3馬身くらいは引き離してもらわんとな。


日本馬3頭のライバルとなるのは3歳勢ではないかと思います。Ectot、Taghrooda、Avenir Certain、Tapestry、以上の4頭。特にEctotとTaghroodaは配合的に優れていますね。また、ロンシャン競馬場の馬場はかなり速そうな気配。Ectotは末脚が相当キレそうな雰囲気があります。

当日、凱旋門賞の前に組まれているレースの走破時計等から、凱旋門賞の想定タイムをTweetしたりする余裕があると思います。みんなで盛り上がりましょう!


2014 凱旋門賞 反省会

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今回は”回顧”ではなく、”反省会”というタイトルで行きましょう。

とは言っても、まだ文章をズラズラ書く余裕がありません。少しずつになるかもしれませんが、後日書き加えて行くことにしますが、まずはラップ・完歩ピッチデータを書いておきましょう。レイアウトは昨年と同じです。参考にしてください。

● 2013 凱旋門賞 展望 その5
http://ameblo.jp/mahmoud1933/entry-11625862470.html

● 2013 凱旋門賞 回顧
http://ameblo.jp/mahmoud1933/entry-11631476982.html

こちらのサイトをご覧ください。
https://www.timeform.com/Racing/Articles/Sectional_Debrief_Special_Arc_de_Triomphe_Day,_2014

このサイトに各馬の上がり3Fが掲載されています。Treveとハープスターの最終的なタイム差は0.75秒。しかしレース映像から判断すると、0.7秒あるかないかくらいでしたので、ココの値はあくまでも参考ということにして私なりに計測してみました。また、100分の1秒単位でラップを載せていますが、あくまでも私が計測した値ですから、正しい数値として値そのものを見るのではなく、そのニュアンスを感じ取ってください。


馬名日本式走破タイム前1400m後1000m上がり3F残1000~600m残600m残500m残400m残300m残200m残100m前1400m/後1000m残1000~600m/上がり3F残600~200m/残100m
レースラップ2:25.0587.0058.0534.4523.605.85 5.90 5.61 5.42 5.65 6.02 1.0711.0280.945
Ave.12.43Ave.11.61Ave.11.48










Treve2:25.0587.6257.4333.8423.595.845.505.415.425.656.021.0901.0460.924
Ave.12.52Ave.11.49Ave.11.280.441 0.439 0.436 0.429 0.415 0.395 0.389 0.389 0.404 0.420
ハープスター2:25.7488.7556.9933.4023.595.875.415.375.415.505.841.1121.0590.944
Ave.12.68Ave.11.40Ave.11.130.448 0.452 0.449 0.439 0.417 0.384 0.384 0.386 0.398 0.410
ジャスタウェイ2:25.7788.3557.4234.0023.425.845.615.545.575.615.831.0991.0330.966
Ave.12.62Ave.11.48Ave.11.330.465 0.468 0.470 0.449 0.442 0.436 0.431 0.434 0.437 0.446
ゴールドシップ2:26.2488.9257.3234.3322.995.905.715.645.575.645.871.1081.0050.970
Ave.12.70Ave.11.46Ave.11.440.459 0.457 0.448 0.442 0.436 0.424 0.424 0.428 0.436 0.445


比較用として日本馬3頭の参考データも書いておきましょう。上段は後半1000mのラップ、下段は100m毎の平均完歩ピッチ(単位:秒/完歩)となります。

●ハープスター
2013新潟2歳S
57.6 : 12.6 - 12.5 - 11.2 - 10.5 - 10.8
0.434 - 0.439 - 0.442 - 0.432 - 0.408 - 0.400 - 0.390 - 0.390 - 0.389 - 0.421

2014桜花賞
56.6 : 11.9 - 11.8 - 11.1 - 10.7 - 11.1
0.428 - 0.436 - 0.439 - 0.432 - 0.433 - 0.398 - 0.398 - 0.405 - 0.416 - 0.418


●ジャスタウェイ
2013天皇賞・秋
58.0 : 11.7 - 11.7 - 11.6 - 11.3 - 11.7
0.449 - 0.446 - 0.452 - 0.441 - 0.445 - 0.426 - 0.426 - 0.428 - 0.436 - 0.441

2014ドバイデューティーフリー(Trakusデータ)
59.09 : 5.62 - 5.82 - 5.91 - 5.82 - 5.91 - 5.71 - 5.56 - 5.62 - 5.82 - 6.08
0.439 - 0.445 - 0.446 - 0.434 - 0.444 - 0.426 - 0.421 - 0.426 - 0.434 - 0.449


●ゴールドシップ
国内戦の全レースデータを更新してあります。ダウンロードはこちらからどうぞ。
http://ux.getuploader.com/Mahmoud1933/download/36/Gold+Ship+Lap+20140824.xlsx

凱旋門賞に関するコメントはこちらのエントリーにどうぞ。追加文を書き終わるまで基本的にリプライは致しません。ただし、上記データに関する質問にはリプライします。

それでは、来年の日本馬による凱旋門賞制覇のための参考となるよう、コメントいただければ幸いです。


※2014/10/11 00:43 追記

まずはお知らせです。

10/11(土)発売の【サラブレ 2014年11月号】で、秋華賞、菊花賞、天皇賞・秋の展望めいたことを書いております。イスラボニータが天皇賞・秋に回って原稿書き直しとなり大変でしたが、何とかそれなりにまとめてみました。ご覧いただければ幸いです。

ではもう少しデータを書いておきましょう。ペースメーカーの完歩ピッチと勾配等のコース形状を踏まえ、前半1400mにおける1F毎の推測レースラップ(テンの1Fをマイナス1秒した日本式)はこんな感じかと思います(異論は認めます)。

87.0 : 12.8 - 11.7 - 12.1 - 12.3 - 12.5 - 12.8 - 12.8

レース序盤はそこそこ流れていたようです。

次にハープスター、ゴールドシップのスタート後100m辺りからの、13~14完歩毎(約100mに相当)の完歩ピッチはこのような値でした。

●ハープスター

0.439 - 0.440 - 0.439 - 0.441 - 0.434 - 0.439 - 0.450 - 0.449 - 0.450 - 0.448 - 0.469 - 0.451 - 0.449


●ゴールドシップ

0.454 - 0.449 - 0.449 - 0.449 - 0.448 - 0.449 - 0.458 - 0.462 - 0.459 - 0.459 - 0.480 - 0.470 - 0.471


2頭とも実にゆっくりとスタートしていきました。おそらくテンの1Fは14秒オーバーと思われます。その後、1Fを12.2~12.5くらいのほぼ一定に近いペースで追走し、完歩ピッチが赤字になっている部分(前半1100~1200m地点)で前方馬群へ一気に追い付いてしまい、ブレーキを掛けるような形になっています。この地点はコーナー部ですから、外に持ち出すわけにもいかず抑えることしか選択肢はありません。

前半1100m辺りまでは横山典弘騎手の談話通り、馬の行く気に任せて実にスムーズな走り。ゴールドシップのみならずハープスターも同じ事です。スタートダッシュを効かせなかった分、前方とは大きく離されて2頭仲良く殿ポツン状態ですが、その反面、スタミナを消耗させない走りだったのは確かでしょう。実際のスピードこそ違いますが、天皇賞・春なので良く見られる戦法とイメージがダブります。まあ、そんな戦法を採って勝ったのはディープインパクトだけだったような・・・。

とりあえず今回はここまで。

スピルバーグ

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サラブレで取り上げたスピルバーグの内容に補足する形として毎日王冠のデータを書いておきます。

しかし、人気的には全く妙味がない状態になりましたね。重賞未勝利馬がエピファネイアより単勝オッズが低い(11/02 AM3:00現在)とはビックリです。天皇賞・秋が2000m戦になって以降、重賞未勝利馬が勝ったのはギャロップダイナだけじゃないでしょうか・・・。

では、毎日王冠の個別ラップと完歩ピッチをグラフにしておきました。ご覧ください。





スタートダッシュではそこそこピッチを速めてもテンの1Fは13.6程度。また、残り3Fから一気にピッチを上げても、レース映像を見る限り他馬よりスピードの優位性は感じられませんでした。しかし、東京競馬場の最後の直線をゴール板まで、非常に失速率の低い走りになっていました。いち早く追い出された印象でしたが、その反面伸び脚が際立ったのはゴール間際という、フェノーメノに負けたデビュー2戦目と同じような内容で、相変わらず魅力あるストレッチランナーぶりは健在でした。

馬体重的に考えれば、この馬はピッチ型走法と言えるんですが、末脚のラップの推移はピッチ型とはまるで思えない内容なんですね。上手く歯車が噛み合えば大仕事してくれるんじゃないかと思います。フェノーメノとの差が2年9月経ってどうなったか、ワクワクしながらレースを見つめたいと思います。

今回はこのあたりで。

2014 天皇賞・秋 回顧

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スピルバーグが豪快に差し切った天皇賞・秋を振り返っておきましょう。まずは上位7頭の個別ラップをどうぞ。

着順馬番馬名タイム2004006008001000前5F12001400160018002000後5F1900Goal
1着4スピルバーグ1:59.713.7 12.1 11.8 12.3 12.3 62.2 11.9 11.9 11.3 11.1 11.3 57.5 5.55 5.75
2着1ジェンティルドンナ1:59.813.2 11.8 11.7 12.1 12.3 61.1 12.0 12.3 11.6 11.3 11.5 58.7 5.65 5.85
3着15イスラボニータ1:59.813.5 11.7 11.6 12.1 12.3 61.2 11.9 12.3 11.4 11.2 11.8 58.6 5.85 5.95
4着11ラブイズブーシェ1:59.913.4 11.9 11.8 12.1 12.2 61.4 12.1 12.1 11.5 11.3 11.5 58.5 5.65 5.85
5着2ヒットザターゲット1:59.913.9 12.1 11.8 12.2 12.2 62.2 11.9 12.0 11.4 11.2 11.2 57.7 5.55 5.65
6着5エピファネイア1:59.913.7 11.7 11.8 12.2 12.4 61.8 11.9 12.1 11.3 11.2 11.6 58.1 5.70 5.90
7着3デニムアンドルビー1:59.913.6 12.0 11.8 12.3 12.2 61.9 11.9 12.2 11.2 11.3 11.4 58.0 5.65 5.75


Mahmoud計測RL1:59.712.9 11.7 11.8 12.1 12.2 60.7 12.1 12.3 11.6 11.3 11.7 59.0



公式RL1:59.712.9 11.7 11.8 12.2 12.1 60.7 12.1 12.3 11.4 11.3 11.9 59.0



緩いペースで上がりタイムも今一つの感がある今回のレース。細かく考えれば当競馬場2000m戦しか使われない2コーナーまでの馬場の乾きが足りなかったのかもしれません。以前とは違い助走距離がしっかり取られているにもかかわらず、各馬のテンの1Fは少し遅かったように感じます。その一方、各馬スパートを開始するまで、決して速くはないものの脚を溜めるようなシーンがなかったところが、上がりの脚が弾けづらい面となったとも言えるでしょうか。また、出走馬全体の、私のスピード指数の平均値は昨年同様ワーストと言える低調なメンバー構成だっただけに、高レベルのレースとはなりにくい側面があったとも思います。

それにしても、このメンバー相手だとスピルバーグの末脚は非常に光りました。前走毎日王冠とは違って4コーナーから大外を狙い、最後の直線では一気にエンジン全開となりました。上がり3Fのトータルタイムが速いのはいつも通りですが、今回はスピードレンジの上昇度もまずまずだったかと思います。キレ味で他馬を上回った部分も感じました。では、上位7頭のスタートから100m毎の平均完歩ピッチをグラフにしてみました。



今回のスピルバーグの馬体重は506kg。ラブイズブーシェやデニムアンドルビーらと比べると50kg以上重いのですが、完歩ピッチは抜けて速いのが良くわかるかと思います。このスピルバーグがピッチ走法の代表格となりますが、好対照となるストライド走法の代表格はイスラボニータ。イスラボニータが1Fを26完歩で走るところをスピルバーグは28完歩要します。ストライド幅は50cmちょっと違うでしょう。

スピルバーグほどのピッチ走法ならば、瞬時にスピードアップするのが常なんですが、この馬は少し変わっていてスピードアップに関する俊敏性があまりありません。その分、前走毎日王冠のようにモタツキ気味とも言えるラストスパートとなるケースが多かったのですが、今回は早々と大外に進路を取り、東京競馬場の最後の直線を目一杯スパートすることができました。キッチリ脚を使い切った会心のレースだったと思います。封印が解かれたかのような素晴らしい差し脚でした。

ちなみにこのスピルバーグの最終追い切りは、今や砂浜と化したような美浦坂路で行われましたが、4Fのタイムは56.0:15.2-13.7-12.9-14.2。誰よりも遅い調教タイムをマークし、本番では誰よりも速いスピードで走り抜きました。ラップの値そのものを独り歩きして考えるのがいかに無意味な物か、良く知らしめるレース結果でしたね。

次走はジャパンカップとの事。適距離は中距離だろうと思いますし、日本ダービーの惨敗も気になるところですが、スタートダッシュでそこそこ脚を動かしている反面、まわりのテンのダッシュに付いて行けないところがあり、2400m戦の対応力は決して少ないわけではないとも感じます。そんなズブさが距離を克服する要因になると見て良いかもしれません。


内々の狭い所を何とかこじ開けて2着に飛び込んだジェンティルドンナ。終盤完歩ピッチが逆転現象となっているのが、その苦闘ぶりを良く表しています。休養明けはいつもパフォーマンスが良くないわりにはまずまずの走りだったでしょう。当然次走は上積みを期待していいと思いますが、昨年の同レースではハイペースを追っ掛けて負荷の高い走り。その分、次走ジャパンカップでのロングスパートを耐え切った要因でもあったと思います。今回は緩いペースでしたから、そこがどう影響するでしょうか。ローテーションは昨年と同じでも、臨戦過程の内容は少々異なりますね。


C.ルメール騎手がイスラボニータにガッツリとGOサインを出したのが残り400mを切ってから。しかしイスラボニータの最速完歩ピッチは残り500~400m区間でした。この特徴についてはサラブレ11月号で述べましたし、過去のエントリーでも書いております。

イスラボニータとゴールドシップ
http://ameblo.jp/mahmoud1933/entry-11825831933.html

私はこの天皇賞・秋で、イスラボニータはこの特徴ゆえに何かに必ず差される、といったスタンスで予想を組み立てていました。4コーナーを回って進路の前方に馬が居ない状態でしたから、自らスパートしてしまうだろう、そして抜け出してもラスト100mで脚色が怪しくなるだろう、と思いながらレースを見つめていました。スピルバーグ、そしてジェンティルドンナに捉えられ、やはり脚が上がったなと思ったのですが、完歩ピッチを調べてみるとビックリしました。グラフにある通り、ラスト200mでの前後半の完歩ピッチがほぼ同じだったんです。

そこでイスラボニータのラスト200mの完歩ピッチを約50m毎に細分化して調べてみると、ラスト50mまでは0.447-0.449-0.453と徐々にピッチが遅くなっていて、ここまでは常識的な走り。しかし、内からジェンティルドンナにピッタリと並ばれてからは、再度0.443とピッチを上げていったんです。イスラボニータにはまだファイトできる何かが残されていたんですね。

C.ルメール騎手はレース後「ソラを使ってしまった」とコメントしていました。私はさすがにバテただけだろうと思っていたのですが、そのコメントは確かにその通りで、改めてこの天才ランナーの凄さを思い知らされた次第です。また、ペースが遅かった分、字面通りほどのダメージではないでしょうが、2コーナーでこの馬はかなり距離ロスある走りを強いられていました。いわゆる「負けて強し」というレースぶりだったと思います。

次走予定のジャパンカップでは蛯名騎手に鞍上が戻ります。彼の脳裏には日本ダービーの最後の直線での走りが色濃く残っていることでしょう。順当なら末脚温存というスタイルでレースをしてくるのでしょうが、ポイントはできる限り前に馬を置く形でレースを進めることになると思います。そんな形で残り400m辺りまで我慢が効き、そこから馬の行く気に合せて一気に後続を突き放すようなスパートができれば、ゴール板までしっかり脚を残せるんじゃないでしょうか。


4着ラブイズブーシェは着実に力を付けている通りの走り。速い脚はありませんが、その弱点を失速率の低い走りでカバーしています。母父が同じメジロマックイーンであるゴールドシップより、私はこのラブイズブーシェの方にステイヤーらしさを感じます。今後ももう少し上積みを期待して良さそうに感じます。


5着ヒットザターゲットはゴール板まで鋭い伸び脚を見せました。好枠を生かした位置取りをするかと思いましたが、両隣に挟まれて止む無く後方からのレースとなりました。しかし、このような競馬をした時の武豊騎手は、さすがという技を見せてくれます。刻ませたラップと完歩ピッチの推移を見れば、日本ダービーを勝った時のキズナを彷彿させる内容でした。


6着のエピファネイア。相変わらずの掛かり具合でしたが、ゲートで後手を踏んだせいなのか鞍上がちょっと押していましたね。しかも前方馬群のペースが上がらないせいで抑え込んだら一気に掛かり通しとなったようです。それでも今回のスパートは馬と鞍上の呼吸は合っていたように見受けられました。ただ、気になった点が二つあります。一つ目は馬体を左に向けつつ走っていた事。昨年の菊花賞でも同様でしたが、その時は距離そしてペース的に最後の直線はヘロヘロ状態だったので仕方がない面がありました。しかし今回のレースペースくらいで苦しくなったとは考えにくく、その要因は掴みづらいですね。2戦目の京都2歳SとPVを見比べれば違いが良くわかります。以前はキレイに真一文字で走っていたのに・・・。

もう一点は、今一つ完歩ピッチが上がり切っていない点。もともとエピファネイアはスパート時までのペースによって、スパート時のピッチに与える影響度が大きくなる面があるのですが、本来ならもうちょっとガツンと反応しても良さそうに思います。ただ、今回は中間の調教からガツンとピッチを上げるシーンがなかったのも事実。変な例えになりますが、切るべきじゃない材質ばかりを切ったことによって、刃こぼれが起きているような、そんな印象を持ちます。


7着のデニムアンドルビーは最後の直線で前方のマーティンボロ、エピファネイアがカベになったようなレースとなり、タイミングの良いスパートができませんでした。その分、ゴール板まで脚が衰えなかった一面もあり、スムーズなレースができていたらどうだったか、少し判断が難しいところです。それでもG1ばかりを使われて、ゆっくりではあるものの一戦毎しっかり戦えるようになっているので、3歳時より力を付けているように感じます。


来るジャパンカップでは、今回の天皇賞・秋に出走した面々にジャスタウェイとハープスターが加わります。力関係はある程度見えるように思われますが、得意分野のハッキリしている馬が目立ちますので、どんなペース、流れになるか、そこが大きなポイントになるでしょう。


最後にお知らせです。

2014年12月1日(月)16:30より、望田潤さん、謎の馬体スペシャリスト、そして私の3人でトークイベントを行います。プロデューサー・司会は日夏ユタカさんです。概要は以下のリンク先をご覧ください。

http://twipla.jp/events/118701

みなさま、是非よろしくお願いいたします。

また、2014年11月13日(木)発売の【サラブレ 2014年12月号】では、今年の凱旋門賞の回顧を中心とした内容の、望田潤さんとのクロストークが掲載されます。是非ご覧くださいませ。

今回はこのあたりで。

2014 ジャパンカップ 回顧

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簡単に今年のジャパンカップを振り返っておきます。エピファネイアの事しか書きませんが、もし余裕あれば何かしら追記できるかもしれません。

では上位人気6頭の個別レースラップを書いておきます。

着順馬番馬名タイム20040060080010001200前6F140016001800200022002400後6F2300Goal
1着4エピファネイア2:23.113.2 11.1 11.8 11.9 11.7 12.1 71.8 12.0 11.9 12.4 11.8 11.4 11.8 71.3 5.80 6.00
2着1ジャスタウェイ2:23.813.5 11.4 12.0 11.9 11.7 12.2 72.7 12.1 11.9 12.0 11.6 11.6 11.9 71.1 5.80 6.10
3着15スピルバーグ2:23.913.7 12.1 12.2 12.0 11.7 12.0 73.7 12.1 11.6 11.7 11.5 11.5 11.8 70.2 5.80 6.00
4着3ジェンティルドンナ2:24.013.2 11.4 11.8 12.1 11.8 12.1 72.4 12.1 12.0 12.0 11.7 11.7 12.1 71.6 5.95 6.15
5着6ハープスター2:24.013.6 11.7 12.1 11.9 11.7 12.1 73.1 12.2 11.8 11.9 11.5 11.5 12.0 70.9 5.85 6.15
9着9イスラボニータ2:24.413.1 11.6 12.0 12.0 11.8 12.2 72.7 12.1 11.9 11.8 11.7 11.8 12.4 71.7 6.10 6.30


Mahmoud計測RL2:23.112.7 11.3 11.8 12.0 11.8 12.0 71.6 12.0 11.9 12.4 12.0 11.4 11.8 71.5



公式RL2:23.112.8 11.2 12.0 11.9 11.7 12.2 71.8 11.9 11.8 12.4 11.9 11.5 11.8 71.3



エピファネイアの勝ちタイム2:23.1は非常に素晴らしいと思います。暫定的ですが昨年の天皇賞・秋のジャスタウェイ、有馬記念のオルフェーヴルと甲乙付け難いレベルと見ていいんじゃないでしょうか。他馬をチギって単独走で叩き出したタイムと言う点も、この2頭同様に価値十分といったところでしょう。

先行して圧勝というのは大枠で考えれば菊花賞と同じなんですが、その内容はかなり異なります。今回のレースはエピファネイアが持っていた、元々の能力が蘇ったレースを見せたと感じました。後半1200mの完歩ピッチの推移がその様子を物語っています。そのグラフをご覧ください。



4コーナー入口から最後の直線の入り口まで、先行馬を壁にして脚を溜める形になったのですが、進路を確保してからは猛然とピッチを上げてスパートしていきました。完歩ピッチの落差は凄まじい物だったと思います。エピファネイアの末脚は2歳時のレースで見せたように、短い区間でビュンと伸びる形ですが、久しぶりにそれを再現したかのような抜群の反応力でした。速いペースで先行しつつも一気にスパートされたら、後続馬の出番は全くありませんでした。また、パトロールビデオを見れば良くわかりますが、菊花賞時は体の向きが斜めになりながら最後の直線を懸命に走っていました。しかし今回は進行方向にキッチリ正対し、最後まで余裕十分に駆け抜けて行きました。デキもかなり良かったのでしょうが、それにしても・・・。

ペリエ騎手然り、M・デムーロ騎手然り、ルメール騎手然り、ムーア騎手然り、そしてスミヨン騎手然り。何故、G1における有力馬に、これら外国人騎手へのオファーが多いのか、その答えとなる典型的なレースだったとも言えます。スミヨン騎手は完全なテン乗りだったと思われますが、エピファネイアの封印を解いたスミヨン騎手、恐るべし。そしてエピファネイアも恐るべし。

時間がありませんので、今回はこのあたりで。

2014 有馬記念 各馬公式上がり3Fについて

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遅くなりましたが新年あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

さて、昨年末の有馬記念についてですが、全頭個別ラップおよび上位5頭の完歩ピッチの推移は2015年1月13日発売の【サラブレ 2015年2月号】に掲載されますので、是非ご覧頂ければと思いますが、そのデータ算出に関しての各馬の上がり3Fは公式の値を使用しておりませんので、その辺りの話についてちょっと書いておきます。

勝ちタイムが2:35.3、上がり4Fが47.0、上がり3Fが34.6というレースでしたので、先頭のヴィルシーナが残り3Fのハロン棒を通過した時は2:00.7ということになります。また、3着ゴールドシップは走破タイムが2:35.4、上がり3Fが33.9と発表されていますので、残り3F通過時は2:01.5となります。4着ジャスタウェイは走破タイムが2:35.5、上がり3Fが33.4、先頭馬から1.4秒遅れて2:02.1で残り3Fを通過したことになるはずです。

では、先頭馬が残り3Fを通過したタイミングの、タイムコード入りのレース映像のスクリーンショットを始めとして、以降0.2秒間隔で見て行きましょう。

















2:01.5の時点で橙帽ゴールドシップは残り3Fのハロン棒より遥か前に進んでいます。上がり3F33秒台をマークしたとは到底考えられません。そして桃帽ジャスタウェイに至っては遅くとも2:01.7で通過しているのが明白です。前述の2:02.1で通過したのは最後方のメイショウマンボなんですね。

元々中山競馬場では、各馬のいわゆる推定上がり3Fが0.1~0.2秒、実際より速く発表されてるケースが多いのですが、今回の有馬記念はシャレにならんくらい実態と乖離してるんですね。特に後方勢は0.4秒もズレてしまっているのです。ちなみにジャスタウェイが先頭馬と1.4秒差となっていた地点はこの辺りでした。ダートコースの残り3Fのハロン棒が目安となるでしょう。






この辺りは残り670m程度の地点となります。補足として残り4~3F区間はレースラップが12.4、同区間をジャスタウェイは11.7程度で走破しており、0.7秒ほど差を詰めたのは実質残り700~600m区間でした。


過去のこちらのエントリー

2012 有馬記念 回顧
http://ameblo.jp/mahmoud1933/entry-11436369988.html

ここでも、 ゴールドシップとオウケンブルースリの残り3F通過時を取り間違えていると指摘しております。公式上がり3Fからの計算上、残り3F通過時は緑帽オウケンブルースリの0.1秒後方で橙帽ゴールドシップと黄帽ルーラーシップが通過したことになっていましたが、実際はこちらの画像のようにゴールドシップが他2頭の0.1秒前方で残り3Fを通過していました。





前述の計算上の位置取りがピタリと当て嵌まっていたのはこの辺り。



ブービー位置をゴールドシップとルーラーシップが併走し、その少し前方にオウケンブルースリが位置しています。この画像にもダートコースの残り3Fのハロン棒が映っています。


各馬の上がり3Fを弾き出す手順を私は全く知りませんが、常識的に考えれば各カメラの残り3Fの通過時の映像から、先頭馬との間隔を調べるのではないかと思います。しかし、この二つのレースの値からして、そんな手法を採っているとは非常に考えにくいところですね。というか、残り3F地点ではなく、全く違う場所で位置関係を調べているんじゃないかとさえ思えてきます。そもそもレース映像を見て各馬の差の詰め方を把握した後、レースの上がり3Fが34.6に対して、ゴールドシップおよびジャスタウェイの上がり3Fが速過ぎると違和感を覚えた方も多いんじゃないかと思います。

公式レースラップは対象馬が1頭ではなくあくまでも先頭馬ですから、1頭1頭のデータとして活用するのは難しいのですが、上がり3Fは何十年も前から、1頭毎の個別データとして競馬ファンは活用してきているわけです。0.1秒程度ならともかく、0.4秒も狂っているのは許しがたい話ではありませんか。この各馬の上がり3Fを掲載している競馬専門誌、スポーツ紙の方々には是非「データがおかしいから修正するべき」と声を上げてもらいたいと思います。もし私の見解が信じられないのなら、映像分析の専門家に鑑定して頂いてもいいでしょう。間違いなく似たような結論になりますから。

今回はこのあたりで。

※2015/01/09 17:28追記

レース映像からラップを採る、という作業は何年も前から私はやっているわけでして、カメラ映像の角度をどう見るべきなのかは、いろんな設置物等を目安に長年検証しております。それでは残り3Fのハロン棒通過時を2種類の映像から見て行きましょう。

まずはこの画像から。





上段画像の赤矢印は、残り3F地点外ラチにある自動計測用の光電管です。少々見にくいですが下段画像とは各馬の脚の動き方で同期が取れているのがわかるかと思います。


次は0.87秒後の画像です。





この画像では残り3F地点内ラチにある自動計測用の光電管が見えると思います。外ラチ、内ラチの光電管の位置から、残り3Fのハロン棒を通過したタイミングをどう捉えるのか、イメージできるのではないでしょうか。

2015 アメリカジョッキークラブカップをちょっと振り返って

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今更となりますが、ゴールドシップが7着と惨敗したアメリカジョッキークラブカップを簡単に振り返りつつ、思う事を少し書いてみたいと思います。

まずは上位入線した数頭の個別ラップと完歩ピッチをご覧ください。

着順馬番馬名タイム20040060080010001200前6F14001600180020002200後5F2100Goal
1着12クリールカイザー2:13.612.5 11.8 13.2 13.3 12.5 11.9 75.2 12.0 11.8 11.5 11.3 11.8 58.4 5.80 6.00
2着14ミトラ2:13.812.6 12.0 13.1 13.1 12.5 11.9 75.2 11.9 12.1 11.5 11.3 11.8 58.6 5.80 6.00
3着9エアソミュール2:13.913.0 12.1 13.1 13.3 12.4 11.9 75.8 11.9 11.9 11.4 11.2 11.7 58.1 5.75 5.95
4着2マイネルフロスト2:13.913.2 12.2 13.1 13.4 12.6 11.7 76.2 11.7 12.0 11.3 11.1 11.6 57.7 5.70 5.90
7着8ゴールドシップ2:14.113.5 12.1 13.1 12.8 12.7 11.9 76.1 11.7 12.0 11.7 11.3 11.3 58.0 5.60 5.70


Mahmoud計測RL2:13.612.5 11.8 13.2 13.3 12.2 11.8 74.8 12.2 12.0 11.5 11.3 11.8 58.8



公式RL2:13.612.6 11.7 13.4 13.2 12.1 11.9 74.9 12.1 12.0 11.4 11.2 12.0 58.7





反応力こそ俊敏ではないものの、鞍上にグイグイ追われたらその時の余力分だけはしっかりピッチを上げていたゴールドシップ。ラップや完歩ピッチを見る限り、個人的にはいつも常識的な走りをしてきたと見ていましたが、今回のレースではとうとう一般的に言われているようなズブさ、あるいは不真面目さという面を覗かせた走りでした。ラップだけを見るとラストで強烈な脚を使って追い込んだ札幌2歳Sみたいな内容ですが、鞍上は残り3F辺りから追い通しながらも、ゴールドシップは最後の直線に入るまでガッツリと反応しませんでした。

他馬との斤量差を考えればスパート開始してから少し置かれ気味になるのは仕方ありません。しかしGOサインを受け取り300m走ってからようやく全開モードとなるのは、馬自身がわざとヤル気にならなかったと思えてしまいますね。陣営としては首を傾げるような走りと感じたのでしょうが、それはデータ的にも裏付けされた内容でした。

強いて言うなら、角度があまりない3コーナーに入る前でスピードアップした後、3コーナーを回った辺りから岩田騎手が抑えに掛かったのが影響したかもしれませんね。ゴールドシップ自身が一旦オフモードに入ってしまったとも言えるでしょうか。その伏線としては前走有馬記念にあったと考えます。

追い切り、そして阪神大賞典のレース内容から、岩田騎手はゴールドシップのスパート力に関して、ズブさ的なイメージはあまり持っていなかったんじゃないかと思います。そして前走有馬記念では位置取りの悪さは別として、残り4Fのロングスパートのラップ推移はまずまずバランスの良い物でした。ただ、結果的にゴール前では後方のトゥザワールドに差され、ジャスタウェイに鋭く迫られていたわけですから、このAJCCでは前走以上にスパートを遅らせ気味にする意識があったのではと推測します。そのため、上記のように脚を溜めようとしたんじゃないかと思うんです。

中山外回りコースは内回りと違い、3コーナーはコーナーらしい形ではありません。特に好対照な部分が残り800~600m区間。ほぼストレートコースですからスピードに乗りやすい地点であり、ゴールドシップはこの区間を12.0程度で走っていて、値以上にスピードを抑えたというイメージの走りでした。まあ、その甲斐あってラスト1Fは良く伸びていましたけどね。ただ勝負処で置かれてしまっては意味がありませんでした。



このAJCCのレースの勝ち時計は2:13.6、レースの上がり3Fは34.6でした。勝ったクリールカイザーの公式上がり3Fは34.4。0.2秒差の2着ミトラの上がり3Fは34.6。ということは2コーナー辺りから先頭に立ったラインブラッドの0.2秒後方で、残り3F地点をクリールカイザーとミトラは併走している状態と考えられるわけですが、その先頭馬が残り3Fを通過した時の映像を見てみましょう。





自動計測用の光電管の前を真っ先に横切っているのは、どう見てもクリールカイザーですね。なかなか凄い事が起きていました。ちなみにラインブラッドの0.2秒後方でクリールカイザーとミトラが併走していたのはこの辺り。





前回のエントリーでもこの件について書きましたが、各馬の上がり3Fを先頭馬とのタイム差(距離差)で算出しているなら、この差を弾き出す地点が明らかに残り3F標より手前の位置となっているのは間違いないでしょう。ちなみに、先日行われた弥生賞でも、残り3F地点における勝ち馬サトノクラウンの先頭馬との差はこんな感じでした。





レースの上がり3Fは36.4。サトノクラウンの公式上がり3Fが35.7ですから、残り3F標通過時は先頭馬と0.7秒差となるはずですが、実際には0.5秒差くらいだったと思われます。0.7秒差となっていたのは次の画像辺り、残り約670m地点ですね。ダートの残り3F標と外ラチの木を目安にすれば先頭馬との差が掴めると思います。上記AJCCと同じ現象と言えます。また、2着ブライトエンブレムも同様に公式上がり3Fは0.2秒ほど実際より速くなっていますね。






この各馬の公式上がり3Fを基にデータ処理している方にとっては非常に由々しき問題なのですが、この事象を柔軟に捉えることも可能です。例えば残り700~600m区間で先頭馬との差を全く詰めずに上がり3F35.9をマークしたのと、0.2秒差を詰めてから上がり3F35.9をマークしたのでは、上がり3Fのラップが同じとはいえ、当然後者の方が価値が高いわけです。弥生賞でのサトノクラウンの実際の上がり3Fは35.9程度ですが、残り3F標を迎える前に始動したゆえの価値を加味した35.7だったと解釈してもいいんじゃないでしょうか。


さて、今回のAJCCのようなスローからのロングスパート戦となるレースのラップを考える際、私には基準というかバイブル的な存在のレースがあります。過去にも紹介したことがあると思いますが、そのレースはトウショウボーイが逃げ切った1977宝塚記念です。先日Twitterで中距離最強馬としてサイレンススズカとジャスタウェイ、どちらが上と思いますか?みたいな質問を受け、その2頭が抜けた存在とは言えない云々と返事をさせてもらいましたが、本当はトウショウボーイを含めて考えましょう!と返事をしたかったのです。まあ、そんなことを書くと話がエンドレスになってしまいそうなので止めましたが、その分、このエントリーで少し書いてみたいと思います。

では改めて、その1977宝塚記念の公式レースラップを書いておきましょう。

1977/06/05 宝塚記念 阪神芝2200m 良 勝ち馬 トウショウボーイ 55kg(逃げ切り)
勝ちタイム : 2:13.0
上がり4F → 3F : 45.8 - 34.8
12.3 - 12.9 - 12.2 - 13.4 - 12.5 - 12.1 - 11.8 - 11.3 - 11.3 - 11.2 - 12.0

ラスト1000mは57.6。非常に力強いラップを刻んでいます。1986年以降の芝2000m以上約13,500レース中、ラスト1000m57.6以下は19レースのみ。その内、逃げ切りは2000m戦の2レースのみ。2200m以上の距離での逃げ切りとしては現在も超えた馬はいません。

以前マルゼンスキーの朝日杯のエントリーでは当週の芝レースの勝ちタイムを書いておきましたが、今回はこの1977年阪神開催の主だった重賞レースの詳細を書いておきましょう。


1977/03/13 産経大阪杯 阪神芝2000m 良 勝ち馬 ゴールドイーグル 56kg(逃げ切り)
勝ちタイム : 2:01.4
上がり4F → 3F : 49.7 - 37.1
12.5 - 11.0 - 12.5 - 12.0 - 11.7 - 12.0 - 12.6 - 12.2 - 12.2 - 12.7

1977/03/27 鳴尾記念 阪神芝2400m 不良 勝ち馬 テンポイント 61kg
勝ちタイム : 2:32.6
上がり4F → 3F : 51.8 - 39.2
12.6 - 12.0 - 11.7 - 12.4 - 13.3 - 13.4 - 12.9 - 12.5 - 12.6 - 12.7 - 12.9 - 13.6

1977/04/09 マイラーズカップ 阪神芝1600m 重 勝ち馬 ゴールドイーグル 55kg(逃げ切り)
勝ちタイム : 1:36.4
上がり4F → 3F : 49.4 - 37.2
12.9 - 11.2 - 11.2 - 11.7 - 12.2 - 12.0 - 12.1 - 13.1

1977/06/12 阪急杯 阪神芝1600m 重 勝ち馬 センターグッド 56kg(逃げ切り)
勝ちタイム : 1:35.2
上がり4F → 3F : 49.3 - 37.1
12.4 - 11.0 - 11.2 - 11.3 - 12.2 - 12.5 - 12.1 - 12.5

1977/09/25 朝日チャレンジカップ 阪神芝2000m 良 勝ち馬 ホクトボーイ 57.5kg
勝ちタイム : 2:00.9
上がり4F → 3F : 48.4 - 36.3
12.8 - 11.6 - 12.4 - 12.0 - 12.0 - 11.7 - 12.1 - 12.7 - 11.2 - 12.4

1977/12/25 阪神大賞典 阪神芝3000m 稍重 勝ち馬 タニノチェスター 55kg
勝ちタイム : 3:07.5
上がり4F → 3F : 50.6 - 38.2
12.7 - 11.1 - 12.0 - 12.0 - 11.8 - 12.5 - 12.6 - 13.8 - 12.8 - 12.9 - 12.7 - 12.4 - 12.8 - 12.7 - 12.7


トウショウボーイの永遠のライバル、テンポイントの名も出てきましたが、テンポイントと言えばこの年の京都大賞典が凄かったですね。


1977/10/16 京都大賞典 京都芝2400m 良 勝ち馬 テンポイント 63kg
勝ちタイム : 2:27.9
上がり4F → 3F : 46.1 - 34.5
12.8 - 12.0 - 12.7 - 13.3 - 13.5 - 12.6 - 12.7 - 12.2 - 11.6 - 11.9 - 11.0 - 11.6


この1977年では大井競馬場の2000m戦でレコードが出ています。この3年後にタガワキングがマークした2:02.7というレコードが24年破られなかったのですが、その一つ前のレコードが2:03.0。中央にいたカネオオエが何と63kg背負って良馬場でマークしていました。この時代のダートはなかなか速い馬場が多かったです。ちなみにカネオオエは中央時代に福島競馬場芝1800mでも57kgで1:48.6というレコードを出していますが、福島競馬場の芝コースと大井競馬場のダートコースの馬場差は2000mで2秒以内、斤量差を加味すれば実質わずか1秒程度かもしれません。

1960年代のタケシバオーはもとより、この時代は地方から中央への転籍組が芝でガンガン好走していました。その後も2001年頃のアグネスデジタル、クロフネは芝・ダート問わず力強い走りをしていましたが、近年はそういった馬がめっきり少なくなってしまいました。その要因の一つとして、現在は芝コースとダートコースのタイム差、馬場差が非常に大きい物になっている点が挙げられると思います。現在の芝コースは硬度の値が以前より低くなっているようで、秋~冬だと茶色の芝コースだった時代はコンクリート馬場とも言われているようですが、芝・ダートどちらも走れる馬の割合を踏まえると、以前の芝コースが速い馬場だったとは少々考えにくいと私は思います。勿論、ピンポイント的に高速馬場だったシーンはあったと思いますが、平均的にはどうしても現在の馬場の方が圧倒的に速いと思います。というわけで今回のAJCCに話を戻すと、もしトウショウボーイがゴールドシップと同じ58kgを背負って出走していたら、馬なりのまま軽くブッちぎっていたと思うんですね。そして同時に、こんな緩い流れの中、ゴールドシップを後方でチンタラとレースをさせてしまえば、G1を5勝という勲章が色褪せてしまいます。スポーツライクな競馬として考えれば、強い馬は強いレースをさせてこそやと思うんですが・・・。


最後になりますが、2015年03月13日発売の【サラブレ 2015年4月号】では、お馴染み望田潤さんとの対談が掲載されています。ルージュバックの全3レースの個別ラップ、完歩ピッチも載せております。おもしろい内容だと思いますので、みなさん手に取っていただければ幸いです。

https://www.enterbrain.co.jp/product/magazine/sarabre

今回はこのあたりで。




2015 産経大阪杯のキズナの走りを振り返ってみよう

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キズナの2015産経大阪杯の走りを振り返っておきましょう。まずは1着ラキシス、2着キズナの個別ラップから見ていきましょう。

着順馬番馬名タイム2004006008001000前5F12001400160018002000後5F1900Goal
1着3ラキシス2:02.913.6 12.3 12.8 12.5 12.2 63.4 11.6 12.0 11.8 11.8 12.3 59.5 5.9 6.4
2着7キズナ2:03.213.8 12.6 12.8 12.5 12.2 63.9 11.5 11.8 11.6 11.7 12.7 59.3 6.1 6.6


前後半のラップ差はラキシスで3.9秒、キズナで4.6秒という、前半は非常に緩いペースでお互い追走していましたが、端的に言えば後半1000mのロングスパート戦をラキシスが制した、という図式かと思います。

この2頭の勝負だけを考えた時、キズナの方が中間点で0.5秒後方だった以上、その0.5秒差をどこで詰めてどのように逆転するかがポイントになるわけですが、結果的に自身の最速ラップを刻みながら残り400mまでの区間で一気に差を詰めて行った事が、ラスト1Fでの失速に繋がった形となってしまいました。とはいえ、ラキシス自身も後半1000mから自身の最速ラップをマークしているわけで、ラスト1F、正確にはラスト300mで何故対照的な走りになったのかを、もう少し見ていきたいと思います。

レース映像を繰り返し見た方は気付いたかと思うのですが、そのラスト300m区間で非常におもしろい事が起きていました。ではこの2頭のスタートからゴールまでにおける、100m毎の完歩ピッチの推移をグラフで見て行きましょう。



ラキシスの赤いグラフ線が残り300mから消えていますが、これ、消えているわけではなくキズナと同化しているんです。というわけで、みなさんもう一度レース映像をご覧になってください。ラスト300m辺りから、この2頭はゴールまで同じリズムで走っている様子がわかると思います。しかも脚が地面に接地するタイミング、クビの上げ下げのタイミングもピタリ一致していますから。

この2頭の完歩ピッチ、同化する地点までの値が異なっています。つまり完歩ピッチのピーク時はラキシスの方が100mゴール寄りになっているのが良くわかるかと思います。ラスト300m区間の走りのリズムが同じでも、そこに至るまでの過程が全く違うわけです。最後の直線での再逆転劇は、データ的にもその様子を良く表している事象でした。

さて、キズナの前年との走りを比較してみましょう。完歩ピッチの比較グラフをご覧ください。



ラスト700m辺りからのスパートはまずまず似ています。前年の走りをトレースするかのように感じられますが、大きく違うのは残り1000~800m区間ですね。そもそも、前半1000m区間は前年より少し速いリズムで走っていたのに、今年はスピードアップの始動が早く、しかもその落差が大きいのです。残り700~600m区間で脚を溜めることで、ある程度スタミナを回復できる可能性がありましたが、実際にはそうはならずという形でしょう。

走破タイムは2.9秒差。1Fに付き約0.3秒差ですね。では、昨年のラップに1F0.3秒足して個別ラップの比較グラフを見て行きましょう。



やはり残り1000~800m区間の差が非常に大きいですね。この部分の負荷がかなり大きかったようです。まあ相手あっての競馬ですから、展開的に致し方ないとも言えます。強いて言うなら、昨年よりはラップバランス的に前目の形とはいえ、どこかで無理をしなければならない状況下だったのは同じですから、ハマってナンボ、というレース形態は変わらぬままでもありました。

今回はこのあたりで。

モーリス VS Able Friend

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先日のダービー卿CTを圧勝したモーリス。ゴール前の脚色はホントにド迫力でした。もうラップがどうのこうのという次元じゃないくらい凄く見えたのですが、その様子をちょっと画像を使って説明してみましょう。



上段から残り200m、100m、ゴール板それぞれの通過時のパトロール画像です。正面スタンドから撮影されたレース映像、特にこの中山競馬場のように低い位置からのカメラ映像では、内の馬より外の馬の方が必要以上に伸びているように錯覚してしまいます。残り200mで並んだ1、2着の黄帽2頭はその後内外に離れてしまったので、この2頭の差が多少オーバー気味に開いたと感じる部分があります。とはいえ、その錯覚分を差し引いても迫力満点の走りでした。現に完歩ピッチは残り200~100m区間が最速。坂をものともせずグイグイ伸びていったのもまた事実でした。

この圧勝劇により、出走できれば安田記念で最有力候補として名が挙がりそうですが、現在世界のマイル界には相当強力な1頭がいます。その名は目下5連勝中の昨年の香港マイルの覇者、Able Friendです。

この5連勝中の内マイル戦で4勝していますが、その勝ちタイムは日本式に換算して1:32.3~1:32.5程度。モーリスのダービー卿CTの勝ちタイム1:32.2とほぼ同等なんですね。しかも上がり2Fは全て21秒台を叩き出しています。というわけで、モーリスのダービー卿CTとAble Friendの昨年の香港マイルを比較してみましょう。


◆モーリス 2015ダービー卿CT 55kg
勝ちタイム : 1:32.2
前後半4F : 47.9 - 44.3
13.6 - 11.4 - 11.5 - 11.4 - 11.3 - 11.3 - 10.9 - 10.8 [ 5.35 - 5.45]

◆Able Friend 2014香港マイル 約57kg
勝ちタイム : 1:32.3(日本式換算値)
前後半4F : 47.8 - 44.5
13.4 - 10.8 - 11.5 - 12.1 - 11.8 - 11.0 - 10.5 - 11.2 [ 5.40 - 5.80 ]

続いて完歩ピッチのグラフ。



ホームストレッチの長さが違う影響があるとはいえ、Able Friendの末脚はキレにキレるイメージです。ラストは流していたので、余力も十分あったと思います。今回のモーリスの走りはスピード感たっぷりでしたが、おそらくトップスピード値、違う表現ならば局所的な瞬発力はAble Friendが上なのではないかと考えられます。マイルでは現在世界最強でしょうし、歴代の名マイラーの中でも上位に位置するような馬ではないかと見ています。もし安田記念に出て来たら、日本馬に立ちはだかる大きな壁となりそうです。

このAble Friendに弱点があるとすれば、まだ完全本格化前だったとはいえVariety Clubに突き放された2014チャンピオンズマイルが参考になると思います。勝ったVariety Clubの前後半は日本式で45.6 - 47.3、Able Friendは46.6 - 47.0でした。厳しいペースに巻き込まれるのが不安要素ではないかと思われます。脚をじっくり溜めきれない流れに持ち込めば、といったところではないでしょうか。また、贔屓目になるかもしれませんがモーリスも今回のダービー卿CTの走りがピークとは思えず、まだ上昇できる余地があるように感じられるので、是非安田記念での2頭の対決を見てみたいですね。


最後にお知らせです。4/13(月)発売の【サラブレ 2015年5月号】において、皐月賞・日本ダービーに向けた有力馬4頭の全戦個別ラップ、完歩ピッチを掲載した展望記事や、天皇賞・春への重要レースとなった今年の日経賞の分析記事等を書いております。是非ご覧くださいませ。

https://www.enterbrain.co.jp/product/magazine/sarabre/15000050


今回はこのあたりで。

2015皐月賞 ドゥラメンテのラスト1F

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Twitterで「ドゥラメンテのラスト1Fが10.1という記事があるそうですよ」と教えていただき、どのようなおもしろい記事に仕上がっているのか調べてみると、どうもマジネタっぽい内容だったので、ドゥラメンテのラスト1Fは実際どの程度のラップだったかを検証してみたいと思います。似たようなことは以前にも書いていますし少々マニアックな内容となりますが、関心ある方はご覧いただければ幸いです。

まずはレース映像にタイムコードを挿入するタイミングを考えてみましょう。下記画像はドゥラメンテがゴール板を通過する際のハイスピードカメラによる映像のスクリーンショットです。ドゥラメンテの脚の様子、例えば前脚の右左の曲げ具合、伸び具合を注視してみてください。







では、レース映像のスクリーンショットを2コマ分見てもらいましょう。





タイムコードが【1:58.18】と【1:58.21】の中間にゴール板を通過しているのが何となくイメージできるかと思います。ということで、ドゥラメンテが1:58.2でゴール板を通過したタイミングに合わせてレース映像にタイムコードを挿入してみました。


要はドゥラメンテが残り1F標をどのタイミングで通過したのかを調べるわけですが、そのためにはこのレース映像にバーチャルラインを引いてみるのが判別しやすいことになります。とは言っても、そのバーチャルラインをどのような角度で引くのか、そこが一番のポイントになります。では、そのバーチャルラインの角度をどのように決めるのかを考えてみましょう。



上記の画像ですが、中山芝内回り2000mで行われる皐月賞でのゲートの上下をバーチャルラインで囲ってみました。今回はBコース開催ですから内回り1周1686m。したがって314mに助走距離の約5mを加えてゴールまで約319m辺りにゲートが設置されています。この地点はまだ4コーナーを回り切っていない場所となり、バンクがあるのでバーチャルラインを引くと右上がり約1.1°程度の角度になります。





2周目4コーナーの様子です。2本のバーチャルラインの間に、ゲートを引き摺った跡が見えるかと思います。当然、このバーチャルラインはゲートを囲ったバーチャルラインと同角度となります。





この画像は芝内回り1800m戦におけるゲートを引き摺った跡が見える地点。ゴールまで約119m辺りとなる場所ですが、ここでのバーチャルラインの角度は右下がり約1.3°程度となります。


残り1Fのハロン棒にバーチャルラインを引くにあたって、もう一つ考慮しなければならないことがあります。次の画像をご覧ください。



今回の皐月賞における1周目ホームストレッチでのパトロールビデオのスクリーンショットです。左上に僅かに見えるのがゴールまで残り1Fのハロン棒ですが、このハロン棒が埋まっている場所は競走馬が走る芝部分より少し低くなっています。したがってハロン棒の根元にバーチャルラインを合わせるのは良くないんですね。アバウトな扱いになりますが、ハロン棒の根元より上の部分にバーチャルラインを合せる必要があります。

ゴールまで約319m地点におけるバーチャルラインの角度はバンク角の影響があるのであくまでも参考値としますが、ゴールまで約119mにおけるバーチャルラインの角度を基に考えると、残り1Fのハロン棒に引くバーチャルラインの角度は、右下がり約1.3°より値が大きくなることはありません。では同じ角度ならどうなるか、その画像を見てみましょう。



タイムコードは【1:47.34】を示しています。もう少しバーチャルラインをゴール寄りにずらしても、【1:47.40】くらいがギリギリのところでしょう。つまりドゥラメンテはラスト1Fで10.8より速いラップを刻んだとは考えにくいと判断していいのではないでしょうか。で、実際には次の画像辺りのタイミングで残り1Fのハロン棒を通過したと思われます。



暫定版のラップとしては11.0とTweetしましたが、10.9と判断しても差し支えないように思います。ただ、私がいつも気を付けていることは、公式ラップとの乖離差をできる限り少なくする、つまり0.1秒速くするか遅くするか判断に迷う際は、公式ラップとのズレ幅が小さくなる値を基本的に選択します。また、11.0と11.1の値の違いと10.9と11.0のそれでは、同じ0.1秒の差であっても10秒台に入ったというインパクトは大きいので、10.9と発表すると数字が独り歩きしてしまうことに懸念するわけです。

来月発売のサラブレで、この皐月賞の上位入線馬の個別ラップや完歩ピッチを記載するので詳細はお待ちいただきたいのですが、今回ドゥラメンテのラスト400mにおける100m毎の完歩ピッチは、0.435 - 0.417 - 0.420 - 0.434という推移になっており、レース映像の印象通り残り300~100m区間で強烈に伸びています。したがってラスト1Fを10秒台にしてしまうと、ドゥラメンテが単にラスト1Fで凄い伸びを見せたと受け止められてしまう可能性が高いわけで、それはドゥラメンテの走りを分析した私の本意ではなくなります。1F毎のラップでは10秒台を刻まなくとも、その値の裏には1F10秒台のスピードがしっかり含まれていますよ、ラスト100mは緩めているのにラスト1F11.0を刻みましたよ、と受け止めて欲しいのです。


件の10.1の背景には、残り1Fのハロン棒でのリアルスティールとドゥラメンテの差が8馬身ほどあったと捉えてしまったことにあります。ではその差はどの程度だったか見てみましょう。



この画像は【1:47.27】時点での上記とは別カメラのスクリーンショットです。二つの赤矢印の先にある芝の蹄跡とバーチャルラインの距離感を覚えておいてください。その距離感に合せてリアルスティールが残り1Fのハロン棒を通過したタイミングが次の画像となります。正面からの画像と併せて見てください。





この2頭の差は約0.5秒ですね。3馬身差といったところでしょうか。内外の差はかなり広がっていますから、このような状況下だと外の馬は随分と遅れを取っているように錯覚してしまいます。これが8馬身差に見えてしまうと、競走馬のパフォーマンスを推し測るのは非常に難しそうですね。

私はもともと1F毎のラップを計測していたわけではなく、数完歩といった短区間での馬のラップ差を測ったりしていたわけです。馬が刻むラップというのは馬場差やペース、あるいはスパートのタイミングの違いによって如何様にも変わってきます。数字そのものに照準を合わせるよりも、上記のように他馬との距離差、ラップ差のイメージをレース映像から読み取ることが、分析力を高めることに繋がるでしょうし、やはり基本はレース映像をしっかり見る、に尽きると思います。

今回はこのあたりで。

2015 天皇賞・春 回顧

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「3200m戦って、やっぱおもろいやん!」と感じさせてくれた今年の天皇賞・春。勿論、その立役者はゴールドシップと横山典弘騎手でした。また、馬場状態がどうだったのか物議を醸した一面もありました。それではいろいろと振り返ってみましょう。

まずは上位入線馬、人気馬数頭の個別ラップをどうぞ。ゴールドシップの個別ラップは暫定版として出した値に若干の修正を加えています。

着順馬番馬名タイム200400600800前4F1000120014001600中前4F1800200022002400中後4F2600280030003200後4F3100Goal
1着1ゴールドシップ3:14.714.4 13.2 12.5 12.1 52.2 11.8 11.8 12.4 12.3 48.3 12.2 11.6 11.7 12.0 47.5 11.7 11.9 11.4 11.7 46.7 5.70 6.00
2着14フェイムゲーム3:14.713.6 12.0 12.2 12.4 50.2 12.3 12.1 12.8 12.4 49.6 12.3 12.0 12.4 12.1 48.8 11.6 11.8 11.3 11.4 46.1 5.65 5.75
3着2カレンミロティック3:14.813.0 11.7 12.1 12.6 49.4 12.3 12.4 12.5 12.4 49.6 12.3 12.2 12.4 12.0 48.9 11.6 11.7 11.5 12.1 46.9 5.90 6.20
4着4ラストインパクト3:14.914.1 12.8 12.3 11.9 51.1 11.9 12.0 12.7 12.5 49.1 12.2 12.0 12.6 12.1 48.9 11.4 11.5 11.2 11.7 45.8 5.75 5.95
7着13キズナ3:15.214.3 13.0 12.5 12.0 51.8 11.9 12.1 12.6 12.4 49.0 12.0 11.7 12.2 12.1 48.0 11.5 11.6 11.4 11.9 46.4 5.85 6.05
9着15サウンドオブアース3:15.413.3 12.1 12.1 12.4 49.9 12.3 12.3 12.6 12.4 49.6 12.4 12.0 12.3 12.2 48.9 11.5 11.9 11.3 12.3 47.0 6.00 6.30
15着17アドマイヤデウス3:17.514.0 12.7 12.2 11.9 50.8 12.0 11.6 12.7 12.4 48.7 12.4 12.0 12.3 12.1 48.8 11.8 12.2 12.0 13.2 49.2



Mahmoud計測RL3:14.712.7 11.5 12.1 12.7 49.0 12.4 12.4 12.5 12.4 49.7 12.4 12.2 12.3 12.1 49.0 11.7 11.8 11.5 12.0 47.0



公式RL3:14.712.7 11.4 12.0 12.5 48.6 12.8 12.2 12.1 12.8 49.9 12.4 12.3 12.5 12.0 49.2 11.7 11.8 11.5 12.0 47.0



最初に先頭馬が刻んだレースラップについて語っておきます。公式レースラップと私が計測した値とでは、表中のピンク色の箇所を含む区間、つまり前半2400mまでのラップの上下幅が異なっています。例えば前半1000~2200m区間では公式ラップ上12.1~12.8といった差になっていますが、私が計測した値では12.2~12.5でしかありません。非常に淡々と流れたレースだったと思います。緩くなった箇所を狙ってゴールドシップが差を詰めた、といった意味合いはないと考えられます。というわけで、このレースを残り600mまで引っ張ったクリールカイザーの完歩ピッチグラフを貼っておきましょう。走りのリズムの推移からも、その淡々としたイメージを感じ取ってもらえるかと思います。






レース後、騎手のコメント等からだと思いますが、「馬場が緩かった」という話がTwitterで見掛けることになりました。前日土曜日から天皇賞・春までのパトロールビデオを通して見る限り、当日日曜日は外回り3~4コーナー区間の芝の含水率が、前日よりも増えているのは間違いないところでしょう。競走馬の脚に跳ね飛ばされた芝および土の量は前日より増えていましたし、土埃は逆に抑えられている雰囲気だったのは確かです。ただ、開幕週でもそうですが、土曜日最初の芝のレースから翌日曜日の最後の芝のレースの間、芝は少しずつ掘られていく形になっていきますし、天皇賞・春でも抑えられ気味とはいえ、乾燥した土埃はそれなりに立っています。また、前日土曜日でも芝の塊はかなり飛んでいたのも事実。映像上からは、土・日で大きく様変わりしたまでとは言えない状態かと私には見えました。土曜日のレース終了後あるいは日曜早朝の散水量が少々多かったのかもしれませんし、日曜日は晴れてはいませんでしたから、前日より乾燥しにくい環境だったのが影響したのかもしれません。

前日土曜日の午後と天皇賞・春当日での馬場差は、マイルで0.5秒ほど開きがあったかなと見ていますが、それでも超の字は付かなくとも十分高速の馬場状態だったのは確かです。また、この天皇賞・春での各馬の上がり3Fが今一つ速くないと感じた方がいらっしゃるでしょうが、これはそれまでのペースの問題に過ぎません。そのあたりを私なりに解説していきましょう。

京都外回りは残り1200mから残り800mにかけて4m登る坂が待ち受けています。この区間はそれまでと同じ力の入れ具合でも必ずスピードが落ちて行くわけで、仮にラップが落ちなかったとしたら実質ペースアップと考えるべき区間でもあります。詳しくは過去エントリーを見てもらえばいいのですが、2013~2015年における各4F毎のラップと残り1600mからの1F毎のラップ推移を抜き出してみましょう。



2013年は残り1400mから1F11秒台に突入し、そのスピードのまま坂を駆け登っています。ゴールドシップに至っては残り1000mから11.7と更に加速しており、モーレツ!!しごき教室みたいな走りをさせたら、そりゃラストはバタバタになるのが当たり前といった感じでしょう。勿論、他馬も同様、上がり3Fは非常に掛かっています。

2014年は前年とは逆に坂を登る区間は速くありません。したがって残り800mから一気に速くなっても上がり3Fはそこそこ速くなりました。

で、今年。大雑把に言えば2013年と2014年の中間くらいでしょうか。どちらかと言えば2013年の方が近いと思いますし、残り1600~800m区間のトータルラップを比較しても、昨年よりは負荷の掛かる追走ラップとなっており、上がり3Fが昨年より遅くなる傾向にあったのは間違いありません。3~4コーナー区間の馬場が少々緩くて若干時計が掛かり気味だったのは否定しませんが、取り立てるほどのレベルではなかったと見た方が良いと思います。


騎手が発したコメントの事柄そのものは、騎手が感じたありのままと受け取ればいいのですが、例えば敗因を述べた時、その要因がどれほどまで大きい物だったのかは受け取る側に委ねられる側面があります。つまり、基本的に騎手全員、勝ってやろうとレースに挑んでいるわけで、そこには各馬の実力差をなしにするような同一のスタートラインに立っている自負があるはずです。したがってそのスタートラインと結果との比較論において敗因を述べることが多くなるのだと思うんです。その一方、如何ともし難い実力差が存在するわけで、今回のように「馬場が緩かったので・・・」という敗因が、馬各々において占める割合は様々なんじゃないでしょうか。道悪競馬の時、負けた馬の大多数が「馬場が良ければ・・・」という敗因に終始する状況があったりしますが、じゃあ馬場が良かったとして、みんな良い走りをしたら結局結果は同じじゃないの?なんて思えてしまいます。

つまるところ、コメントの文言の背景を良く踏まえて捉えないと真実に迫るのは難しいと思います。今回、「馬場が緩い」というのは事実でも、前日土曜日とは一変するほどの違う馬場だったのか、検証する手立てはいろいろあると思います。また、前々日発売されているG1週で土日の間、人為的に馬場に大きく手を入れることなどしないんじゃないの、と見るのがまずまず常識的な考えかと私は思います。ただ、このような懐疑的論調は以前から不信感というか、何かスッキリしない事象が幾つもあったからなのは確かで、やはり未だに4段階の馬場発表というのは時代遅れ感が否めませんよね。技術的に難しいんでしょうが、馬場の含水率を発表するとか、馬場硬度を発表するとか、何かデータ的な物を提供すべきだとは思います。まあ、データが出れば、先の騎手コメントの受け取り方同様、背景を無視して値を独り歩きさせ絶対的なモノと見られるリスクは少なからずあると思いますから、現状のように逃げ道がある形での運営をする気持ちはわからんでもないです。馬場への散水にしたって、ホームページ上にはそれなりの文言がありますからね。


それではゴールドシップの走りについて、ここ3年の完歩ピッチの推移のグラフを参考にしながら振り返っていきましょう。





後半3000mは1F平均12秒の壁を越えられませんでしたが、後半2400mは2:22.5。おそらく天皇賞・春史上、最も速いラップなんじゃないかと思います。そしておもしろいことに、前半3~4Fまでをじわじわスピードを上げる助走区間として使い、その後4F毎できっちり0.8秒ずつ縮めてゴールインするという、計算し尽くされたかのようなラップの推移となりました。勿論、鞍上横山典弘騎手は時計的な感覚ではなく、あくまでもゴールドシップの良さを生かす感覚で乗った結果に過ぎないでしょうが。同騎手は例の後方ポツンで有名であり、批判の的になるケースが多々ありますが、そんな時の道中は実にイーブンペースを保って乗っていたりもします。馬をスムーズに走らせるという技は本当に天下一品ですね。バックストレッチで一気に押し上げて行きましたが、見た目ほどラップの上げ下げは大きくなく、前2年とは明らかに異なった走りの内容でした。押し上げ開始まで、刻々と前との差を詰めに掛かっています。良い意味で、レースの流れに乗ることはなく、淡々と己のペースを維持しつつレースの主導権を握ってしまうという、まさに痛快なレースぶりでした。

1周目のホームストレッチでは1頭だけ大きく外目に出して走らせていました。この部分は隙あらば前目に行く想定だったと思いますが、他にも何かしらの理由があったんじゃないでしょうか。もともとゴールドシップは京都長距離戦で、ゴール板まで残り1F地点を含む前半1000~1200m区間で、必ず速いラップを刻んでいました。菊花賞でも同区間は11.4。鞍上の意図はさておき、今回は馬群から離すことによって、過度にスピードに乗せない形になったのではないかと感じました。

1周目のホームストレッチでキズナを交わし、1~2コーナーではじっくり構えるデニムアンドルビー、トーセンアルニカを交わし後方から4番目に進出。バックストレッチに入ると直ぐに外目に持ち出し進出開始。ムチを入れながら2F近く脚を使い3番手に上がりましたが、坂の上りで馬群全体を引き連れてペースアップさせたことにより、3コーナーで自分の土俵に各馬を引き擦り込んだ形にしてしまいました。

その後、最後の直線に入るまで鞍上の手はある程度動いていましたが、ゴールドシップ自身は力を入れたり抜いたりしてある意味マイペース。残り300mから最速完歩ピッチをマークするほど、しっかりと余力を残していました。結果論に過ぎませんが、この最後の直線でのスパート力を見るに、道中はオーバーペースとならないようキッチリとペースコントロールができており、バックストレッチの押し上げは決して無理矢理な形ではなかったという事でしょう。それにしても人馬一体感のある見事なレースでした。

全体的に見れば、序盤をゆっくり過ごして昨夏の札幌記念的な要素のある2400m戦のレースをしたとも言えるでしょうし、じっくりスピードに乗ってから己のペースでレースをした点は、Zenyattaっぽい走りだったとも言えるでしょう。馬と人と、自らの個性を最大限発揮した名レースだったのは間違いありません。ホントに良いモノを見られたと思います。


もう1頭、キズナについても少し触れておきます。まずは昨年のレースと比較してみましょう。





走破タイムが同じでしたが、前後半も全く同じ。これも大変おもしろいものです。戦前トレーナーからの戦法に関するちょっとしたコメントがあったようですが、鞍上武豊騎手は大枠で捉えるならば、不変的な意志を持ってレースに挑んだのだと思います。ただ、その中味は少々異なるモノだったとも思います。

1周目のホームストレッチでゴールドシップに交わされてからは、進路を外目に取りつつゴールドシップをマークするような動き。バックストレッチでのゴールドシップの押し上げに対しては、遅れ気味ながらキズナも併せ打って出た形でした。結局、中間点から3コーナーまでは昨年より1秒超、積極的に脚を使うことになり、相手あっての競馬をしていたゆえの事象であると言えるでしょう。ただ、ゴールドシップのペースに巻き込まれた影響からか、ラストスパートでの最速ピッチは残り600mからの100m区間という結果に終わり、ジョッキーのコメント通り最後の直線では早々と脚を無くしてしまいました。残り2000m通過時、ゴールドシップに交わされた段階で、太刀打ちできる余地はほとんどなかったと思われます。

日本ダービー以降、レースの巡り合わせで厳しいペース経験を積む事ができなかった、あるいは意図的に後方に下げることによって、キレで勝負する末脚特化型路線ばかりを歩んできた以上、こんなゴールドシップのレースに付き合う体力が身に付いていないのは致し方ないとも言えますね。今後はどう立て直してくるのでしょうか。どんなレースに照準を合わせるのでしょうか。また、やはりこの馬はコーナーで加速させると良くない印象を受けます。東京競馬場でのキャリアがまだ1戦というのは実にもったいないと思うのですが・・・。

今回はこのあたりで。

リアルスティールの追い切り

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リアルスティールの追い切りの変遷を簡単に見て行きたいと思います。追い切り映像のスタートから10完歩毎の平均完歩ピッチをまとめてみました。しっかりと追われ始めた箇所は赤字にしてあります。


◆2015/02/11 共同通信杯直前 栗東坂路

0.425 - 0.410 - 0.400 - 0.385 - 0.404 - 0.412


◆2015/03/18 スプリングS直前 栗東坂路

0.414 - 0.413 - 0.414 - 0.390 - 0.391 - 0.404


◆2015/04/08 皐月賞1週前 栗東CW (ラストの値は6完歩平均)

0.418 - 0.418 - 0.406 - 0.394 - 0.385 - 0.389 - 0.397 - 0.410 - 0.417


◆2015/04/15 皐月賞直前 栗東坂路

0.392 - 0.385 - 0.386 - 0.378 - 0.386 - 0.397


◆2015/05/20 日本ダービー1週前 栗東CW

0.417 - 0.411 - 0.400 - 0.401 - 0.397 - 0.397 - 0.404 - 0.420


坂路だと1完歩のストライド長は6m前半、CWなら7m弱といった感じでしょうか。皐月賞でもスタートから高回転型の走り。速いピッチを刻むのがリアルスティールの特徴ですね。脚の回転力で言えばオルフェーヴルより少し速いくらいのレベルです。追われてからもガツンとピッチを上げていて、特に圧巻だったのが皐月賞の直前追い切り。23秒ほどの映像でしたが、この400m弱で0.400秒/完歩を常に切り続けており、栗東坂路追い切りではなかなか見られない光景でした。

ところが日本ダービーの1週前追い切りはMAX時でも0.400秒/完歩をギリギリ切る程度に終わりました。一見、スパートまでの負荷が大きかったゆえピッチが上がり切らなかったと思いがちですが、実際のところ約50完歩、350m近くにわたって0.400秒/完歩前後のピッチでずっと走っていたのです。皐月賞での敗戦を踏まえて、長く末脚を使わせようとする意図を感じさせる、大変好印象の追い切りだったと思います。

リアルスティールは前が空けば自ら踏み込んでいくタイプであり、その本質は逆らえないモノだろうと思いますが、何とか上手にレースをさせてやろうという陣営の意気込みはヒシヒシと伝わってきますね。本番が楽しみになってきました。

今回はこのあたりで。


※2015/05/29 追記

2015/05/27 日本ダービー直前 栗東坂路(ラストの値は8完歩平均)

0.429 - 0.416 - 0.408 - 0.385 - 0.389 - 0.396


GOサインが出てからの反応力は抜群。手前を替えて一気にスパートしていきました。やはり前掛かりなのがこの馬の本質でしょうが、前週の追い切りの効果は少し感じられるところがありました。

2015 安田記念 回顧

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先日の安田記念について少しだけ書いておきます。上位2頭の個別ラップは次の通りでしょう。

◆モーリス
12.6 - 10.9 - 11.2 - 11.5 - 11.3 - 11.2 - 11.3 - 12.0 [ 5.90 - 6.10 ]

◆ヴァンセンヌ
13.1 - 11.1 - 11.4 - 11.4 - 11.3 - 11.0 - 11.1 - 11.6 [ 5.65 - 5.95 ]


続いてラスト600m区間における100m毎の完歩ピッチは次の通り。

◆モーリス
0.436 - 0.420 - 0.432 - 0.432 - 0.445 - 0.446

◆ヴァンセンヌ
0.424 - 0.410 - 0.424 - 0.426 - 0.425 - 0.434


モーリスが本格的に追われたのは残り250m辺りでしたが、最後の直線に向いてすぐに自らピッチをグッと上げスパートし、追われてからは逆にピッチが落ちています。いわゆる「手応え詐欺」状態だったのは確かでしょう。とはいえ、通常はなだらかにピッチが落ちて行くラスト200mにおける前後半では、ほとんど変化ありません。おそらく、ラスト100mでは迫ってきたヴァンセンヌに抜かせまいとファイトしたのでしょう。脚が一杯だったのは確かですが、力を振り絞る僅かな余力はあったと見ていいかもしれません。


ヴァンセンヌは残り500m辺りからGOサインを掛けられ、その指示通りにスパート開始。前が空いている進路をなかなか見付けられなかったのは、残り400~100mまでの完歩ピッチの値からも証明されています。しかしラップタイムの推移もそうですが、ラスト100mの完歩ピッチはいかにも脚を使い切った程度まで落ち込んでいますし、ストライド幅も小さくなっていました。この事から推測できる一つの考え方として、仮に進路がスムーズに取れていたら、残り400mからはより速く走れていた形になります。しかしその分、失速するポイントも早まっていたと思うんですね。となるとモーリスに並び掛けた時のスピード差はより小さくなっていた可能性があり、前述のモーリスの踏ん張り方と併せて考えると、確実に差し切っていたとまでは言えないと私は思うのです。


このヴァンセンヌのように進路が上手く取れないケースでも、確実に差し切ったと思えるような走りはどんな形か、一例を挙げてみましょう。とはいっても実際差し切った2009安田記念のウオッカですが・・・。

過去エントリーではラスト600mの内訳を12.1-11.9-11.7としましたが、12.0-11.9-11.8と見た方が良いかもしれません。またその時の完歩ピッチの推移はこんな感じです。

0.429 - 0.441 - 0.441 - 0.429 - 0.434 - 0.437

残り300mを切ってからようやく全開に追われ始めましたが、マトモに真っ直ぐ走ることができたのはラスト100mのみ。1F毎のラップ推移も後傾となっていますが、それよりも1F毎の完歩数、言い換えればストライド幅はラスト200mが最も広かったのが最大の特徴。残り300mから緩やかに完歩ピッチは落ちていますが、逆にストライド幅は広がっているので、ほぼ等スピードでゴール板まで駆け抜ける走りでした。しかもラスト4完歩は鞍上の手が止まってますからね。つまり、前が詰まった時の脚の溜まり方は、ヴァンセンヌとウオッカとでは天と地ほど違うわけで、例えヴァンセンヌがスムーズなレースをしたとしても、モーリスとの後先は極めて微妙なモノだったと私は思います。

今回はこのあたりで○

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