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Channel: 上がり3Fのラップタイム検証
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2012 キングジョージ 反省会

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まあ、反省会と言ってもぐうの音も出ない程の惨敗でしたから、事細かく振り返ってもしょうがないですし、こんな結果を迎えるのも想定内だった方が多かったのではないでしょうか。というわけで至って簡単に振り返ってみましょう。

Twitterで少し触れましたが私の戦前の見立てはこんな感じでした。

●アスコット12F戦はディープブリランテにとって1F分は長いだろう。しかも長い末脚が使えない宿命あり。

●前日の勝ち時計がかなり掛かっていて馬場が重そう。当日やや回復傾向にあるもののGood to Softという発表通り、所謂良馬場とは程遠い状態。

●瞬発力争いで斤量差の恩恵を期待したかったが、馬場状態的にその恩恵が少なくなるかも。

●とはいえ、まだ成長余力が見込める3歳のこの時期なので、調教師のコメントは抜きにしても、もうワンランクの上積みがないものか。そしてBustedの4x5を持ってんだから実はアスコット競馬場がピッタリだったりして!

●奇跡的に岩田騎手のダンスが直線中程まで見られない、手応え十分の追走劇にならないものか。

●ラストは差させる公算が高いだろうけど、何とか日本ダービー馬の意地を見せてくれ!

残念ながら最後の直線に向き数完歩走ったところでディープブリランテのキングジョージは終わりを告げました。ガックリ感はシリウスシンボリがディープブリランテ同様、ダービー制覇後キングジョージに挑戦して敗退した時とソックリでしたねえ・・・。

勝ちタイムは2:31.62。日本流2400m戦に換算すれば2:29.5くらいでしょうか。レースの上がり3Fは37.1程度だと思いますが、最後の直線の勾配を考えると上がりの競馬という形だったと言えるでしょうか。直線を迎えるまでスタミナ消耗度はそれほど高くなかったんじゃないかと思います。

上位3頭の上がり3Fはこんな感じだったでしょうか。

36.8 : 12.0 - 12.2 - 12.6 [ 6.2 - 6.4 ] ・・・ 1着デインドリーム
36.8 : 11.8 - 12.2 - 12.8 [ 6.4 - 6.4 ] ・・・ 2着Nathaniel
36.4 : 11.7 - 12.2 - 12.5 [ 6.1 - 6.4 ] ・・・ 3着St Nicholas Abbey

馬場が速い時でもアスコット12F戦で上がり3F36秒を切ってくる馬はほとんどいませんから、上位争いをした数頭は十分余力を持って末脚勝負に挑んできた事が伺えます。ディープブリランテはペースが上がった残り3F地点では結構いい反応をしていたんですけどねえ。まあ、ある意味いつも通りそこから1Fだけ脚を使えたものの、それ以降はバッタリでした。

具体的にはいろんな意見があるでしょうが、根本的な部分は誰もが同じ感想を持っているように思います。なので最後に馬場についてちょっと触れて終わりにします。

数年前から海外の競馬をハイビジョンで見られるようになって私が思ったのは、以前から言われていたような深い馬場(特に英国)というイメージと違い、芝丈が意外に短いなという点です。当blogでも芝に関していろいろ書いてきましたが、JRAが毎週発表している芝丈の長さについては、私はあまり触れて来ませんでした。芝丈が2cm長いか短いかなんて、大して影響はないんじゃないかと思っているからです。それよりも含水率とか、要は馬場の硬度がどれくらいかの方が遥かに影響が大きいだろうと。で、外国の競馬場とは正反対に、日本の馬場の芝丈は意外に長いなあと。というわけでこんな画像をご覧ください。

$上がり3Fのラップタイム検証

$上がり3Fのラップタイム検証

上段は今年の日本ダービー時、下段は今回のキングジョージでの画像です。ディープブリランテの蹄が隠れる度合いは東京競馬場の方が大きいと思いませんか?

先日もTwitter上で各競馬場の芝馬場の画像を見せて頂きましたが、それをも踏まえると芝の密度が全然違うイメージがあります。東京競馬場は芝丈が長くても細くて直毛っぽく、しかも芝生の量がスカスカで地盤が比較的ダイレクトに脚に伝わる一方、アスコット競馬場は芝がパーマ状態でなお且つ太くビッシリ生え揃い、文字通りクッション性豊かな馬場といった感じでしょうか。したがって日本での高速馬場の表現の中で「芝を短く刈り込んで・・・」というのは、ちょっと違うんじゃないのって思っております。まあ、芝はいろいろありますわなあ。それよりも、もっと競馬の肝心要な部分に目を向けた方が良さそうな気がします。

今回はこのあたりで。


生ける伝説Frankel

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件のJuddmonte International Stakesですが、FrankelがSt Nicholas Abbeyを馬なりで並び掛け交わし去るシーンは笑っちゃうくらいインパクトがありましたねえ。一気に2F以上距離が延びたレースでもFrankelは予想通り快走を見せてくれました。古馬になって明らかにパワーアップしていましたから、当然の結果といったところでしょうか。レース映像が全てを物語っていますが、折角なので時計面から少し振り返ってみたいと思います。

このレースの施行距離についてはTwitterで詳しい解説をして頂いたのですが、その距離は10F88Yという半端なモノ。勝ちタイムが2:06.59なので日本流換算するためにおよそ2:05.3としておきましょう。とすると200m平均12秒を切るなかなか速い走破タイムでした。2009年の同レースでSea the Starsがマークした2:05.29より1.3秒遅かったのですが、同じGood to Firmという状態でも2009年の硬度計は8.6、今年は8.1だったので、若干時計が掛かるのは致し方ないと言えるでしょう。現に7Fで行われたG3戦は今年の方が1.43秒遅かったという事実もあります。

その2009年のSea the Starsが勝ったレースでは、Sea the Stars自身の上がり3Fは映像を見る限り35秒後半くらいでした。最後方を進んだSea the Starsでさえ、イーブンラップあるいは前傾ラップとなるくらいの速い流れでレースが進みましたが、今年はどうだったかというと、何とリアルタイムでラップが表示されましたので改めてココに書いておきましょう。

まずは1F毎(最初の値は88Y)のラップ。

7.33-12.02-11.62-11.77-11.97-12.12-12.46-12.33-11.05-11.46-12.13

次は各ハロン(最初の値は88Y)の通過タイム。

7.33-19.54-31.15-42.93-54.90-1:07.01-1:19.47-1:31.80-1:43.24-1:54.69-2:06.82

ん?計算が合いませんねえ・・・。しかも公式勝ちタイムともズレている・・・。

おそらく1F毎のラップを計算する際に何らかの不手際があったんじゃないですかね。Frankelが馬なりで上がっていった残り3~2F区間のラップが何と11.05という事で、全世界が色めき立ったと思いますが、さすがにそれは無理筋というモノだったようです。また、このリアルタイムで表示された通過タイムは、動画を見る限り少々計時スタートが速かったですね。というわけで1F毎の正しいラップは次の通りじゃないかと思います。

7.10-12.21-11.61-11.78-11.97-12.11-12.46-12.33-11.44-11.45-12.13

後半5Fは59.81。ホームストレッチ入り口から大外に向かった距離ロスもあり、残り5~3F区間は中弛みしていますが、前後半はほぼイーブンペース。そんな流れの中Frankelは上がり3F34.9程度で突き抜けたという形でした。最速ラップとなった残り3~2F区間はおよそ11.3だったでしょうか。

このレースで3着となったG13勝馬St Nicholas Abbeyは12F戦で実績を上げている為、今回の一戦は距離不足を見る向きがあるのかもしれませんが、私の見立てではSt Nicholas Abbeyは末脚のキレで勝負するタイプで、決してスタミナ型とは思っていません。したがってペース次第ではかなりのスピードに乗った末脚を使えるはずだと思うのですが、同馬はキレる末脚を繰り出す余力が全くありませんでしたね。それだけ、Frankel以外の馬にとっては厳しい流れとなった証でしょう。

このコースはホームストレッチが相当長いので当たり前ではあるのですが、このレースも私が良く言うSo You Think型の上がりラップですね。こんなガチンコレースがFrankelの強さをより鮮明にしている要素でもあるのでしょう。ホントにいい物を見せてもらいました。このようなスーパーホースが次に登場するのは果して何年後になるのでしょうか。30年先、いや50年先かも・・・。

今回はこのあたりで。

2012 札幌2歳S 参考ラップ

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札幌2歳Sの上位人気馬の参考ラップを書いておきましょう。注目の一戦です。

●2012年06月02日 新馬戦 阪神芝1600m

13.3 - 13.0 - 12.3 - 12.8 - 12.2 - 11.5 - 11.1 - 11.1 ・・・ Mahmoud計測レースラップ

13.6 - 13.0 - 12.7 - 12.6 - 12.1 - 11.4 - 10.8 - 11.1 [ 5.4 - 5.7 ] ・・・ 1着トーセンパワフル

13.8 - 13.1 - 13.1 - 12.7 - 12.1 - 11.1 - 10.8 - 11.0 [ 5.4 - 5.6 ] ・・・ 3着ラウンドワールド


●2012年06月24日 未勝利 阪神芝1600m

12.7 - 11.8 - 12.3 - 12.7 - 12.3 - 11.5 - 10.8 - 11.6 ・・・ Mahmoud計測レースラップ

13.1 - 11.7 - 12.2 - 12.8 - 12.1 - 11.4 - 10.8 - 11.6 [ 5.6 - 6.0 ] ・・・ 1着ラウンドワールド

このレースの公式ラップはバックストレッチのラップでさえ無茶苦茶。新米計測員とかにストップウォッチを握らせていたのかも。


●2012年08月11日 コスモス賞 札幌芝1800m

12.8 - 11.6 - 12.3 - 12.8 - 13.0 - 12.2 - 11.7 - 11.3 - 11.7 ・・・ Mahmoud計測レースラップ

13.4 - 12.0 - 12.2 - 12.4 - 12.7 - 12.1 - 11.8 - 11.3 - 11.5 [ 5.7 - 5.8 ] ・・・ 1着ラウンドワールド

13.3 - 12.1 - 12.4 - 12.4 - 12.6 - 12.1 - 11.5 - 11.3 - 11.8 [ 5.8 - 6.0 ] ・・・ 2着マイネルホウオウ

1着ラウンドワールドの上がり3Fは2着マイネルホウオウと同タイムの34.6とみなした方が良いでしょう。


●2012年08月12日 新馬戦 札幌芝1800m

13.1 - 12.6 - 13.3 - 13.4 - 13.5 - 12.7 - 12.1 - 11.3 - 10.9 ・・・ Mahmoud計測レースラップ

13.7 - 12.7 - 13.5 - 13.3 - 13.4 - 12.6 - 11.7 - 11.1 - 10.9 [ 5.4 - 5.5 ] ・・・ 1着コディーノ

ラスト1Fは10秒台に突入も27完歩弱とトビが小さい。前日のラウンドワールドと完歩数はほぼ同等。馬体重が46kg差あってなお且つコディーノの方が遥かに速いラップを刻んでいるのに、完歩数が同じとはまさ好対照。


血統構成および刻んだラップを見れば、欧州12F戦ならラウンドワールドが抜けた存在だと思いますが、この舞台ではどうでしょうか。ここ3戦とも、緩いコーナーでも進んで行きませんからね。まあキャリアを積んだ分、トーセンパワフルとの差は詰まっているはずだと思いますがさて・・・。

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2012 札幌2歳S 回顧

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今夏の札幌開催は最終週まで高速馬場のまま終了という異例な形となりました。ペース次第で1F平均12秒を切る1分47秒台まで勝ち時計が望めるかと期待していましたが、緩い流れでレースが進んだ事もあり、例年より1ヶ月早い開催だった事を考慮しても、ここ2年と概ね同程度のレベルの決着となりました。今年より遥かに重い馬場だった昨年でも最遅ラップは12.7でしたから、今年の流れの遅さがどの程度だったか良くわかるかと思います。

公式レースラップの上がり3Fは12.0 - 11.6 - 11.3。残り2F地点で1着馬コディーノは先頭と0.3秒程度離れていましたから、推測の上がり2Fは概ね11.3 - 11.3となります。一方2着馬ラウンドワールドは残り2~1F区間でコディーノとの差を詰めていましたから、ラスト1Fでラウンドワールドがバテた故、コディーノが突き放す形になったと解釈できます。また、一つ前の1000万下摩周湖特別を逃げ切ったダンツミュータントはラスト2Fを11.1 - 11.1で上がっています。両レースの走破タイムを踏まえても、コディーノのラスト2Fはさほど速くないという解釈もできますね。走破タイム、上がり3F、公式レースラップからは、今年の札幌2歳Sが高レベルな一戦とはとてもじゃないが言えません。

しかし、このレースを見て「これはG1級だ!」というようなインパクトを感じた方も少なくなかったんじゃないでしょうか。無論、私も上記のような解釈はしておりません。というわけで上位馬の個別ラップを見て行きましょう

着順馬番馬名タイム200400600800前4F10001200140016001800後5F1700Goal
1着3コディーノ 1:48.512.611.712.212.448.912.612.412.111.411.159.65.55.6
2着11ラウンドワールド 1:48.813.212.012.012.549.712.312.511.711.311.359.15.65.7
3着5エデンロック 1:49.213.112.112.112.349.612.312.511.911.711.259.65.55.7
7着6トーセンパワフル 1:49.712.711.712.212.549.112.512.412.111.911.760.65.85.9


Mahmoud計測RL1:48.512.411.512.212.448.512.512.612.111.711.160.0



公式RL1:48.512.411.612.312.248.512.512.612.011.611.360.0



コディーノのラスト1Fは11.1としましたが、11.0と見ても良いかもしれません。前回のエントリーで新馬戦のラップを書いておきましたが、その新馬戦以上にラスト1F特化型というレースを行いました。細かく表現すれば残り250~50m区間だけ本気になったとも言えます。ラウンドワールドが迫って来てからエンジン全開となり、ラウンドワールドよりランクが高いスピードを見せ突き放したわけです。直線が短い札幌競馬場だからこそかもしれませんが、出走馬中最速ラップをラスト1Fで叩き出したのは重賞では珍しいケースだろうと思います。

父キングカメハメハ、母父サンデーサイレンスという血統であり、その類似性を踏まえてなのかローズキングダムに似ているという声を聞きました。しかし、ローズキングダムはこんなに速い脚は使えなかったでしょう。2戦目ではトーセンファントム、ダービーではエイシンフラッシュの方が一瞬の脚は速かったわけですし、ましてや件のJCでのブエナビスタとのスピード差はハッキリしていました。そもそもコディーノはキングカメハメハ産駒に多く見られるNorthern Dancerクロスを持っていませんからタイプは違いますね。強いて言えば血の内容が違うものの同厩だったゼンノロブロイと少しイメージが近いです。今後の成長次第でゼンノロブロイになるのか、それともペルーサになってしまうのか要注目です。

2着のラウンドワールドは相変わらずコーナーの動きが良くないですが、今回はまずますといったところでしょうか。しかしコディーノとのスピード差の違いは明白に感じられました。今回のようなレースになると分が悪いですね。上がりのラップの変動が少ないレースでこそ持ち味が発揮できるでしょう。

馬体のイメージは違いますがワールドエースと似たタイプだと思います。コディーノのようなレースを目指しても意味はないでしょう。まあ同馬は主戦が岩田騎手、そして松田博資厩舎所属馬ですから、ワールドエースよりポテンシャルを開花出来る可能性が高いのは言うまでもありません。

もう1頭の人気馬トーセンパワフルは良い所がありませんでした。一応上がりは後傾ラップになってはいますが、実質は追われてからそのままスピードを維持して入線した感じです。新馬戦の内容から全兄ロジユニヴァースよりスピード能力は上かも、と思いましたが結局似たようなラップの踏み方となりました。

さて、このレースの出走馬の半数以上が上がりラップ内ではラスト1Fで最速をマークする形となっていました。まだキャリアの浅い若駒ですから大事に行きたい気持ちはわからなくもないですが、何と言っても重賞レースですからねえ。ホントにこのようなレースが非常に多いです。そして、こんな現象は坂路調教でも同様です。というわけで2003年から現在までの栗東坂路調教の様子を調べてみました。以下の表をご覧ください。

※期間:2003年1月1日~2012年9月3日
4F50秒切り11秒台1F目11秒台2F目11秒台3F目11秒台4F目
2003169994931
200464431523
20054341488784
20061691255750
200717189021446
20081186511518
2009137626631
201021355243146
201118946168120
201252249842


4F50秒切りの頭数は2004、2005年を除けば概ね似たような値ですが、1F11秒台をマークした区間は2007年以降明らかに変貌を遂げています。また、2009年以降はラスト1Fで11秒台をマークする比率が高くなっています。

元来急勾配のコースを走る事によって、短い距離でもスタミナ強化を図っていた側面があったと思われますが、近年は単に末脚を磨く場として坂路が利用されている形が非常に多くなっているわけです。ですから、道中遮二無二抑え込んで末脚を伸ばすのは調教から一貫したスタイルでもありますね。

ひょっとすると、ラスト1Fのハロン棒辺りにスピードガンを設置して「最高速ランキング」なるものでレースの結果以外でも競ったりしているんですかね。どなたかご存知の方いらっしゃいませんかw

今回はこのあたりで。

愛チャンピオンSの結果と中山芝1600mのレコードについて少々

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日本でもお馴染のスノーフェアリーが愛チャンピオンSを快勝しました。Nathaniel、St Nicholas Abbeyを捻じ伏せたのは非常に価値ある内容でしょう。そして、一昨年および昨年のエリザベス女王杯で見せたスノーフェアリーのパフォーマンスが、欧州馬に対する日本馬の力量がどの程度にあるのか物差しになりますね。また、当blogでたびたびSo You Thinkの名を出してきましたが、これはスノーフェアリーと再三接戦を演じていたので日本馬との比較対象になるからでもあります。距離適性、コース適性、馬場適性等で力関係は変わってくるものの、この愛チャンピオンSの結果で再認識した事は、Frankelと対決すべき馬はやはりオルフェーヴルだと・・・。

さて、今年の愛チャンピオンSは2:00.92というレコード決着でした。日本式の2000m戦に換算すれば1:58.8くらいの走破タイムになるかと思います。その上での前後半のラップは58.1-60.7程度。スノーフェアリー自身でも59.4-59.4というイーブンペース。Frankel、Sea the Starsが勝った時の英インターナショナルSと同様、ペースメーカーが頑張りましたね。欧州のレースでよく例えられるような「スローの直線勝負」といった風情は微塵も感じられません。今回のペースを皐月賞や天皇賞・秋と比べると如何に厳しいレースだったか良くわかります。日本のレースのように脚を余してゴールインする形にはなりませんね。

話は変わって、京成杯オータムHで芝1600mの日本レコードが誕生しました。1分30秒台というのは世界初だったようです。前日土曜日でも快時計が連発していましたから、ペース次第ではありますが1分30秒台突入は十分予想された事でした。ちなみに勝ったレオアクティブはこんなラップを刻んだと思います。

13.2 - 11.1 - 10.9 - 11.2 - 11.1 - 11.0 - 11.0 - 11.2 [ 5.5 - 5.7 ]

スタートダッシュ後はずっと同じペースで走り続けたような形です。見事なモノですね。

こんな快時計(怪時計?)が記録された以上、また高速馬場の是非が問われる事になったようですし、馬の能力が進歩したとか、馬場の造成技術の進化の賜物とか、いろんな意見がある事と思います。で、いろいろと議論する前に、やはり過去の走破タイムを振り返っておくべきだろうと思いますので、ちょっとデータを紹介しておきます。

スピード指数の基準タイム作成の常套手段の一つである、1000万下(旧900万下)での1~3着馬の平均走破タイムを抽出してみました。良馬場限定で中山競馬場芝1200、1600、1800、2000mのデータです。2012年は9/9までとなっております。ご覧ください。

競馬場芝・ダ距離馬場状態R数平均走破タイム平均前半3F平均後半3F
中山1986120041:09.8434.2435.60
中山1987120041:09.3333.6335.70
中山1988120031:09.4134.0035.41
中山1989120031:09.4734.0235.44
中山1990120021:08.8233.7235.10
中山1991120031:09.2233.9135.31
中山1992120031:09.7634.2335.52
中山1993120041:09.5834.0135.58
中山1994120031:09.5133.9335.58
中山1995120031:09.3033.8735.43
中山1996120041:10.0734.3935.68
中山1997120031:09.5734.1835.39
中山1998120031:09.7234.3735.36
中山1999120051:09.7134.1135.60
中山2000120071:09.3534.0035.35
中山2001120061:08.3133.5834.73
中山2002120071:08.4333.8334.60
中山2003120061:08.7633.7834.98
中山2004120081:08.1233.7634.36
中山2005120071:08.4834.2134.26
中山2006120081:08.5734.0034.57
中山2007120061:08.7334.3934.34
中山2008120081:08.7734.1234.65
中山2009120061:08.4134.1934.22
中山2010120071:08.5034.1034.40
中山2011120051:08.4934.1134.37
中山2012120011:08.7034.5334.17
競馬場芝・ダ距離馬場状態R数平均走破タイム平均前半5F平均後半3F
中山1986160041:35.2458.7236.52
中山1987160051:35.5659.6135.95
中山1988160021:35.2859.1536.13
中山1989160081:35.4159.0536.36
中山1990160071:35.4059.2436.17
中山1991160051:34.9058.9435.96
中山1992160061:35.0259.0635.97
中山1993160051:35.5459.7235.82
中山1994160051:34.9559.2135.74
中山1995160031:34.8258.4236.40
中山1996160071:35.5259.5036.02
中山1997160061:35.6859.4436.24
中山1998160061:35.6259.6835.94
中山1999160061:34.6958.7135.98
中山2000160081:35.2359.6635.57
中山2001160071:34.5458.6535.89
中山2002160081:33.8058.6435.16
中山2003160081:34.3358.9535.38
中山2004160071:33.8459.1034.73
中山20051600101:34.4359.8134.62
中山2006160091:34.7759.8234.96
中山2007160081:34.6559.6035.05
中山20081600101:34.8359.5435.29
中山2009160081:34.8059.6335.17
中山20101600101:34.2259.3434.88
中山2011160081:34.2759.5134.76
中山2012160031:33.1958.5434.64
競馬場芝・ダ距離馬場状態R数平均走破タイム平均前半6F平均後半3F
中山1986180041:49.7273.6836.05
中山1987180061:49.7473.6236.12
中山1988180041:50.0274.3835.65
中山1989180081:49.7473.7236.01
中山1990180061:49.5073.7735.73
中山1991180061:48.9172.7236.19
中山1992180051:49.0873.1735.91
中山1993180061:49.2673.4435.82
中山1994180061:49.1773.3535.82
中山1995180051:49.3873.6035.78
中山1996180041:49.0372.9036.13
中山1997180031:50.8075.0435.76
中山1998180021:49.6773.5536.12
中山1999180021:50.2774.3735.90
中山2000180031:49.7874.4835.30
中山2001180021:48.8374.0034.83
中山2002180051:47.7072.2635.44
中山2003180051:48.5073.1335.37
中山2004180051:47.5972.4035.19
中山2005180051:48.5373.5634.97
中山2006180051:48.8973.4835.41
中山2007180071:48.6873.8234.86
中山2008180051:48.1172.0236.09
中山2009180051:48.5073.4735.03
中山2010180051:48.8874.0534.83
中山2011180041:48.2773.7434.52
中山2012180021:48.3373.4034.93
競馬場芝・ダ距離馬場状態R数平均走破タイム平均前半7F平均後半3F
中山1986200082:02.5885.9936.59
中山1987200042:02.4586.3436.11
中山1988200022:02.1285.7536.37
中山1989200052:02.1285.8236.30
中山1990200052:02.2986.3335.95
中山1991200032:00.9485.3135.63
中山1992200032:01.8686.0735.79
中山1993200072:02.3586.4435.91
中山1994200042:01.3885.4135.98
中山1995200042:01.3985.1736.22
中山1996200072:02.3686.0136.35
中山1997200022:03.9087.6736.23
中山1998200032:02.1785.2036.97
中山1999200042:02.2286.1636.06
中山2000200072:03.5087.4336.08
中山2001200042:01.3084.6936.61
中山2002200052:00.1684.8535.31
中山2003200072:01.5685.5536.01
中山2004200042:00.4085.4934.91
中山2005200042:01.2986.0935.20
中山2006200042:01.9886.9135.08
中山2007200032:01.7386.4035.33
中山2008200052:02.2986.9735.32
中山2009200022:01.9886.5735.42
中山2010200042:00.6385.0035.62
中山2011200042:00.6785.4335.24
中山2012200012:00.6385.3035.33


今秋の中山開催は確かに超高速馬場ですが、この20数年の変遷を踏まえながら、いろいろ考えてもらえればと思います。

今回はこのあたりで。

2012 フォワ賞 回顧

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1999年エルコンドルパサー以来の日本馬勝利となったフォワ賞を回顧して行きましょう。

勝ちタイムは2:34.26。レース映像を見る限り今回は約1秒マイナスすれば日本式の走破タイムとなりそうです。したがって2:33.2がオルフェーヴルの走破タイムという形にしてラップ表をご覧ください。

着順馬番馬名タイム前6F140016001800200022002400後6F2300Goal
1着4Orfevre2:33.284.611.611.111.011.111.312.568.66.16.4
2着2Meandre2:33.484.311.511.111.211.311.512.569.16.16.4
3着3Joshua Tree2:33.484.011.511.111.311.411.512.669.46.26.4


Mahmoud計測RL2:33.283.711.611.211.311.511.412.569.5



中間点および残り800mのハロン棒は内ラチから遠く離れているためアバウトな値になりますが、概ね合っていると思います。また、今回はリアルタイムの通過タイム表示が珍しくほぼ正確でしたね。また、フランスはメートル表示ですから200m=1Fで話を進めていきます。

ちなみに昨年の凱旋門賞のラップはコチラ。

http://ameblo.jp/mahmoud1933/entry-11089259814.html

昨年のフォワ賞、ニエル賞についてはコチラ。

http://ameblo.jp/mahmoud1933/entry-11016728744.html

いろいろ書いていますので参考にどうぞ。


さて、今年のフォワ賞は前後半83.7-69.5という流れ。前半は1F平均13.95という超が3つ付くくらいのスローペース。テンの3F辺りまでは1F15秒に近いペースだったのではないでしょうか。そりゃ逃げていたアヴェンティーノ以外は折り合いを欠きそうになって当然。それが後半は1F平均11.58と2秒以上ペースアップ。10m上って下るコース形態通りの、まさにジェットコースターレースとなりました。

昨年のフォワ賞は前後半が6秒程の差であるため、今年の方がスロー度合いが激し過ぎるのは確かですが、ポイントはペースアップの箇所。昨年は最速ラップが残り2F目でマークされるという典型的な日本スタイルの競馬でしたが、今年は残り5Fから11秒そこそこのラップが刻まれるという、昨年とは正反対な欧州スタイルの競馬となりました。ヒルノダムールは日本で行ってきた通りのレースをして2着好走。しかしオルフェーヴルは欧州の土俵に正々堂々と上がってしっかりと勝ち切ってくれました。あくまでも凱旋門賞のプレップレースとはいえ価値ある1勝だと思います。

レース直後はラスト1Fが相当掛かっていたために「馬場が重いのか?」なんて思ったりしたのですが、ラップを振り返ってみればまずまず納得。当blogでもオルフェーヴルが刻んだラップをいろいろと書いてきましたが、ラスト1Fが直前のラップより1秒以上ダウンしたり、および12秒半ばまで掛かって勝利を上げたのは当然初めての事です。あの阪神大賞典でさえラスト1Fは0.8秒ダウンでの12.8でした。

では更に細かくラップを見て行きましょう。オルフェーヴルは値的には残り5Fから残り2Fまで高スピードを維持している形になりますが、残り3F辺りまでは下り坂なので、追い出された残り3F過ぎから僅かながらもスピードアップしたと解釈していいかと思います。一方、スローのキレ味勝負で名を馳せてきた2着のMeandreは、坂の下りで乗ったスピードを維持するのが精一杯といった感じでしょうか。オルフェーヴルがMeandreを末脚のキレ味で上回ったのは確かだったでしょう。ちなみにオルフェーヴルのラスト3Fの100m毎のラップはこんな感じかと思います。

5.5 - 5.6 - 5.6 - 5.7 - 6.1 - 6.4

そしてラスト1Fの減速ぶりはどう解釈すべきでしょうか。緩いペースとはいえ、曲がりなりにも1F平均13.95で6F助走し5F56.1で走った後のラスト1Fですから、脚が上がってもやむを得ないのですが、何分にも比較検証するデータがなかなか見つかりませんから、どのように解釈するかは議論の余地はあるかもしれません。ただ私の経験則で物を申せば、後半のペースアップはゴール板が100m手前にあるかのようなオーバーペースだったと考えたいところです。

さて、オルフェーヴルは芝の状態も含め日本でのレースとはまるで違う今回のレース内容だったわけですが、フォーム自体はみなさんどのように映ったのでしょうか。シャンティーでの追い切りの時点で、フランスの馬場に合わせた走りになりつつあるとの話を聞きましたが、そんな部分を私なりに解釈してみたいと思います。

まずはコチラのリンクをご覧ください。

http://www.equinst.go.jp/JP/topics/1202orfevre.html

JRA競走馬総合研究所によるオルフェーヴルのストライド解析です。ココではピッチを毎秒何歩という単位で表していますが、私は1完歩に付き何秒かかったかという逆の表現を用います。その理由は、馬のピッチがどこで変化したか、つまりスパートを開始した地点を特定するために1完歩が何コマで完了したかを良く調べるからなのです。余力を残した上でのスパート時は概ね1完歩12~13コマとなり、またスタミナ負荷がまだ発生していないスタートダッシュ時においては1完歩12コマを切るピッチも往々にして見受けられます。そして馬がバテた際についてですが、以前にトビが大きい馬がバテてピッチが少し速くなったケースを見て、そういうモノかと一旦解釈したもののそれはレアケースであり、多くはピッチが落ちるのが普通です。ただ、馬が力を緩めてピッチを落とす場合も当然あるので判断は少し難しいです。

世の中には「全兄ドリームジャーニーはピッチ走法だがオルフェーヴルはストライド走法だ」と考える方も居らっしゃるようで、軽く眩暈を覚えながら馬の見方は人それぞれだなあと思うのですが、今回のフォワ賞での完歩ピッチを、前半超スローで流れた昨年の有馬記念のケースと比較してみたいと思います。

まずは有馬記念から。個別ラップを記載した回顧エントリーはコチラ。

http://ameblo.jp/mahmoud1933/entry-11120094816.html

後半5F区間での、各1F毎のラップと完歩数を抜き出してあります。

残り5F目11.9 - 28 ( 0.425秒 / 完歩 )
残り4F目11.8 - 28 ( 0.421秒 / 完歩 )
残り3F目11.2 - 28 ( 0.400秒 / 完歩 )
残り2F目10.8 - 27 1/4 ( 0.396秒 / 完歩 )
残り1F目11.3 - 27 3/4 ( 0.407秒 / 完歩 )

一気にペースを上げた残り3F目からピッチは明らかに上がっています。そして残り2F目は1完歩が0.4秒を切る猛ピッチ走法。前述のようにスタートダッシュ時には良く見られるのですが、ラストスパート時でこのピッチはなかなかお目に掛かれません。鞍上の全開GOサインに対して抜群の反応力を見せています。同様の走法で有名なのはブエナビスタ。同馬のベストパフォーマンスである2010年天皇賞・秋では、鞍上のGOサインとともに強烈なピッチ走法を繰り出していました。奇しくもその鞍上はスミヨン騎手でしたね。

そして次は今回のフォワ賞の完歩数です。

残り5F目11.1 - 26 1/2 ( 0.419秒 / 完歩 )
残り4F目11.0 - 26 1/2 ( 0.415秒 / 完歩 )
残り3F目11.1 - 28 ( 0.396秒 / 完歩 )
残り2F目11.3 - 28 ( 0.404秒 / 完歩 )
残り1F目12.5 - 29 1/2 ( 0.424秒 / 完歩 )

残り5Fからの2F分は、ラップタイムは速いもののピッチは速くなっていません。軽いスパートを掛けただけで馬自身はまだ全開走行状態になっていない事が伺えます。そして残り3Fを過ぎてからGOサインを受けると、有馬記念の残り2F目と全く同じピッチで鋭く反応していますね。

有馬記念と比べてラスト1Fのピッチは違いますが、全体的なスパート区間がより早目だった事を思えば、完歩ピッチ的には日本でのレース同様の走りだったと言えるでしょう。したがって欧州仕様の走りだった部分はフォームではなく、冒頭に書いたような欧州スタイルのロングスパート勝負を挑んだ事だと私は思います。他馬も前半の超超スローペース故に速い末脚が使えたために差があまり付きませんでしたが、オルフェーヴルは好調時の走りをしっかり見せてくれたと言いたいですね。

話は逸れますが、オルフェーヴルの 0.396秒 / 完歩 というピッチは、前述のJRA競走馬総合研究所式に直せば 2.52回 / 秒 となります。件の菊花賞での計測ポイントはゴール前100mですから、競走馬のストライドデータを採るのには不適格なポイントですね。まあどういう経緯があってそのポイントが選ばれたのかわかりませんが、次回は最高速をマークするであろう場所、あるいは騎手から全開GOサインを送られる場所を想定してデータ計測に挑んでもらいたいと思います。

さて、本番凱旋門賞でオルフェーヴルのライバルとなる馬を私目線で上げておきましょう。1頭目は前年覇者のデインドリーム。以前も触れましたが血統構成レベルが数段抜けています。今年は僅差勝ちばかりですがまだ4戦消化のみ。叩き良化型と見ていますので凱旋門賞では打点の高い走りをしてくる可能性が十分あると思います。ただ、今年見せているパフォーマンスがMAXだとしたら、昨年からの上積みがほとんどない状態となりますから、それならオルフェーヴルに優位性がある形となるでしょう。

2頭目はフォワ賞と同日のニエル賞を勝ったSaonois。仏ダービー、ニエル賞と馬群を抉じ開けて差し切ったレース内容は非常に価値あるモノでした。まだ打点の高さは感じられませんが、このタイプはレースレベルが上がっても即対応してくる事が多いです。断然斤量が有利な3歳馬ですから、もしオルフェーヴルを差し切る馬が居るとしたら同馬をおいて他にないでしょう。最も怖い1頭だと思います。そして個人的に興味ある配合馬でもあります。

スノーフェアリーも当然ライバル馬ではあるのですが、同馬が日本で見せたパフォーマンスレベルならば、もし日本の馬場で戦うならオルフェーヴルはまず負けないと思います。それがロンシャンの舞台であっても、最低でも五分以上の戦いは必至でしょう。

本来ならばCamelotの名をココに連ねるべきだったのですが、英セントレジャーではよもやの敗戦を喫しました。今年の英セントレジャーの大まかな上がりラップを書きつつ少々脱線します。

11.9 - 11.4 - 12.1 - 13.0 [ 6.4 - 6.6 ] ・・・ 1着Encke

11.9 - 11.4 - 12.2 - 12.8 [ 6.3 - 6.5 ] ・・・ 2着Camelot

Camelotは最内で進路が無かった事もあり、残り2Fくらいから追い出されましたが、思いのほか末脚を伸ばす事ができませんでした。手応え良く見えた残り3F目で既に最速ラップを刻む形となりましたから、追い出された時に余力がもう無かったのでしょうね。端的に言えばスタミナ負けだと思います。欧州G1のスタンダードなスパート勝負となったレースでした。

この英セントレジャーのレコードは昨年Masked Marvelがマークした3:00.44。計時スタートのタイミングを考えると日本式なら2:59.1程度となります。施行距離が14F132Yですから約2937m。200m平均12.196秒のレコードタイムです。これを単純に3000m換算のタイムにすると3:02.94。菊花賞レコードより0.3秒弱劣るだけの高速タイムなんですよね。他に勝ちタイムが速い年を上げると、1979年は日本式で3:04.9相当になります。走破タイムの比較レベルなら、菊花賞と英セントレジャーはほとんど遜色のないレースが多いのが事実と言えるでしょう。

日本の競馬はガラパゴス馬場が問題だという声が圧倒的ですが、ガラパゴス化しているのは馬場以上にレース形態だと私は思うんですよね。ムダにやたらとペースを落とす事とか、最たるものはスパート開始の遅さですね。毎年凱旋門賞を目指そうとする馬が出ているのに、高グレードレースでも欧州スタイルとはかけ離れたレースをしているのが実態。今年の英セントレジャーはCamelotの出走によって久しぶりに脚光を浴びる事となりましたが、それは菊花賞不要論とは質が全く違うと私は強く思うのです。

閑話休題、オルフェーヴルの弱点を上げれば、ステイヤー資質が問われるような流れになった時でしょう。昨年のようなレースになると少々不安ですね。フォワ賞のレース後からラップを採るまで興奮しっぱなしだったのですが、冷静に振り返ってみるとスタミナ比べになった際に厳しいレースとなる気がした前哨戦だったように思います。ただ、残り300mを切った辺りで横に居たJoshua Treeと脚色が同じような状態になってから、スミヨン騎手が馬体を併せに行くとしっかりファイトして一伸びしてくれたんですよね。まあ実際は伸びたのではなく失速幅がJoshua Treeより少なくなっただけなんですが、勝負根性を見せてくれたのは何よりでした。そして贔屓目だと思うものの、スミヨン騎手の繊細な手綱捌きに事細かく反応して、オルフェーヴル自身もまだ余裕があったんではないかと思いたいです。少なくともラスト2完歩は鞍上の指示通り自分で減速していましたね。

で、やはり去年より緩急が付く流れになって欲しいと思います。そうなれば勝機は非常に高いと思います。上記の通りピッチ力溢れる走りをスミヨン騎手は感じ取っているでしょうから、僅かな進路でも果敢に突っ込んで行く戦法を取ってくると思います。後は進路妨害を取られない事を祈るのみ。大いに期待して本番の日をワクワクしながら待ちたいと思います。

今回はこのあたりで。

2012 スプリンターズS 出走外国馬について

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スプリンターズSに出走予定の外国馬について少々触れておきましょう。

まずは参考までに昨年のエントリーを幾つか紹介しておきます。走破タイムの日本式換算方法等が書いてあります。

ラッキーナイン
http://ameblo.jp/mahmoud1933/entry-11012569475.html

2011 セントウルS 回顧
http://ameblo.jp/mahmoud1933/entry-11017694309.html

ロケットマンを倒す方法、教えます。
http://ameblo.jp/mahmoud1933/entry-11023551649.html

ロケットマンを更に詳しく見てみよう
http://ameblo.jp/mahmoud1933/entry-11032789551.html


今年も参戦するラッキーナインについては残念ながら時間が無いので割愛いたします。

では初参戦となる2頭について少々書いていきます。まずはリトルブリッジから。

全成績はこちら。
http://www.jra.go.jp/news/gaikokuba/2012/pdf/sprint03_s.pdf

デビューから5連勝を飾ったもののG1の壁に跳ね返されているといったレースぶりでしたが、前走英国でようやくG1制覇。香港シャティン競馬場では最後の直線でラッキーナインにいつも軽く交わされるというイメージで、少々力的に劣るのかと思いましたが細かく見て行けばなかなか見処はありそうです。まあ端的に1000m戦の方が得意という見方もできますが・・・。

1200mのレースは全9戦。公式リザルトのリンクを張っておきましょう。『Sectional Time & Position』をクリックすれば2F毎の個別ラップが見られます。

http://racing.hkjc.com/racing/Info/Meeting/Results/English/Local/20120429/ST/3

http://racing.hkjc.com/racing/Info/Meeting/Results/English/Local/20120205/ST/8

http://racing.hkjc.com/racing/Info/Meeting/Results/English/Local/20111211/ST/5

http://racing.hkjc.com/racing/Info/Meeting/Results/English/Local/20111120/ST/6

http://racing.hkjc.com/racing/Info/Meeting/Results/English/Local/20111030/ST/9

http://racing.hkjc.com/racing/Info/Meeting/Results/English/Local/20110911/ST/3

http://racing.hkjc.com/racing/Info/Meeting/Results/English/Local/20101212/ST/5

http://racing.hkjc.com/racing/Info/Meeting/Results/English/Local/20101121/ST/8

http://racing.hkjc.com/racing/Info/Meeting/Results/English/Local/20101017/ST/9

最速タイムは1:08.67。日本式換算値で1:07.5程度となります。計4回1分8秒台で走っていますから、日本式の1分7秒台で走破するキャリアは十分でしょう。ちなみにロードカナリアも1200mのレースは全9戦。ところが1分7秒台は前走セントウルSのみです。日本と香港シャティン競馬場、どちらが高速馬場なのか判断が困りますよねえw 実際のところ1200m戦の1分7秒での走破率はエピセアロームに次いでメンバー中2番目ですね。

香港シャティン競馬場の芝1200mのコースはスタート後の直線がおよそ300m。その直線が400m以上ある札幌、函館、福島、新潟、小倉の各競馬場、そして少々変則的な中山競馬場より前半3Fは速いラップが踏めません。阪神競馬場より多少速いラップは刻めるでしょうが、やはり前半3F32秒台は少し難しい競馬場かもしれません。ちなみに現在私が使用している阪神競馬場の1200mの基準タイムは1:09.0 : 34.6 - 34.4 という値です。

さて、リトルブリッジが1:08.67というタイムをマークしたレースの日本式換算ラップはこんな感じでした。

1:07.5 : 12.0 - 10.7 - 11.2 - 11.3 - 11.0 - 11.3 [ 5.6 - 5.7 ]

前後半33.9 - 33.6 というラップでコース形態を加味しても後傾ラップ気味ですね。日本同様上がり特化型のレースが多い香港ではこんなのがスタンダードかもしれません。で、このようなレースが得意だったのなら、前述のように最後の直線でのラッキーナインとの脚色差が明確に違うわけですから、日本じゃ足らないかなあ、なんて思ったりしました。ですが、1000m戦を得意にしている同馬が1200m戦でも何かそれらしき片鱗を見せたレースが無いものとか探していたら、ちょっと見処のあるレースが見つかりました。最後に差されて2着ですが、1200m戦のベストパフォーマンスは2011年10月30日のレースでしょう。日本式換算ラップはこんな感じ。

1:07.7 : 11.7 - 10.3 - 11.1 - 11.4 - 11.4 - 11.8 [ 5.8 - 6.0 ]

毎回意識的に逃げるのを避けてる感じのレースばかりですが、テンのダッシュ力はかなりありますね。ロケットマンより遥かにテンのスピードはあると思います。直線コースとはいえデビュー2戦目を32.3程度で飛ばし圧勝していますから、生粋のスプリンターだと考えます。中山の緩やかな最初のコーナーを真っ先に飛び込むのはこの馬かもしれませんし、そのような積極的騎乗が好結果をもたらすような気がします。

同馬はMr.Prospectorの2x4内にNasrullahを一杯積め込んだ配合。バランスはかなり悪いですが特徴的ではありますね。

次にもう1頭のキャプテンオブヴィアスですが全成績はこちら。
http://www.jra.go.jp/news/gaikokuba/2012/pdf/sprint01_s.pdf

シンガポール・クランジ競馬場のレースならSectional Timeが見られます。こちらの該当日付をクリック。
http://www.turfclub.com.sg/Racing/Pages/RaceResultsAndDividends.aspx

1レースだけ目立つところがありますね。2011年2月13日の一戦。勝ちタイムが1:08.3とあります。でもレース映像のリアルタイム表示では1:08.6なんですよね。ゲートオープンのタイミングからすると、日本式換算値で1:07.3程度でしょう。この馬も持ちタイムは日本馬とほぼ互角ですね。

このレースは逃げてそのまま圧勝していますが、不鮮明な映像ながら前半3F通過が確認できます。日本式換算値で32.8程度。このセランゴール競馬場もシャティン同様スタート後の直線は300m程。この前半の入りはなかなか速いですね。もしこのキャリアハイと同等のデキにあるならば、今回のスプリンターズSでハナを切るのはこの馬でしょう。

こちらはリトルブリッジと正反対に5代内にクロス馬がいない所謂アウトブリードという配合形態ですが、血統表上にはNasrullahがふんだんに見られます。良くできた配合ですね。魅力あります。

日本馬の中ではパドトロワが一番前に行くと思われますが、キャプテンオブヴィアス、リトルブリッジの2頭に先を行かれる可能性があるでしょう。ただ、リトルブリッジは今まで通りのレースをするなら競り合わない形になりますね。したがって往年の力が戻っていればキャプテンオブヴィアスがグイグイ引っ張る展開。パドトロワのアンカツさんも道中緩める事はしないでしょうから、昨年以上の前傾ラップでキャプテンオブヴィアスとパドトロワがレースを作っていく公算が高いかと思います。いつも脚を溜めて直線勝負に掛けてきた馬達には苦しいレースになるんじゃないでしょうか。

そして馬場状態も大いに注目です。飛び抜けていたとは言わないまでも史上最速の今開催の中山競馬場の芝。もし先週の道悪競馬の影響がなく、しっかりと乾いてきたら1:06.5辺りまで勝ちタイムは伸びるでしょうが、実際のところは前日土曜日のレースを見ないと何とも言えませんね。まだまだ軽さがモノをいう馬場なのか気になります。

今回はこのあたりで。


2012 スプリンターズS 回顧

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ロードカナロアが快勝したスプリンターズSを振り返ってみましょう。まずは全頭個別ラップをどうぞ。一部の馬の走破タイム、上がり3Fは公式の値を修正しています。

着順馬番馬名タイム200400前2F600800中2F10001200後2F1100Goal
1着16ロードカナロア 1:06.712.310.322.610.811.222.010.911.222.15.55.7
2着14カレンチャン 1:06.812.110.322.410.711.322.011.011.422.45.65.8
3着3ドリームバレンチノ 1:06.912.510.222.710.611.422.011.011.222.25.55.7
4着15エピセアローム 1:07.012.410.222.610.811.422.211.011.222.25.65.6
5着5ラッキーナイン 1:07.012.610.322.910.711.422.110.911.122.05.55.6
6着4サンカルロ 1:07.012.610.423.010.611.321.911.011.122.15.55.6
7着6エーシンヴァーゴウ 1:07.212.010.122.110.811.322.111.411.623.05.75.9
8着11パドトロワ 1:07.312.010.122.110.611.321.911.411.923.35.86.1
9着10ブルーミンバー 1:07.412.210.322.510.811.422.211.111.622.75.75.9
10着7リトルブリッジ 1:07.412.210.122.310.711.422.111.311.723.05.85.9
11着2フィフスペトル 1:07.512.410.222.610.611.321.911.311.723.05.85.9
12着1マジンプロスパー 1:07.512.010.122.110.611.321.911.412.123.56.06.1
13着9サンダルフォン 1:07.713.010.323.310.711.121.810.911.722.65.85.9
14着8スプリングサンダー 1:07.712.610.322.910.711.221.911.111.822.95.86.0
15着12キャプテンオブヴィアス 1:07.812.010.222.210.811.422.211.511.923.45.96.0
16着13ダッシャーゴーゴー 1:08.112.010.122.110.711.422.111.512.423.96.16.3


Mahmoud計測RL1:06.712.010.122.110.611.321.911.411.322.7



公式RL1:06.712.010.122.110.611.221.811.311.522.8



開幕週ほどではないものの、最終週も依然高水準の速い馬場でしたね。ステラウインドが逃げ切った2200m戦の勝ちタイムは2:11.0。5着までが2分12秒を切るという500万下とは思えないほどの快時計が出ました。この日は台風の影響がいろいろと懸念されましたが、まあこのレースに限って言えばホームストレッチがそこそこ追い風となっていたように思います。そのホームストレッチを2度通る2200m戦と、1度しか通らない1200、1600m戦の走破タイムは風の影響度の違いを考慮した方が良いでしょう。とはいえ、過去最速の馬場でのスプリンターズSとなったのは間違いないところですね。

スタートダッシュが良かったのはリトルブリッジとキャプテンオブヴィアス。しかしこの2頭はすぐ抑えてしまったので日本馬4頭が雁行状態で先行する形。外国馬2頭がそのまま行けば日本馬の先行勢はもっとレースがし易かったと思います。最初の1Fは12.0を若干切るくらいのラップ。テンの入りとしては緩やかでしたが、その分マジンプロスパー、ダッシャーゴーゴーの2頭は「ハナに立てるかも」という感じで最初の1F通過後ペースを緩めませんでしたから、まずまず前半は流れた方かと思います。

その先行勢の中でダッシャーゴーゴーはハナに行き切れず中途半端にずっと大外を回る形になってしまいました。ラップやペースに注視している方なら、ある一定以上のペースで追走すると馬券圏外に去ってしまうのが定評である同馬ですが、高速馬場および外枠を引いた事による先行劇だったのかもしれません。また最内のマジンプロスパーもある意味似たような境遇。この2頭の内外が入れ替わっていたのなら、もう少しペースが落ち着いたような気もしますが、G1ですから最低でもこの程度の流れになるのは当然ではありました。

ちなみにリトルブリッジ鞍上のZ.パートン騎手ですが、好発→控える→周りが速くなり追っ付ける、という香港で敗戦した時と同じパターンでした。遅れ気味になって追っ付け出したのは最もペースが上がった頃。スムーズなレース運びが全然出来ていなかったようです。香港馬も本気で勝ちに来るのであれば、日本のジョッキーに騎乗依頼すればいいと毎年思うのですがねえ・・・。空いていた相談役辺りが乗ればもう少しマトモなレースが出来ていたんじゃないでしょうか。

豪快に大外から差し切ったロードカナロアですが、上がり3Fは33.3と私は計測しました。公式上の上がり3F最速はサンカルロの33.3ですが、クビ差先着されたラッキーナインより速いわけがないです。

$上がり3Fのラップタイム検証

$上がり3Fのラップタイム検証

というわけでサンカルロの上がり3Fは33.4でしょうから、このレースの上がり3F最速はロードカナロアと考えて良いでしょう。前後半33.4-33.3という後傾ラップの形になりますが、4角辺りでは追い風を受けていたと思われるので前傾ラップ気味と解釈して良いでしょう。ちなみに私の計算上では、前半3Fは前走セントウルSと同レベル、後半3FはシルクロードSと同レベルとなりました。

高松宮記念の内容からキツい先行ペースだとそれに耐えきれず、緩い流れのレースにならなければ勝負にならないという烙印を押された評価もあったかと思いますが、前走からの鞍上手変わりが結果的に大成功という形になりました。レースレベルが上がって頭打ちになる馬も当然いるのですが、ロードカナロアは言わば潜在能力を封印されていたとも言えるわけで、岩田騎手に導かれた前走セントウルSの経験がしっかりと生きてきたと思います。いろんなタイプの馬がいるのと同様に騎手もいろんなタイプというか、得意技の違いというモノがあるのは当然ですが、馬がレースで鍛えられて強くなる可能性をスポイルしてしまう騎乗スタイルというのは、つくづく競馬の醍醐味を失わせてしまう可能性大という事を痛感させられた今回のスプリンターズSだったと思います。

さて、ロードカナロアの今後はどのような路線を歩ませるのか私は知りませんが、香港スプリント挑戦という選択肢も当然出てくるかと思います。というわけで1200m戦になってからの香港スプリントとスプリンターズSを比較してみましょう。

香港スプリントスプリンターズS
勝馬馬場タイム日本式前3F後3F勝馬馬場タイム前3F後3F
2006Absolute ChampionGood toFirm1:07.81:06.532.234.3Takeover Target1:08.132.835.3
2007Sacred KingdomGood1:08.41:07.133.433.7アストンマーチャン不良1:09.433.136.3
2008InspirationGood1:08.681:07.533.234.3スリープレスナイト1:08.033.634.4
2009Sacred KingdomGood1:09.161:08.033.934.1ローレルゲレイロ1:07.532.934.6
2010J J the Jet PlaneGood1:08.841:07.633.134.5Ultra Fantasy1:07.433.334.1
2011Lucky NineGood toFirm1:08.981:07.833.134.7カレンチャン1:07.433.034.4

10分の1秒計時の2006、2007年は1.3秒マイナスすれば概ね日本式のタイムになります。

香港シャティン競馬場では前半3Fの約半分がコーナーになりますから、中山競馬場より前半遅くなるのが当然です。例えば昨年のスプリンターズSは33.0-34.4というペース配分でしたが、香港シャティン競馬場なら33.2-34.2、あるいは33.3-34.1くらいになると思われます。ここ2年は香港スプリントの方が断然厳しいペースと言えるでしょう。また、不良馬場の開催を除くと平均勝ちタイムは香港スプリントが上回っています。ここ3年はスプリンターズSの方が速い時計が出ており、今年はロードカナロアが1:06.7を叩き出しましたが、それでもまだ2006年Absolute Championのタイムには及びません。事ある毎に書いてきましたが、この1200mG1戦を見る限り日本の馬場は抜けた高速馬場だとは決して言えないと思います。そう言えば「リトルブリッジは持ち時計を1.2秒詰めた」という記事を見かけましたが、1.2秒ですから実力通り走ったとも言えますね。また、日本で好成績を収めたサイレントウィットネスやブリッシュラックらも、日本でマークした時計と本国でマークした時計を比較すると1秒ちょっとの差異に納まります。ahonooraさんのサイトで確認して頂ければと思います。

ちなみに香港競馬のStandard Times、Standard Sectional Times、Record Timesはコチラ。

http://www.hkjc.com/english/racinginfo/racing_course_time.htm

1000、1400m等は最初の200mのStandard Sectional Timeが載っていますから、日本と比べて少なくとも1秒遅いのはわかって頂けるでしょう。

さて、前述した2006年香港スプリントの覇者Absolute Championは一時だけ爆発的に活躍した風変わりな馬ですが、この時のラップはかなり驚異的なので書いておきましょう。

11.6 - 10.0 - 10.6 - 11.2 - 11.4 - 11.7 ・・・ レースラップ

11.9 - 10.6 - 10.6 - 10.9 - 10.8 - 11.7 [ 5.5 - 6.2 ] ・・・ 1着 Absolute Champion

この年はスプリンターズSの勝ち馬テイクオーバーターゲットと日本のメイショウボーラーの快速2頭が出馬表に名を連ねていましたが、出走取消と競走中止でペースがどうなるかと思いきや、テンから強烈に速いペースでレースが進みました。そんな中Absolute Championは1F10秒台のラップを計4F続けてサイレントウィットネスを4馬身ぶっちぎる圧勝劇。こんなレースをされたらそりゃ日本馬が勝つのは至難の業なんですが、昨年の香港スプリントを勝ったのは今年もスプリンターズSに出走してきたラッキーナイン。今回のレースでは出遅れが大きく響きましたが、マトモにレースが出来ていれば馬券圏内に飛び込んできた内容だったと思います。で、昨年のスプリンターズS、香港スプリント、そして今年のスプリンターズSの3レースを見ればカレンチャンとはほぼ同等の力量と言えるのですから、現在の香港スプリンターを相手にするならば日本馬の勝機は十分あって当然でしょう。ウイークポイントを強いて言えば日本より厳しいペースになる可能性が高いので問題はその辺りでしょうけど、後半特化型でも勝ち負けできるケースがあります。かのSacred Kingdomはこんなラップで突き抜けた事がありました。

12.2 - 10.6 - 10.7 - 11.1 - 10.6 - 11.2 [ 5.4 - 5.8 ]

ロードカナロアさんの得意なパターンですね。

今回はこのあたりで。

2012 凱旋門賞 回顧

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ロンシャン競馬場の最後の直線533m、時間にして30秒少々といったところですが、その最後の直線のシーンはいくらでもドキュメンタリーを作れるような、ドラマティックな結末を見せてくれました。おそらく誰もが同じリアクションだったと思いますが、馬なりで先行馬に並び掛けたところは鳥肌が立つ思いでしたし、スミヨン騎手に追われてオルフェーヴルが一気に抜け出した時は「どんだけ千切るんだw」と笑っちゃいましたし、残り1F手前から内にササり始めた時は「おいおいっ」と焦っちゃいましたし、Solemiaが差を詰め始めた時は「ゴール板はまだなのか!」と祈る思いになりましたし、ゴール板まであと4完歩ほどで捉えられ2着入線となった瞬間は頭を抱えちゃいました。

さすがにゴール後は放心状態で大いに落胆してしまいましたが、すぐさまレース映像を検証して行くうちに「いやいや、これは二度と無いくらいの名シーンを見たんだ」という思いに駆られました。件の阪神大賞典などで非常に個性豊かな姿を見せてきたオルフェーヴルですが、まさに千両役者といえるような快?、それとも怪?パフォーマンスだったと思います。これ以上、タラレバを言わせてくれるレースなど他にはないんじゃないでしょうか。とりあえず一つだけ言ってみますが、もしSolemiaが居ないモノと仮定すれば(ムリ有り過ぎですがw)、オルフェーヴルとは逆の、外に大きくヨレながら6馬身差を付けて圧勝した伝説のSea-Birdと並んで、あるいはそれ以上に評されたかもしれないとか、そんな妄想をも抱かせるほど、強烈なインパクトのあるレースぶりだったと思いました。

まあしかし、アレほど一気に伸びて行ったのにもかかわらず、結果的に差し返されるというのが一番の大事件だったと思います。これについてはいろんな見方があると思いますが、私なりに何故こうなったのかを検証してみます。


レース映像から判断すると、日本式の走破タイムに換算するのはマイナス0.4秒ほどでいいかと思います。したがって勝ちタイムを2:37.3として話を進めていきます。また、勝ったSolemiaとオルフェーヴルのタイム差は0.07秒程度かと思いますので、1/10秒単位で1、2着のタイム差は0.1秒とします。

その勝ちタイムの2:37.3という値は1F平均13.11秒。現在のJRAではダート戦も含めてまずお目に掛かれないほどの超低速レースでした。例えば45回の歴史を数えるステイヤーズSだと、この1F平均13.11秒を超えるレースというのはたった5回しかありません。エルコンドルパサーがMontjeuに捻じ伏せられた1999年とほぼ同等の極悪馬場でのレースとなりました。では中間点はちょっとアバウトな値になりますが後半1200mのラップを見て行きましょう。

着順馬番馬名タイム前6F140016001800200022002400後6F2300Goal
1着10Solemia2:37.378.413.513.513.113.212.613.078.96.46.6
2着6Orfevre2:37.480.013.313.013.212.512.113.377.46.37.0
3着14Masterstroke2:38.279.013.513.213.112.812.913.779.26.77.0


Mahmoud計測RL2:37.377.713.413.213.613.712.513.279.6



Camelot陣営のペースメーカー2頭、特にErnest Hemingwayがグイグイ引っ張っていきました。レースラップの前後半は77.7 - 79.6。10m登って下るコース形状を考えるとかなりのハイペースと言えるでしょう。紛れを少なくするためのペースメーカーとはいえ、前走セントレジャーでスタミナ不足を露呈したCamelotにとって、この馬場状態でのこのペースは愚策とも言えたんじゃないでしょうか。また、そのCamelotを始めとした中段待機勢は3着Masterstrokeのラップを踏まえればわかるかと思いますが、ホームストレッチでスパートを掛ける余力など全く残っていなかったと思われます。

この凱旋門賞がG1初制覇となったSolemiaの鞍上はペリエ騎手。実績的にさほど勝算をもってはいなかったと思いますが、最内の経済コースを実にロスなく先行。フォルスストレート辺りの手応えは非常に良かったのだろうと思います。当日第3Rで勝っていたペリエ騎手は、馬場状態と追走ペースから仕掛けを出来る限り遅くしようと瞬時に判断したのでしょう。ホームストレッチに向いてからも外から交わされるまで追い出しを我慢。区間ラップがその様子をよく物語っていると思います。まるで往年の岡部騎手のような老獪さ。またタラレバになりますが、Masterstrokeと同じように早くスパートを開始していればオルフェーヴルが内にササり始めた際、何か違う局面を迎えていたかもしれません。オルフェーヴルが競走妨害を取られていたというオチがあるかもですけどw

まあ上手く一息入れた故の一伸びが出来たわけですが、これは馬場適性の高さと豊富なスタミナ量に裏付けされた結果だったのは確かでしょう。大本番で打点の高い大駆けをしましたね。実に見事なレースぶりでした。ペリエ恐るべし。

ではオルフェーヴルについてあれやこれやと書いてみましょう。18番枠ということで腹を括ったかのようにスミヨン騎手は馬群の後方に位置しました。最内に潜り込めるのは無理でしたが外には振られない位置取り。おそらく一気に全馬を交わし去る自信が相当あったのだろうと思います。また注目のアヴェンティーノですが鞍上のクラストゥス騎手が何度もオルフェーヴルの位置を確認していました。日本のレースでは決して目にする事がない光景ですが、陣営の必死さが非常によく伝わってきました。このラビット役のアヴェンティーノについては以下のblogで見事に描写されています。是非ご覧になってください。

http://alas1203.blog.fc2.com/blog-entry-419.html


オルフェーヴル自身の前後半は80.0 - 77.4。馬場状態とコース形状に大きな差がありますが日本ダービーでは78.0 - 72.5。位置取りは後方でしたがキャリア的にみてかなりスタミナを消耗させる追走劇だったかと思います。Camelotのラビットがオーバーペースで飛ばす展開ですから、オルフェーヴルの良さを引き出すためにはまずまず好ポジションとも言えたのではないでしょうか。

フォルスストレートに入ってもまだ余力十分で追走している様に見て取れました。まだスミヨン騎手に焦りの色は感じられません。そしてホームストレッチに入るタイミングで徐々に外へ進路を取っていきました。「ロンシャンは内を突かなければならない」とよく言われますが、前日の仮柵が外された部分の幅員は相当広いモノですし、この凱旋門賞は当日の6R目ですから、最内がベストというのはあくまでもコーナー区間での距離ロスがモノをいう世界かと思います。

さて、Twitterで暫定版として残り2~1F区間で11秒台に入れたと書きましたが、再度調べた結果おそらく12.1秒くらいだったかと思います。とはいえ後述しますが残り400~300m区間では60km/hを上回っていましたし、驚異的な末脚だったのは間違いのないところです。世界広しと言えども、こんな爆発的な末脚を使えるのはオルフェーヴル以外なら、頭文字Fのアイツしかいないでしょう。勿論、スピードだけを考えるのならスプリンターの2F目の方が速いのは確かですが、レース後半の勝負処でこんなスピードが出せるのは、総合的な競走能力の非凡な高さを証明する事であり、個人的にはそのアイツと肩を並べるようなビッグパフォーマンスだったと思います。おそらく、この凱旋門賞に騎乗していた他のジョッキー達も、同じ香りを感じていたのではないでしょうか。また、戦前このような馬場状態でどうなのかと危惧していましたが、全くの杞憂に終わりましたね。こんな馬場への適性も優れたモノがありました。

ではホームストレッチの走りを細かく探っていきましょう。まずはこの画像をご覧ください。ゴール板で2:37.68になるようなタイミングでタイムコードを挿入しています。

$上がり3Fのラップタイム検証

上記はずっと右手前で走っていたオルフェーヴルが左手前に切り替えたポイントです。オルフェーヴルが戦闘体制の準備を完了した瞬間とも言えるでしょうか。そして次の画像はそこから6完歩経過したポイントです。

$上がり3Fのラップタイム検証

ここでようやく前方の視界が開ける進路を取った瞬間です。ゴールまでおよそ520m地点です。ここからオルフェーヴルは完歩ピッチを一気に上げ始めました。ただし、鞍上のスミヨン騎手が明らかなGOサインを出したのは残り400mを切ってからです。というわけで残り3F区間の100m毎のラップと完歩ピッチを前走フォワ賞と比較して見ましょう。ちなみに残り200~100m区間は最も斜行していた部分です。

レース190020002100220023002400
フォワ賞ラップ5.55.65.65.76.16.4
フォワ賞ピッチ(秒/完歩)0.4000.3930.4000.4070.4140.434
凱旋門賞ラップ6.56.15.96.16.37.0
凱旋門賞ピッチ(秒/完歩)0.4190.4070.3930.4070.4200.431


ほぼ馬なりに見えましたが、オルフェーヴルは残り500mからほぼ全開走行に移っているのがお分かり頂けるかと思います。そしてスミヨン騎手のGOサインで更にスピードアップ。0.4秒 / 完歩を切る猛烈なピッチ走法をフォワ賞時と同様に繰り出しました。ラップと完歩ピッチの値から判断すれば、フォワ賞時の全開走行区間は400m弱、今回の凱旋門賞では斜行した分を考慮して350mほどでしょうか。また、若干山型のラップ推移となったようです。そして目に付くのはフォワ賞時よりスパートのタイミングが遅くなったものの、ラスト100mから一気にラップダウンしているところですね。

というわけで以上の事から考えられるのは・・・。

よく見られる調教の一つとして、馬の後ろに付けさせた後、進路を変えて抜きに掛かるというのがあります。勿論レースでもそうやって先行馬を抜きに掛かるわけですが、スミヨン騎手が外に持ち出した瞬間、オルフェーヴルは実直にスパートし始めていました。ちなみにシャンティイ競馬場での調教映像を二つ見ましたが、オルフェーヴルが馬を抜きに掛かる際はきっちり0.4秒 / 完歩 のピッチになっていました。スミヨン騎手の談話の中に

「ほかに、もっと強い馬がいなかったので、簡単に先頭に立ってしまった」

というのがありましたが、これはスミヨン騎手の想定以上にオルフェーヴルが早くスピードに乗ってしまった側面があるかと思います。結果的にラスト100mで大きく失速しているわけですから、早仕掛けと言われるのも一理あるでしょう。ただ、あの位置取りから外へ持ち出すのを更に遅らせるのは、基本的に伏兵馬が漁夫の利を得ようとする乗り方になりますから、最も勝ちを意識するべくオルフェーヴルが採る戦法ではないと言えるんじゃないでしょうか。そもそも欧州のジョッキーは脚を余すことなく使わせようとするわけですし。

オルフェーヴルは残り300m辺りでスミヨン騎手の右ムチを受けてから少しづつ内に切れ込み始め、残り200m少し手前から一気に内へとササったようです。この時点ではまだ高スピードを維持している状態。バテてササったというよりも自ら内ラチを目指したという印象が強いですね。ようやく真っすぐ走りだしたのはゴール前約150m辺り。この後は完歩ピッチが落ち込んだままの走りとなり、完全に脚が上がったと判断せざるを得ないでしょう。したがってこの事象の要因は、今回の凱旋門賞がオルフェーヴルの距離適性を超えた内容のレースになってしまったからではないか、と私は思うのです。フォワ賞では前半の超々スローペースでしたからロングスパートにギリギリ耐えられましたが、ココでは無理筋となってしまったかと・・・。

日本でのレースを鑑みれば、菊花賞を勝ってはいるもののステイヤー要素のあるレースをしたわけではなく、阪神大賞典も道中スタミナ負荷の少ない流れだったこそ、大逸走しても挽回出来たわけですし、厳しい言い方になりますが最終的にはギュスターヴクライに差し返されていたのです。ガチンコレースなら宝塚記念で素晴らしい内容を見せてくれましたが、それでもスパート開始は残り2Fから。これだけ1F平均のラップが遅くて全く緩む事のない2400m戦だと、直線500mを押し切る走りは難しかったのではないでしょうか。そもそも、これだけ素晴らしい瞬発力を見せる馬が、ダラダラと500mを押し切る事などまず無いとも言えるでしょうし、負けた相手のSolemiaがスタミナお化け的なレースをやってのけた事、そしてCamelotが自滅する事の引き換えに、ペースメーカーに仕事をさせた事など、オルフェーヴルにとってアンラッキーな一面もあったと思います。

これで日本馬の2着3回は全て強度の道悪馬場でのモノとなりましたね。超高速馬場での日本の競馬からすれば非常に面白い結果なのですが、ラップ的に言えばその3頭はまさに3者3様です。ギガ男爵からのリクエストにまだ応えられていないのでアレですが、エルコンドルパサーはまさに自力勝負型。ナカヤマフェスタは道悪ロンシャンの土俵に真っ向勝負した形。そして今回のオルフェーヴルは・・・。何て表現すれば良いでしょうかねえ。まあ私は「道悪で時計がかかったほうが日本調教馬向きだ」なんて事はサラサラ言う気にはありませんけど。

オルフェーヴルを以ってしても凱旋門賞を勝てなかったという事実は残りましたが、いやいやすぐ手の届くところまで来ているのは間違いありませんよ。今回のオルフェーヴルのパフォーマンスは世界に頭文字Fだけじゃないというアピールにもなったと思いますし、ただ単に凱旋門賞を勝つだけでは満足できないほどの強烈なインパクトを残してくれたと思います。まさに最高のアーティストですね(日夏ユタカさんのお言葉拝借しました)。まあ唯一悔いが残る点があるとすれば、このロンシャン競馬場が来期から改装されるようなので、ひょっとすると現状のコースでの最後の凱旋門賞となるかもしれないこのレースで、日本馬勝利の歴史を作って欲しかった事です。

最後になりましたがオルフェーヴル、そして関係者の皆様方、本当にお疲れさまでした。リベンジを期待しております。

今回はこのあたりで

武豊騎手の疑問について考えてみよう

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http://keiba.nifty.com/take/cs/diary-column/diary-list/201210/1.htm

「ところで、アロヨセコマイル(サンタアニタ芝1600m、G2)の勝ち時計、オブビアスリーの1分31秒95は、なにかの間違いなのではないかと思っています。あの小回りコースでそんな時計が出るとは思えませんし、道中の感じはむしろスローだと感じていました。ましてや、中距離タイプのトレイルブレイザーが、マイルをそんな時計(勝ち馬から半馬身差の2着)で走るでしょうか? アメリカの競馬は時計にシビアなことで知られていますから、まさかとは思うのですが…。」

このレースの公式リザルトはコチラ(Race 3)。

http://www.equibase.com/static/chart/pdf/SA100612USA.pdf

TRAKUSによる個別ラップはコチラ。

http://tnetwork.trakus.com/dsi2007/SantaAnita.aspx?EventID=41568&Type=TBRED&VenueID=4

このページはいろいろおもしろいですよ。

さて、公式リザルトに載っていますが助走距離がかなり長く採られています。

Run-Up 107feet = 32.6136m

タイム計測の開始は大体こんなタイミングになるようです。


$上がり3Fのラップタイム検証

$上がり3Fのラップタイム検証

このレースは1マイル戦ですからスターティングゲートからゴール板まで都合1641.9576mを走る事となります。ではゲートオープンと同時にタイム計測を開始してみましょう。

$上がり3Fのラップタイム検証

$上がり3Fのラップタイム検証

$上がり3Fのラップタイム検証

ゴール板まで1:36.06掛かったようです。この結果を1600m戦の日本式のタイムに換算してみましょう。

JRA施行レースの助走距離は基本的に5m。ゲートオープンから1.4~1.5秒くらいで計時開始ポイント(ハロン棒)に到達します。したがってこんな計算式で弾き出します。

1:36.06 * 1605 / 1641.9576 - 1.5

1:32.4~1:32.5くらいの勝ちタイムと考えて良さそうです。トレイルブレイザーはそこからプラス0.1秒すればOKです。

このサンタアニタパーク競馬場の芝1マイル戦が正しい距離で行われているとしたら、トレイルブレイザーが日本式の1600m戦なら1分32秒台半ばで走破したのは間違いない事となります。日本の高速馬場と全く遜色ありませんね。あるいは、グルっと1周する小回りコースを考えれば、超高速馬場と言えるかもしれませんね。この武豊騎手が抱いた疑問、およびペースに対する感覚。みなさんどう感じられますか?


普通ならこれで話は終わりなのですが、実はまだ続きがもう少しあります。

サンタアニタパーク競馬場の芝1マイル戦は過去にブリーダーズカップマイルが5回行われているお馴染のコースでもあります。どの年のレースだったか忘れましたが、何年か前にレース映像からラップを調べていた際に「あれっ?」って思った事がありまして、私が抱いたその疑問について少々書いておきます。

まずはGoogle Mapをご覧ください。

https://www.google.co.jp/maps?f=q&hl=ja&q=285+W.+Huntington+Dr.,+Arcadia,+CA+91007&sll=33.951904,-118.341165&sspn=0.014631,0.043001&layer=&ie=UTF8&z=15&ll=34.140651,-118.042903&spn=0.014598,0.043001&t=h&om=1

目一杯に拡大しなければ見られませんが、芝コースのホームストレッチの中ほどにハロン棒が20mほどの間隔で2本立っているのが見えると思います。レース映像だとこのシーンに映っています。

$上がり3Fのラップタイム検証

ゴール板寄りのハロン棒が1マイル戦のタイム計測開始地点、もう一つはゴール板まで1F地点です。で、何が私の疑問かというと、このサンタアニタパーク競馬場の芝コースはどのWebサイトを見ても1周7furlong(約1408m)となっている事です。もし1周7Fならば、このホームストレッチ上の2本のハロン棒は1本でなければおかしいのです。また、ゴール板の先には残り7Fのハロン棒も設置されています。

$上がり3Fのラップタイム検証

$上がり3Fのラップタイム検証

もし、武豊騎手のこの感覚、いわゆる体感速度が確かなモノだとするならば、このサンタアニタパーク競馬場の芝1マイル戦は距離が短いという推論が成り立つのかもしれません。各ハロン棒の間隔全てか、あるいは特定の区間だけなのかが、およそ17~18m短かったりして・・・。とすると、トレイルブレイザーは日本式の1600m戦を1分33秒台半ばで走った事となり、武豊騎手の感覚にマッチするんじゃないでしょうか。

まあちょっと大げさに話をしてしまいましたが、このサンタアニタパークの芝コースの1周の距離をご存じの方がいらっしゃったら教えて頂ければ幸いです。それによって武豊騎手の体感速度のレベルがハッキリしちゃうかもですね。

今回はこのあたりで。

2012 秋華賞 回顧

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誰もが同じような感想を抱くレースだったと思います。全頭個別ラップを見れば、その感想がより現実的になろうかと思います。

着順馬番馬名タイム2004006008001000前5F12001400160018002000後5F1900Goal
1着14ジェンティルドンナ 2:00.412.911.612.913.212.763.312.411.611.110.911.157.15.45.7
2着1ヴィルシーナ 2:00.412.311.312.913.512.662.612.411.511.311.311.357.85.65.7
3着2アロマティコ 2:00.613.211.712.713.212.763.512.411.511.210.811.257.15.55.7
4着3ブリッジクライム 2:00.713.411.812.713.212.663.712.511.510.811.011.257.05.55.7
5着6チェリーメドゥーサ 2:00.713.811.612.712.811.362.211.611.411.211.812.558.56.16.4
6着17アイムユアーズ 2:00.712.811.512.813.312.763.112.411.611.011.211.457.65.65.8
7着11サンシャイン 2:00.812.711.413.013.412.863.312.311.511.211.211.357.55.65.7
8着8キャトルフィーユ 2:00.812.411.512.913.512.662.912.411.511.211.311.557.95.75.8
9着7トーセンベニザクラ 2:01.112.711.812.813.312.863.412.411.511.111.111.657.75.75.9
10着5ラスヴェンチュラス 2:01.113.411.712.813.212.763.812.711.711.110.910.957.35.45.5
11着15ミッドサマーフェア 2:01.113.211.612.813.212.763.512.511.511.111.211.357.65.55.8
12着9ダイワズーム 2:01.212.511.512.913.412.863.112.411.611.111.311.758.15.76.0
13着4ハワイアンウインド 2:01.212.911.612.913.312.763.412.411.711.411.111.257.85.55.7
14着18オメガハートランド 2:01.413.411.612.913.112.663.612.711.511.111.011.557.85.65.9
15着12アイスフォーリス 2:01.612.611.212.913.512.762.912.311.511.211.512.258.75.96.3
16着10ハナズゴール 2:02.013.011.812.813.412.763.712.611.711.111.311.658.35.75.9
17着16サトノジョリー 2:02.113.511.912.613.112.463.512.611.711.111.311.958.65.86.1
18着13メイショウスザンナ 2:02.412.311.412.913.512.762.812.411.511.211.812.759.66.16.6


Mahmoud計測RL2:00.412.311.312.913.512.262.211.611.411.211.812.258.2



公式RL2:00.412.311.013.213.412.362.211.611.411.311.512.458.2



「1F13秒台が2F続いた」と評されるようなペースでしたが、前半3Fからの1Fが更に遅くなっている点をハッキリさせておきたいと思います。これは逃げたヴィルシーナがジェンティルドンナを何とか封じ込める作戦として、ある意味バクチを打ったようなレース展開。どんどんペースを遅くしてジェンティルドンナが一層折り合いを欠けば儲けモノだったと思います。

で、当然折り合いを欠く馬が多数いたわけですが、ディープブリランテのような例外的な馬を除けば、ハナに立つとペースを上手に落とせる馬が圧倒的に多いです。2011年天皇賞・春が好例で、我慢できずハナに立てばスッとペースが落ち、後続馬が同じように抑えきれずに先頭に立つパターンが繰り返されました。まあその時は16F戦というレースであるが故の部分があったのですが、この秋華賞は10F戦。最もペースが落ちたところからは残り6Fしかないわけです。それでも小牧騎手以外は微動だにしない有様。折り合いに四苦八苦してまで圧倒的1番人気ジェンティルドンナに併せ打って出ようとする事って、果してどんな意味があることやら・・・。

その点、ヴィルシーナ鞍上の内田博幸騎手はチェリーメドゥーサが一気に交わし去っても全く無視するかのようにペースを直ぐには上げませんでした。ジェンティルドンナとの位置取りの差のマージンを最大限利用する構え。徹頭徹尾ジェンティルドンナに焦点を絞った騎乗だったと思います。もしチェリーメドゥーサにそのまま粘り込まれたらエラい事でしたが、そんなリスクをも背負ってギリギリまでスパートを遅らせました。もしガチンコで戦ったら勝負にならないのは衆目の一致するところでしょうが、実際にはジェンティルドンナとはホンの僅かな差での入線。出ムチを入れてまでハナに立ってレースコントロールし、確信犯的にドスローに持ち込むという、なかなか痺れるレース戦略だったと思います。また、他15頭の多大な協力があった点も見逃せないところかと感じました。

Twitterでも触れましたがジェンティルドンナの前後半は 63.3 - 57.1 という6.2秒もの落差がありました。これは昨年の天皇賞・秋でのシルポートとちょうど逆の形。おもしろいモノですね。2000mのG1戦では史上最高のダントツの落差だと思いますし、これで勝てるのも凄い事でしょう。参考までにこの落差最高値は4着ブリッジクライムで、前後半 63.7 - 57.0 の落差6.7秒。最低値でも3.2秒。平均値で5.35秒という、中間点に20mくらいの丘を作れば出るような、凄まじいジェットコースターレースでした。

最後にレースを大いに沸かせたチェリーメドゥーサについて。前走の捲り勝ちが私は非常に気に入ってまして(ラスト100mの脚色)、今回手替りしたものの鞍上は小牧騎手ですから、逃げ馬不在の様相が濃いこのメンバーなら同じ事をやってくれるだろうと期待して見ていました。もうちょっとで戴冠を手にするところでしたね。残り2Fのハロン棒が3mほどズレているのかもしれませんが、ラップを採ると4角を回る頃はかなり脚が上がっていたようです。3コーナーから結構勝ちを意識していたのかもしれませんね。気持ち急いでしまったような気もしますが、見事なレースをやってくれました。字面上1F遅く捲り切れば良かったかのように思いがちですが、あの場所しかなかった、あのタイミングだからできた事象だと思います。ちなみにジェンティルドンナとのラスト1Fの差は1.4秒。100m毎に区切ってもちょうど0.7秒ずつの差でした。1F1.4秒のペースアップ、あるいはペースダウンはこれくらいスピード差があるのかとイメージを掴んで頂ければ、ラップ推移を考える時の材料として役立つかと思います。

今回はこのあたりで。

2012 菊花賞 回顧

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まさに「強い!」と唸らされるレースでしたね。順当な勝利ではあるのですが、完全無欠の自力勝負で勝ちをもぎ取った、ゴールドシップの走りを振り返ってみましょう。

指数レベルは昨年のオルフェーヴルとほぼ同じと見ていいでしょう。まあオルフェーヴルはかなり余裕残しで入線していましたから、値的にゴールドシップをやや下に見るのが妥当ではあるのですが、実はゴールドシップも同馬なりに余裕残しと思われるところがありました。というわけでゴールドシップが刻んだラップからその辺りを考えてみたいと思います。では上位5頭の個別ラップをどうぞ。

着順馬番馬名タイム2004006008001000前5F12001400160018002000中5F22002400260028003000後5F2900Goal
1着1ゴールドシップ 3:02.913.912.512.212.711.462.712.012.212.411.512.160.212.211.912.111.812.060.06.06.0
2着16スカイディグニティ 3:03.213.812.212.012.411.561.912.112.312.511.712.461.012.411.912.111.712.260.36.06.2
3着15ユウキソルジャー 3:03.513.312.212.312.411.761.912.012.312.511.812.561.112.611.912.111.812.160.56.06.1
4着3ベールドインパクト 3:03.513.412.312.212.411.762.012.312.312.411.612.661.212.411.711.911.912.460.36.16.3
5着4ラニカイツヨシ 3:03.613.712.312.312.511.562.312.112.212.411.812.561.012.111.812.112.012.360.36.16.2


Mahmoud計測RL3:02.913.111.912.312.111.661.011.912.212.512.212.361.112.512.212.311.812.060.8



公式RL3:02.913.011.912.212.211.660.911.612.612.512.312.261.212.512.211.911.812.460.8



公式ラップとレース映像のスピード感を見れば、わざわざ計測しなくても実際にはラスト1Fをこんなラップで駆けているなあと大体わかるのですが、今回のレース映像はGC、CX、NHK、どれもラスト1F通過時が非常にわかりにくいカメラアングルとなっていました。で、私のようにラップを自ら調べている方なら同じ事をやったと思われる手法をちょっと書いておきましょう。まずこの画像をご覧ください。

$上がり3Fのラップタイム検証

タイムコードが2:49.50を指している地点です。で、ゴールドシップの脚元の芝に2本の線というか、少し芝がはげている箇所があるのがわかりますか?これは内回り2000m戦でのスターティングゲートを引き摺った跡です。Aコースの内回り1周は1783m。原則的に助走距離が5mありますが、正しくは約1m手前にあるタイム計測の電光管の設置場所から5mのところにスターティングゲートが置かれます。したがってこの画像のゴールドシップの位置はゴール板から223mの地点となります。1F12秒のスピードだとすれば、ここから残り200m地点まで1.38秒掛かる計算となり、ゴールドシップは残り200m地点を2:50.9程度で通過したと考えられ、ラスト1Fは12.0くらいだっただろうと推測できるわけです。

レースはビービージャパンが文字通り淀みなく引っ張る展開。毎年グッとペースが落ちる1~2コーナーでもじわじわラップダウンするという、如何にもペースメーカー的な逃げ。後続各馬はスムーズにレースを運べたのではないでしょうか。最もペースが緩んだ中間点辺りでコーシロー騎手は押っ付けていましたから、決してペースを緩ませない覚悟があったのでしょう。

さて、当のゴールドシップはヤル気のない雰囲気でゲートを出て、追われても最初の1Fは13.9。実にノンビリとした序盤でしたが1周目ホームストレッチでは1F11.4。スタンド前の直線という事で自らヤル気を出したようです。やはりレース経験によってスピードが自然と上がってしまうんでしょうね。とはいえ決して折り合いを欠く事はありませんし、中間点までは息を潜めた走り。そして満を持して動き出したのが前半1600m通過後。1F11.5のラップを刻んで先行馬群に獲り付きました。

この地点からゴールまでの1400mのラップを2~5着馬と比較してみましょう。各馬1F11秒台に入れていますがその後は1F12秒台半ばまで落としています。上り坂に突入しているので当然といったところ。2着のスカイディグニティはゴールドシップに並びかけられるまでジッと脚を溜めています。ただし外からゴールドシップが迫った瞬間、前を抉じ開けるように進路を取りゴールドシップを射程圏に入れて進みました。さすがメンディザバル騎手といった感じで、勝負処の反応は素早かったですね。

3着のユウキソルジャーは内目の密集地帯に居たのでペースを上げようにも上げられず。まあこの事が功を奏して3着に突っ込んできたわけですが。4着のベールドインパクトはゴールドシップに交わされても追い掛けずに脚を溜めています。しかし坂の下りで一気にスパートを開始。そして5着のラニカイツヨシはゴールドシップに交わされるや瞬時に外へ進路変更し、他馬より1F早くゴールドシップを追撃態勢。ファイト溢れる佐藤哲三騎手の騎乗ぶりだったと思います。この4頭は4者4様で、先に動いたゴールドシップへの対応の仕方が違っていました。

一方ゴールドシップはこの坂の上りでも 12.1 - 12.2 とペースを緩めることなく走り続け、勾配を考えると実質1F12秒ちょうどのペースのまま最後の直線へ。そしてその直線では外から迫ってくる馬に併せて追い出されました。ゴール前100mまでは他馬と脚色の違いはさほどありませんでしたが、その後はラップの通り全くバテる気配を感じさせないままゴールイン。完全制圧したレースでした。

結局都合7Fの超ロングスパートを敢行した形となりましたね。馬が強いのは去ることながら、大胆かつ冷静沈着な内田博幸騎手もお見事の一言。昨今の長距離戦とは一線を画す、力勝負のステイヤー戦という凄味のあるレースを見せ付けてくれました。こんな戦いが見られるのであれば、菊花賞の存在価値は大いにあると思います。

今年の日本ダービーで見せたように、1Fの平均ラップが速くなるレースでは持ち味が生きにくいのでしょうが、だからと言ってスピード不足とは一概に言えないと思うんです。変な言い方ですが10完歩勝負なら負けるにしても、それが大きなポイントとならないレースに持ち込めば良いわけで、高スピードの助走付きの末脚勝負だと非常に強い馬ですね。そもそも今回の菊花賞にしても、超は付かないまでも高速馬場であったのは確かですから、現代の競馬にマッチした能力があるのは疑いようのない事実でしょう。次走はJCをスキップして有馬記念との事。皐月賞の3コーナーで見せた高速コーナリング能力もありますから、レース選択としては正解でしょう。

最後に余談めいた話となりますが、今回のゴールドシップの勝ち方は1983年の3冠馬ミスターシービーの菊花賞とよく似ておりました。そのミスターシービーの勝ちタイムは3:08.1。後半1000mは63.0程度。ラップバランス的には今回のゴールドシップ以上に後半厳しいレースをしていました。ミスターシービーの引退レースとなった天皇賞・春では一つ下の3冠馬シンボリルドルフに1.9秒もの大差を付けられたので、ステイヤー資質があるとは当時考えにくかったのですが、今思えば長距離レースの方が実は適性が高かったのかも、なんて考えたりしてしまいました。

今回はこのあたりで。

2012 天皇賞・秋 展望

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まだ印も決まってないので展望エントリーはどうしようかと思いましたが、とりあえず少しだけ何か書いておきましょう。ではスピード指数出馬表をどうぞ。

$上がり3Fのラップタイム検証

3歳勢は斤量を2kgもらいますから、指数的に十分戦えるレベルにあると思います。

至って暫定的な判断ですが、前日土曜日の芝の速さは今開催の2週目からさほど変化なしといったところでしょうか。特別戦は勝ちタイムは遅かったのですが上がりのラップは相当速いです。いわゆる高速馬場の範疇でしょう。前年の天皇賞・秋と比べると2000mで0.8秒程度遅い馬場でしょうか。あくまでもペース次第ですが1分57秒前半の決着が十分見込まれるでしょう。

では展開についてだけ少々。逃げ馬シルポートが理想的な2番枠に入りました。出走する各ジョッキーもシルポートが逃げる事を想定しているはず。更に外国人ジョッキーは除きますが、シルポートに付いていこうと考えるジョッキーもいないはず。で、前走毎日王冠ではグランプリボスに絡まれた影響もあり、2F目から自身としては速いペースで逃げる形になりました。トータルタイム的にはそれほどの速さは感じませんが、最後の直線での脚色を見ると明らかなオーバーペース。この失敗を今回は修正しようとするんじゃないでしょうか。

まずスタートを決めなければ話にはなりませんが、その後は2コーナーを出来る限りゆっくりと回り、前半3Fないしは4Fまで慎重にペースを選ぶモノと予想しています。したがって2コーナーでは後続馬が結構ゴチャつくシーンがあったりするかもなあ、なんて思ったりしています。目下1番人気のカレンブラックヒルはハナを奪うくらいの意気込みで2コーナーを目指した方が良いんじゃないかと。とにかくこの2コーナーは併せ馬状態で外を回るのが致命的な不利になってしまいますので、ココをどう攻略するかが大きなポイントになると思います。

3コーナーに入るまでの前半1000mは、2番手以降の馬達は結構ゆるいペースで進むのではと思っています。そこから外々を通って追い上げる馬はツライかなあと。内目をピッタリ通る馬が断然有利になる展開になりそうな気がします。2009年カンパニーが勝ったレース、あるいは2005年ヘヴンリーロマンスが勝ったレースを想定して考えたいと思います。内を狙ってくるジョッキーは誰なんでしょうか。まあ、逃げ馬は内を通るわけですが・・・。

今回はこのあたりで。

2012 天皇賞・秋 回顧

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前週の菊花賞は強い馬がその強さを見せつけるレースをしましたが、実力伯仲のメンバー同士なら事を上手く運んだ者が勝者になるのが常。今回の天皇賞・秋ではホームストレッチに入ってまもなく、エイシンフラッシュの前方には見事なまでのヴィクトリーロードが待ち受けていました。勿論、それを引き寄せたのは馬と騎手の強さがあっての事。実に鮮やかな勝利であり、敬礼する姿がとても絵になるエイシンフラッシュとM・デムーロ騎手のコンビでありました。それでは個別ラップを見ながら振り返ってみましょう。

着順馬番馬名タイム2004006008001000前5F12001400160018002000後5F1900Goal
1着12エイシンフラッシュ 1:57.3 13.411.911.811.911.960.911.711.611.110.711.356.45.55.8
2着4フェノーメノ 1:57.4 12.911.811.611.911.960.111.911.611.211.211.457.35.65.8
3着6ルーラーシップ 1:57.6 13.911.911.611.811.961.111.811.611.110.911.156.55.55.6
4着13ダークシャドウ 1:57.7 13.411.911.711.811.960.711.811.611.211.011.457.05.65.8
5着16カレンブラックヒル 1:57.7 12.711.411.311.612.159.112.311.811.311.411.858.65.86.0
6着11ジャスタウェイ 1:57.8 13.111.811.711.911.960.411.811.611.311.211.557.45.65.9
7着8ジャガーメイル 1:57.9 13.612.011.611.911.961.011.711.611.211.111.356.95.65.7
8着5サダムパテック 1:57.9 13.311.911.711.911.960.711.711.511.311.311.457.25.65.8
9着1ナカヤマナイト 1:58.1 13.611.911.712.111.961.211.811.611.111.111.356.95.65.7
10着9ダイワファルコン 1:58.1 12.711.511.611.711.859.312.211.811.211.412.258.86.06.2
11着7アーネストリー 1:58.3 13.111.811.611.911.960.311.911.511.311.511.858.05.86.0
12着2シルポート 1:58.6 12.511.111.111.211.457.311.611.812.012.813.161.36.56.6
13着15トーセンジョーダン 1:58.7 13.711.811.611.811.960.811.811.611.411.211.957.95.86.1
14着3ネヴァブション 1:59.0 13.912.111.612.011.961.511.511.511.311.411.857.55.86.0
15着10フェデラリスト 1:59.0 13.112.011.711.911.960.611.811.611.311.412.358.45.96.4
16着17マイネルスターリー 1:59.6 14.012.111.611.911.861.411.711.611.311.512.158.2**
17着14トランスワープ 1:59.7 13.511.811.511.812.060.611.711.611.511.812.559.1**
18着18トゥザグローリー 2:00.4 13.712.011.411.711.860.611.811.511.611.913.059.8**


Mahmoud計測RL1:57.3 12.511.310.911.211.457.311.611.812.012.811.860.0



公式RL1:57.3 12.511.211.111.211.357.311.611.812.012.811.860.0



シルポートが難なくハナに立ち2コーナーを回る頃は「ペースが速くならないな」って思ったのですが、その後の暴走ぶりはご覧の通り。いやはや何ともこの逃げは形容しがたいモノでした。馬場差を考えれば昨年と同等レベルのペースでホームストレッチを迎えた感じでしょう。独走状態の逃げでしたからそれなりに頑張っていましたが、他馬のペースに影響を与えない、違う言い方をすれば目立っただけでレースの結果を左右する価値はさほどない逃げだったと思います。ただ、ホームストレッチで動くパイロンと化したところは、後続馬に跨っている騎手達の心理に何らかの影響があったかもしれません。

2番手以降の馬達はシルポートと無関係のレースとなりましたので、カレンブラックヒルが逃げたレースと考えればいいかと思います。よってこんなレースラップだったと見れば良いでしょう。

12.7 - 11.3 - 11.4 - 11.6 - 12.1 - 12.3 - 11.8 - 11.3 - 11.4 - 11.4

前後半 : 59.1 - 58.2
上がり4F : 45.9
上がり3F : 34.1

2009年カンパニーが勝ったレースと少し似ていますが、その2009年ほどのスローではなく若干緩めのペースといったところでしょうか。しかし中間点ではカレンブラックヒルと最後方ネヴァブションとの差は2.4秒。ペースの割には少々縦長気味の展開だったようです。

鮮やかにインから突き抜けたエイシンフラッシュは残り2F目の脚が際立っています。これは2年前のダービー時と似ていますね。2010年ダービーのラップはこちら。

http://ameblo.jp/mahmoud1933/entry-10549860147.html

この時も他馬を圧倒するキレ味を見せていました。今回そのダービー以来の勝利となったわけですが、鬼脚もそれ以来の披露となったようです。いわゆるウオッカ型の末脚タイプですね。で、よく言われるのがゴールドシップに代表されるような長く末脚が使える馬 = スタミナ型という表現。それに対極する末脚を持つのがこのエイシンフラッシュとなります。で、確かに純ステイヤーという風情とは言えませんが、過去の戦績を見れば長距離に適性がないわけありませんよね。詳細は後述しますが今回のレースはゆったりとした2400m戦のような流れに持ち込んで2000m戦を制した、という形だったかと思います。

それにしてもホームストレッチではインがポッカリ空きましたね。画像を見ながらその様子を追っていきましょう。このインが空いたポイントは二つあると思います。まずはホームストレッチ入口。エイシンフラッシュの前方にいたサダムパテックの鞍上は武豊騎手。当然インを狙ってくると思っていましたが、残り3F標を過ぎた辺りから外に持ち出そうとする気配がありました。同馬の力量的にリスクを承知でギリギリまで判断を遅らせる場面かと思いきや、すぐ前にいるアーネストリーの進路に対処する方の優先度が高かったようです。そしてサダムパテックが外に持ち出した途端、アーネストリーも徐々に外へ。この瞬間、2頭が併走出来るくらいのスペースが生まれエイシンフラッシュは躊躇することなく内ラチ沿いを突き進めました。

$上がり3Fのラップタイム検証

$上がり3Fのラップタイム検証

ちなみにこの時点ではシルポートはまだ内ラチに沿って走っていました。

二つ目のポイントですが、残り2F標を過ぎた辺りではカレンブラックヒルもまだ内ラチに近いところを走っています。この段階ではM・デムーロ騎手は外に持ち出す事も少し視野に入れているようです。

$上がり3Fのラップタイム検証


上記の地点から約1.7秒後、カレンブラックヒルはシルポートを交わす準備段階として少し外目に持ち出し始めた瞬間、M・デムーロ騎手は重心を内ラチに向けて進路修正しました。

$上がり3Fのラップタイム検証

このタイミングでエイシンフラッシュはカレンブラックヒルを内から交わせるスペースが出来たのですが、残り1F標を通過する辺りでシルポートも何故か内のスペースを空けたんですね。

$上がり3Fのラップタイム検証

この2頭は迫り来るエイシンフラッシュにパッシングライトを浴びせられ、やむなく内の進路を空けたかのようでした。トップスピードに乗っていたエイシンフラッシュの鞍上でM・デムーロ騎手はほくそ笑んでいた事でしょう。

このインコースガラ空き状態が勝因の一つだったのは確かなのですが、私は3コーナーに入るまでの前半1000mの走りが最も大きい勝因だったと思います。というわけで各馬の1~5Fのラップを比較してみてください。エイシンフラッシュだけが実にスムーズなラップを刻んで走っているのがわかるかと思います。道中極めて静かに折り合い良く走っているなあと感じたので、今回はいつも以上に念入りに前半のラップを調べると数字面からもその様子がよく見て取れました。ではこのバックストレッチでの走りを画像と共に振り返ってみましょう。

$上がり3Fのラップタイム検証
エイシンフラッシュの1F通過時の画像です。この段階でサダムパテックの後方やや外目に付けました。


$上がり3Fのラップタイム検証
エイシンフラッシュの3F通過時の画像です。依然としてサダムパテックの後方やや外目に位置しています。


$上がり3Fのラップタイム検証
エイシンフラッシュが3コーナーに差し掛かる直前の画像。サダムパテックの真後ろに付けました。これで3コーナーを最内で回れる事が確定しました。

枠順的にサダムパテックが最内を進むのは誰もが予想していたと思いますが、同時に1番枠ナカヤマナイトも同様だと考えられたと思います。どちらが前なのかはわからないものの、この2頭が相前後して道中好位追走するだろうと予想されました。スタート後60mくらいまではサダムパテックの直後にナカヤマナイトがいましたが、2コーナーに入る頃から徐々にその間隔が開き、エイシンフラッシュが捻じ込めるかもしれない程度のスペースが出来てしまいました。

バックストレッチで流れが落ち着いたところでエイシンフラッシュが最内に入られないくらいまで、ナカヤマナイトが差を詰める事も可能だったと思いますが、M・デムーロ騎手が発する左ウインカーを察知したからでしょうか、相談役はやさしく「どうぞお入りなさい」といった感じで前方サダムパテックとの差を開いて行きましたね。それによって上記の画像通りエイシンフラッシュは最内で3コーナーを回れたのです。もしナカヤマナイトがスペースを空けずに3~4コーナーをエイシンフラッシュが50cmほど外を通ったのなら、距離ロスは2m弱、時計にして0.1秒ほど失っていたのです。

道中内を通る作戦をエイシンフラッシュ陣営は練っていたようです。M・デムーロ騎手は実に折り合い良く息を殺すように走らせていましたね。これがホームストレッチでの鬼脚に繋がったのは言うまでもありません。また、結果的な相談役の好アシストにも恵まれた格好だったかと思います。エイシンフラッシュ陣営は、少なくとも高級釣り竿の1本くらいは相談役に贈呈しておくべきかと思われます。

ダービーに引き続きまたもや2着に終わったフェノーメノ。4番枠を引いた時点で最も勝利に近い馬だと思いました。レース内容も申し分なく言わば教科書通りの競馬をしましたが、どうもこの馬は運がない感じですねえ。まあシビアに言えばちょっとやそっとのアヤを克服するまでの力がまだないんでしょうが、それにしても惜しい競馬でした。蛯名正義騎手の「どうしてあんな所が空くのかなあ」という気持ちはよくわかります。馬体を併せる術が全くない形でしたからね。

前週菊花賞でのゴールドシップ、そしてこのレースでのフェノーメノの走りを見れば、もし今年のダービー掲示板組の5頭が無事に秋を迎えていたとしたら、この秋のG1戦線はもっと盛り上がっていた事でしょうね。残された格好の、この2頭のステイゴールド産駒には無事に頑張って行って欲しいと思います。

3着のルーラーシップは、やはりルーラーシップらしいレースとなりました。一応ラスト3Fのラップは上記の値にしましたが、実質はほとんどスピードに変化がないままホームストレッチを駆け抜けた感じです。同じ33.1の上がりでもエイシンフラッシュとは好対照です。坂であまり加速が出来ない分、平坦になってからも高スピードを維持したまま走る力がありますが、それが好結果には繋がりませんでした。「ルーラーシップを国内G1で勝たせるには」というお題を出してみます。

4着のダークシャドウには少々失望した方が多いんじゃないでしょうか。まあ4番人気で4着ですから、可もなく不可もなくといったところでしょうけど。まあ敗因とすればいろいろ考えられますが、端的に言えば昨年の天皇賞・秋以降、国内では軟弱なレースをさせ過ぎたのかなあという印象があります。特に前走札幌記念では位置取りこそ前だったものの、あれだけスパートを遅らせる経験をさせた次走がこの天皇賞・秋だと、ゴールまで耐えさせるのが少々難しかったのではないかと思いました。

まあ騎手の談話というのは、聞き手の表現一つでニュアンスが変わってくるモノだと思うので言葉尻を捉える気はサラサラありませんが、今回勝ち馬がインを突いた事を口にできるのって、フェノーメノ鞍上の蛯名正義騎手とルーラーシップ鞍上のメンディザバル騎手だけだと思うんですよ。で、豪快に外からルーラーシップに差し込まれた騎手は、そんな事を口に出しちゃいけません。

5着のカレンブラックヒルのレースぶりには賛否両論があると思います。前走毎日王冠は「コイツは強いな」と思ったのですが、レース直後に採ったラップを見るとレースを見た時のイメージとは少し違いました。暫定版としてTweetしたラップは次の通り。

12.8 - 10.9 - 11.2 - 11.9 - 11.9 - 12.0 - 11.4 - 11.3 - 11.6 [ 5.7 - 5.9 ]

思いのほか中盤脚を溜めていたんですね。で、今回のレースは指数が前走と同じ、上がりの脚のレベルもほぼ同程度でした。陣営のレース前のコメントを何も知らないまま推測しますが、前走毎日王冠では休養明けの為、末脚がもう一つ。一叩きした今回は更にレベルの高い末脚を使えるだろう、と特に秋山騎手辺りはそう考えていたのではなかろうかと。よって、この天皇賞・秋でも前走同様に後半を意識したペースでレースを行ったんじゃないかと思いました。結果的に期待していた程の末脚を繰り出せなかった形になったと言えるでしょうか。

私が思うこの馬が合うスタイルとは、あまり上げ下げのないラップ推移となるレースじゃないかと思います。言い方を変えれば、他馬とのスピード差を減らす方向に持って行くスタイル。そしてより平均ラップが掛かる方が良いのかとも思います。距離というよりも速いスピードが要求される舞台だったのが今回の敗因じゃないかと感じました。

次走は香港マイルか香港カップとの事ですが、今シーズンの香港シャティン競馬場はまずまず速い馬場の様です。Anbitious Dragonが天皇賞・秋と同日のG2マイル戦を1:33.59で勝っていましたが、日本式換算値で1:32.4となり先日の富士Sの勝ちタイムと同等でした。カレンブラックヒルにとってはもう少し時計が掛かる馬場の方が良いんじゃないでしょうか。したがって、よりスピードが問われる香港マイルより1周グルっと回ってくる香港カップの方が期待できるように思います。

この馬は先行センスも非常に良いモノを持っていますし、香港シャティン2000m戦はスローな流れのレースがほとんどですから逃げちゃえばいいんですよ。前半で後続馬に大きなマージンを築き、ロングスパートをさせる展開に持ち込む。そして中間点からはペースを落として脚を溜め、後続馬のスパートを待つ。もしスパートが遅ければそのままスタコラサッサと行っちゃえば良い。で、早目にスパートした後続馬は既に脚をかなり使っているでしょうから、高スピードで差し込んでくるわけじゃない。なので十分馬体を併せられる余地があろうかと。例え交わされてもラスト100mでファイトバックすればいいんです。十分勝機はあるでしょう。ガッツあるレースを期待しております。

今回はこのあたりで。

ホームストレッチでのコース取り

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私も回顧エントリーでエイシンフラッシュの勝因の一つと書いた、先日の天皇賞・秋でのホームストレッチのインガラ空き事件。これ、細かい部分で言えばいろいろ見方があると思います。ですが、エイシンフラッシュがホームストレッチでインコースを通った事そのものが、大変お得だったというニュアンスの論評が目に付いた感がありました。

2着フェノーメノとの差は0.09秒程。もし、0.1秒のタイムロスとなるホームストレッチ上でのコース取りはどのようなモノかを、簡単なロジックでちょっと考えてみたいと思います。要は直角三角形の斜辺を計算してみましょうという事です。

エイシンフラッシュの上がり3Fは33.1。実際にはその区間内でのスピードの上下がかなりありますが、便宜上1F平均11.0で走ったという基準で話を進めていきます。0.1秒は距離にすると1.82mとなります。

4コーナーでエイシンフラッシュの直前にいたサダムパテックのコース取りを例にしてみましょう。残り400m辺りではエイシンフラッシュの外4~5mくらいのコース取りでしょうか。5m外に持ち出す事によって1.82mの距離ロスを生じるケースはこんな計算式となります。

( X + 1.82 )² = X² + 5²


X ≒ 5.95m


つまり、直線距離にして5.95m進む間に5m外に持ち出せば1.82mの距離ロスが生じます。ですが、こんな事は100%不可能。もしサダムパテックがそのまま内を通りエイシンフラッシュが強引に5m外に出したとしても、3~4完歩分、直線距離にして少なくとも25mくらいは必要となるわけで、その際の距離ロスは50cmほど。0.03秒弱のロスでしかありません。計算上、こんな斜行を3、4回くらい繰り返さない限り0.1秒をロスする事はないと言えます。

東京競馬場のゴール板付近の幅員は40mもない部分だと思いますが、もし幅員が40mだとして4コーナー最内からゴール板では外ラチぎりぎりの辺りまで斜めに走り抜けたとしても、距離ロスは僅か1.5m。0.1秒も失う事はありません。これが実態です。件のファイナルフォームの急激な斜行みたいなケースにならない限り、目立つようなタイムロスは起こらないんですね。

私なんぞも漠然と考えていた部分なのですが、よく見掛ける進路変更レベルだとラップの違いはほとんどないんですよね。ですからホームストレッチに於いては他馬との干渉によって起こる影響の方がよほど不利としては大きいかと思います。今回のエイシンフラッシュはシルポートを抜く際に他馬と近付いただけで、それ以外は実にスムーズに走る環境下にありました。で、もし内が空いていなかったら当然不利を被る可能性があるわけですが、鞍上の手腕と群を抜いた瞬発力がありましたから、いずれにせよ勝っていた可能性は高いと思います。

ホームストレッチで進路を変えるといった斜行状態の映像を見ると、45度くらいの角度で走っているように錯覚しがちなんだと思います。上空からホームストレッチ全てを見渡せる映像なら、おそらく「余計な距離を走っているな」とはあまり思えないかと・・・。

ついでに凱旋門賞のオルフェーヴルはどうだったでしょうか。ホームストレッチの序盤から少しずつ内に向かっていたと思いますが、急激さが増したのは残り300m辺りから。100mちょっとの区間で10~15mくらい内に切れ込んだでしょうか。まあ大袈裟に100m区間で20m内に切れ込んだとするならば、距離ロスは約2m。0.1秒強は失ったかもしれませんね。Solemiaとのタイム差は内ラチ激突込みで0.07秒程度でしたから、真っすぐに走っていたら僅差で勝てたと言えるでしょうが、それ以上は言いにくいかもしれません。まあ回顧エントリーで真っすぐ走っていたらチギっていたと書いちゃいましたが、距離ロス分だけを考えれば、その差は僅かであった可能性が高いかと思います。

ちなみに、急激に内にササった際、スミヨン騎手が矯正しようとしていたのは確かですが、まだその時点では力づくで阻止しようとは見受けられなかったように感じました。これは特異な例かもしれませんが、彼を始め欧州のジョッキー達は、結構斜めの進路のまま走らせるケースが多い印象があります。おそらくスピードを殺さない事を重点に考えているのでしょうが、結果的にその方が最善と体感しているのかもしれません。

今回はこのあたりで。

2012 エリザベス女王杯 回顧

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極々簡単に振り返ります。上位3頭および動きの目立った数頭のラップを書いておきます。

着順馬番馬名タイム200400600前3F800100012001400中4F1600180020002200後4F2100Goal
1着15レインボーダリア 2:16.313.412.212.938.513.212.312.612.450.511.511.711.812.347.36.06.3
2着12ヴィルシーナ 2:16.313.011.912.737.613.212.313.012.551.011.611.911.912.347.76.06.3
3着6ピクシープリンセス 2:16.314.112.413.039.513.112.312.212.650.211.511.811.611.746.65.85.9
5着10オールザットジャズ 2:16.813.011.812.737.513.112.412.912.550.911.511.512.512.948.46.36.6
11着7フミノイマージン 2:17.613.612.213.038.813.212.312.612.450.511.611.812.012.948.36.26.7
14着13エリンコート 2:18.213.612.113.038.713.212.312.611.849.911.312.012.713.649.66.67.0


Mahmoud計測RL2:16.312.811.712.637.112.812.512.912.750.911.911.512.512.448.3



公式RL2:16.313.011.312.937.212.612.612.912.750.811.911.512.512.448.3



上記のラップをなぞりながら各馬のコース取りを振り返れば、レースの全貌がわかる事でしょう。ホームストレッチでは外が圧倒的に有利だったと思いますが、それはスタートダッシュ時も同じ事ですね。内枠勢はダッシュが効かなかったと思われます。

まあ重い馬場だったとはいえ、かなりのスローな流れでした。エリンコートが3コーナーから動いた事で少しはG1らしいレースにはなったかなと。また、ホームストレッチで内を突くジョッキーが結構いましたね。馬場状態の読みはやはり難しいんでしょうね。

今回はこのあたりで。

2012 マイルチャンピオンシップ 回顧

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武豊騎手の2年ぶりのG1制覇ということで、彼の手綱捌きが良くわかるよう、通常映像とPVを併せた動画を作りました。個別ラップ表とともにどうぞ。

着順馬番馬名タイム200400600800前4F1000120014001600後4F1500Goal
1着1サダムパテック 1:32.912.911.111.611.847.411.411.411.111.645.55.66.0
2着7グランプリボス 1:32.913.011.011.711.947.611.311.511.211.345.35.55.8
3着17ドナウブルー 1:33.013.110.911.712.047.711.211.411.011.745.35.66.1
4着12シルポート 1:33.212.411.111.511.946.911.311.411.512.146.35.86.3
5着10リアルインパクト 1:33.212.811.111.611.847.311.311.511.211.945.95.76.2
6着4ダノンシャーク 1:33.313.111.211.711.947.911.211.411.111.745.45.66.1
7着2サンカルロ 1:33.412.911.211.811.947.811.211.511.211.745.65.66.1
8着13ストロングリターン 1:33.512.911.111.712.147.811.311.611.211.645.75.66.0
9着5コスモセンサー 1:33.512.611.211.511.847.111.311.411.512.246.45.96.3
10着15アイムユアーズ 1:33.613.111.111.812.148.111.211.511.111.745.55.66.1
11着16マルセリーナ 1:33.713.411.411.712.048.511.211.311.011.745.25.76.0
12着11ファイナルフォーム 1:33.713.111.211.612.047.911.211.511.311.845.85.86.0
13着14フィフスペトル 1:33.712.811.111.711.847.411.311.411.512.146.35.86.3
14着8エイシンアポロン 1:33.812.711.111.411.947.111.211.411.612.546.76.06.5
15着6レオアクティブ 1:33.913.311.211.812.148.411.311.411.111.745.55.76.0
16着9ガルボ 1:34.212.711.011.611.947.211.311.411.812.547.06.06.5
17着18フラガラッハ 1:34.313.511.511.712.048.711.111.411.311.845.65.86.0
18着3テイエムアンコール 1:34.313.211.111.812.048.111.211.511.412.146.25.96.2


Mahmoud計測RL1:32.912.411.111.511.946.911.311.411.511.846.0



公式RL1:32.912.511.111.411.946.911.311.311.511.946.0







武豊騎手が残り300m辺りで前にいるエイシンアポロンと左横にいるリアルインパクトの間に割って入る様は、10数年前の若き頃を彷彿とさせる迫力あるレースぶりでした。ここ数年はこのような事をスミヨン騎手らにやられまくりでしたが、久しぶりにガッツあるところを見せてくれました。サダムパテックは4コーナーを回りながら武豊騎手にしては早目のスパートを開始。したがって問題のシーンは既にトップスピードに乗っているため躊躇すれば減速に繋がるわけで、一歩も引くわけにはいかない強い気持ちが感じられました。

ポイントとしては内のエイシンアポロンが外にヨレる前から、リアルインパクトに馬体を併せに行ったところでしょうか。もし半馬身分遅れていれば、リアルインパクトが真っすぐに走って2頭の間を割って入るスペースがない可能性が高かったと思われます。リアルインパクトも外に動かざるを得ない形に持って行ったのが好騎乗と言える部分でしょう。

坂の下りから全馬一気にスピードアップした関係で、軒並みラスト100mがかなり落ち込んでいます。誰もがイメージする武豊騎手ならスパートをワンテンポ遅らせたい状況だったかもしれませんが、やはりココは勝負処。BCターフでのトレイルブレイザーといい、現状を打破するが如く積極的な仕掛けが所々で見られるようになっています。そもそも彼が20代の頃は、このように勝負に出る騎乗が圧倒的に多かったんですよね。外国人騎手の壁となり得る存在感を再び醸し出して欲しいと思います。

さて、数頭が外に飛ばされるような不利を受けましたが、2着のグランプリボスもその内の1頭。ホームストレッチでの同馬の走りを私なりに述べて行きたいと思います。

前半は引っ掛かりながらもしっかりと中段やや前目の位置を進んで行きました。要は自力勝負できるというか、勝てる位置取りをしてきました。そのためか、ホームストレッチに向いてもなお、ドナウブルーやダノンシャーク辺りが全開スパートに入っている中、内田博幸騎手はGOサインを遅らせていました。彼はスタートからゴールまでトータルパッケージでレースを組み立てる技術に長けていますから、このようなレース戦略を取ったのだと思います。そして前にいるフィフスペトルの外側に進路を取ってようやくスパート開始。その3完歩後、フィフスペトルらに行く手を阻まれかけました。

幸い、すぐ外にいるダノンシャークを押し出す形で踏みとどまれた上、スパートを開始した直後であったためか、大きな減速とはならなかったように思います。横に動いた分は約4完歩で3m程度。距離ロスは20cmにも満たないレベルでしょう。時計にして0.01秒程度。そして歩様が乱れたのは1完歩分。ちなみにこの不利を受けた区間である残り300~200m区間は約5.5秒にペースアップできていますから、ここでのタイムロスは大きく見積もっても0.15秒。おそらく0.1秒もないんじゃないかというのが私の見立てです。

また、スパートが4完歩ほど遅れる形になり、最後は猛然と追い込んだように見えましたが、ラスト100mで前述とおり他馬が大きくラップダウンというか、キッチリ脚を使い切っていますから、グランプリボスは若干脚を余した感があるものの致命的な仕掛け遅れという形にはなっていません。このタイムロスもほとんどない物かと思います。

したがって受けた不利は0.1秒あるかないかくらいのレベルかと私は判断しました。勿論マトモならサダムパテックを差し切ったのでしょうが、頭差から大きくても半馬身くらいのモノだったかと思います。

不利を受けた他馬も、グランプリボスと同等程度かと思われます。上位入線組ではダノンシャークもそうですが、不利がなくても馬券圏内は難しかったかと。唯一致命的な不利を被ったのは、進路が塞がれたファイナルフォームですね。前をカット、あるいは塞がれるのと、横から押圧されるだけではタイムロスはかなり違う物になるかと思います。

さて、この事象の要因ですが、京都外回りコースの4コーナー特有の『見えない内ラチ』の仕業だと思います。過去にも書いた事がありますが、ホームストレッチ長は399mとなっているものの、4コーナーの内ラチの切れ目からゴール板まではラップタイムから判断するとおよそ440~445mあります。で、先頭のシルポートは『見えない内ラチ』を少し膨らむ感じでコーナリング。323mあるホームストレッチ上の内ラチ目掛けて、少し内に向かうようなライン取り。

一方、シルポートの真後ろにいたコスモセンサーは4コーナーをタイトにコーナリング。言わば『インベタのさらにイン』を通りながらホームストレッチ上の内ラチ目掛けてやや外目に持ち出すようなライン取り。当然この2頭はラインがクロスしてしまいます。そしてシルポートの左後方に位置していたエイシンアポロンはシルポートと1頭分の隙間を開けて走っていましたが、シルポートがホームストレッチ上の内ラチに到達する前に、内に行き過ぎて再度外へ斜行。間を割ろうとするコスモセンサーはエイシンアポロンを外に押し出すしかない状態になったようです。その後、外へ飛ばざるを得ない馬が続出してしまいました。というわけでレース後半500mほどのスロー映像もUPしておきました。



京都外回りコースの4コーナーはRが100mとタイトな上、前述のように内ラチが途中で消失していますから、コーナリングのライン取りの自由度がとても高いです。馬のコーナリング特性や騎手の戦略が反映し易く、日本一おもしろいコースだと私は思います。もう少しこのコースでG1レースをやってくれないものか・・・。

今回はこのあたりで。

2013 クラシックロード コディーノ・エピファネイア・キズナの巻

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当初はキズナだけについて書くつもりでしたが、リクエストがありましたのでコディーノとエピファネイアも取り上げることにしました。以前のエントリーと重複する部分もありますが、まずはコディーノから書いていきましょう。ではデビューから3戦のラップをご覧ください。

レース名タイム200400600800前4F10001200140016001800後5F1700Goal
東スポ杯2歳S1:46.013.111.211.412.047.712.112.211.911.011.158.35.55.6
Mahmoud計測RL1:46.012.811.011.111.446.312.113.112.211.211.159.7

公式RL1:46.012.811.111.211.346.412.013.112.210.911.459.6

札幌2歳S1:48.512.611.712.212.448.912.612.412.111.411.159.65.55.6
Mahmoud計測RL1:48.512.411.512.212.448.512.512.612.111.711.160.0

公式RL1:48.512.411.612.312.248.512.512.612.011.611.360.0

新馬1:52.913.712.713.513.353.213.412.611.711.110.959.75.45.5
Mahmoud計測RL1:52.913.112.613.313.452.413.512.712.111.310.960.5

公式RL1:52.913.012.713.313.452.413.512.711.911.311.160.5


1走毎にペースを上げてもなお、ラスト2Fの末脚レベルはほとんど変化がありません。まだまだパフォーマンスを上げて行くのは必至でしょう。今回の東京スポーツ杯2歳Sは古馬1000万下レベルのパフォーマンスでしたが、踏んだラップから考えれば現状でも古馬1600万下で通用する力がありますね。このままいけば皐月賞で馬券圏内に入ってくる確率はかなり高そうです。

また、今回のレースでは前半の行きっぷりの良さが目に付きました。レースセンスの高さを感じさせるレースぶりだと感じました。スッと先行してリズム良く追走し、ホームストレッチでは手応え十分のまま追い出しを遅らせ、追われてからもキッチリ反応。往年の岡部さんにピッタリ合うような馬ですね。

先日の天皇賞・秋ではかなり正確な公式ラップとなっていましたが、今回は残り2F目と1F目が0.3秒ほど入れ違いになっていました。これだと値的な印象度はかなり違ってきますよね。証拠画像はこちら。
$上がり3Fのラップタイム検証

コディーノがもし10.7 - 11.4というラップを踏んだのなら評価は別モノになります。かなりのピッチ走法ですから瞬発力に優れているのは確かなのですが、だからと言って爆発的スピードの持ち主とまでは言えないんじゃないかと。おそらく同世代でもうワンランク上の、脚の速い馬がいるように思われます。この点は今後要注意な点でしょう。

数多い父キングカメハメハ、母父サンデーサイレンスという組み合わせの同馬ですが、母母がシンコウラブリイの母ハッピートレイルズということで、キングカメハメハのスタミナを生かし切れず、逆にNasrullahのスピードが生きているので2000m超のレースでの上積みは少々期待しづらいところでしょう。レースセンスの良さから距離延長で一気にパフォーマンスを落とすタイプではないと思いますが、ダービーではスタミナ力で捻じ伏せにくるライバル馬が台頭してくるような気がします。したがって、次走で予定されている朝日杯FSでは、マイル適性の高さをしっかり見せてくれるんじゃないでしょうか。いずれにせよ先行力強化に繋がるマイル参戦は良い方向となる可能性が高いかと思っています。


エピファネイアとキズナは共に京都1800m戦でデビューしました。両者の新馬戦を比較してみましょう。

馬名タイム200400600800前4F10001200140016001800後5F1700Goal
エピファネイア1:48.913.311.812.112.649.813.112.512.210.810.559.15.25.3
Mahmoud計測RL1:48.912.911.711.912.849.313.012.612.211.110.759.6

公式RL1:48.912.911.612.112.749.313.012.611.611.311.159.6

キズナ1:51.613.512.612.613.352.013.312.512.111.110.659.65.25.4
Mahmoud計測RL1:51.613.112.512.713.351.613.312.512.111.310.860.0

公式RL1:51.613.112.312.913.351.613.312.511.811.311.160.0


時間の早いレースではいい加減さが良く目に付きますが、それにしても公式ラップがヒドイですねえ。過去に散々書いてきましたが今回言いたい事は次の2点です。

まず1点目は、両馬とも素晴らしいスピードで駆け抜けていったのが誰の目にも映ったはずですが、公式記録として残るレースラップが極々平凡なモノでしかない点。後々記録を紐解いていく上でとても残念な事です。そして2点目は、いくら新馬戦と言えども道中とのラップの落差があまりにも異常だと思うのですが、公式記録で明示されない以上、関係者がこの異常さを意識しない点。面白味に欠けるレースが多くなった温床がココにあると私は思います。

さて、この2頭の比較をしてみますが、私が算出している馬場差はキズナのレースの方が0.3~0.4秒速いという結果となりました。走破タイムが1.8秒も違いますが実質はそれ以上かと思います。しかも上がり2Fはエピファネイアの方が速いわけで、もしこのようなスローのラスト2F足らずのスパート合戦となれば、何度戦ってもエピファネイアが勝つでしょう。京都競馬場は残り300m通過もある程度の精度で計測できますから、両馬の100m毎のラスト2Fのラップと完歩ピッチも書いておきましょう。

馬名1500160017001800
エピファネイア5.75.15.25.3
完歩数13.75131312.75
完歩ピッチ(秒/完歩)0.4150.3920.4000.416
キズナ5.85.35.25.4
完歩数13.512.512.2512.75
完歩ピッチ(秒/完歩)0.4300.4240.4240.424

エピファネイアの加速力はターボエンジンを搭載したような強烈なモノです。おそらく新馬戦のラスト1Fとしては史上最速ラップを叩き出したんじゃないかと思います。最後の4完歩は鞍上の意向どおりにピッチを落としていますから、5.2 - 5.2 のまま入線も可能だったと思われます。とにかく速い奴です。

1800m戦の新馬戦でデビューし、このような形で勝ったわけですからまずあり得ない事ではあるのですが、おそらく行かせればスタートダッシュも相当なモノであろうと思われるので、日本馬が難攻不落であろうBCスプリントなんかも十分戦える器じゃないかと、血統構成も含めて想像してしまいましたし、それくらい強いインパクトを受けた同馬の新馬戦でした。まあ規格外の可能性もありますが、上がり3Fにわたってどれくらいの末脚が使えるのかは正直分かりません。ちなみにディープインパクトの新馬戦と比較するならば、走破タイムは全くのイーブンですが、ディープインパクトは遥か後方から余裕残しで上がり3F32.0で駆け抜けた勘定になります。エピファネイアはレースレベルが上がった際、どれくらい戦えるのかはまだ未知数でしょう。

一方キズナも迫力ある新馬戦のレースでした。典型的なドスローなので上がりラップ自体には大きな意味はありませんが、何よりもラスト1Fをほぼ25完歩で走破した点は魅力的です。ストライドの大きい現役馬と言えばルーラーシップがすぐ頭に浮かびますが、如何にもトビが大きそうなルーラーシップとは違い、キズナの馬体イメージからはパッと見でトビが大きいとはすぐに気付きませんでした。エンジンの掛かりが遅いもののスピードに乗ってしまえばどこまでも伸びて行きそうな感じです。では2戦目黄菊賞のラップも見て行きましょう。

レース名タイム200400600800前4F10001200140016001800後5F1700Goal
黄菊賞1:49.813.411.511.712.549.113.112.412.711.311.260.75.55.7
Mahmoud計測RL1:49.813.011.511.512.548.512.912.612.811.711.361.3

公式RL1:49.813.011.611.712.448.712.712.612.511.711.661.1


渋った馬場の中、新馬戦から一気に追走ペースが上がりましたがモノともせず大きなストライドで駆け抜け圧勝。スタミナが良く生きた配合のイメージどおりの、器の大きさを十分に感じさせるレースだったと思います。

このレースでは4コーナーでも一向にペースが上がらず、しかも外を回ったためコーナリングはスムーズに見えましたが、新馬戦ではペースが上がった4コーナーで内ラチをピッタリ通ったため、ぎこちないコーナリングをしていました。同馬の弱点はこのあたりでしょう。トビが大きい馬の宿命でもあろうかと思います。今後相対するライバル馬達に単なるキレ味勝負を挑むのなら、少々壁にぶち当たる可能性が高いとも言えます。陣営が同馬の特質をどう捉えているのかがポイントでしょう。まあ是非ともナリタブライアンのようなレースを目指して行って欲しいと願っています。


他馬を抜き去るという競馬の本質に於いては、上記のコディーノ、エピファネイアのような高回転ピッチ型の方が明らかに有利だと思います。特に日本の競馬ではその傾向が顕著なのですが、大きなストライドで他馬の手の届かないところまで突き抜けて行くような馬に私は魅力を感じます。キズナも馬格的にかなりのストライドを誇る馬ですが、もっと強烈なストライド走法を見せ付けた代表格といえばクロフネでしょう。

クロフネがNHKマイルCを勝った際、ラスト1Fは11.5で上がっていますが、このさほど速くないスピードでも1Fをきっかり25完歩で走破していました。完歩ピッチは0.46 / 完歩という、一般的な馬がスローペースを追走している時のようなユッタリとしたストライド。もし、1F11.0くらいのペースとなれば、1完歩で8mを優に超えるストライド長で走れるはずです。こんな馬が自らの良さを生かした走りをすれば、武蔵野Sやジャパンカップダートのような、強烈なパフォーマンスを発揮できたりするのです。とかく瞬発力全盛の今の時代ですが、このような馬がターフを賑わすシーンを見たくて仕方がありません。

最後に、ジャパンカップについてエントリーを起こす気力がないのでココで少々書いておきましょう。前走メルボルンカップ組の外国馬が3頭いますので、ラップはこちらでご覧ください。

http://www.racingnetwork.com.au/emirates-melbourne-cup/tabid/87/date/2012-11-06/race/7/trackid/22/default.aspx

こんなレースが天皇賞・春で行われたらと思うとゾッとしますね。まあその分末脚のキレ具合がわかるのですが、この程度では東京2400mではちょっとキツイだろうと思います。やはり外国馬ならオルフェーヴルを負かしたソレミアでしょう。芝コースでの追い切りは思いのほか素軽い印象を持ちました。ラップの上下動が少ないレースになれば、結構やれるんじゃないかと思います。そしてオルフェーヴルが大外枠に入りました。どんなレースをしてくるか非常に興味深いです。

唯一と言っていい先行馬のビートブラックが最内枠に入りましたから、この馬が逃げざるを得ない形になると思います。上がりの掛かる展開に持ち込みたいでしょうから早目にスパートしてくるでしょうが、それまで後続馬にマージンを取る展開にするのか、それとも各馬も付いて行くのか、どちらになるのでしょうか。

また、常識的に考えるのなら、池添騎手は先頭に立つのを遅らせたいと思っていることでしょう。ここ2走は手綱を取っていないものの、ホームストレッチで逸走する要因を避けたいというか、心理的にトラウマが残っているはずで、結構プレッシャーは大きいかもしれませんね。まあ普通に乗れば結果は付いてくると思いますが・・・。

今回はこのあたりで。

2012 ジャパンカップ 審議について

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いつもの回顧は後回しにして、ジェンティルドンナとオルフェーヴルの接触した事象についてちょっと書いてみます。

馬に乗れるわけでもない人間がとやかく言っても限界がありますが、我々にもいろんな角度からの映像が見られるわけですし、おそらくその映像を細かく見る事に関しては、現場サイドより長けている方々が多いんじゃないかと思います。もう見尽くした方が多いとは思いますが、改めて審議対象となったシーンの映像をご覧ください。



それぞれの馬、騎手に対して擁護する意見が出るのは当然の事です。降着するかしないかで馬券的中が変わってくるでしょうし、ファン心理等により、どうしてもどちらかにバイアスが掛かった上での論調になってしまいますよね。中立的な観点から検証するのはなかなか難しいと思います。ですから私の立ち位置も説明しておかないといけないですね。で、馬券的には出遅れた馬が1着にならないとどうしようもなかったので関係ありません。また、両馬に対しての好感度はほぼ同じですが、どちらかと言えばオルフェーヴル贔屓かもしれません。そして騎手については、両者とも他騎手にはない技を持っている部分が共通項だと思いますが、例えば私が過去に表現した『池添スペシャル』というのは大枠で言えばマーク屋。彼にしかできないセンスで素晴らしいモノなのですが、文字どおり「馬が競い合う」という観点なら岩田騎手の技術力が上だと考えます。今回の事象に於いてはその「馬が競い合う」という比重が大きかった局面なのは言うまでもありません。

今回大きくクローズアップされたのは上記の動画のタイムコード2:11辺りで、ジェンティルドンナがオルフェーヴルを外に押し出したところですね。しかし正面からのPVを見るとタイムコード2:09.52辺りでまず2頭が接触しています。また、この接触に至るまでオルフェーヴルが内に切れ込んでいるのもわかります。コマ送りにすれば接触の2完歩ほど手前から切れ込み具合が更に急角度となっているのもわかります。このシーンは上空からの映像だと良くわかりますのでこちらもご覧下さい。内ラチの影との対比で進路変更の様子が伺えます。また、ビートブラックと内ラチとの間隔も注目してください。



この動画の最初の時点でオルフェーヴルの馬体は内を向いていますね。トーセンジョーダンを交わすや否や、前をカット気味に切れ込んでいます。一方ジェンティルドンナはオルフェーヴルに約半馬身遅れる形でトーセンジョーダンを交わし掛かりますが、オルフェーヴルより緩やかな角度で外に向かい始めています。

半馬身ほどあった差は約3.5秒後に並ぶまでとなり、スピードの違いを感じながら岩田騎手は前方のビートブラックの外側に出られると思ったのでしょう。2頭が接触するまでは、岩田騎手にはオルフェーヴルを明確に外へ押し出す意図はなかったと思われます。そもそも更に外へ出ようとすればトーセンジョーダンの進路をカットしかねない可能性が高かったわけで、オルフェーヴルと接触するタイミングはもう少し先だろうと読んでいたのではないでしょうか。

ところが前述のようにオルフェーヴルの切れ込む角度が更に急となって一度目の接触を迎えたのですが、接触する約10コマ前、約0.3秒前のスクリーンショットがコチラ。

$上がり3Fのラップタイム検証

オルフェーヴルはかなり内を向いていますね。そして接触時はコチラ。

$上がり3Fのラップタイム検証

良く見ると、岩田騎手も直前に外へ体重を掛けています。おそらくぶつかるのがわかったため、内に飛ばされないよう瞬時に抵抗したのだと思います。これがなかったら表現は悪いですがオルフェーヴルの勝ちだったとも言えます。

結局、接触してから相譲らず2頭はほぼ真っすぐ進んで行きます。同時に2頭は同じスピードになってしまいました。このままだとジェンティルドンナはビートブラックにぶつかるしかない状況。ビートブラックとはスピード差がかなりありますから抑えても激突した可能性が高いですね。とすると、岩田騎手には勝つためには勿論の事、危険回避の意味もあって強引にオルフェーヴルを外に押し出すしか手立てしかなかったのだろうと・・・。ちなみにビートブラックの右後脚とジェンティルドンナの左前脚はかなり接近したようです。この2枚のスクリーンショットで何となくわかるかと思います。

$上がり3Fのラップタイム検証

$上がり3Fのラップタイム検証

以上は岩田騎手目線を中心に描写しましたが、これを池添騎手目線で描写するのは結構難しいです。つまり、内にササっていったのが池添騎手の意図なのか、オルフェーヴルの意志なのか、正直掴みづらいです。勿論、どちらの要素もあった可能性はあります。

池添騎手のこの状況下なら、内に切れ込み気味の進路を取るのはある意味常套手段だと思います。先日のエントリーで書いた話とダブりますが、もともと彼は欧州ジョッキーと似た、馬の進路に逆らわないコース取りをする機会が多く(これは好意的に捉えています)、その影響から過去にはいろいろ物議を醸した経緯があります。まあ大義的にはスミヨン騎手と感覚が似ているなと私は思っているのですが、トーセンジョーダンの進路をカットしかねないギリギリのライン取りをしたのは、若干オルフェーヴルの意志があるものの、基本的には池添騎手の意図通りかと想像しました。しかし、接触の直前に内に行く角度が急になったのは、オルフェーヴルの意志だったのかと、こちらに関してはそう想像するのが正解かなあと思います。まあ、池添騎手が制御しきれなかったとも言えますし、彼が真っすぐ走る意図はなかったとも言えるでしょう。無論、本人は真っすぐ走っているつもりだったかもしれませんが、それはあくまでも彼の脳内でのみ通用する事に他なりません。

簡単にサラサラっと言う気はありませんが、このような攻防は競馬の一つであると私は思うのです。どちらが悪いというのではなくお互い攻め守った結果がこうだったと。勿論それぞれの馬、騎手の特性を生かした上での話です。で、危険度については冒頭で書いたように、騎手経験のない者があ~だのこ~だの言っても信憑性はありませんが、同じようなスピードで馬体がちょうど併さった形でぶつかるケースって、私が今まで競馬を見てきた中では落馬に繋がる事はなかったように思います。併せ馬調教でも、馬体がぶつかるケースは良く見ます。しかも意図的にぶつけているような事象もたまに見ることがあります。やはり危ないのは進路をカットするケース。それと危険性を同一視するのは、競馬の本質から離れて行く事に繋がると私には思えます。

2頭がビートブラックを交わしてからの攻防は見応えがありましたし、その際どちらが強く押したかという議論は、私的にはどうでもいい事です。まあとりあえず私なりに今回の審議事象を裁定するのなら、JRAの説明どおり降着はありません。そして岩田騎手が2日間の騎乗停止となった事を元にすれば、最初に接触した事象は池添騎手側の急な内への切れ込みに非がある物として、池添騎手にも1日間の騎乗停止、あるいは10万円の過怠金を科す、という見解とさせていただきます。前述のように岩田騎手の好判断によりジェンティルドンナの被害は大きくありませんが、悪質度が高い走法だと考えます。

まだまだみなさんいろいろ言いたい事があろうかと思いますので、今回に限ってコメントを即時公開状態と致します。ただし基本的に私からのレスはないものとし、また、節度ある書き込みをお願いしたい次第です。

最後にオルフェーヴル陣営のレース後コメントについて。まあ一部分だけの発言が取り上げられて、その部分のみ私達が見る形になるケースが多かろうと思いますので、全面的にどうのこうのと言う気はありませんが、凱旋門賞の敗因を全て背負った殊勲ある発言をされたトレーナーは、一体何処へ行ったのでしょうか。私、競走馬を擬人化するのはあまり好きではないのですが、オルフェーヴルのプライドはズタボロです。非常に残念でなりません。

今回はこのあたりで。
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