ゴールドシップが2連覇を果たした今年の宝塚記念を振り返ってみましょう。まずは全頭個別ラップをどうぞ。
着順 | 馬番 | 馬名 | タイム | 200 | 400 | 600 | 800 | 1000 | 1200 | 前6F | 1400 | 1600 | 1800 | 2000 | 2200 | 後5F | 2100 | Goal |
1着 | 11 | ゴールドシップ | 2:13.9 | 14.0 | 11.3 | 12.2 | 12.6 | 12.5 | 12.2 | 74.8 | 12.2 | 11.7 | 11.7 | 11.5 | 12.0 | 59.1 | 5.80 | 6.20 |
2着 | 5 | カレンミロティック | 2:14.4 | 13.3 | 11.5 | 12.4 | 12.8 | 12.6 | 12.0 | 74.6 | 12.2 | 11.8 | 11.7 | 11.7 | 12.4 | 59.8 | 6.00 | 6.40 |
3着 | 3 | ヴィルシーナ | 2:14.6 | 13.0 | 11.4 | 12.3 | 12.9 | 12.8 | 12.0 | 74.4 | 12.1 | 11.8 | 11.8 | 11.8 | 12.7 | 60.2 | 6.10 | 6.60 |
4着 | 4 | ヒットザターゲット | 2:14.6 | 13.9 | 12.1 | 12.5 | 12.5 | 12.4 | 12.0 | 75.4 | 12.1 | 11.8 | 11.5 | 11.7 | 12.1 | 59.2 | 5.85 | 6.25 |
5着 | 2 | デニムアンドルビー | 2:14.6 | 13.7 | 11.7 | 12.5 | 12.6 | 12.3 | 12.0 | 74.8 | 12.2 | 11.7 | 11.6 | 11.8 | 12.5 | 59.8 | 6.00 | 6.50 |
6着 | 12 | フェイムゲーム | 2:14.7 | 13.2 | 11.3 | 12.3 | 12.9 | 12.8 | 12.0 | 74.5 | 12.1 | 11.8 | 11.7 | 11.8 | 12.8 | 60.2 | 6.20 | 6.60 |
7着 | 7 | ウインバリアシオン | 2:14.8 | 13.7 | 11.8 | 12.5 | 12.7 | 12.5 | 12.1 | 75.3 | 12.2 | 11.7 | 11.6 | 11.7 | 12.3 | 59.5 | 6.00 | 6.30 |
8着 | 1 | ホッコーブレーヴ | 2:14.8 | 13.8 | 11.9 | 12.5 | 12.6 | 12.3 | 12.1 | 75.2 | 12.1 | 11.7 | 11.7 | 11.5 | 12.6 | 59.6 | 6.20 | 6.40 |
9着 | 6 | ジェンティルドンナ | 2:15.1 | 13.3 | 11.8 | 12.5 | 12.7 | 12.5 | 12.2 | 75.0 | 12.2 | 11.7 | 11.7 | 11.8 | 12.7 | 60.1 | 6.00 | 6.70 |
10着 | 8 | トーセンジョーダン | 2:15.3 | 13.6 | 11.9 | 12.8 | 12.7 | 12.4 | 12.0 | 75.4 | 12.1 | 11.7 | 11.5 | 11.9 | 12.7 | 59.9 | 6.10 | 6.60 |
11着 | 10 | メイショウマンボ | 2:15.4 | 13.5 | 11.8 | 12.6 | 12.7 | 12.4 | 12.1 | 75.1 | 12.2 | 11.7 | 11.7 | 11.7 | 13.0 | 60.3 | 6.30 | 6.70 |
12着 | 9 | ヴェルデグリーン | 2:16.1 | 13.9 | 11.9 | 12.6 | 12.7 | 12.5 | 12.0 | 75.6 | 12.2 | 11.7 | 11.5 | 11.9 | 13.2 | 60.5 | 6.40 | 6.80 |
Mahmoud計測RL | 2:13.9 | 13.0 | 11.4 | 12.3 | 12.9 | 12.8 | 12.0 | 74.4 | 12.1 | 11.8 | 11.8 | 11.8 | 12.0 | 59.5 | ||||
公式RL | 2:13.9 | 12.9 | 11.6 | 11.9 | 13.2 | 12.8 | 12.1 | 74.5 | 12.0 | 11.8 | 11.7 | 11.8 | 12.1 | 59.4 |
今年もゴールドシップが勝ったわけですから、昨年と比較するといろいろわかってくるかと思います。その昨年はシルポートの玉砕的な逃げがありましたが大勢に影響はなかったので、残り1Fまでは実質的な先頭馬ダノンバラードのラップ、ラスト1Fはゴールドシップのラップを用い、それをレースラップと見なして比べてみましょう。
●2013
13.0 - 11.5 - 11.9 - 12.4 - 12.3 - 12.4 - 12.4 - 11.7 - 11.5 - 11.8 - 12.3
●2014
13.0 - 11.4 - 12.3 - 12.9 - 12.8 - 12.0 - 12.1 - 11.8 - 11.8 - 11.8 - 12.0
昨年と今年の違いですが、まず目に付くのが前半3~5F目。今年はこの3F区間が1.4秒遅い形でした。そして次の2F区間が今年は0.7秒速くなっています。こんなレースラップだと後方勢はバックストレッチでゆっくりと差を詰めるスキがほとんどないわけで、結果通り先行勢が圧倒的有利な流れとなったようです。逃げたヴィルシーナが3着に粘っているように、6Fのロングスパート的なレースとはいえ、その後半のペースは決して上げ過ぎていない絶妙なペース配分だったかもしれません。このペースは鞍上が意図した物なのか、掛かり気味だった2番手フェイムゲームの影響からなのかはわかりませんが。
3強と目された馬では、ウインバリアシオンはこんなペースでやられた1頭と言えるでしょうか。緩めた前半3~5F目区間を1F分、後ろにズレるような展開なら、もうちょっと終いのキレが出たんじゃないかと思いますが、いずれにせよこの位置取りではノーチャンスだったようです。ジェンティルドンナは馬場状態に対する適性度がモロに出たのは確かですが、残り4F目からスピードアップすれば前エントリーで書いたように苦戦必至となる形。ウオッカもそうだったんですが、この手の牝馬が上がり4F戦をガチで挑むのはなかなか難しいんですね。折角1周目スタンド前ではカレンミロティックの真後ろにいましたから、そのままレースを進めた方がもうちょっとマシな結果だったように思います。ただ、それだと岩田騎手を降ろした事と矛盾しますから、まあやむを得ないレースの進め方だったとも言えるでしょうか。コース性質が違いますから単純な話とはなりませんが、自身が勝った2012ジャパンカップやウオッカが勝った2009ジャパンカップは、この牝馬たちの特性を生かした勝因がしっかりあったものと思われます。
さて、1年ぶりのG1制覇となったゴールドシップ。昨年のラップと並べて比較してみましょう。
●2013
13.2 - 11.4 - 12.4 - 12.5 - 12.3 - 12.2 - 12.3 - 11.7 - 11.4 - 11.5 - 12.3
●2014
14.0 - 11.3 - 12.2 - 12.6 - 12.5 - 12.2 - 12.2 - 11.7 - 11.7 - 11.5 - 12.0
テンの1Fが今年は0.8秒遅いのですが、勝ちタイムは0.7秒落ち。前半2F目から非常に良く似たラップを刻んでいます。大枠的には昨年と同じように勝ったな、と見ていいかと思います。しかし、細かい部分では鞍上の競馬スタイルによる相違点がくっきりと浮かび上がっていました。
ゴールドシップの個別ラップ表は更新してあります。ご自由にダウンロードしてください。
http://ux.getuploader.com/Mahmoud1933/download/35/Gold+Ship+Lap+20140629.xlsx
まずは前半4F区間を見てみましょう。ゴールドシップの完歩ピッチの推移はまるで違う形です。前半100~800m区間における100m毎の平均完歩ピッチを抜き出してみましょう(単位は秒/1完歩)。
●2013
0.418 - 0.425 - 0.440 - 0.449 - 0.451 - 0.455 - 0.462
●2014
0.439 - 0.434 - 0.428 - 0.439 - 0.446 - 0.452 - 0.455
鞍上のアクションの違いがデータにもしっかりと現れています。昨年の100~200m区間はゴールドシップ自身キャリアハイとなる猛ピッチでダッシュさせていました。ところが今年はラップタイムでもわかるように鞍上は急かせてダッシュさせようとはしていません。詰まる所、どちらの切り口でもテンの2F目はかなりの高スピードに上がっているわけで、ゴールドシップをどう走らせようかというスタンスの違いが垣間見えて非常におもしろいデータとなりました。
また、ラストスパート時も違いが見られます。後半1000mの完歩ピッチも見て行きましょう。
●2013
0.452 - 0.455 - 0.447 - 0.436 - 0.428 - 0.434 - 0.437 - 0.439 - 0.447 - 0.465
●2014
0.457 - 0.455 - 0.447 - 0.448 - 0.449 - 0.445 - 0.439 - 0.436 - 0.434 - 0.447
昨年は残り700m辺りからスピードを上げ残り600mから一気に勝負を決めに掛かっています。一方、今年は相手なりに4コーナーまで併せ打って、最後の直線でスパートを掛けるという、実にスタンダードなスパートとなっています。ゴールドシップのレースを今回初めて見た人なら、「無尽蔵なスタミナ」とか「超ロングスパート戦法」という、世間一般の見方とは違うイメージを持つのではないでしょうか。
私は菊花賞のレースぶりから古代的なステイヤー要素を感じたものの、それなら皐月賞での末脚との調和性がとれない感じがしていて、それが2013天皇賞・春でのレース内容で何となく裏付けられた感があったのですが、そもそも論として溜めればグンと伸びるのは札幌2歳Sでしっかりと見せていたんですよね。また、「気分屋で走りの質が変わってくる」というイメージを私は全く持っていません。ちなみにゴールドシップ全競走のスピード指数表を貼っておきましょう。

菊花賞以降、2013JCは論外として2014天皇賞・春以外は、上がりが速くとも遅くとも、指数自体は極めて安定しています。
この後は凱旋門賞に挑戦するかもしれませんし、それはそれで非常に楽しみなのですが、ゴールドシップの生産者の「府中のG1を取りたい」というコメントには個人的に賛同したいですね。その術はゼロじゃないんやないかと思います。
今回はこのあたりで。
※2014/07/01 0:37追記
先日、大変おもしろいblogを発見しました。そのblogの作者さんは天才ですよ!
私のblogもネタとして使って頂いているようです。是非ご覧になってください!
馬はどこまで限界を突き破れるのか!?
http://netathoroughbred.blog.fc2.com/