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Channel: 上がり3Fのラップタイム検証
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2011 ジャパンカップダート 回顧

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キツいペースで先行してそれなりに粘った馬は、次走でほぼ例外なく馬券的な狙い目となります。逆に、好走したもののヌルいペースに恵まれた馬は、次走ペースが上がって厳しい戦いを強いられるケースがままあります。前走の経験を良い意味でも悪い意味でも引き摺ってレースをする事が多いわけで、今回のトランセンドは行き脚がどれくらい付くのか疑問な点もあり、苦しいレースになるかと思っていましたが・・・、さすがの馬ですね。

では全頭個別ラップをご覧頂きましょう。トランセンドと2、3着馬の着差は2馬身、0.3秒差となっていますが、実際のところタイム差は0.38秒くらいというか、限りなく0.4秒に近い差がありましたので、より現実感を持たせる意味でワンダーアキュート、エスポワールシチー等、数頭は公式走破タイムより0.1秒遅くしています。また、阪神ダートの残り1400m地点の計時タイミングはいつも狂っていますので、検証の意味を含めて3方向同期したレース映像もご覧になってください。ホントにこの部分は致命的にズレます。一応念押ししておきますが、ラップ専門家の方々は重々承知の上ですよね?


着順馬番馬名タイム200400600前3F80010001200中3F140016001800後3F1700Goal
1着16トランセンド 1:50.612.511.112.235.812.412.712.337.412.212.312.937.46.26.7
2着9ワンダーアキュート 1:51.013.711.212.237.112.012.612.437.012.212.412.336.96.06.3
3着6エスポワールシチー 1:51.012.711.112.236.012.312.712.337.312.212.413.137.76.36.8
4着4ラヴェリータ 1:51.113.011.212.136.312.312.612.337.212.212.313.137.66.36.8
5着13ダノンカモン 1:51.113.111.312.336.711.912.712.336.912.312.412.837.56.26.6
6着11ミラクルレジェンド 1:51.213.211.712.437.311.812.612.336.712.312.212.737.26.26.5
7着14ヤマニンキングリー 1:51.213.511.512.637.611.812.412.336.512.112.112.937.16.26.7
8着2ソリタリーキング 1:51.313.211.212.336.712.212.612.437.212.212.412.837.46.26.6
9着12ニホンピロアワーズ 1:51.312.611.312.436.312.312.712.337.312.312.313.137.76.36.8
10着8バーディバーディ 1:51.413.011.212.336.512.112.712.437.212.412.412.937.76.36.6
11着1マカニビスティー 1:51.413.711.512.237.412.012.512.336.812.412.012.837.26.26.6
12着5テスタマッタ 1:51.714.111.512.337.911.512.012.335.812.312.413.338.06.46.9
13着10フリソ 1:52.213.311.312.437.011.912.612.436.912.512.613.238.3**
14着7ダイショウジェット 1:52.413.211.312.336.812.112.612.437.112.412.713.438.5**
15着15トウショウフリーク 1:53.012.611.212.236.012.412.712.437.512.513.313.739.5**
16着3エイシンダッシュ 1:53.613.811.512.437.711.612.212.636.412.813.013.739.5**


Mahmoud計測RL1:50.612.511.112.235.812.412.712.337.412.212.312.937.4



公式RL1:50.612.510.512.835.812.412.712.337.412.212.013.237.4





2強対決のダート戦ではハナに立った方が勝つ事が圧倒的に多いのですが、トランセンドはここ2走2番手の競馬、エスポワールシチーは前走以外でも数回差す競馬で勝利を上げているわけで、6番枠と最大外16番枠という枠順の大きな差も相まって、どちらのテンが速いのかで勝負の全てが決まるのではなく、1コーナーを廻る段階で如何にスムーズな競馬が出来るか、あるいは如何に相手を序盤で苦しめる事が出来るかが勝負のポイントだったと思われます。

この2頭のタイプは人によって論じ方が変わってくるかもしれませんが、単純に表現すればトランセンドは持続力系、エスポワールシチーは瞬発力系となります。ハナに立つ事によって有利な度合いが強まるのはトランセンドの方ですが、いざスタートダッシュ比べとなれば瞬発力系のエスポワールシチーが速いはずです。で、内枠に入ったエスポワールシチーが1コーナーまで主導権を握る公算が高く、自ら逃げなくてもトウショウフリーク等を間に挟みながら1コーナーでトランセンドを外に張る事が可能であり、佐藤哲三騎手はエスポワールシチーに脚を使わせながらも、そんな戦いを挑んでくるだろうと私は予想していました。一方トランセンドは前走JBCCで気の抜けたレースをしてきており、少々スタートダッシュに戸惑う事を予感しておりました。

ところがゲートを真っ先に出て瞬時にリードを取ろうとしたのがトランセンドでした。1コーナーのインを真っすぐ目掛けたコース取りで、ココが最大の勝負処といった気迫を前面に見せながら藤田騎手が懸命に追って行きました。それに対しエスポワールシチーは12番枠ニホンピロアワーズに先を越される形。トウショウフリークを挟んだ向こう側に居るトランセンドにプレッシャーを与える術はほとんどありませんでした。結果、トランセンドは少々強引な進入ではありましたが1コーナーで先頭のままインを取る事を難なく成功。トランセンドの勝利が決まった瞬間でした。

ちょっとココで先日Tweetした内容を転記しておきます。

「京都ダ1800mのテンの1F目は12秒台前半が多く刻まれているのに対し、阪神ダ1800mのテンの1F目は12秒台後半が圧倒的に多い。阪神ダ1800mはスタート後急坂がある為にこのような違いがあると説明されているかもしれないが、それだけなら半分正解でしかない」

「実は京都ダ1800m、助走距離が通常の5mに対し倍以上の12m程度設けられている。これは残り200mのハロン棒が邪魔になるからだと思われるが、この為通常より0.2~0.3秒速く計時されてしまう。ウォータクティクスのレコードも1F平均12秒切りではなかったはずだ」

京都ダート1800mとテンの1Fのラップを単純に比べても全く意味がありません。助走距離の違いおよび坂の有無によってかなりのタイム差が生まれてしまいます。今回トランセンドが刻んだ1F12.5秒という値そのものは速く見えませんが、同馬のキャリア的に見てほぼMAX値といっても差し支えのない立派なスタートダッシュだったと思います。佐藤哲三騎手はあえて強引に行かなかったとも見えましたが、前半400mまでのラップから判断すれば無理できなかったと言えるかもしれません。また、私が算出した馬場差は昨年の同レースと比較すればプラス1.9秒。1Fに付きおよそ0.2秒掛かるかなり重い馬場でした。トランセンドは昨年前半3Fを今年とほぼ同ラップの12.5-11.1-12.3(mahmoud計測値)で逃げていたわけで、今年は実質1F毎0.2秒速く厳しい逃げを打ったのが良く分かると思います。したがってエスポワールシチーが消極的だったというよりは、トランセンドの逃げが圧巻だったという解釈の方が妥当かなと思います。それにしても前走JBCCは何だったのか。まあ体力温存したかったのでしょう・・・。

差しに拘ったが為にオーロマイスターに一蹴された2010南部杯、そしてその次のレースとなったBCクラシックで猛ペースに付き合って玉砕といい、どうもこの佐藤哲三というジョッキーは勝負師的な意味で、少し過大評価されているところもあるのかな、と思ったりします。あくまでも机上側の意見ですが、理に適った戦略性に欠ける事が多いんじゃないかと。今回のレースでも1コーナーに入るギリギリのところで、結局慌てるかのようにニホンピロアワーズの内に捻じ込んで行きました。ゲートオープンから緊迫感が少し足らなかったように見えたんですね。というか、「トランセンドに楽な競馬はさせない」という風情は感じられませんでした。

2着のワンダーアキュートは出遅れて後方からの競馬となり、しかも最後の直線では前が開かずに苦労していましたが、進路を見付けてからは強烈な末脚を使っていました。鞍上談としては道中ペースが上がらずに苦しかったとの事でしたが、ラップ推移を見ると無駄な脚を使わずに上手く追走出来ていたと思いますね。それがラストの伸び脚に繋がったと思われます。一方、ヤマニンキングリーやテスタマッタらは、向こう正面の入口から無駄な速脚を使っています。特にヤマニンキングリーのラップ推移は上下動が激し過ぎで、M.デムーロ騎手はこういうところが実に雑です。ヴィクトワールピサの騎乗ぶりとは紙一重なんですが、「いざ追い出してから伸びなかったね」なんて今回は当たり前ですね。まあこんな事をやっているからこそ、大胆な戦略を行動に移す事が出来るとも言えますけどね。

さて、以前のエントリーでも触れましたがダート四天王の位置付けを、今回の結果を持って再び考えてみましょう。そもそもダート競馬は最終的な走破タイムに大きく影響するほどの、極度のスローにはなりませんから、スピード指数の値そのものでの比較でかなり力関係を整理できるかと思います。というわけで、私算出の各馬の最高指数を書いておきましょう。公営競馬は指数を簡単に出せませんが、今回は特別に弾き出してみました。

スマートファルコン
114:2010東京大賞典1着
110:2011帝王賞1着(ラップ推移的にプラスアルファが見込める)

フリオーソ
111:2010東京大賞典2着
110:2010日本テレビ盃1着

エスポワールシチー
110:2010フェブラリーS1着

トランセンド
108:2011ジャパンカップダート1着

MAX値の比較ではこんな順序になります。指数100台後半の高値安定という観点から言えばトランセンドが一番となります。また他の3頭は年齢的に、あるいはレースぶりからこれ以上の上積みは難しいかもしれません。特にスマートファルコンの今秋2戦は、今年の帝王賞の面影が全くありませんでした。もともと高パフォーマンスを毎回行えるタイプではないものの、ちょっと今後に影を落とすレース内容だったと思います。東京大賞典でのレースぶりは注目です。

過去の馬についても何頭か最高指数を書いておきましょう。参考になるかと思います。

ヴァーミリアン
112:2007ジャパンカップダート1着

カネヒキリ
113:2006フェブラリーS1着

クロフネ
119:2001武蔵野S1着
115:2001ジャパンカップダート1着

ナリタハヤブサ
114:1992武蔵野S1着

今回はこのあたりで。

2011 香港国際競走 回顧

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香港国際競走をちょっと振り返ってみましょう。といってもスプリントとマイルだけになりますが。オフィシャルリザルトはコチラ。

・スプリント
http://www.hkjc.com/english/racing/results.asp?racedate=11/12/2011&raceno=5&venue=ST

・マイル
http://www.hkjc.com/english/racing/results.asp?racedate=11/12/2011&raceno=7&venue=ST

・カップ
http://www.hkjc.com/english/racing/results.asp?racedate=11/12/2011&raceno=8&venue=ST

・ヴァーズ
http://www.hkjc.com/english/racing/results.asp?racedate=11/12/2011&raceno=4&venue=ST

それぞれ『Sectional Time & Position』で各馬の2F毎のスプリットタイムがわかります。

走破タイムの日本流補正についてはコチラの過去エントリーをどうぞ。
http://ameblo.jp/mahmoud1933/entry-11023551649.html

ではスプリントから振り返ってみましょう。何頭かのレースラップをご覧ください。

着順馬番馬名タイム200400600前3F80010001200後3F1100Goal
1着4Lucky Nine1:07.812.510.510.833.811.111.011.934.05.76.2
5着14Curren Chan1:08.212.010.510.933.411.511.411.934.85.86.1
12着1Rocket Man1:08.612.010.310.933.211.511.712.235.46.06.2


Mahmoud計測RL1:07.811.910.310.933.111.411.411.934.7



今年のスプリンターズSのラップはコチラ。
http://ameblo.jp/mahmoud1933/entry-11038622548.html

勝ちタイムは日本流換算値で1:07.8。阪神競馬場で行われた今年の高松宮記念より0.1秒速く、中山競馬場でのスプリンターズSより0.4秒遅かったわけですが、中山競馬場の差し引き約3m下る勾配を踏まえると(ちなみに現時点で私が設定している芝1200mの基準タイムは中山がマイナス0.3秒)、この3レースの勝ちタイムはほぼイーブンと言えるんじゃないでしょうか。短絡的に日本だけが特殊な高速馬場と言うのは間違いなのが良く分かる例ですね。

香港競馬はスプリント戦でも比較的緩い流れになる事が結構あるのですが、このレースはテンからかなり速いペースとなりました。コース形態を考えるとスプリンターズSより厳しい前半だったと言えるでしょう。さて問題のRocket Man。上記のエントリーにあるラップ表と比べれば良く分かりますが、テンの2FはスプリンターズSと並んで最速タイ。キャリアの中で実質最もハイラップを刻んだと思います。デキの問題はさておき、こんなラップを刻む形になれば「ロケットマンを倒す方法、教えます。」そのものでしたね。来年はフェブラリーSへの参戦を希望します。

Lucky Nineは若干出遅れたのが幸いしました。このペースを追っかけなくて正解。逆にCurren Chan(この文字列は何かカッコイイ)はテンで勢いよく行き過ぎた形となりました。その為直線で瞬発力を使えず馬群に包まれた格好となり、ラストはしぶとく伸びては来たものの5着。それぞれホームでしっかり勝利したというだけで、能力的にはそんなに差が無いと判断出来ると思います。まあ一つ言わせてもらえば、最近の日本の1200m戦はペースが遅過ぎ。小細工なしの競馬を目指してください。

次はマイルを振り返ってみましょう。何頭かのレースラップをご覧ください。

着順馬番馬名タイム2004006008001000前5F120014001600後3F1500Goal
1着6Able One1:32.812.110.811.311.411.657.211.711.712.235.66.06.2
8着13Sahpresa1:33.212.710.911.311.411.557.811.711.811.935.45.96.0
13着14Apapane1:34.212.411.011.311.411.557.611.812.212.636.66.26.4


Mahmoud計測RL1:32.812.110.511.111.311.856.811.911.912.236.0



今年のヴィクトリアマイルのラップはコチラ。
http://ameblo.jp/mahmoud1933/entry-10894419999.html

今年の安田記念のラップはコチラ。
http://ameblo.jp/mahmoud1933/entry-10919585361.html

Apapaneは好位追走も直線失速。この馬にとっては追走ペースがあまりにも速過ぎました。牡馬混合レースだと少し足らない馬がガチンコペースに付き合っては一溜まりもありません。今年の安田記念に例えるなら、ジョーカプチーノと同じくらいのペースで道中走っていた感じです。「直線に向いたらさっぱり手応えがなくなった」というのは、Apapaneのレースキャリアの内容からすれば妥当な結果でしょう。また、Sahpresaもペースに関係なく調子良く追走させると、直線伸びませんね。昨年のMCSのようなレースをすれば、このペースでしたから嵌っていた可能性があったと思います。

それにしても勝ったAble Oneはこのペースで押し切ったのだから見事の一言。全盛期のGood Ba Baが大レコードで勝った2008年の同レースで2着に入っただけの事はあります。この馬のペースは今年の安田記念でのシルポートと同等でした。まあGood Ba Ba世代が勝ったという事は、ここ最近の香港馬のレベルはやや低迷気味と言えるでしょうか。


話は変わりますが、グリーンチャンネルの解説はいつものように合田さん。未だに良く分かっていらっしゃらないようなので、お近くの方は計時方法に関して教えてあげて下さいね。で、香港マイルのレース後、こんな事を仰っていました。

「最初の2Fが24.02、次の2Fが22秒台を計時していますから、ポンと出た後、ハナ切った後、もう一回ギアを入れた感じがありますね」

「結果論としてですが2番手に居たAble Oneがそのまま粘ってますから先行馬ペースだったわけで・・・」

過去の香港マイルと香港チャンピオンズマイルの前半4Fのラップを書いておきましょう。2008年秋シーズンから1/100秒単位での計時となっています。それに伴って日本流換算値にする場合、1/10秒単位での計時なら1.2秒マイナス、1/100秒単位での計時なら1.4秒マイナスすれば概ねOKです。

香港マイル
2011年:24.02-22.39
2010年:24.77-22.97
2009年:25.02-22.50
2008年:24.34-22.22
2007年:25.20-23.10
2006年:24.70-22.30
2005年:24.90-23.50
2004年:24.40-23.20
2003年:24.20-22.20
2002年:24.90-23.70
2001年:25.10-22.80
2000年:25.00-22.80
1999年:25.00-22.50

香港チャンピオンズマイル
2011年:25.30-23.50
2010年:24.66-22.34
2009年:25.44-22.91
2008年:24.40-22.50
2007年:25.10-23.90
2006年:24.60-23.20
2005年:24.70-22.60
2004年:24.40-22.70
2003年:26.00-24.40
2002年:24.60-22.80
2001年:26.30-24.90

今年の香港マイルのテンの2F24.02というラップは一番速いのですが、上記の補正値を踏まえると2番目に速かったのは2008年香港マイルでの24.34。端的に言って今回はダントツに速かったのです。前半4Fも一番速かった。彼は2F毎のスプリットタイムがリアルタイムで表示される北米のレースも当然見ているわけで、テンの2Fは22秒台が当たり前、場合によっては21秒台も目にする事がありますから、24.02という値が遅く見えるんでしょうけどね・・・。でもこれでは、まるで論理的でない解説しかできない一部の無能な野球解説者とさほど変わらないレベルになってしまいますね~。まあせめて、自分の範疇じゃ無い部分は黙っておけばいいと思いますが。

今のところ香港やシンガポールは出走馬全頭の自動計測システムが使われていますが、オーストラリアでも近々導入されるみたいです。もう少しタイムに明るい海外競馬の解説者の登場が望まれる時代と思いますね。例えば・・・、半笑いさんなら、いい解説が聞けそうに思うのですがどうでしょう!

今回はこのあたりで。

2011 朝日杯フューチュリティS 回顧 ~期待の星 アルフレード~

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朝日杯フューチュリティS(朝日杯2歳S、3歳S)と言えば思い出されるのはやはりマルゼンスキー。また、JRA-VANのデータが提供されている1986年以降のスピード指数上の比較では、ナリタブライアンやグラスワンダーなら古馬と同斤でもG2~G3を十分勝てるようなハイパフォーマンスを見せた事がありました。この3頭はちょっと別格でありますが、今回勝ったアルフレードは近年だとかなり上位のパフォーマンスを見せてくれたので、このレースを簡単に振り返ってみましょう。

実は私、このアルフレードのレースは一度も見ていませんでした。新馬戦勝ち後、血統だけは必ずチェックしていますので、血統表のイメージのみ持っていました。I理論的な話になりますが父シンボリクリスエスの血統構成(クロス配置)はバランスが悪くて、その仔もバランスの悪さを引きずる傾向にあります。端的に言って超大物を出す確率は極めて低い種牡馬と思っているのですが、アルフレードは比較的バランスの悪さが軽減され、父の良いところ(スピード)を上手く引き継いでいる配合馬だと睨んでいました。余談になりますが、父シンボリクリスエスは血統構成上、2000m超は難しいだろう、古馬になってからの上積みはないだろう、なんて予想していましたが、結果は全くの見当はずれ。特に引退レースとなった2003年有馬記念のパフォーマンスは、同レース史上最高と思えるモノであり、たとえディープインパクトが挑んでも敵わなかったのでは、と思わせるほどの優駿となりましたね。アルフレード自身も血統構成上スタミナには疑問符が付きますが、父の前例を踏まえて見ていかねばと思っています。

で、今回のレースの直前追い切りの映像を見た後、ようやく過去2戦のレースを見る事になったわけですが、これがなかなか興味をそそるレース内容だったというか、魅力的な走りをしていたのにようやく気付いたわけでした。というわけで朝日杯フューチュリティSの上位4頭、そしてアルフレードの過去2走のレースラップをご覧ください。

着順馬番馬名タイム200400600800前4F1000120014001600後4F1500Goal
1着3アルフレード1:33.412.410.811.511.446.112.012.111.411.847.35.86.0
2着4マイネルロブスト1:33.712.510.911.411.646.411.912.011.611.847.35.86.0
3着15レオアクティブ1:33.813.011.311.311.647.211.611.811.511.746.65.85.9
4着12トウケイヘイロー1:33.812.411.211.411.446.411.512.111.612.247.46.06.2


Mahmoud計測RL1:33.412.310.811.411.445.911.912.111.711.847.5



公式RL1:33.412.211.011.311.445.911.912.011.711.947.5



2011年10月29日 新潟10R きんもくせい特別
着順馬番馬名タイム200400600800前4F1000120014001600後4F1500Goal
1着4アルフレード1:36.613.512.412.713.251.812.311.110.610.844.85.35.5


Mahmoud計測RL1:36.613.011.712.413.150.212.611.611.310.946.4



公式RL1:36.613.011.512.613.150.212.611.810.611.446.4



2011年09月25日 中山5R 新馬
着順馬番馬名タイム200400600800前4F1000120014001600後4F1500Goal
1着8アルフレード1:38.013.212.413.012.851.412.511.911.111.146.65.55.6


Mahmoud計測RL1:38.013.012.112.912.950.912.611.911.211.447.1



公式RL1:38.013.012.112.813.050.912.611.611.311.647.1



2連勝したのは共に超スローで流れたレースですから、3.1倍という1番人気は過剰なモノと馬券戦略上判断するのはある意味当然な部分があります。しかし、新馬戦、きんもくせい特別を細かく見ていけば、スロー専用機ではない資質を感じ取る事ができると思います。まず両レースで目に付くのは引っ掛かり具合がハンパではない事。まあこれだけペースが緩いとしょうがないのですが、馬自身は前掛かりな気持ちが良く出ています。で、抑えるのを止めれば一気に突っ走って行きそうな雰囲気が一見ありますが、直線でのラップを見ると、なかなか持続的な末脚が使えているのが分かるかと思います。新馬戦は残り2F戦でしたがゴール板までキッチリ伸びています。というか、高速度合いの高いこの日の馬場状態からすると1F10秒台に入らなかったのが意外な結果であり、上級レベルでのスローのキレ味勝負になるとかえって分が悪いとさえ思われる内容でしょう。

続くきんもくせい特別は上がり3Fの1F平均が約10.8秒という、新潟外回り特有の超高速な上がり特化型レースとなりましたが、ラスト100mを5.5秒で纏められたのは持続的な脚を使える証拠と見て間違いないかと思います。おそらく残り500m~100mの区間は100m5.3秒でずっとカバー出来ていたのではないかと思われます。これなら、掛かり気味の気性面も踏まえ、今回の朝日杯フューチュリティSで想定されるような流れのレースに対応する可能性はかなり高いと見る事が可能だろうと思います。この、きんもくせい特別の公式レースラップは新潟外回りにしてはズレが少ない方でしたが、それでもラスト1Fが11.4秒はちょっと・・・。公式レースラップからアルフレードの推定ラップを弾き出すと、そりゃ単なる瞬発力に特化した末脚を使ったと見えますもんね。ガチンコのマイル戦だと苦しいとみてしまうのは分からなくもないです。

正直こんなに人気になるとは少しビックリだったのですが、いろんな視点からこのアルフレードの資質の高さを読み取った方が沢山居たと言う事ですね。また、誰もが分かっている事ですが、C.ウィリアムズ騎手の手綱捌きもさすがというモノでしたね。おそらく大多数の日本人ジョッキーなら、過去2走の内容からしてスタートから押していく事は出来なかったんじゃないでしょうか。ええ、引っ掛かるのを恐れて・・・。まあ強い馬が上手いジョッキーにキッチリ乗られて勝ったなという、極めて順当な一戦だったかと思います。

さて今後のアルフレードですが、やはりダービーを大目標にするんでしょうね。私的には将来的にマイルあるいは中距離のチャンピオンホースを目指して欲しいという意味において、皐月賞後は思い切ってダービーをスルーして、安田記念、宝塚記念を視野に入れてもらいたいと思います。今年の安田記念は3歳馬リアルインパクトが勝ちましたが、来年アルフレードがリアルインパクトと対戦すれば、斤量差が4kgありますからまず9割方アルフレードが勝つ事でしょう。折角今回のレースで自力勝負に持ち込んで強いところを見せたわけですから、折り合い選手権的レースには見向きもしない姿勢で才能を更に伸ばして行って欲しいと思います。

今回はこのあたりで。

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2011 有馬記念 展望

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3冠馬オルフェーヴル対古馬勢といった図式の有馬記念となりましたが、要は3歳馬って強いの?という部分をどう判断するかですよね。

私が長年使用しているスピード指数という物は、元々施行距離、施行競馬場の違いを横並びで見る為のツールです。というわけで過去の3冠馬が有馬記念に登場した時、スピード指数はメンバー中どんな順番だったかを振り返ってみましょう。まずは1994年ナリタブライアンからどうぞ(指数は斤量調整値)。

$上がり3Fのラップタイム検証

皐月賞の時点で既に古馬G1レベルの指数を叩き出しています。特に前走菊花賞は圧倒的な内容。その菊花賞では当時の世界中のどんな馬が出て来ても、勝つのはナリタブライアンだったと思います。したがって有馬記念での単勝1.2倍も当然のオッズ。2500m戦においては古馬勢が少し物足らないメンバーでもありましたね。私はアンチ・ヒシアマゾンでしたので、ナリタブライアン=チョウカイキャロルにぶち込み滅びましたw

次は2005年ディープインパクトです。

$上がり3Fのラップタイム検証

ダービーではナリタブライアンに全くヒケを取らない、あるいは上がりの脚を考えれば上回っていたかもしれない高パフォーマンスを見せていました。しかし1994年と違うのは古馬勢がちょっと強くなっています。100以上(古馬で100の指数なら実指数は104)をマークしている馬が目白押し。そして最大のポイントは菊花賞が上がり特化過ぎる内容だった点。勿論余力十分の走りだったのですが、それはあくまでも仮定の話。実際の追走ペースは非常に遅く、古馬勢に混じってキツイ流れに乗っかった時は未知数というか、苦しい戦いになるのはまず間違いないところ。ナリタブライアン程の優位性は無かったわけです。

では今年はどうなのか見ていきましょう。ジャパンカップの回顧
http://ameblo.jp/mahmoud1933/entry-11095542199.html
と合わせてご覧ください。

$上がり3Fのラップタイム検証

オルフェーヴルの指数ですが特筆すべき物は何もありません。そしてダービー、菊花賞ではオルフェーヴル並みに盤石な2着だったウインバリアシオンがこの走り。ジャパンカップでは3歳馬で主役じゃなくとも馬券圏内に入る馬が多かっただけに、現3歳のレベルは大した事はないと思います。

しかし古馬勢も厚い壁というほどではありませんね。また、オルフェーヴルは指数が低くても上がり指数は相当な値。神戸新聞杯はあれほどの超スローなので当然なのですが、皐月賞やダービーは、スピード指数と上がり指数の関係性がちょっと異常。要はそこそこの指数を叩き出すのが不可能なほどペースが緩んでしまったものの、それを常識以上の上がりタイムで走破時計を挽回したのです。こんな形でG1を2連勝したのは他に例がないかもしれません。判断に苦しむ走りをしていたなあ、というのが正直な気持ちなので、発走直前まで悩む事になりそうです。そして、どうも今年はワクワクする気持ちが湧いてきません。何とか迫力あるレースとなる事を期待したいのですが・・・。

今回はこのあたりで。

2011 有馬記念 回顧 ~ウエシマ作戦失敗の巻~

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今年の天皇賞・春とは少し趣が違いましたがビックリ度は同様であり、過去に例を見ない珍道中となった今年の有馬記念でした。まあ有馬記念というレースは、いろいろと想定外の事が起きてしまいますね~。馬がどんな走りをしたかと振り返るよりも、騎手の戦前の思惑、そしてレース中での心境等、レースに携わる関係者の心理を深く振り返る方が意味あるレースかもしれません。

まずは全頭個別ラップをご覧ください。

着順馬番馬名タイム10030050070090011001300150017001900210023002500後5F2400Goal
1着9オルフェーヴル 2:36.07.512.312.612.413.713.813.812.911.911.811.210.811.357.05.55.8
2着5エイシンフラッシュ 2:36.17.312.012.412.413.613.914.112.911.912.011.310.911.457.55.65.8
3着7トゥザグローリー 2:36.17.112.212.512.513.813.913.913.011.912.011.310.911.157.25.45.7
4着14ルーラーシップ 2:36.27.612.512.512.313.613.813.813.212.011.711.210.811.256.95.55.7
5着10トーセンジョーダン 2:36.37.112.112.212.413.614.014.112.911.912.111.311.011.657.95.75.9
6着3ヒルノダムール 2:36.47.312.112.512.313.614.014.012.911.912.111.410.911.457.75.65.8
7着1ブエナビスタ 2:36.57.212.012.412.313.514.114.012.812.012.111.411.111.658.25.75.9
8着2ヴィクトワールピサ 2:36.57.211.812.112.413.714.014.012.912.112.111.311.111.858.45.76.1
9着13レッドデイヴィス 2:36.57.312.112.412.513.514.013.812.911.812.211.411.111.558.05.75.8
10着12アーネストリー 2:36.67.012.111.912.213.514.114.312.912.111.911.411.311.958.65.86.1
11着11ジャガーメイル 2:36.87.312.512.412.413.713.813.812.911.912.011.411.211.558.05.65.9
12着8ローズキングダム 2:37.17.312.212.512.613.813.914.113.211.911.711.311.011.657.55.75.9
13着6キングトップガン 2:37.47.512.112.412.513.713.914.012.912.012.011.411.012.058.45.96.1


Mahmoud計測RL2.36.07.012.012.012.213.514.114.312.912.111.911.411.311.358.0



公式RL2:36.06.812.012.412.113.114.414.313.012.011.911.411.311.357.9



今回は残り400mからゴール板通過まで、上空からの映像で確認できましたので、全馬の上がり3F区間での1F毎のラップはかなり正確に弾き出せています。ちなみにレースラップとしてのラスト1Fは11.3より11.4と見た方が良さそうかもしれません。残り1F通過時では僅かの差でまだ先頭に立っていなかったオルフェーヴルのラスト1Fはキッカリ11.3でした。また、上がり3Fも一部の馬は公式の値と0.1秒ズレがあります。

問題の1F14秒台区間ですが、公式ラップで14.4となっている箇所は前半900m~1100m区間。公式ラップ上、前半900m通過時は56.4、1100m通過時は70.8となります。この中間部分にあたる前半1000m通過は自動計測されており、そのタイムは63.8でした。という事はこの14.4というラップの100m毎の内訳は7.4-7.0となり、その手前の1Fのラップが13.1ですからちょっと変ですね。上記のラップ表通り最遅ラップは次の区間の14.3だと思います。また、前半700m~900m区間の内訳は6.6-6.9程度と計測しました。したがって1F14秒、100mあたり7秒という極めて遅いラップは、前半800mから少なくとも500mの間でずっと刻まれていたと思われます。これはまさに「15-15で3F流してくれ」という調教みたいな感じですね。過去データを見たわけではありませんが、G1級レース史上最も遅いペースだったのではないでしょうか。ちなみにちょっと昔のステイヤーズSで、1周回少なく間違えたような騎乗をしたジョッキーがいましたが、今回の有馬記念で逃げた騎手は逆にもう1周回しなければ、と思ってたのでしょう。さぞかしステイヤーズSに出たかったわけですね。

まあ冗談はさておき、1周目の4コーナーの攻防は非常におもしろかったですね。あっ、アーネストリーのレースぶりをどうのこうの言う前に、私自身のアーネストリーに対する立ち位置を書いておいた方がいいですね。

アーネストリーはあきらかにスピードタイプであって、スタミナに問題があると判断しています。血統的見地からもそうですが、何よりもミヤビランベリにあっさりと差し返された2009AR共和国杯が良い例。条件戦ならともかくGレースでの2400mクラスではガチンコだと苦しいタイプでしょう。快ペースで勝利した宝塚記念はあくまでも2200m戦。その先の300mが一気に堪えるはずだと思っておりました。また、戦前の陣営の談話は知りませんでしたが、自ら逃げたくない風情があったのは確かであり、そうなれば逃げざるを得なくなった際、アクティブな逃げというか、主導権を握る事が出来るメリットある逃げはまず打てないだろうという予測が成り立つわけで、そういったモロモロの部分からするとネガティブな要素ばかりが目に付く状態だったのです。したがって今回は1円もこの馬絡みの馬券は買わずでした。ちなみに他馬で買わなかったのはトーセンジョーダン、レッドデイヴィス、ジャガーメイル、キングトップガンであり、ルーラーシップ、ヴィクトワールピサ、ローズキングダムの内1頭でも絡めばOKという馬券勝負でした。メンディザバルもうちょっと頑張れよな・・・。

本題に戻りまして、スタートが良かったアーネストリーは逃げたくない一心で1周目4コーナーをかなり膨れて廻って行きました。内に居るヴィクトワールピサ、トーセンジョーダンに前へ行って欲しかったのでしょう。しかしその鞍上は百戦錬磨の凄腕ジョッキー。いくら「どうぞどうぞ」と言われても決して前には出ません。実際、前半300mのラップを獲ったのはヴィクトワールピサでしたが、M.デムーロ騎手は釣られません。結局直線に入る少し手前で佐藤哲三騎手はあきらめて、ようやく馬を内に入れていきました。この間、対ヴィクトワールピサとの距離ロスはおおよそ7m程。時計にして0.4秒ロスしたでしょうか。このアーネストリーの一連の動きは全くの徒労に終わりました。まあタラレバですが、この0.4秒程のロスタイムを無くした走りをしていれば、もうちょっとレースに参戦出来たかもしれないですね~。

その後アーネストリーは1周目のゴール板手前から一気にペースを落として行きます。これは単にペースを落としたかっただけなのでしょうか?もし、再度他馬にハナに立ってもらうが為のペースダウンだったら頷けます。実際どうだったかは興味深いんですけどね。まあ結果的には無駄なあがきに過ぎないわけですが。また他の理由として、極度のペースダウンは後続馬の折り合いに影響を与えさせる場合があります。しかし先団に位置していた外国人騎手達は何ら影響がありませんね。ただ最後方に居たローズキングダムだけは、うまく攻撃が出来たと思います。尤も、その鞍上の技量に助けられた感もありましたが。

それにしても、前述のように1F14秒あまりのペースを500m以上続けたのは何なのでしょう。好意的に解釈するとしたら、鞍上は極度にスタミナ不安を感じていたと考えられるでしょうか。でもね、幾らスタミナ不安があると言っても、前掛かりのイーブンペースで宝塚記念を勝ち抜いてきたわけですし、アーネストリーを高評価してこのレースに挑んだ競馬ファンの方々には、全く納得できない戦法だったのではないでしょうか。この鞍上については、思い切った作戦が取れる半面、そればかりが持ち上げられている印象がある事を過去エントリーで述べていますし、昨年の南部杯およびBCクラシックの騎乗ぶりも書いてきた通り。そういえば今年のダービーでデボネアの鞍上がL.デットーリ騎手に乗り替わって物議を醸した事がありましたが、今回のレースを見れば多くの方が納得できるんじゃないかと思います。まあ、優れた体内時計を騎手は持っている、なんてのは迷信に近いですね。

この超スローペースをほとんどの騎手はじっと我慢して追走していたのですが、紆余曲折があってノリちゃんとアンカツさんが出なかったのも、いろいろと影響したように思います。アーネストリーを常に射程圏に入れていた先団勢がじっとしているのは当然ですが、後方のまま指を咥えているのは如何なものかと思います。そんな中、1頭だけ違う動きを見せたのが池添騎手騎乗のオルフェーヴル。とにかく折り合い重視で最後方の内にいましたが、ペースが落ち込んでいた2コーナーの出口ではすかさずアウトに出ました。まあ安全策を取ったという見方も出来ますが、自力勝負の準備をしていたのも確かな事実。端的に言えば、このレースで勝ちに行った唯一のコンビだったと思います。そして3コーナーから外を廻って進出。ラップタイムを見れば残り4Fから押し上げているのが分かるかと思います。ルーラーシップとローズキングダムも同じように押し上げていますが、これはオルフェーヴルの動きをなぞっただけですね。オルフェーヴルはここで11.8というラップを踏んでいますが、外を廻った分、実スピードはラップ以上に速かった事でしょう。

今回のエントリーでは特別に、ラスト2Fの100m毎のラップを書いておきましょう。おそらく精度は高いと思います。そして参考動画もどうぞ。



5.6 - 5.2 - 5.5 - 5.8 オルフェーヴル
5.6 - 5.3 - 5.6 - 5.8 エイシンフラッシュ
5.6 - 5.3 - 5.4 - 5.7 トゥザグローリー
5.5 - 5.3 - 5.5 - 5.7 ルーラーシップ
5.7 - 5.3 - 5.7 - 5.9 トーセンジョーダン
5.6 - 5.3 - 5.6 - 5.8 ヒルノダムール
5.6 - 5.5 - 5.7 - 5.9 ブエナビスタ
5.6 - 5.5 - 5.7 - 6.1 ヴィクトワールピサ
5.7 - 5.4 - 5.7 - 5.8 レッドデイヴィス
5.7 - 5.6 - 5.8 - 6.1 アーネストリー
5.7 - 5.5 - 5.6 - 5.9 ジャガーメイル
5.5 - 5.5 - 5.7 - 5.9 ローズキングダム
5.6 - 5.5 - 5.9 - 6.1 キングトップガン

最初の100mはまだ約90mがコーナー部分です。次の100m区間はやや下り気味になっており最速ラップとなる区間です。その次は急坂区間ですね。

やはりオルフェーヴルが最速なのですが、コーナー区間は外を通っていますので5.6というラップ以上にスピードが乗っていたはずです。JBCクラシックのエントリーでも書いたように、外差しが決まる馬場と見えてしまう典型的な脚の使い方でしょう。内に拘っていた馬達はスピードのノリがワンテンポ遅れた感じかと思います。但しトゥザグローリーは脚が溜まっていたと解釈できる点があり、その為急坂での伸びに繋がったかと思います。もしそうじゃなかったら坂がめっぽう強いという解釈になりますね。本当のところはどうなのか、凄く興味があります。また、オルフェーヴルとルーラーシップは通ったコースがほぼ同じなので比較し易い2頭ですね。正直0.1秒単位の比較ではあまりよろしくないのですが、何となくこの2頭の特性が分かってくるかと思います。

さて、見事に勝利したオルフェーヴルは馬の能力もさることながら、前述のように鞍上とのコンビネーション力が目立っていると感じます。特にこの有馬記念は騎手力で勝った印象が強いですね。紛れがあって然るべき変則的な流れのレースであっても、筋が一本通った池添騎手の騎乗が光りました。したがって、ここまで緩い流れが古馬勢とオルフェーヴルのどちらに味方したかはわかりませんし、オルフェーヴルが力で捻じ伏せたと結論付けする気もありません。ただ、レースに於いての騎手への従順力というか鞍上の思うままに動いてくれる点は素晴らしいですね。まあそれが強い馬というモノなんでしょうけど。今後は、前半からスタミナが削られるレースとか、各馬脚を使い切って如何に凌ぎ合いを制するか、みたいなレースでどうなるかでしょう。まあ年上の有力馬の内、トップ2が引退しますし、楽な、そしてこの馬に合ったレースを戦う事が多くなりそうです。そして本当に凱旋門賞を勝ちたいのであれば、早々と欧州に渡って向こうのレース経験を積み重ねるべきだと思います。

この有馬記念が引退レースとなったブエナビスタ、ヴィクトワールピサは本当にお疲れさまでした。2頭とも、過去に類を見ない実績を残しました。ヴィクトワールピサについてはまだ志半ば感もありますが、何といってもドバイワールドカップ制覇というのは歴史的快挙です。夢を現実の物にしてくれました。そしてブエナビスタ。3歳時の有馬記念から丸々2年間、常に牡馬混合のG1で主役を張り続けた偉大な女傑でした。ここ数年の内に競馬ファンになった方々は、ウオッカ、ダイワスカーレット、そしてブエナビスタという名牝を目の当たりに出来て凄く幸運な事だと思います。今後も事ある毎に、ブエナビスタを馬の能力の物差しの基準として振り返って頂きたいです。必ずやみなさんの競馬に対する造詣に寄与すること請け合いです。


今年最後の勝負という事で、東京大賞典の日に珍しく大井競馬場に参戦します。もし気が向いたら何かエントリーを起こすかもしれませんが、とりあえずこの有馬記念回顧が今年の最後のエントリーとなります。この1年、多くの方々に当blogをご覧頂きありがとうございました。来年はもっと競馬が盛り上がる事を期待しますし、微力ながらも何かお役に立てられればと思います。それではみなさん良いお年を!

2012 東西金杯 出馬表

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新年明けましておめでとうございます。

2012年最初の重賞である東西の金杯は、馬券的におもしろいメンバー構成ですね。というわけでスピード指数出馬表(斤量調整値)をUPしておきます。

$上がり3Fのラップタイム検証


$上がり3Fのラップタイム検証

中山金杯はアドマイヤコスモスが断然の存在だと思います。昨年5月の新潟開催での赤倉特別のパフォーマンスが既に重賞級。ここ2走は更に指数を上げてG2クラスと言って問題無いでしょう。昨年の有馬記念に出てきたら勝負しようと思わせてくれたほどの馬です。ハンデ差をものともせず快勝してくれることを期待します。


昨年末の東京大賞典では初めて大井競馬場まで足を運んだのですが、少し時間があったので東京ビッグサイトに立ち寄りました。『コミケ』と呼ばれるイベントについてはよくわからないのですが、そこでTwitterのフォローワーさんらが競馬書籍を販売しているのでお邪魔してみました。内容については以下のリンク先をご覧ください。

http://youbuntan.net/

もう10数年、競馬書籍をほとんど買っていない私があれやこれやと言うのはおこがましいのですが、大変良く仕上がっていて、端的に言えば競馬に対する愛を感じる内容でした。みなさんも是非一読を!

大井競馬場でも数人の方とお会いしましたが、やはり現場はいいですね。今年は競馬場に足を運べる機会を少し作れたらいいなと思いました。

それではみなさん今年もよろしくです!

想い出のあの馬 ディープインパクト Part 1

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以前リクエストを頂いてから随分と間が開いてしまいましたが、ディープインパクトについて振り返ってみたいと思います。内容は思い付くままとなりますがお付き合いください。

さて、私は一口馬主やPOGに関しては全くの無縁でして、その為デビュー前の馬達の血統表を見る事はあまりありません。せいぜい出馬が確定した馬について目を通すくらいです。ところがこのディープインパクトには、一つ上に全兄ブラックタイドが居ましたから珍しくデビュー前から注目しておりました。

ちなみにブラックタイドの競走成績はコチラ。

http://db.netkeiba.com/horse/2001103312/

ブラックタイドもかなり騒がれた馬でしたね。新馬戦勝ちの内容もなかなか良かったです。しかし少々人気先行タイプでもあったかと思います。詰まる所、ブラックタイドはスピードが物足らなかったというのが私の見立て。2戦目となったラジオたんぱ杯2歳Sでは単勝1.4倍の圧倒的人気でしたが、単純に前走比較するならコスモバルクの方が圧倒的に好内容。スピード能力というか瞬発力の差が目立っていました。

サンデーサイレンスxウインドインハーヘアという組み合わせは、どちらかと言えばスタミナに良さのある配合だと思います。で、私の長年の感覚的な話になるのですが、長距離適性の高い馬は馬体重が軽い方がモノになる確率が高いと考えています。その点ブラックタイドは馬体的に大成は難しいかなあと見ておりました。

当のディープインパクトですが、デビュー前から評判になっているとの記事を目にしました。そしてうれしいことに馬体はあまり大きくないとの事。これだけの好配合馬ですから私はサイレンススズカのデビュー戦以来に、久しぶりにワクワク感を持ってディープインパクトのデビュー戦を待ち焦がれていました。ところが、その新馬戦はリアルタイムでレース映像を見られなかったように記憶しています。確かグリーンチャンネルをEASTのまま見続けていたからで、「凄い上がりタイムだった!」とWeb上で騒がれていたのを目にした後、リプレイ映像で初めて見たように思います。

既にレースの上がり3Fが33.4という事実を知った上でレース映像を見たわけですが、ディープインパクトの走りは意外と速く見えなかったんですよね。というか、ディープインパクトがシャカリキになって走っているようにはとても見えなくて、直線ユッタリと駆け抜けていったように感じたのです。正直、ラップ計測機が故障してるんじゃないかと思って自分で測ってみたりもしました。しかし自身の上がり3Fが33秒そこそこなのは間違いないわけで、その事実と見た目とのアンバランス感が馬名の通り、とてつもない衝撃だったのです。

というわけで、新馬戦のレースラップをご覧頂きましょう。

http://db.netkeiba.com/race/200409050605/

着順馬番馬名タイム2004006008001000前5F12001400160018002000後5F1900Goal
1着4ディープインパクト2:03.813.912.313.713.313.066.212.611.911.410.810.957.65.45.5


Mahmoud計測RL2:03.813.512.213.713.413.065.812.612.011.610.910.958.0



公式RL2:03.813.512.213.813.513.066.012.412.011.410.811.257.8



残り400mを100m毎に区切れば、おおよそ5.5-5.3-5.4-5.5というラップを刻んでいたと思われ、直線350mちょっとを極めてイーブン的なスピードで駆け抜けたゆえ、私の目にディープインパクトの姿が速く映らなかったのだと思います。ディープインパクト自身の前半1000mは66.2というかなり遅いペースとはいえ、瞬間的なスピードレンジの高さだけでなく高速巡航能力も極めて高いレベルにあることを見せ付けたレースと言えます。何せこれがデビュー戦ですからまさに衝撃的な走りでした。

上がり3F区間がまるまる直線である新潟競馬場や、500m以上の直線部分が含まれる東京競馬場では、上がり3Fを32秒台に入れてくる馬は結構います。しかし、400mに満たない直線コースとなる競馬場での2000m戦では、上がり3Fを33秒台前半に入れる事など至難の業。過去最速は2007年秋華賞でのベッラレイアの32.9だと思いますが、これは勝ち馬から0.5秒離された4着ですから価値としては低い物。勝ち馬限定とすれば、この新馬戦でディープインパクトがマークした33.1というタイムは2010年若駒Sでのヒルノダムールと並んで1位タイとなります。そして余力十分だった走りからすると、上がり3Fを0.3秒縮めるくらいは楽勝だったと思われます。

また、この新馬戦の翌週に同コース、同距離で行われたラジオたんぱ杯2歳Sと比較すれば、ディープインパクトのパフォーマンスの高さがよくわかります。ラジオたんぱ杯2歳Sのリザルトはこちら。

http://db.netkeiba.com/race/200409050711/

走破タイムやラップ推移はかなり似ています。馬場差的にもほぼイーブン。ラジオたんぱ杯2歳Sでやっとの想いで最速33.5の上がり3Fをマークしたのは、翌年3冠レースでディープインパクトの2、3着を獲った2頭。素質的にケタが違うのが良く分かる例でしょう。言うまでもなく仮にディープインパクトがラジオたんぱ杯2歳Sを初戦に選んだとしても、楽々勝ったであろうはずですね。この新馬戦でのディープインパクトの上がりの脚は、中距離での新馬戦の中では他馬の追随を全く許さないほどの史上最強のモノであり、おそらく今後未来においても、肩を並べるパフォーマンスが出来る馬の登場はまず見られないんじゃないかと私は思います。

と言った具合でディープインパクトの新馬戦は絶賛の言葉で埋め尽くしましたが、もっと厳しいペースになった際にどんな末脚が使えるのかは当然未知数です。私的には血統背景から少なくとも同世代との戦いなら何も心配はいらないのが分かってはいましたが、レースレベルが上がった時の走りを早く見てみたいのも正直なところ。そして早々と2戦目若駒Sでしっかり確認する事が出来ました。ではその若駒Sのレースラップを見ていきましょう。

http://db.netkeiba.com/race/200508010710/

着順馬番馬名タイム2004006008001000前5F12001400160018002000後5F1900Goal
1着4ディープインパクト2:00.813.612.312.612.312.363.112.611.511.510.911.257.75.45.8


Mahmoud計測RL2:00.812.611.111.411.812.559.412.912.412.512.211.461.4



公式RL2:00.812.410.911.711.912.459.313.012.412.212.211.761.5



このクラスでは異例とも言える前半1000mが1分を切るハイペースでレースが流れました。まあディープインパクトは中間点で4秒近く離された位置を追走しているので、まだまだ自身は厳しいペースとはいきませんでしたが、この若駒Sでは初期スパートのタイミングが新馬戦より1F分早かった通り、明らかにレースレベルは一気に上がりました。

このレースでの注目ポイントはラスト1Fの脚。坂のある阪神コースで10.9に対して京都コースでは11.2。しかし完歩数はともにキッカリ26完歩でした。ここでちょっと本題から外れて完歩数の話をしましょう。以前Twitterで少し盛り上がった内容とダブりますが。

どうやら井崎脩五郎氏はこんな事を書いてたようです。

http://www2.sundaytc.co.jp/coffee_break/series_report/top/main.asp?article_id=228

この話をきっかけにディープインパクト産駒のジョワドヴィーヴルも新馬戦で1F24完歩で走ったなどという話題になり、こんな動画をUPしました。



ちなみにディープインパクトの新馬戦でのラスト24完歩は約10.1秒というラップになります。


では本題に戻りまして、前述の通りラスト1Fの完歩数が同じという事は、ストライド幅は同じだったという事になります。でも0.3秒程ラップは違っています。この謎は若駒Sのラスト4完歩にあります。

新馬戦ではさほどスピードを落とさずゴール板を駆け抜けましたが、このレースでは鞍上の武豊騎手が残り80mくらいから手綱を抑え始め、特に最後の4完歩に於いて、ディープインパクトはしっかりとその要求に応えてスピードダウンしています。この辺りも極めて能力が高いところでした。一見ぶっ飛んでいきそうな危うさを感じますが、実は騎手の挙動に対してかなり従順さが備わっていました。超A級馬らしい部分であり最近の馬ではブエナビスタもそうでした。

さて、このスピードダウンしたラスト4完歩ですが、完歩ピッチは一気に遅くなり4完歩走っただけで約0.2秒遅くなっていました。要は完歩幅はあまり変わらず脚の回転が遅くなっていたのです。人間も馬もバテ始めると「脚が上がらない」という状態になるわけですが、こうなると脚の回転力よりもストライド幅に影響が出てくる傾向にあると思います。以前も書いたように思いますが昨年のフェブラリーSでのエスポワールシチーの完歩数を数えていくと、そんなバテていく様子が良く分かると思います。で、このレースにおけるディープインパクトは、スピードダウンしてもストライド幅が変わらない、言い換えれば地面を蹴る力は変わらない、つまり、バテる様子が全く伺えない状態でのスピードダウンだと言えるでしょう。したがって新馬戦のラスト1F同様、10.9 [ 5.4 - 5.5 ] というラップで走るのは十分可能だったと思われます。コースこそ違いますが初戦より3.4秒速いペースで走りながらラスト2Fはほぼ同じ末脚を繰り出せるという、初戦から一気の上積みを十分感じさせるレースをやってのけたのです。もうこれで、アクシデント以外の理由で同世代に負ける事などあろうはずもないと結論付ける事が十分可能だったと思います。

もう7年も前の出来事となりましたが、ディープインパクトのこのデビューからの2戦は、末脚特化型の素質としては最強の姿だといつまでも記憶しておきたいモノですね。そして当然の事ですが、ディープインパクト産駒はこの父のパフォーマンスと比較すれば似ているかどうか簡単にわかりますね。

とりあえず今回はココで終わりにします。次回はいつになるかわかりませんが、機会があれば続編を書いてみたいと思います。そして何よりもこのタイミングでエントリーを起こしたのは、ディープインパクト産駒の期待馬ワールドエースが若駒Sに出走してくるからであり、ワールドエースの新馬戦を分析する物差しとして父の姿を再認識したかった次第です。

では次のエントリーで簡単な内容になりますが、ワールドエースの新馬戦評をご覧ください。

2012 クラシックロード ワールドエースの巻

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父同様12月の新馬戦を勝ち上がり、2戦目の舞台が若駒Sとなるワールドエースについて簡単に触れておきましょう。その父ディープインパクトについてのエントリーをまだご覧になってない方は、先に読まれてからこのエントリーをどうぞ。

想い出のあの馬 ディープインパクト Part 1

今までに登場したディープインパクト産駒の中では、リベルタスやアーデントが重厚なスタミナを生かした魅力的な配合馬でしたが、この2頭はある意味ディープインパクトを変化球的に表現したスタイルとも言えます。今回取り上げるワールドエースは、ディープインパクトを王道的に生かしたタイプであり、現時点で文句なくトップランクの配合馬だと思います。かなりの期待感を持って今後を見ていきたいですね。

では、単勝オッズ1.4倍に応えて勝利した新馬戦のレースラップをご覧ください。

着順馬番馬名タイム200400600800前4F10001200140016001800後5F1700Goal
1着11ワールドエース1:49.513.711.812.212.350.012.612.411.711.211.659.55.66.0


Mahmoud計測RL1:49.513.011.512.212.349.012.812.611.811.711.660.5



公式RL1:49.513.111.512.112.649.312.512.611.611.611.960.2



父ディープインパクトと比較してみましょう。走破タイムから割り出すスピード指数はほぼ同等。レベル的には如何にも新馬戦らしい値です。父と大きく違う点は上がり3Fの脚。もしディープインパクトが自身の新馬戦と同じラップ配分で、このワールドエースが勝った新馬戦で走ったとしたら、残り3Fの地点でワールドエースより1.6秒後方に位置し、上がり3F32.9秒の脚を使いワールドエースと併入するという形となります。例えスピード指数は同じでも、末脚のレベルは大人と子供くらいの違いがあります。残念ながらというか当たり前ですが、ワールドエースに父並みの末脚を期待するのは酷な話ですね。

また、この新馬戦に出走した後、既に未勝利戦へコマを進めた馬は7頭いますが、全てこの新馬戦の着順を上回れないでいます。メンバーのレベルもかなり低かったと思われ、ワールドエースの初戦は見どころの少ない一戦であったと言えるでしょう。う~ん、何とかワールドエースのセールスポイントを見付けなければ・・・。

最終的な着差こそ僅かですが、余裕ある勝ちっぷりに見えた部分をどう評価するかがポイントになりそうです。2着レッドブレイゾンに迫られたのはラップタイムからわかるように、ラスト100mでのペースダウンに因るモノです。残り80mくらいから福永祐一騎手が抑え始めており、それにワールドエースが反応しているのは完歩ピッチが落ちている事からもわかります。ラスト100mは5.8秒くらいで纏められる余力はあったと考えていいかと思いますので、一応この新馬戦は楽勝という表現でOKでしょう。

しかし、更なるギアが隠されていると想像するのはちょっと難しいかもしれません。ですから、末脚のキレに期待するのではなく、もっと厳しいペースになっても末脚の衰え方が他馬に比べて少ない、という方向性に育ってくれないものかと私は考えます。レースを使う毎に強くなる、負ける毎に強くなる、そんなタイプになって欲しいですね。昨年の凱旋門賞馬デインドリームを目指してくれれば・・・。若駒Sでは逃げるゼロスを追い立てるようなレースでもすればおもしろいのですが。

今回はこのあたりで。

2012 若駒S 回顧 ~天皇賞・春の予行練習~

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ワールドエースの2戦目となった若駒Sを振り返ってみましょう。レース後10日ほど経ちましたので、みなさん少しは冷静に考えられるのではないかと思います。

ワールドエースに対する立ち位置によって、ワールドエースをどう受け止めるのかは違いがいろいろあるかと思います。十分強い馬だと考えて単勝勝負や頭固定の3連単で勝負された方は、憤懣やるかたない思いだったでしょう。「何故勝ちに行かないんだ」と声高々に叫ぶのは当然の事ですね。でも父ディープインパクトと比べるのはどうかな、と思い直したんじゃないでしょうか。一方、ワールドエースを低評価していた方は「ほら見たことか」なんて思った事でしょう。でも、案外良く伸びていたなと感じた方が居たかもしれません。

前回のエントリーで「逃げるゼロスを追い立てるようなレースでもすればおもしろいのですが」と書いたのですが、これはゼロスを打ち破るのはなかなか困難と思えたからであり、最低でもゼロスの陰くらいは踏んで負けるレースをして欲しいと思っていました。この2頭の前走を比較すると、2000m換算で約2.3秒ゼロスの走破タイムが上回っており、上がり3Fのタイムレベルでもワールドエースが上回るのは1秒前後に過ぎません。正直この差はかなり大きくて、よほどゼロスがパフォーマンスダウンしない限りワールドエースの勝機はなかなか見い出せない現状だったと思います。後出しになり申し訳ありませんが、若駒Sのスピード指数出馬表を貼っておきます。

$上がり3Fのラップタイム検証

では、各馬のレースラップとレース映像をご覧ください。レース映像の後半は1F毎のゼロスとワールドエースの差の静止画となっています。

着順馬番馬名タイム2004006008001000前5F12001400160018002000後5F1900Goal
1着3ゼロス 2:05.313.512.512.813.413.165.313.612.511.610.811.560.05.56.0
2着2ワールドエース 2:05.714.212.713.213.413.066.513.112.511.610.811.259.25.55.7
3着4ヤマニンファラオ 2:05.713.812.513.113.613.166.113.212.511.511.011.459.65.65.8
4着1クリスマスマーベル 2:06.314.112.713.113.412.966.213.312.511.511.211.660.15.75.9
5着5エーシングングン 2:06.414.012.613.113.613.066.313.112.511.711.211.660.15.75.9


Mahmoud計測RL2:05.313.512.512.813.413.165.313.612.511.610.811.560.0



公式RL2:05.313.512.213.213.313.265.413.512.511.710.711.559.9





「ディープインパクトでも同じ位置からは差し切れなかった」という話があります。陣営が語ったのか、どこぞの評論家が言ったのか知りませんが、仮定の話をするにしても詳しくレースを分析した上で語らないといけませんね。

残り800m地点でゼロスとワールドエースの差は0.7秒と縮まったのですが、その差は残り100m地点を迎えても変わっていません。残り70m辺りでゼロス鞍上の川田騎手がターフビジョンに目をやり、後続との差を確認した上で手綱を抑えにかかっています。その直後からやっと2頭の差は縮まり始めて最終的には約0.45秒差の入線となりました。つまりゼロスが最後まで追われていたのなら、ワールドエースとほぼ同じ上がり3Fのタイムをマークしていた可能性が高いのです。

計算上はワールドエースと同じ位置取りから上がり3F33.1で上がれば差し届いていた形ですし、ディープインパクトならこの馬場状態、ペースを考えれば捕まえるのは簡単な話でしょう。しかし、迫ってくる馬が居れば前述のようにゼロスは緩めず脚を使っていたはずですから、そうなればいくらディープインパクトと言えど苦しい、と考えるのが妥当かと思います。ただし、2戦目の時点でもディープインパクトが残り3F地点でゼロスと0.7秒差のままというのはちょっとあり得ないはずで、もっと早々とレースが動き、どの道ディープインパクトが軽く差し切る形になろうかと思います。「ディープインパクトでも差し切れない」と簡単に言ってしまうのはあまりにも浅はかな言い分でしょう。

ペースが速かろうが遅かろうが、ワールドエースは馬群の最後方からレースを進めるつもりだったのでしょうし、それは別に問題ない事だと思います。また、私から見れば全く意味のない事ですが、ディープインパクトをなぞるようなレースをさせたい気持ちも多少わかります。でも、残り3Fまでチンタラ走っているのがどんな教育になるんかいな?って私は思うのです。というわけで先日書いたこちらのエントリーをご覧ください。

想い出のあの馬 ディープインパクト Part 1
http://ameblo.jp/mahmoud1933/entry-11141448397.html

新馬戦ですら残り4F~3F区間を11秒台、若駒Sに至っては11.5をマークしています。いくら陣営がディープインパクトを真似てレースをさせようとしたつもりでも、これでは始動が1F分遅いわけで、勝利は無視して如何に直線でスピードを高められるかが最大の目的だったと見えてしまいました。ここまで引っ張り切りでレースをさせたのは、日本中央競馬会競馬施行規程の第81条

競走に勝利を得る意志がないのに馬を出走させてはならない。

に引っ掛かるんじゃないかとさえ思えるほどの酷さです。また、どこまで本心で言ったのかわかりませんが、

「まだ2戦目ですし、競馬を教えている段階ですから、今日の結果はしょうがないですね」

なんてのうのうと答えている調教師は如何なものかと思います。3冠トレーナーという肩書きが霞んでしまいますね。こんなレースをした事を肯定するなんてまあ最低ですわな。で、昨年のオルフェーヴルのきさらぎ賞を引き合いに出す方もいます。オルフェーヴルは次走スプリングSでさっさと捲って直線早々と先頭に出たわけですが、じゃあ、そのきさらぎ賞のレースぶりが何の役に立ったか、私にはさっぱり関連性が見い出せません。

ワールドエースは中1週できさらぎ賞に登録してきました。この陣営の慌てぶりを見ると実に滑稽ですね。若駒Sではどう乗ってもゼロスに勝てなかった可能性が高いとか、しっかりレース分析を行ってからこの馬の方向性を定めていくのが良いと思うんですけどね。厳しく鍛えてモノになる素質は十分にあると思いますから、父の幻想やエリート意識はさっさと捨てて精進して行って欲しいと思います。そして、勝つ気があったのかと思われるようなレースをしたのは確かですから、こういった部分を競馬マスコミはしっかり叩くべきだと私は思います。

さて、実は逃げて圧勝したゼロス鞍上の川田騎手のコメントにも少々驚きを覚えました。ラジオNIKKEIから転載しておきます。

「1600mのレースを使ってきたので、今日は馬をなだめながらのレースになりました。1~2コーナーを3~4コーナーと勘違いしたのか、加速して行ってしまって、ようやく落ち着いたのが3コーナー手前でした。そこで一息入れて、早め早めに踏み出す感じで、初めての距離でもいつも通りのレースをしました。連闘でしたが、先週よりも状態はよく感じたぐらいでしたし、今日の馬場も合っていたのでしょう。いい内容のレースだったと思います」

ゼロスは未勝利、500万下と逃げきって2連勝していました。その2レースのラップ(公式)を書いておきましょう。

12.7 - 11.0 - 11.3 - 11.9 - 12.1 - 12.0 - 11.5 - 12.2 ・・・ 未勝利
12.5 - 11.2 - 11.3 - 12.1 - 12.3 - 11.6 - 11.5 - 11.8 ・・・ 500万下

この2レースのラップと若駒Sで刻んだラップを踏まえて川田騎手のコメントを考えれば、スバリ「体内時計が狂っているな」以外何物でもありません。

距離を伸ばした2000m戦ですから過去2戦よりペースダウンするのはごく当たり前です。でも、1F当たり1秒以上ペースを落とせば馬は違和感持って引っ掛かり気味になるのは当然じゃないですかねえ。また、「加速して行ってしまって」って何処が?というか勘違いしてたのはアナタでしょう、っと言っちゃうくらいの、まさに口アングリー状態となりました。

では、ゼロスが前走刻んだラップを基に、この若駒Sで同等のペースとはどんな物になるかを考えてみましょう。京都1600m芝(外)のレコードは1:31.8。1F平均は11.475となります。京都2000m芝のレコードは1:56.8。1F平均は11.68となります。ゼロスの前走の前半4Fは47.1ですから、2000m戦なら計算上は47.9くらいになります。そしてコーナーを含む区間となる事を考慮して更にプラス0.4秒、馬場差が800mで約0.6秒あったと思われますから、4Fを48.9で行けば前走並みのペースと言えるでしょう。しかしゼロスが若駒Sで刻んだ前半4Fは52.2。馬の経験値上、一気に遅いペースとなれば上手に走るのは難しくて当たり前じゃなかろうかと思います。

また、京都芝3200mのレコードは3:13.4で1F平均12.0875。上記と同様に考えれば3200m戦なら4F50.6という換算値になります。まあ長距離戦特有のペースと考えても、51秒半ばがいいところでしょうか。つまり、川田騎手の行為は1600m戦から3200m戦へ一気に距離を伸ばしたが為に取ったような、大袈裟にスローダウンした逃げだったと思うわけです。でも本人のコメントからはそんな意志は感じられない。全ての騎手とは言いませんが、これが実際の多くの騎手の現実でしょう。風を切り裂くスピードの体感的な部分や手綱から伝わる馬の様子を踏まえて、適性あるペースがどんな物かが全く分かっていない典型的な例だったと思います。

こんな変な逃げを打つ事となったゼロスですが、そのお陰で実にラッキーな事にかなり質の高い末脚を使える事がわかりましたね。ワールドエースとは全く遜色のない末脚です。これは今後のクラシック戦線での戦略の幅が広がりましたね。そしてキャリアを積み重ねて強くなっていった、何年か前のとある馬とダブって見えませんか?

また、血統構成上におけるスタミナ度も非常に高いモノがありますから、今年の主役となる可能性が見えてきました。まあ、この若駒Sで天皇賞・春の予行練習が出来たわけですから、来春の3200m戦での本命は決まったも同然ですw

今回はこのあたりで。

2012 きさらぎ賞 出馬表

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$上がり3Fのラップタイム検証

ヒストリカル、ワールドエース、ベールドインパクトの3頭は末脚特化型のレースを繰り返し、一方スノードン、プレミアムブルー、ローレルブレッド、マイネルアトラクトらは持続力で勝負する戦法で、このきさらぎ賞に駒を進めて来ました。前者3頭は言わずもがなディープインパクト産駒です。さて、どちらのグループに軍配が上がるのでしょうか・・・。

2012 きさらぎ賞 回顧 ~オルフェーヴルをコピーしてみた~

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それではきさらぎ賞を振り返ってみましょう。まずは上位5頭のレースラップをどうぞ。

着順馬番馬名タイム2004006008001000前5F1200140016001800後4F1700Goal
1着9ワールドエース 1:47.013.611.611.812.513.062.511.511.310.810.944.55.35.6
2着4ヒストリカル 1:47.213.611.711.912.712.962.811.611.210.710.944.45.35.6
3着13ベールドインパクト 1:47.713.111.711.812.512.761.811.611.511.311.545.95.65.9
4着8ジャスタウェイ 1:47.913.211.511.812.513.062.011.711.411.311.545.95.65.9
5着7ローレルブレット 1:48.212.911.611.812.512.961.711.611.611.411.946.55.86.1


Mahmoud計測RL1:47.012.911.511.912.512.961.711.611.611.210.945.3



公式RL1:47.013.111.511.912.512.761.711.611.311.311.145.3



昨年のきさらぎ賞回顧のエントリーはこちら。

http://ameblo.jp/mahmoud1933/entry-10793162872.html

オルフェーヴルのラップはもう一度採り直してみました。テンとラストのラップを修正してこのような値になります。

1:47.8 : 13.5 - 11.9 - 11.9 - 12.8 - 13.0 - 11.5 - 11.4 - 10.8 - 11.0 [ 5.4 - 5.6 ]
前半5F : 63.1
後半4F : 44.7

公式ラップ上でもラスト2F目よりラスト1F目が速くなっているので、非常に価値あるラップを踏んだと感じた方が居るでしょうが、前を行く馬とスピードのノリの次元が全く違うワールドエースが残り1F手前で先頭に立っているわけですから、こんなレースラップになるのは当然の事です。

さて、昨年は前半5Fが60.2、今年は61.7と先頭馬のラップはまるで違いますが、今回ワールドエースが刻んだラップは昨年オルフェーヴルが刻んだ値と極めて似ています。もう少し細かく補足しますと、風の影響は昨年同様3、4コーナーから最後の直線で追い風となり、今年もほぼ同条件だったと言え、馬場の硬度以上に幾分上がりタイムが速くなる傾向にあったと考えられます。そして私の算出した馬場差は今年の方が約0.6秒速く、昨年のラップと比較する上で3Fに付き0.2秒今年は速くなっていたと補正すればOKでしょう。

つまり、残り3Fの地点で0.2秒程度ワールドエースの方が前方に位置し、上がり3Fは全くの同等だったと考えられます。その0.2秒差はおそらく前半4F目の違いであり、もしオルフェーヴルがその区間をもう少し速く走っていたとしても同じレベルの上がりの脚を使えたように思います。私算出のスピード指数と上がり指数はオルフェーヴルが76-21、ワールドエースが77-21でした。指数上からも、そしてラップ上からもほとんど区別を付けられない程の2頭の走りだったと思います。ワールドエースが差し切った時に何となく昨年のオルフェーヴルの走りとイメージがダブったのですが、こうやってラップを採り馬場差を算出してみると、あまりにも酷似していたのでビックリした次第です。

ココで話を終わりにすると、オルフェーヴルのコピーが出来たワールドエースも3冠の可能性大、みたいになってしまうかもしれませんが、もう少し話を続けてみましょう。

前述のようにディープインパクトの若駒Sを表現すると82-20。ディープインパクト特集で書いたように余力はタップリあったレースでした。ディープインパクトが新馬戦のみのキャリアでこのきさらぎ賞を走れば、逃げ馬と同じ位置から余裕残しの上がり3F33.1で楽々突き放す事でしょう。MAXなら32.6まで上げられるはずです。残念ながらワールドエースはまだ父の影を踏める領域には達していないかと思いますが、視界には十分入れられるレベルになってきました。

また、昨年と比べると今年はちょっとメンバーが弱かったですね。勝ち時計はレースレコードですがほとんど価値はありません。ちなみに同日5R2200m未勝利戦で逃げ切ったクランモンタナが同パフォーマンスできさらぎ賞を走ったとすると、残り3F地点でベールドインパクトより0.2秒前方に位置し、同じ上がり3Fで粘り込み3着、という換算値になります。クランモンタナが大差で勝ったのならともかく、2着馬は半馬身差です。3着のテイエムオペラドンでさえ、きさらぎ賞なら5着相当となります。ワールドエースの勝ちっぷりの強烈さは相手関係による部分が大きい事を押さえておくべきでしょう。

蛇足になりますがこのクランモンタナが逃げ切ったレース、上がり3Fの公式ラップが11.6 - 11.9 - 11.3 というあり得ない値。こんなラップになるためには直線入り口にシケインがないと無理ですね~。おそらくは12.2 - 11.4 - 11.2 [ 5.5 - 5.7 ]というラップだと思いますが、これこそ加速ラップに間違いない形ですね。現3歳の新馬、未勝利戦の中でエキストラエンドをやや上回る世代最高のパフォーマンスでした。エキストラエンドと共に注目すべき馬です。

結局のところワールドエースの余力がどれくらいあったか、それが一番のポイントだと思います。ラスト100mは0.1秒縮める事が十分可能だったと思いますが、最後の直線全てにおいて、鞍上の小牧騎手がかなり余裕を持って走らせている雰囲気があったようにも感じました。この辺りは実際どうなのか知る由もありませんが、データ的には前年の3冠馬と同時期に五分と言える走りをしたのは事実ですから、期待が高まるのは当然でしょうね。

今後のローテーションはこのままぶっつけで皐月賞か、あるいは一叩き入れる予定だそうです。現段階で私が感じている事はコーナーワークがあまりよろしくないと言う点。新馬戦の走りでそんな部分が感じられ、若駒Sでゼロスに敵わないだろうと思っていた要素の一つでもあります。若駒Sのパトロールビデオを見てもらえば分かるかと思うのですが、残り3Fから前を行く1番クリスマスマーベルの外から捲るような姿勢を見せていたものの、軽く気合いを付けられてもこのコーナー部分で逆にクリスマスマーベルに離される形となり、結局残り2F標付近では再度最内に入る始末。結構直線番長的な資質があるんじゃないか、と思っています。皐月賞ではいいところなしで終わり、ダービーではキッチリ差し切る、というような展開をちょっと思い浮かべています。

まあ正直、新馬戦を分析した時はきさらぎ賞をこんな内容で勝つとは思っていませんでした。想定していた成長曲線より角度が少し急ですが、理想的でもありますね。順調に育って欲しいと願います。

今回はこのあたりで。

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2012 クラシックロード ディープブリランテの巻

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リクエストがありましたのでディープブリランテについて少し触れておきます。まずは新馬戦のラップからどうぞ。

着順馬番馬名タイム2004006008001000前5F1200140016001800後4F1700Goal
1着10ディープブリランテ1:49.713.511.612.012.613.062.712.111.511.312.147.05.76.4


Mahmoud計測RL1:49.713.111.511.612.813.262.212.411.711.312.147.5



公式RL1:49.713.111.511.612.913.162.212.411.511.112.547.5



ワールドエースと同じ阪神芝1800mが舞台でした。馬場差はディープブリランテが走った日の方が少し時計が掛かる状態かと思います。指数レベルはディープブリランテがやや上。上がりの脚はワールドエースがやや上。データ上はほぼ互角と言えますが、2ヶ月以上先にデビューしたディープブリランテの方が価値は高いです。

この2頭の比較で違う点は末脚の踏み出し地点。ディープブリランテの方がスパートのタイミングが早いですね。これは追い出しのタイミングが違うわけではなく、馬自身の気性的な影響でしょうか。2頭とも引っ掛かるのは同じでも前向き度というか、より積極的なのはディープブリランテの方でしょう。

次は東京スポーツ杯2歳Sをどうぞ。

着順馬番馬名タイム2004006008001000前5F1200140016001800後4F1700Goal
1着13ディープブリランテ1:52.713.411.812.413.013.163.713.112.311.512.149.05.96.2


Mahmoud計測RL1:52.713.311.812.412.913.263.613.212.311.512.149.1



公式RL1:52.713.311.912.312.913.263.613.212.211.512.249.1



このレースでも前へ行こうとする気配が凄いですね。そして新馬戦同様早目のスパート。どこぞの誰かが言った「教育」という風情は全く無く、末脚を出し惜しみなく使おうといったレースをしました。かなりの極悪馬場でしたが力強いフットワークを見せましたね。この時期のレベルとしてはまずまずだったかと思います。

この馬の全姉にハブルバブルがいますから、デビュー前から注目していた1頭でもあります。古馬になってから本格化しキングジョージⅥ&QESを勝ったBustedのクロスを前面に持つなど非常に興味ある血統構成をしています。ちなみに以前のエントリーでGrundyが勝った1975年のキングジョージⅥ&QESを取り上げましたが、その時にハイペースをグイグイ先行していたのがそのBustedの仔であるBustinoでした。

2戦ともスローではあるものの、このディープブリランテの先行的なレーススタイルは、血統構成上からも悪くはない選択だと思います。自分でレースを作れる存在になって欲しいですね。では、今週出走する共同通信杯のスピード指数出馬表(斤量調整値)を貼っておきましょう。

$上がり3Fのラップタイム検証

きさらぎ賞のメンバーより末脚に力を持つ馬が断然多いですね。特にフェノーメノが勝った1/29東京芝500万下はラジオNIKKEI杯2歳S並みのレースだったと思います。そのレースで敗れたとはいえ2、3着のスピルバーグ、ストローハットはココでも好戦必至でしょう。ディープブリランテはこの相手を一蹴すれば前途は非常に明るくなると思いますがさて・・・。

今回はこのあたりで。


2012 共同通信杯 回顧

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共同通信杯を振り返ってみましょう。内容はディープブリランテ一色になります。まずは全頭個別ラップをどうぞ。

着順馬番馬名タイム2004006008001000前5F1200140016001800後4F1700Goal
1着3ゴールドシップ 1:48.313.311.812.712.712.462.912.111.111.011.245.45.55.7
2着2ディープブリランテ 1:48.613.011.812.512.812.562.612.111.011.111.846.05.86.0
3着8スピルバーグ 1:48.613.611.912.712.712.563.412.011.011.011.245.25.65.6
4着4ストローハット 1:48.713.511.712.712.712.463.012.111.011.211.445.75.65.8
5着9コスモオオゾラ 1:48.913.211.912.712.612.562.912.011.111.211.746.05.76.0
6着11エネアド 1:49.013.811.812.812.712.463.512.011.111.011.445.55.65.8
7着7ジャングルクルーズ 1:49.314.012.012.612.812.463.812.111.110.911.445.55.65.8
8着6ブライアンズオーラ 1:49.313.812.012.913.012.263.912.011.011.011.445.45.65.8
9着10アーカイブ 1:49.414.212.012.712.512.263.612.111.111.211.445.85.65.8
10着1ガッテンキャンパス 1:49.613.711.812.712.612.563.312.011.211.411.746.35.76.0
11着5タガノグーフォ 1:49.913.211.812.712.612.562.812.111.311.612.147.15.96.2


Mahmoud計測RL1:48.313.011.812.512.812.562.612.111.011.111.545.7



公式RL1:48.312.911.912.512.812.562.612.110.911.011.745.7



ゴールドシップのラスト1Fは11.3と見て良いかもしれません。またディープブリランテは11.7と考えてもOKでしょう。また、超スローペースだったので各馬の上がりが速いですが、踏み出しのタイミングがこのクラスにしては少々早かったので、直線全てを使った末脚比べというレースだったと思います。

ゴールドシップは前走ラジオNIKKEI杯2歳Sで、捲りつつも4角で一息入れ直線再度スパートするという、2段ロケット的な末脚を使っていました。今回も息の長い末脚を使って快勝でしたね。キレ味は多少見劣るものの、それをカバーするが如く内田博幸騎手の早目のスパートが光りました。直線に入る前にもう追い出していましたね。如何なる状況でもキッチリ末脚を使って来るところがセールスポイントでしょう。

そんな勝ち馬とほぼ同等の末脚を見せたのがトーセンラーの全弟スピルバーグでした。前走500万下でもラスト500m区間をほとんどラップを落とさないまま駆け抜けていました。その前走をしっかり踏まえたレースをしてくるかと思いましたが、またもやストローハットを半馬身交わしただけ。繊細で反応の良いダンスインザムード等を御すのは上手いジョッキーなのですが、イーブンラップ系が合うタイプの馬はよろしくありません。上位2頭に対して折角1kg貰っていたのに勿体ないレースでした。まあ、ストローハットの影響を受けなければ楽々2着はありましたね。ラスト1Fがほぼイーブンラップになったのはその為でしょう。

さて、問題のディープブリランテ。1800m戦ばかり3戦走ってきたわけですが、私のDB上では前半1200mまでのペースのキツさは全て同じような値となりました。少なからず1走毎能力的に成長しているはずなのでスタミナ消耗度は徐々に減り、しかも引っ掛かり度はどんどん酷くなってもおかしくないペースだったかと思います。ちなみに今回のディープブリランテが逃げたペースは、前週のきさらぎ賞に例えれば最後方を進んだレッドアーヴィングくらいのペースだったと言えます。

まあ同じ引っ掛かるにしても馬によっては意味合いが違うケースがあろうかと思います。ディープブリランテの場合、暴走する危険性を孕んでいるわけではなく、GOサインがいつ出るのか、今か今かと待っているような姿に見えてしまいます。食べ物を前に「待て!」と指示されたわんこみたいなイメージでしょうか。で、岩田騎手は出来れば残り400m標過ぎまでじっくり追い出しを待ちたかったと思いますが、前述のようにゴールドシップを起点として後続馬が早目に押し上げて来ましたから、想定以上にGOサインを早く出す形となったようです。

残り600m~400mのラップは各馬差がありませんが、500m~400m区間はディープブリランテが抜けて速かったと思います。それだけディープブリランテの反応力は素晴らしかったのですが、その反応の良さ故、その後10数秒しか気力が持たなかったようなバテ方だったように思いました。人間でもこのように快楽が長く続かないタイプの方、いらっしゃるのではないでしょうか。岩田騎手によれば「ゴールを過ぎたら力が抜け、帰りは本当に大人しかった」との事。そりゃ早々と賢者モードになればそうでしょう。まあ気性的に、じっくりラップを刻むような長距離戦は合わなさそうですね。

次走はどんなレースをしてくるのでしょうか。今回はメンバー的に仕方が無かったとはいえ、いくらなんでもペースを落とし過ぎたと思います。岩田騎手は父同様に無敗でクラシックに行けるだろうと相当な期待を寄せていたわけですが、その父のスピード面ばかりをイメージしても、それは半分だけ正解だと思うんですよね。そもそもディープインパクトが凄かったのは、他馬よりスタミナ力に優れていたからこそ他馬より図抜けた瞬発力を見せたわけで、この共同通信杯のようにほとんどの馬が速い上がりをマークできるレースで光り輝いたのではなかったのです。父のスタミナ力を目指すアプローチでディープインパクト産駒を仕上げていくといった、異彩を放つ陣営が登場してくれるともっとおもしろくなると思うのですが・・・。

今回はこのあたりで。

2012 フェブラリーS 出馬表

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フェブラリーSのスピード指数出馬表(地方減戦処理)をどうぞ。

$上がり3Fのラップタイム検証

昨年のフェブラリーSと南部杯で、トランセンドのパフォーマンスレベルが同じくらいだったとしたら、タイム差は1.6秒もありますからかなりの馬場差があった事になります。1Fに付き0.2秒差、3Fなら0.6秒差にもなります。トランセンドはどちらも勝利しているからいいのですが、他の馬はどちら寄りの馬場に向いているか、これが大きなポイントになるでしょう。ちなみに今開催の東京ダートは雨の影響が無ければ昨年のフェブラリーS当日と良く似ています。先週の日曜日はまさに同等の馬場状態でした。

指数レベルだとトランセンド、エスポワールシチーが抜けていますね。ワンダーアキュートも堂々の3番手。表中にない過去走を引っ張ってくるならテスタマッタも高指数組。レベルの高い一戦になるのは間違いないでしょう。

2012 フェブラリーS 回顧

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全頭個別ラップをどうぞ。いつもの事ですが、勝ち馬が10分の1秒単位で勝ちタイム通りに走ったと仮定してラップを弾き出しています。今回半数の馬は走破タイム、上がり3Fを公式発表より0.1秒加算する形となりました。例えばテスタマッタと約0.48秒差あれば、四捨五入して0.5秒差あったと判断しています(ex.ワンダーアキュート、ダノンカモン)。

着順馬番馬名タイム200400600800前4F1000120014001600後4F1500Goal
1着16テスタマッタ 1:35.413.111.011.712.047.811.912.011.712.047.65.96.1
2着3シルクフォーチュン 1:35.713.711.211.411.948.211.812.011.612.147.55.96.2
3着10ワンダーアキュート 1:35.912.611.011.812.047.412.012.311.912.348.56.06.3
4着11ダノンカモン 1:35.912.511.011.612.047.112.112.312.112.348.86.16.2
5着9エスポワールシチー 1:36.012.411.011.711.947.012.212.412.312.149.06.06.1
6着2タガノロックオン 1:36.512.711.111.811.847.412.012.412.112.649.16.26.4
7着15トランセンド 1:36.712.710.611.612.046.912.112.412.512.849.86.36.5
8着6ケイアイテンジン 1:36.812.411.011.811.847.012.312.412.512.649.86.26.4
9着7ヤマニンキングリー 1:36.913.010.911.712.047.612.012.312.212.849.36.26.6
10着12ライブコンサート 1:37.012.611.111.812.147.612.012.312.312.849.46.36.5
11着5ヒラボクワイルド 1:37.112.911.211.811.947.811.912.312.512.649.36.36.3
12着13グランプリボス 1:37.112.410.811.612.046.812.212.512.712.950.36.46.5
13着14トウショウカズン 1:37.312.410.811.611.846.612.112.512.913.250.76.56.7
14着4スマイルジャック 1:38.113.611.211.711.948.411.712.212.613.249.7**
15着8セイクリムズン 1:38.212.210.911.611.946.612.112.513.113.951.6**
16着1ナイキマドリード 1:38.312.511.111.911.947.412.212.612.813.350.9**


Mahmoud計測RL1:35.412.210.911.611.946.612.112.512.212.048.8



公式RL1:35.412.210.911.611.946.612.112.412.012.348.8



前日土曜日のダートコースは前週同様時計が掛かる状態。特に目立ったのは上がりの時計が遅い事でした。昨年並みか、あるいはそれ以上の重いダートかと思われたのですが、日曜日は前日よりも明らかに走破タイムが速くなり、しかも上がりの時計が速くなりました。指数派の方々は雨が降っていないのにどうしたんだ?と思われたのではないでしょうか。実際、日曜日当日のダートの含水率は極めて低かったようです。

土曜日と日曜日で時計の速さが変わった要因として考えられるのは風でしょうか。まずは東京競馬場の地図を見てみましょう。

http://maps.google.co.jp/maps?hl=ja&cp=8&gs_id=16&xhr=t&q=%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E7%AB%B6%E9%A6%AC%E5%A0%B4&safe=off&gs_upl=&bav=on.2,or.r_gc.r_pw.,cf.osb&biw=1029&bih=926&um=1&ie=UTF-8&ei=dkxET4nIH-bXmAXttZSWBA&sa=X&oi=mode_link&ct=mode&cd=3&sqi=2&ved=0CCMQ_AUoAg

次に東京競馬場に程近い府中観測所のデータを見てみましょう。

2012年2月18日(土)

http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/view/10min_a1.php?prec_no=44&prec_ch=%93%8C%8B%9E%93s&block_no=1133&block_ch=%95%7B%92%86&year=2012&month=2&day=18&elm=minutes&view=


2012年2月19日(日)

http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/view/10min_a1.php?prec_no=44&prec_ch=%93%8C%8B%9E%93s&block_no=1133&block_ch=%95%7B%92%86&year=2012&month=2&day=19&elm=minutes&view=

土曜日は概ね北風が吹いていました。瞬間最大値は10m/sを超える時もありました。3コーナーから4コーナーに掛けてはモロに向かい風を受ける形となり、瞬発力を生かしにくい深いダートでは、最後の直線での伸びにも影響があったかと思われます。この日、ダートでの上がり3Fが遅かったのはこれが原因かと思います。

そして日曜日。前日とは一転して南東の風となりました。向こう正面ではやや向かい風。3、4コーナー中間点辺りからは一気の追い風となり、後半スピードを上げやすい状態となっていたようです。土曜日と比べてダートのマイル戦でおよそ0.6秒程度速くなったと見て良いでしょうか。しかもそれは後半部分がより速く走れる形だったと思います。大雑把に言えば、ダート1600m戦なら向こう正面は土曜日が0.2秒速く、3、4コーナー部分は日曜日が0.5秒速く、最後の直線では日曜日が0.3秒速い、といった感じでしょう。

ちなみに昨年のフェブラリーS当日はこちら。

http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/view/10min_a1.php?prec_no=44&prec_ch=%93%8C%8B%9E%93s&block_no=1133&block_ch=%95%7B%92%86&year=2011&month=2&day=20&elm=minutes&view=


昨年の南部杯当日はこちら。

http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/view/10min_a1.php?prec_no=44&prec_ch=%93%8C%8B%9E%93s&block_no=1133&block_ch=%95%7B%92%86&year=2011&month=10&day=10&elm=minutes&view=

前半部分の馬場差は、

2011南部杯>>>2011フェブラリーS≧2012フェブラリーS

といった感じでしょうか。特に今回のレースでは、例え通常の平均ペースで走っても前半の負荷がより大きいと踏まえてラップを見る必要性があろうかと思います。

後方から一気の末脚で快勝したテスタマッタ。この馬の位置取りでさえ後半1200mをほぼイーブンラップで駆け抜けたようなラップバランスで、一昨年2着した時よりも追走に脚を使っています。まさにドンピシャ展開がハマった形となり、完璧に突き抜けました。とはいえ、非常にレベルの高いパフォーマンスだったと思います。この馬が当blogに登場したのはコチラが最初かと。

http://ameblo.jp/mahmoud1933/entry-10295800996.html

末脚の爆発力はダート界屈指の存在です。調教ではいつも頑張らないのにレースに出るとどんな速い流れでも引っ掛かるくらいの行きっぷりを見せ、非常に乗るのが難しい馬だと思いますが、この岩田騎手とは相性が抜群ですね。この馬は何とか米ダート界に殴り込みをかけてもらいたいと思います。

2着のシルクフォーチュンも展開がハマった形ですが、テンで大きく離された影響って実際どれくらいのモノだったんでしょうかね。施行距離によって一概には言えませんが、今回は多少なりとも結果論的にスタミナ温存という意味があったと思われ、字面上の数字だけでは推し量れない部分があるかと思います。あのペルーサは出遅れなくなったら成績が良くなったわけではありませんし、Zenyattaも最初の1Fを日本流換算値で14秒掛けて走っていたレースが非常に多かったですしね。スタート時の後手をどのようなレベルの不利とみなすか、これは実に深い洞察が必要になるんじゃないかと思います。

さて、武豊騎手が鞍上となり話題を呼んだエスポワールシチーですが、トランセンドの壁から抜け出せずに勿体ないレースとなりました。その勿体なさは最後の直線でのラップ推移が非常に良く現していると思います。かなりキツいペースでの追走となりながら、しかもダート戦でこのようなラップを踏む事など普通は決して起きない現象です。また、交わして行った馬達の内側に位置していましたから、進路を見付けた後もさほど伸びているようには見えづらかったかもしれません。

まあ結果論としては残念な騎乗だったと思えてしまいますが、私的には久しぶりに彼のピンポイントマークしている姿を見られて良かったなあという感想です。当初からトランセンドをマークすると決めていなかったはずですが、元々ガチンコでは対トランセンドで分が悪いと感じてたのは確かでしょうから、3コーナー過ぎてからトランセンドの背後に付けて「しめしめ」と思っていたのではないでしょうか。

要は、マークしていれば相手の追い出しのタイミングが良く分かるわけで、自分は一呼吸遅らせて最後に差すと言う典型的なマーク屋のスタイル。彼の全盛期(それがいつ頃なのか人によって解釈は様々でしょうが)で良く見られた光景です。結局トランセンドの異変に気が付いた時は、抜け出す進路が全く無い状況だったのでアンラッキーとしか言いようがない戦いでした。もしトランセンドを意識していなければ、上がり3Fを12.3-12.0-12.2くらいで纏められたように思います。3着は十分拾えたでしょうし、シルクフォーチュンと2着争いが出来ていたかもしれませんね。ただ、勝ちに行く作戦としては当然の物だったと思います。もしそつなく騎乗してもらうためなら、このジョッキーに依頼する事も無かったでしょうから。

レース後のジョッキーコメントとして「もっと思い切った競馬をすれば良かった。自分の勇気が足りなかった」とありました。コレ、逃げも差しも両方の意味を含んでいるんでしょうね。素晴らしいスタートダッシュを決めていましたから、内のセイクリムゾンを抑え込んでハナに立つ事も可能だったように思いますし、3コーナーからもっと溜め込んで直線弾けさせるのも可能だったかもしれません。しかし、大目標のトランセンドが居る以上、自分の競馬に徹するのではなくトランセンドをマークするのが勝負事としては正解だったと私は思います。

ここからはトランセンドの敗因を探っていきましょう。勝負のポイントが前半にあったのは誰もが分かっている事だと思います。では何頭か前半600mを100m毎に区切ったラップで見ていきましょう。

7.5 - 5.6 - 5.4 - 5.6 - 5.8 - 5.9 ・・・ 1着テスタマッタ
8.0 - 5.7 - 5.6 - 5.6 - 5.6 - 5.8 ・・・ 2着シルクフォーチュン
6.9 - 5.5 - 5.4 - 5.6 - 5.8 - 5.9 ・・・ 5着エスポワールシチー
7.2 - 5.5 - 5.2 - 5.4 - 5.7 - 5.9 ・・・ 7着トランセンド
6.9 - 5.3 - 5.3 - 5.6 - 5.7 - 5.9 ・・・ 15着セイクリムズン

次に昨年のフェブラリーS、南部杯でのラップと比較してみましょう。

7.2 - 5.5 - 5.2 - 5.4 - 5.7 - 5.9 ・・・ 2012年フェブラリーS
6.9 - 5.4 - 5.2 - 5.4 - 5.6 - 5.9 ・・・ 2011年南部杯
6.9 - 5.6 - 5.5 - 5.7 - 5.9 - 6.1 ・・・ 2011年フェブラリーS

100m以上あるスタート後の芝部分で、今回は0.3秒遅れています。ゲートを出る1完歩目は上手く出ていましたが、2、3完歩目で内にモタれ、ちょっと腰を落としたように見えなくもない感じでダッシュがつきませんでした。これはこの条件でハナを奪おうとする馬なら致命的な遅さです。逃げありきの競馬をするのであれば、ココで敗戦が決まったと言っていいかもしれません。

そしてレース映像を見ても分かる通り、トランセンドは前半200m~400mでぶっ飛ばして行きました。ここは各馬最も速いラップを刻んでいる箇所です。その部分を最速ラップで走ってしまいました。昨年の南部杯とほぼ変わらぬラップです。100m~400m区間は逃げたセイクリムズンよりも速いですし、好発して先行したエスポワールシチーよりも遥かに速いです。前述のように馬場差を考えればハッキリ言って暴走以外何物でもないかと思います。もう前半400m走っただけで、このレースに必要なスタミナをかなりすり減らしてしまったようです。端的に言えば巡航速度の限界を超えたスピードに上げてしまったという事です。ちなみに2着シルクフォーチュンはラップタイム的に実に上手く追走していますね。テンで大きく離されても自分のペースをしっかり守った鞍上のファインプレーがあったと思います。

スピード豊かな1400m戦のスペシャルホースが果敢に逃げ、中距離ホースがテンの行き脚が付かなかった状態にもかかわらず逃げ馬を追っかけると言う、典型的な敗戦パターンでした。厳しい言い方をすれば勝ちに行こうとするレースをしたのではなく、勝ちに行くために考えていた手段を後先考えずに優先させたレースをしてしまった。おそらく前を行く馬のスピードを体感的に速いなあと感じたはずですが、いち早く先行ポジションの確保に向かってしまったんでしょう。まあ調教師から「何が何でも逃げろ」と言われ、出遅れながらも言い付け通りにハナに立つ為にがむしゃらに押しまくる、新人ジョッキーのような乗り方だったと見えなくもないかと・・・。

トランセンドは結局、自身過去最速タイのラップをマークしたわけですし、全体的なパフォーマンスは大きく落としたものの後半でラップダウンする様は、この馬の特徴的なラップ推移でもありますから悪くない走りだったと思います。左トモさえ問題無ければドバイWCで十分期待できるのではないでしょうか。今年はスマートファルコンと共に参戦しますが、昨年同様2頭がお互いの良さを引っ張り出すようなレースをしてくれれば、 今年も歓喜の一瞬を味わえるのではないかと思います。出国前に栗東DPコースで息を合わせる練習をするのは如何でしょうか!

今回はこのあたりで。

東京競馬場ラスト200mのラップ検証

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先日のフェブラリーSの前日(2/18)、久しぶりに東京競馬場に行ってきました。目的は残り200mのハロン棒付近からレース動画を撮る事。簡易型のビデオカメラでしかも手持ち撮影なので非常に醜い映像となりましたが、こんな動画を作ってみましたのでご覧ください。まずは1回東京7日目9R初音ステークスからです。DLしてコマ送りで見て頂けると幸いです。

http://db.netkeiba.com/race/201205010709/




グリーンチャンネルの通常映像と同期させてみました。スタート地点の黄旗が振られる様子がどちらの映像にも含まれていますので、同期出来ているのが分かるかと思います。そしていつもの通りに1着チャームポットが1:34.6でゴール板を通過した物としてタイムコードを動画上に載せています。

では上がり3Fの1F毎のラップを検証してみましょう。公式ラップ上、残り400m通過時は1:10.6となっています。そのタイミングのスクリーンショットはこちら。
$上がり3Fのラップタイム検証

まあ概ね合っている感じですね。次は残り200m通過時。公式ラップ上だと1:22.1となります。そのタイミングのスクリーンショットはこちら。
$上がり3Fのラップタイム検証

まだハロン棒に到達していないのがわかりますね。実際の通過時はこのタイミングでしょう。
$上がり3Fのラップタイム検証

約0.2秒のズレがありますね。次は残り100m標を見てみましょう。動画では少し見ずらいのですがこんな様子の内ラチを撮ってみました。
$上がり3Fのラップタイム検証

そしてこのレースでの残り100m標通過時。
$上がり3Fのラップタイム検証

上がり3Fの公式ラップと私が計測したラップを比べてみましょう。

11.3 - 11.5 - 12.5 ・・・ 公式ラップ
11.3 - 11.7 - 12.3 [ 6.05 - 6.25 ] ・・・ Mahmoud計測レースラップ

このレースは福永祐一騎手鞍上のカトルズリップスが後続を引き離したまま直線ですかさずスパート。最後はクビ差交わされたものの勝ち馬と同タイムで入線したのですが、公式ラップのように最後の200mは1秒もラップダウンはしていません。そもそも200m11.5と12.5の差というのは、平均時速にすれば5km/hも違います。このスピード差って相当大きい物だと私は思うのですが、ラップ分析として語られる事はほとんどありませんね。私の感覚からすれば、この公式ラップのような比率のラップダウンをした馬は、後続馬に交わされる際はアッという間だと思っています。それくらい各ジョッキーが必要以上に早仕掛けするのが常なら、所謂「溜め殺し」みたいな感想を誰も持たないと思います。ただしこのレースに限って言えば後続馬達もラストは脚が上がり気味でした。ちなみに単勝1倍台の人気を背負ったビッグスマイルのラスト200mは11.8[5.8-6.0]。仕掛けが遅れたとか脚を余したとかが敗戦理由ではありません。単に前半3Fで前との致命的な差が付いてしまったのが敗因。早目のスパートも意味を成さないくらいの最悪な位置取りが問題だったわけですね。

次はこちらのレースを見ていきましょう。1回東京7日目5R3歳未勝利です。

http://db.netkeiba.com/race/201205010705/




このレースは福永祐一騎手鞍上のタイセイグルーヴィが豪快に差し切りました。同馬の通過順は13-12-12で上がり3Fは34.6。上がり3Fの公式ラップは12.1-11.7-11.8ですから、レース映像を見ずにデータだけで判断するならタイセイグルーヴィは残り100mを過ぎてから差し切ったんじゃないかと私は考えます。つまり、上記の通過順で上がり3F34.6をマークする馬はラスト1Fが11.8も要するなんて到底考えられないからです。というのは前述の初音ステークスにおけるビッグスマイルとは違い、こちらは未勝利馬だからです。せいぜい300mくらいしか良い脚が使えない、そんなレベルの馬達のレースですから仕掛け処が遅くなるのが当然でしょう。しかし、映像を見る限り残り200m地点では既に先頭に立っていたのです。

ではこのレースも上がり3Fの1F毎のラップを検証してみましょう。公式ラップ上、残り400m通過時は1:26.4となっています。そのタイミングのスクリーンショットはこちら。
$上がり3Fのラップタイム検証

ハロン棒より遥か手前ですね。実際の通過時はこのタイミングでしょう。
$上がり3Fのラップタイム検証

次は残り200m通過時。公式ラップ上だと1:38.1となります。そのタイミングのスクリーンショットはこちら。
$上がり3Fのラップタイム検証

この地点もハロン棒より遥か手前です。このレースの公式ラップ計測は酷い精度ですね。実際の通過時はこちら。
$上がり3Fのラップタイム検証

それでは上がり3Fの公式ラップと私が計測したラップを比べてみましょう。

12.1 - 11.7 - 11.8 ・・・ 公式ラップ
12.5 - 11.6 - 11.5 ・・・ Mahmoud計測レースラップ

このような加速ラップを目にすると色めき立つ方が多いんじゃないでしょうか。しかし私的には当たり前のラップ推移。差し馬が後方から残り200mで先頭に立てばレースラップはラスト1Fの方が速くなるのが自然です。ちなみにタイセイグルーヴィの上がり3Fの内訳は11.8-11.3-11.5。残り400mで先頭と約0.3秒差がありましたから、仮にラスト1Fの落ち込みが0.3秒あったとしてもレースラップはイーブンラップになるわけです。レースラップのラスト1Fは遅くなるのが当たり前という事は絶対に言えません。あくまでも展開に左右されます。ですから「加速ラップを差し切ったのは価値が高い」なんて単に評論するのは愚の骨頂です。

とにかく公式ラップの不確かさが招いた、ラップの考え方に対する誤解ではあるのですが、競馬を生業とする評論家ならば、その公式ラップの値に疑問を持つセンスがあって当然ではないかと私はずっと思っていたのです。しかし一向にその気配が無くシビレを切らしてこんなblogを始めた経緯があります。逆に在野の方達は随分前から気が付いていらっしゃったようですね。まあ予想に関してはプロセスが何だろうと当てた者勝ちなんですが、ズレている公式ラップを持ちだしてレース後、さも得意げにあ~だこ~だというのはおかしいと思うわけです。私が知る限り、ラップをメインとしている生業の方でこの問題に言及されている方は存じて居りません。今後もし競馬をより文化的、スポーツ的に地位を向上させたいのなら、避けては通れない道だと思いますが如何でしょうか。このままだと自らの科学的な見識のなさを露呈する一方だと思います。


5月に入ると新潟開催が始まります。何とか機会を作って今回と同様の検証動画を作ってみたいですね。過去に何度も書きましたが、新潟競馬場の公式ラップの酷さはJRA随一。特に直線1000m戦をキッチリ検証出来ればいいですね。ちなみに興味あるページをリンクしておきます。

http://belesprit09.wordpress.com/2012/02/19/a-fantastic-fighting-frightening-nineteen-wins-to-black-caviar/

Black Caviarの19連勝目のレースですが各馬の200m毎のラップが掲載されています。これは以前どこかの記事で導入を知りましたが、おそらく1頭毎の自動計測による値だと思います。動画からの検証でも確かな値だと考えられますが、日本流のタイムにするのならテンの200mを1.3秒マイナスすればOKです。新潟1000m戦の公式ラップとは様相が違いますね。また、テンのラップが速くないのですが、これは「逃げありきで猛然とダッシュ」→「ハナに立てばペースを落とす」といったような、実際のペースを無視した、まずは形から入ろうとする日本人騎手のレースぶりとは全く違うスタイルですね。

今週からリニューアルされた中京競馬場でレースが始まりましたが、概ねラスト3F目が0.2秒程度遅く計時され、ラスト1F目も当然のように0.2秒程度遅く計時されているようです。したがってラスト2F目が0.4秒速く計時される形となり、新設された坂の影響はどうなんだ?と感じた方が多く居るのではないでしょうか。ちなみにスマートギアが勝った中日新聞杯の実際の上がり3Fのラップを書いておきましょう。

12.2 - 11.4 - 12.1 ・・・ 公式ラップ
11.9 - 11.9 - 11.9 ・・・ Mahmoud計測レースラップ
11.6 - 11.5 - 11.9 ・・・ 1着スマートギア
11.9 - 12.1 - 12.4 ・・・ 5着エーシンジーライン(逃げた馬)

これも酷い公式ラップですね。というか、さすがにこの公式ラップは違和感を抱いた方が多かったのではないでしょうか。新中京競馬場のコースレイアウトの是非は、正しいラップを抜きに語ってはいけないと思います。

JRAさんにはいくら言っても無駄なのですが、少なくとも残り400m、200m地点は光電管で測って欲しいですね。で、誤作動を恐れるのならハロン棒にカメラを付けておき、同期させて確認すればいいのです。そんな事をするのも嫌なのなら、スタート地点と同じようにハロン棒通過時の黄旗振り係を設置してみましょう。こんな手法でも、さすがに今よりもより正確なラップを発表できるはずです。

もし当blogを始めてご覧になった奇特な競馬マスコミ関係者様がいらっしゃったら、以下のエントリーもご覧になってください。

http://ameblo.jp/mahmoud1933/entry-10993581728.html
http://ameblo.jp/mahmoud1933/entry-10936978791.html

この他にも同様のエントリーが数多くございます。「おかしい」と声を上げる方の登場を切に願っております。

今回はこのあたりで。

2012 阪神大賞典 回顧

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衝撃の展開となった今年の阪神大賞典。1977年日本短波賞でのマルゼンスキーの走りより衝撃度は大きかったんじゃないかと思います。では、私に分かる範囲で少し検証してみたいと思います。

この日はリアルタイム観戦が出来ず、競馬界が騒然となっているのを露知らず夜に録画しておいたBSフジの番組を見てこの事実を知りました。レース映像を見ながら感じた事をズラズラ書いて行きますと、まずスタート後しばらくは、もう折り合いの心配をしていない感じで池添騎手が強気に乗っているなと思いました。馬群の後ろに入れようという意志を感じなかったのがその理由です。結局独り合点になりましたが「有馬記念で更に大きな自信を持ったんだなあ」なんて思ったり・・・。

ナムラクレセントが1周目4コーナーで先行馬を交わして行った際も、池添騎手は抑え込む素振りを見せず「えらく積極的だなあ」と思ったのですが、その状況が一変したのが2周目1コーナーからの走り。内ラチ沿いを進むナムラクレセントと大きく馬体を離しているのを見て、これは緊急事態だと感じました。大きな距離ロスを覚悟の上で何とかハナには立たないようにしようという苦肉の策か、あるいはこの時点で既に制御不能状態に陥っているのか・・・。

結局向こう正面の中ほどから先頭に立ちましたが、相変わらず馬場の外目を通り、しかもスピードが乗っているように見えましたので、具体的にどうのこうのというのは無くとも「このまま3コーナーに進めば何かエライ事になるんじゃ」って胸騒ぎを覚えた方もいらしたんじゃないでしょうか。そして、その不吉な予感通りに事件が起きてしまいました・・・。

でも、立て直して馬群の後ろに付いた時はホッとした気分になり、そして4コーナーで捲り始めた時は血が沸騰するような、とても熱い感覚を覚えました。ただただ「スゴイ!」の一言。まあ私は熱しやすく冷めやすい典型的な人間なので、直線に入ってからはオルフェーヴルに戦いを挑む事が可能な馬はどれか気になり、他馬の方に目が行きましたが。それにしてもこんな大事件が起こるとはねえ・・・。

では上位3頭のラップを見ていきましょう。そしてタイムコード付きの動画を4種類用意しました。併せてどうぞ。

http://www.youtube.com/user/Mahmoud3F

着順馬番馬名タイム2004006008001000前5F12001400160018002000中5F22002400260028003000後5F2900Goal
1着14ギュスターヴクライ3:11.813.412.313.513.813.066.012.513.013.213.012.564.212.412.112.412.012.761.66.06.7
2着13オルフェーヴル 3:11.913.412.513.313.713.065.912.112.313.413.212.263.213.912.211.912.012.862.86.16.7
3着1ナムラクレセント3:12.313.512.713.512.912.364.912.612.913.313.312.664.712.812.112.412.413.062.76.26.8


Mahmoud計測RL3:11.813.212.313.413.712.364.912.612.813.413.212.264.213.312.112.412.212.762.7



公式RL3:11.813.312.313.313.612.464.912.712.313.913.212.264.313.212.112.011.913.462.6



今開催は雨にたたられることが多く、この日の馬場もかなり重い状態。今年はパフォーマンスレベルを落としたと思いますがナムラクレセントは昨年より7.9秒も遅い走破タイムでした。単純に言えば1Fに付き0.5秒程度遅い馬場と考えても概ねOKかもしれません。

オルフェーヴルの走りをラップ的な観点から振りかえるならば、3着ナムラクレセントと比較してみるべきですね。全体的に言える事はギクシャク度がまるで違います。結果的にハナ争いとなった馬同士には見えない感じすらします。1周目正面スタンド前でもオルフェーヴルはかなりラップを上げており、1、2コーナーで距離ロスを含めても刻むラップは落ち着いたのですが、向こう正面の直線に入るともう抑えが効かない状態だったようです。しかし、1F毎のラップを見ていく限りもう一つしっくりと来ません。というわけで今回は100m毎のラップを見ていきたいと思います。

http://www.jra.go.jp/facilities/race/hanshin/course.html

阪神競馬場内回りAコースは1周1689mですから3000m戦の1周目は1311m走る形になるのですが、その1周目のラップ計測用に小さなハロン棒が立ててあります。これはゴール板を基準とした大きなハロン棒のほぼ中間、正確に言えば【スタート】89m⇔111m【ゴール】の地点にあるので、計算上の推測値にはなるものの後半1400mは概ね100m毎のラップを弾き出す事が可能です。100m毎のラップはこんな感じでしょう。

13.2[6.8-6.4]-12.2[6.2-6.0]-13.9[6.5-7.4]-12.2[6.4-5.8]-11.9[5.9-6.0]-12.0[6.0-6.0]-12.8[6.1-6.7]・・・オルフェーヴル

13.3[6.8-6.5]-12.6[6.3-6.3]-12.8[6.5-6.3]-12.1[6.1-6.0]-12.4[6.2-6.2]-12.4[6.2-6.2]-13.0[6.2-6.8]・・・ナムラクレセント

残り1300m地点、つまりちょうど1周した辺りからオルフェーヴルの再度の暴走が始まったようです。ナムラクレセントは少し釣られたものの何とか自分のペースを守りましたが、オルフェーヴルは3コーナーに向けて6.4-6.2-6.0と徐々にスピードを上げて進入しようとした形だったと思われます。1F12.0というのは馬場状態を考えればかなり速いですね。ジョッキーの気持ち的には少しブレーキを踏む感じでコーナーに入りたいところを、逆にアクセルを踏みこむような形でコーナーに入らざるを得なかったわけで、池添騎手はパニック状態となっていた可能性が少なからずあったんじゃないかと思うのです。したがって鞍上の意図しない形、つまり「もう止まる合図なんだ」みたいな形でオルフェーヴルに指示が伝わったのではないかと。強引な推論に過ぎませんが、そんな事を考えてみました。

また、パトロールビデオを見る限り、オルフェーヴルは失速する前にコーナーを廻っていく方向へ顔が向いています。全く曲がる気配が無かったわけではないように見えますが、このカメラ位置からはそれ以上の事はわかりません。まあ素人には馬の御法についてとやかく言えませんが、この事象は不可抗力な出来事では無く防ぐ事が十分可能であったのは確かでしょう。その責任の所在はジョッキー、次に調教師にあると思いますが、この陣営で3冠を達成したのもまた事実。まだまだ合格点の範疇にあるんじゃないかとは思います。まあ、個人的にはスミヨン騎手とかが騎乗するのを見たい気がしますが。

次にオルフェーヴルの不利がどうだったかを考えてみましょう。オルフェーヴルは3コーナーの入り口から外に膨れたわけですが、残り600mのハロン棒辺りでは内ラチに近い位置まで戻っています。Google Mapで見れば分かる通り、残り600mのハロン棒は向こう正面の直線から約90度廻った辺りに設置されています。この区間の幅員は24mですから距離ロスの最大値は約38m。実際オルフェーヴルが被った距離ロスは15mくらいではないかと思います。時計にして約0.9秒。では、上記の残り1000m~600mのラップにこの推定0.9秒の距離ロスを反映させてみましょう。

13.9[6.5-7.4]-12.2[6.4-5.8]

13.4[6.4-7.0]-11.8[6.2-5.6]

こんな感じかと思います。残り800m~600mの11.8という推測ラップ値は遅れを取り戻すため必要以上に速くなっていますが、その前の13.4という推測ラップ値は自ら減速した影響が大きくありますね。12.4[6.2-6.2]みたいなラップが妥当なところかもしれません。つまり自ら減速した分も最大で1秒程ありそうです。

ただ、このまま1F12秒程度のペースで走り続けたとして、実際にオルフェーヴル自身がマークした直線での末脚と同じ質のモノを繰り出せるかは少々疑問です。ペースを大きく緩めたが為に末脚を温存できた分もいくらかあるんじゃないかと思います。まあ、この部分はどんぶり勘定的に推測するしかなさそうですね。強引に結論を出すと距離ロスが0.9秒。自ら減速した為のロスは0.4秒。合わせて1.3秒のタイムロスが合ったんじゃないかと仮定してみます。つまり、ギュスターヴクライを約7馬身千切っていたと・・・。

今回の阪神大賞典は、オルフェーヴル以外の馬にとってもスロー寄りで流れたレースだったと思います。上がりの時計は遅いですが、この馬場状態なりに余力を持って直線勝負に挑めたレースであり、いわゆるスタミナ戦とは違うと分析しています。そういえば、ラスト1Fの公式ラップはちょっと酷いですね。私は12.7と判定しましたが12.8でもいいかと迷ったくらいです。しかしいくらなんでも13.4というのは問題外の値であり、それが本当なら単なる凡戦レースとなってしまいますし、苦労しながらも巧妙にペース配分を行った和田騎手の騎乗ぶりが浮かばれなくなってしまいます。この歴史的なレースの記録は正しい物であって欲しいと切に願います。

さて、オルフェーヴルは道中で引っ掛かっているように見えても、必要以上にスタミナロスをしてしまう一般的なケースとは違いますね。イメージとして近いのは1994年天皇賞・春を勝ったビワハヤヒデでしょうか。まあビワハヤヒデほどの強靭なスタミナ力は感じませんが、問題の3コーナーでも余力はタップリでした。結局、道悪馬場だった皐月賞やダービーと同じで、他馬と比べて段違いの末脚を楽々繰り出せるはずのレースだったのではないかと思います。もし、オルフェーヴルがヒルノダムールと似たような位置取りで上手にレースが出来たとしたら、上がり3F35.8で突き抜けていたと結論付けてみましょう。それはそれで「凄いな」と思うのでしょうが、本来なら見る事が出来ない形でオルフェーヴルの「凄さ」を目撃できたのは、同馬の関係者や馬券勝負で散った方々には誠に失礼な言い方になりますが、とても幸運だったかと思います。これ以上の「負けてなお強し」という形はないんじゃないでしょうか。

今回の敗戦はとても良い意味で箔がついたと私は思いました。そして同時にこの馬のファンがより一層増えるのではないかと感じました。まだまだ興奮させてくれるレースを見せてくれると思いますが、毎レース進化した姿を見せてくれるのには頭が下がる思いです。平地調教再審査の合否によりますが、次走は天皇賞・春を目指すそうです。どんなパフォーマンスが見られるか大いに期待しましょう。

今回はこのあたりで。

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