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Channel: 上がり3Fのラップタイム検証
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種牡馬目線で競走馬のレベルの推移を考えてみる 2/2

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こちらは続きのエントリーとなります。

種牡馬目線で競走馬のレベルの推移を考えてみる 1/2
http://ameblo.jp/mahmoud1933/entry-11575912826.html

1985年2007年
種牡馬名登録数OP馬種牡馬名登録数OP馬
ハードツービート682キングカメハメハ18522
サンシー641フジキセキ1637
ミルジヨージ644クロフネ16014
モンテプリンス631ネオユニヴァース1448
マルゼンスキー614ダンスインザダーク1431
タイテエム60-マンハッタンカフェ1318
ダンサーズイメージ602スペシャルウィーク1255
ノーザンテースト591キングヘイロー1243
ホスピタリテイ571グラスワンダー1235
イエローゴツド56-シンボリクリスエス1234
サーペンフロ56-ゼンノロブロイ12111
ダンシングキヤツプ561サクラバクシンオー1198
ノーザンデイクテイター562アルカセット114-
ブレイヴエストローマン561ロージズインメイ1083
ノーアテンシヨン553タップダンスシチー107-
ノーザリー551アグネスタキオン1066
アローエクスプレス53-スウェプトオーヴァーボード1063
サクラシンゲキ532プリサイスエンド100-
トウシヨウボーイ536オペラハウス991
サンシヤインボーイ522マーベラスサンデー981
ノノアルコ522ストラヴィンスキー951
ブライトフイニツシユ52-デュランダル957
モーニングフローリツク521ジャングルポケット942
デイクタス513フサイチコンコルド881
トウシヨウルチエー511アグネスデジタル852
マンオブビイジヨン51-タイキシャトル85-
ラツキーソブリン51-フレンチデピュティ856
アスワン493ゴールドアリュール803
ハイセイコー49-アジュディケーティング79-
ホープフリーオン49-マヤノトップガン78-
コインドシルバー481タニノギムレット76-
バンブーアトラス481バゴ764
タケシバオー471イーグルカフェ73-
ナイスダンサー472コマンダーインチーフ68-
アンバーシヤダイ463サクラプレジデント661
ノーザンアンサー46-ティンバーカントリー65-
ロイヤルスキー46-ファルブラヴ653
ハギノカムイオー45-アドマイヤボス641
クラウンドプリンス44-アフリート642
グリーングラス44-ステイゴールド623
シービークロス441ブライアンズタイム622
ターゴワイス443マリエンバード62-
リアルシヤダイ443ワイルドラッシュ61-
サクラシヨウリ43-サウスヴィグラス592
ミシシツピアン43-ホワイトマズル572
クルセダーキヤツスル42-アグネスフライト56-
パーソナリテイ422スキャン53-
ヒツタイトグローリー421ニューイングランド53-
ピツトカーン42-ムーンバラッド53-
モガミ424アドマイヤマックス512
ラデイガ42-ゴールドヘイロー51-
ロジンスキー42-マイネルラヴ511

1985年では産駒の血統登録数最多はハードツービートの68頭でしたが、2007年はキングカメハメハの185頭を初めとして産駒が100頭をオーバーしている種牡馬は何と18頭もいます。表中にはない産駒30頭以上の血統登録数で見れば、種牡馬数は1985年の方が多くなります。総生産頭数は同じくらいの規模でも、種牡馬の偏りが大きくなったというか、種牡馬を取り巻く環境が激変していると言えますね。また、この両世代の4歳時に該当する1989年、2011年の準オープンレース数は、前者が93レース、後者は171レースという違いもあります。オープン出世率のパーセンテージを同じ土俵で見るのはあまり妥当ではない感じがしますね。

オープンに昇格する際、現在の方が容易い環境下にあるのは間違いのないところでしょう。後は種牡馬の偏りが大きくなった、そして内国産種牡馬が占める割合が大きくなったのをどう見るか、ここがポイントかと思います。

特定の種牡馬に偏っているという点は、以前に比べて種牡馬がより厳選されているという言い方ができるかもしれません。しかしこれは血統の多様性を否定する方向性にあるという側面も考えられるところでしょう。まあ、数にモノを言わせている印象は多少なりとも感じられますね。

ちなみにサンデーサイレンスの初年度産駒は1992年産。この頃は総生産頭数が1万頭を超える時代でした。そのサンデーサイレンス産駒の血統登録数は1992年産が67頭、1993年産が66頭。ほぼ同時期に日本で供用されていたライバル種牡馬であるブライアンズタイム産駒は53頭と48頭、トニービン産駒は57頭、49頭でした。元々の占有率が低い中でこの3頭の種牡馬は戦っていたわけです。この2年間のオープン出世率はサンデーサイレンスが19.55%、ブライアンズタイムが3.96%、トニービンが5.66%でした。種牡馬サンデーサイレンスの凄さが良くわかる一例でしょう。

やはり私としては、例えオープン出世率が同等であっても、キングカメハメハよりノーザンテーストの方が少々価値が高いんじゃないかなあと思います。それは毎年多くの産駒が誕生するサンデーサイレンス2世種牡馬も同じことかと感じます。まあ、これはあくまでもオープン出世率という視点での話であり、産駒の大物ぶりで考えればロードカナロアというチャンピオンホースを輩出したキングカメハメハに軍配が上がると言えるでしょう。父系が繋がっていくという面においては期待できそうです。

母父サンデーサイレンスであるキングカメハメハ産駒の活躍馬が目立ちますが、2010年度産までのJRA-VAN上のキングカメハメハ産駒登録馬は計714頭。その内、母父がサンデーサイレンスであるのは218頭。占有率は30.53%にもなります。オープン馬は16頭。オープン馬内での占有率は30.77%。母父サンデーサイレンスというメリットはさほど感じられない数字となります。総数が多い分、それなりにオープン馬を輩出しているというのが現状ですね。前述のロードカナロアはサンデーサイレンスの血が含まれていませんから、種牡馬となった時は父同様、サンデーサイレンスの血を含む繁殖牝馬との配合が大変多くなりそうです。で、いくつか仮想配合をしてみましたが、キングカメハメハと同じように可も不可もないという印象です。単純にサンデーサイレンスの血を使うだけなら、数での勝負なりの結果となりそうな気がしています。おそらくディープインパクト牝馬との配合が繰り返されると予想されますが、あくまでも母母がポイントとなるでしょう。

ロードカナロアにジャストフィットする繁殖牝馬を見付けるのはなかなか難しそうですが、質の高い血統構成をしていますので、何とか自身並みの大物を誕生させられる種牡馬となって欲しいです。ちょっと変わり種的な意味でこんな配合もありでしょうか。

ロードカナロア X ショウナンアヤカ
http://www.jbis.or.jp/topics/simulation/result/?sire=0001089850&broodmare=0000886138&x=51&y=21


さて、供用当初は産駒が60頭台だったサンデーサイレンスも、1996年度産駒でとうとう100頭の大台を突破しました。そして1998年度産ではサンデーサイレンス2世種牡馬のフジキセキ、タヤスツヨシ、ダンスインザダークの産駒も100頭オーバーという状況。内国産種牡馬の占める割合もどんどん増えていきました。その産駒たちが競走デビューする頃は、先のエントリーで書いたように馬場の高速化が一気に進んだ時代でもあります。日本の競馬が明らかに変化したタイミングですね。

この概ね2000年以降、よりスピードが求められる競馬になったわけで、スピードを伝えることに難のあるタイプの種牡馬が淘汰されゆく傾向になったのは確かなのでしょう。それが即ち競走馬のレベルアップによるものと見るのは一理ありますが、ラップを細かく見る私にとっては、レベル云々よりも競馬の質が変わった印象の方が圧倒的に強いです。そもそも、このblogのタイトルは「上がり3Fのラップタイム検証」。上がり3Fのトータルタイムで競走馬の質を考える時代はとっくに過ぎているからこそ、こんなblogタイトルにした経緯もあります。ですから、「質」の違う競馬のレベルをどっちが上か下かを論ずるのは大変難しいことであり、競馬観の違いによって様々な意見があるのは当然のことでしょう。今回は種牡馬視点でいくつか書いてきましたが、種牡馬成績は各々の種牡馬のイメージを下回るのが基本的であると思います。その辺りを踏まえて競走馬の移り変わりを考えていけば、また新たな見方が生まれるかもしれません。

いろいろ集計してみたい方のためにこんなモノを。
http://ux.getuploader.com/Mahmoud1933/download/14/20130726.xlsx

今回はこのあたりで。

2013 凱旋門賞 展望 その1

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今年の凱旋門賞まであと1か月少々となりました。日本馬で出走を予定しているのはオルフェーヴルとキズナ。非常に楽しみですし、大きな期待がもてる一戦でもあります。

この2頭については当blogで数多く取り上げてきました。今更あれやこれやと語る部分はそう多くないと思いますので、前哨戦の結果が出た段階で改めて触れて行きたいと考えておりますが、とりあえず今回も少しだけ書いておきましょう。

まずは今年の日本ダービー馬キズナ。今夏の成長度合いに全てが掛かっていると言って良いと思いますが、ここ3連勝は全て息の長い末脚を使っていることから、ロンシャンの舞台が合わないはずはないと思います。ただ、細かいレベルで考えれば、欧州の強豪馬で良く形容されるような、力強くて息の長い末脚を持つタイプとは少々趣が違うところもあるかと感じています。

日本ダービーでの末脚が典型例でしたが、キズナはラップの上下動が少ない平均的なスピードで駆け抜けるのが持ち味だと思います。一方、欧州の大レースを勝ってきた馬達は長い区間をもがきながらしぶとくゴール板まで耐えて伸びるタイプが多いです。一気にトップスピードに乗りながらも踏ん張る力が強いんですね。最後の直線で延々競りながら生き残った馬が勝者となる、そんな感じです。まあ、競馬は相手なりに戦わざるを得ないモノなので難しいとは思いますが、他馬の動向に釣られることなく自分本位のレースができればいいんじゃないでしょうか。具体的には最後の直線の中間点辺りまでは、他馬の末脚に後れをとるのが当たり前の気持ちで、ラスト100m勝負に持ち込むつもりで良いと思います。蘇りつつある鞍上の手腕に期待です。

昨年惜しくも差し返されて2着になったオルフェーヴル。私は12F戦が心持ち長いと見ていますし、現に凱旋門賞だけでなくJCでも2着でしたが、それでも昨年の12F路線では世界で最も強い馬だったと思っています。先日の肺出血の影響が心配されますが、影響がなければ今年の凱旋門賞でも主役になるのはこの馬のはずでしょう。今年は産経大阪杯での1走のみですが、今シーズンの前半までは昨年に引き続き、12F路線の世界トップホースだったという認識です。

しかし、そのオルフェーヴルを主役の座から引き摺り下ろすような強豪馬が現れましたねえ。先日のキングジョージを2:24.60という大レコードで圧勝したNovellistです。というわけで、今回はそのキングジョージを振り返りながらNovellistについて見て行きたいと思います。

2010年にHarbingerがレコードでブッちぎった時も強烈なインパクトがありましたが、そのHarbingerのレコードを2.18秒も更新するとは・・・。1989年JCでホーリックスがレコードを叩き出したのと同様、「時計がぶっ壊れた」という表現がピッタリ当て嵌まるような驚愕のタイムでしたね。スターティングゲートも同然の事ながら例年と同じ場所でしたし、計時開始がズレていたということもありません。

この英アスコット競馬場は、一昨年、昨年と、日本馬が最後の直線に入るや否やバテてしまうような力の要る馬場の代名詞とも言える競馬場ですが、条件さえ揃えばこのような快時計が出るんですねえ。私は速い時計が出る条件として、芝の長さなんかよりもとにかく馬場の硬度の影響が大きいと書いてきましたが、やはり当地は晴天続きで馬場が硬くなっていたみたいですね。

では、いつものように日本式の走破タイムに換算して考えてみたいと思います。計時開始の違いでマイナス1.2秒、そして12F=約2414mですから、日本式の2400戦ならおよそ2:22.6程度の走破タイムとなりますね。ちなみに日本の2400m戦で、2分22秒台の決着となったレースは僅か5レースしかありませんし、2:22.6を上回ったのは1989、2005、2009年のJCの3レースだけです。この60.5kgを背負ってNovellistが叩き出したレコードはいろいろ大きな意味がありそうですね。

さて、今年のキングジョージは2種類のレース映像がありました。それぞれ詳しく見て行くと、やはりというか、複数のカメラの同期がとれていません。過去エントリーで書いたことがありますが、この現象はJRAの公式映像でも見られることです。例えば新潟競馬場外回りでの、外ラチ沿いの移動カメラとか、JC開催時に流れる内馬場からの移動映像は、通常のカメラ映像より0.5秒程度遅延しています。また、最後の直線でバーチャルラインを被せている映像も、0.1秒少々遅延しています。昨年の有馬記念でのゴール入線時の映像は通常のカメラ映像ですから、直線中程のバーチャルラインありの映像とは同期がとれていないんですね。こういった事象を踏まえなければ、レース映像からラップを計測するというのは難儀な話になります。で、今回のキングジョージのレース映像からは、前述のようにマイナス1.2秒すれば日本式の換算タイムとなる保障はありません。もうちょっとマイナス幅を少なくしなければならないのかもしれませんが、仮にそうだとしても2分23秒を切っていたと考えるのが妥当かと思います。

各馬の残り3F通過時も、ゴール入線時のカメラ映像と同期がとれていないので残り3F目のラップはもう少し遅いかもしれませんが、おそらくNovellistの上がり3Fはこんな感じだったと思われます。

35.5 : 11.7 - 11.6 - 12.2 [ 6.0 - 6.2 ]

この上がり3Fを純粋な600mに換算すれば35.3程度となります。1800m通過は1:47.3くらいとなりますから、残り600mまで200m平均11.92で追走し、200m平均11.77で残り600mを走ったというラップバランスとなります。最後の直線の急勾配を考えれば、Novellistは脚を溜めてしっかり伸びたというレースだろうと思います。ハイペースの持久戦という感じではないのかなあと。しかし、これはあくまでもNovellist自身だけの話でありますから、2~4着馬の上がり3Fおよび日本式2400m換算走破タイムも見て行きましょう。

2着 Trading Leather 55kg 2:25.5
上がり3F 36.6 : 11.9 - 12.1 - 12.6 [ 6.2 - 6.4 ]
日本式2400m走破タイム : 2:23.5 - 36.4

3着 Hillstar 55kg 2:25.6
上がり3F 35.9 : 11.6 - 11.8 - 12.5 [ 6.1 - 6.4 ]
日本式2400m走破タイム : 2:23.6 - 35.7

4着 Cirrus des Aigles 60.5kg 2:26.1
上がり3F 36.7 : 11.8 - 12.0 - 12.9 [ 6.3 - 6.6 ]
日本式2400m走破タイム : 2:24.1 - 36.5

後方から追い込んだ3歳馬Hillstarでさえ、失速率はかなり大きいですね。つまりスパート時におけるNovellistの余力の大きさが伺える結果だったと思います。走破タイムこそ現在の東京競馬場と遜色ないと見えがちですが、そもそも昨年のJCなど、もっとペースが速ければ楽に2分21秒台に突入していたような馬場状態だったと考えられますので、Novellistがマークした快時計は日本の競馬場に対応できるようなスピード能力の高さによるものではなく、スタミナ力に裏打ちされた結果だったと解釈すべきかと考えます。軽さよりも重厚さが目立つ馬じゃないかと感じました。血統面でも、ドイツ血脈を軸とした重さを感じさせる配合馬です。個人的にはかなり魅力ある血統内容をしていると感じます。9代クロス血統表をUPしてありますので、興味のある方はダウンロードして眺めてみてください。

http://ux.getuploader.com/Mahmoud1933/download/15/Novellist.pdf


高低さの違いはありますが、アスコット競馬場は下って上る形状。一方ロンシャン競馬場は上って下る形状ですから、このキングジョージでのパフォーマンス通りに凱旋門賞でも走るとは、常識的には言えないんじゃないかと思います。ただ、怪物である可能性は否定できず、我が日本馬2頭に大きく立ちはだかる存在となりそうな気もしますね。キズナにとっては少々厄介な相手となるタイプですが、オルフェーヴルにとっては自分の土俵に引っ張り込む戦いができれば、上を行く可能性は十分高いかと思います。

今年の凱旋門賞の展望については、何か思いつくことがあれば随時書いていく予定です。今回はこのあたりで。

2013 凱旋門賞 展望 その2

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8/21に英インターナショナルSが行われました。昨年はFrankelが、2009年ではSea the Starsが勝った事でも有名なレースでしょう。今年の出走メンバーの中で凱旋門賞に向かう馬は多くないかもしれませんが、レース内容を軽く振り返りつつ、ちょっといろいろ書いてみたいと思います。

勝ちタイムは2:05.74。施行距離は10F88Yds、約2092mですから、いつものように単純計算で日本式2000m戦に換算すれば1:59.0見当。実質1:58.8~9に相当するまずまずの高速決着でした。今年は先日のキングジョージ、そしてTreveが勝った仏オークスも含め、200m平均12秒を切るレースが目立ちます。なかなか珍しい年ではないかと感じます。

今年のドバイシーマクラシックの勝ちタイムが、日本式の2400m戦ならエリモジョージの日本レコードと同じくらいだと回顧エントリーで書きましたが、この英インターナショナルSは言わばトウショボーイの日本レコードと同等なんですね。欧州競馬に良く足を運ばれている方からTwitterでヨーク競馬場の様子を教えて頂いたことがありますが、今年も例年同様、芝丈は短かったそうです。芝の種類はともかくとしても、現代の日本的な高速馬場の条件が揃っていれば、先のキングジョージみたいにもっと時計が速くても不思議じゃないんですが、このレベルで留まるということは、やはり馬場の硬度の影響なのかなと感じます。

今年は札幌開催がないため函館競馬場のロングラン開催となっていますが、その影響で馬場を硬くしてくるんじゃないかと予想していた通り、6週目あたりまで非常に速い馬場となっていました。ところが中間降雨量が多いと、例え良馬場発表であっても8/17開催時のように、一気に時計の掛かる馬場に変貌を遂げましたね。重発表の札幌記念なんかは欧州の競馬場じゃないかと思うくらいの馬場でした。ちょっと余談になりますが、今年の英アスコット、ヨーク開催、そしてこの函館開催を踏まえ、今や日本馬の能力がグローバル的に比較でき得る環境になった事を考えれば、各国の馬場の違いはかなり推測し易くなったと思います。こんな時代に緑の砂の影響がどうたらこうたらなんて言い出すのは非常にちっぽけでナンセンスな事に思えてなりません。

さて、この英インターナショナルSは各馬のSectional Timeが発表されています。

http://www.turftrax.co.uk/tracking-technologies.html
http://www.turftrax.co.uk/tracking/ebor-2013/YRK210813R4_1M2F.pdf

自動計測システムながらも昨年のクイーンアンSのように、非常に正確性を欠くラップとなっています。今年の英インターナショナルSも残り5F目がちょっとアヤシイのですが、まあJRAに比べればマシといえる値と言って良いでしょう。で、このラスト5F目からペースが上がり5Fのロングスパート戦となり、ラスト1Fは勝ったDeclaration Of Warでさえ12.53。ほぼ平坦なヨーク競馬場でこうなのですから、レース後半はかなりシビアなレースとなったようです。要は日本の2000m戦で勝ちタイムが1分58秒台後半でも、ラスト1Fが1秒ラップダウンして12秒半ば掛かるレースを想像すればよいでしょう。

正直に言うとこのレースの出走メンバーは個人的にあまり評価していなくて、マトモなオルフェーヴルなら負けることはないだろうと思いますが、ラップ推移に関しては日本のそれとは異質な感じがしますね。で、この速い段階からの高速ロングスパート戦になった要因は、やはり最後の直線の長さにあるんじゃないかと思います。

このヨーク競馬場の最後の直線の長さは5F超あります。これだけ長いと直線に入ってすぐ仕掛けることはありませんが、それでもかなり前掛かり的な仕掛けになってしまうようです。私はよく欧州のレースは残り3F目が最速になると書いてきましたが、このレースはそれが残り4F目だったとも言える内容ですね。こんな形は日本だとまずお目にかかれない内容かと思います。

2003年に東京競馬場が改装され、最後の直線の長さが更に25mほど伸びましたが、それ以降、理由は定かではありませんが、この東京競馬場でのレースがおもしろくなくなったという声をよく耳にするようになりました。4コーナーの形状が少々変わったためコース取りの多様性が少なくなったのは確かだと思いますが、直線の長さが伸びた点は、私はいい意味での変化だと思うのです。というわけでちょっとしたデータを見てみましょう。

レースの上がり3Fから勝ち馬の上がり3Fを引いた値、即ち残り3Fの時点で先頭馬と勝ち馬の差がどれくらいあるのか、それを改装前後で比較してみます。対象レースは各馬の上がり3Fがデータ化された1990年4月以降の芝5535R。

●1990/04/21~2002/06/09 全2909R 1Rあたりの平均出走頭数13.00頭
平均 0.442秒
平均4角通過順位 4.41番手
タイム差なし 595R 20.45%

●2003/04/02~2013/06/23 全2426R 1Rあたりの平均出走頭数14.48頭
平均 0.573秒
平均4角通過順位 5.31番手
タイム差なし 330R 13.60%

2003年の改装後は、残り3F地点で0.13秒より後方から差し切れるようになっているんです。4角通過順位も0.9番手より後方。これは出走頭数の関係もありますから何とも言えない部分ではありますが、最後の直線が少し伸びた影響がハッキリ出ていると思います。まあ、言葉の捉え方によって受け止め方は変わってきますが、前残りの頻度は少なくなっているんじゃないでしょうか。

折角なので東京競馬場の年代別におけるデータを書いておきましょう。

1着平均上がり差1着最大上がり差R数
19900.398 1.5 216
19910.377 1.5 230
19920.443 1.9 233
19930.377 2.0 237
19940.454 2.8 234
19950.426 2.9 231
19960.457 1.9 244
19970.517 2.2 220
19980.394 2.0 222
19990.441 2.1 218
20000.479 2.8 265
20010.459 1.5 221
20020.582 2.5 138
20030.635 4.3 200
20040.558 3.4 227
20050.540 2.4 228
20060.494 2.1 231
20070.521 3.6 237
20080.567 2.4 230
20090.590 1.9 230
20100.542 2.3 230
20110.583 4.6 233
20120.655 3.5 233
20130.654 2.0 147


ここ2年はより後方から差せる傾向にあります。また、離し逃げをしている馬が多くなっているのかもしれません。今年は2400m戦が平均0.842秒とかなり目立つ結果になっています。今回は詳しく書きませんが、この傾向は騎手意識の変化によるものだと思われます。一方、中山競馬場のそれは平均0.332秒。2003年以降に絞っても平均0.384秒。東京競馬場とは0.2秒近い差があります。レースのおもしろさのポイントは人それぞれなんですが、例えば単勝馬券を買っている馬を中心に考えると、残り3F地点で東京競馬場の方がより後方に位置していても期待値は高くなるわけです。そういった点から私は中山競馬場より東京競馬場の方がスリリングな舞台だと思うんですね。まあ、スリリングという視点からいえば、ゴール前のカメラ位置が中山競馬場の方が断然低い位置にあるわけで、外から伸びる馬は必要以上に伸びているように錯覚する傾向にあるのは確かですけれども・・・。

現新潟競馬場外回り、阪神競馬場外回りも1着馬の平均上がり差が0.5秒を超えていますが、現東京競馬場より大きくはありません。ところが、2012年よりスタートした現中京競馬場は現東京競馬場を上回る0.593秒。勿論同時期の東京競馬場より低い値ですが、旧コースより0.2秒以上大きくなっています。「また直線の長いコースを作るのか」という声がありましたが、それは先団の争いやコーナーを外から捲る事に醍醐味を感じる方々なら頷ける意見なのでしょう。

さて、本題の英インターナショナルSの話に戻りますが、先に述べたように最後の直線が5F以上あります。直線に入るや否やスパートを掛けていては脚が持つはずもありませんが、今年のレースを見ていると、大げさに言えば残り1Fで、厳密に言えば残り100m程度で脚を使い切るようなレースだったわけです。各ジョッキーは長い直線を十分意識しているはずですが、アチラのジョッキー達は行く状況になれば行っちゃうんですよね。また、馬自身も直線に向くと自発的にペースを上げるところがあると思います。序盤に「このメンバーならオルフェーヴルが負けることは・・・」なんて書きましたが、このスパートに併せ打ってしまうと、昨年の凱旋門賞の二の舞になる可能性はやはりあるんだろうと思います。本番のロンシャンの舞台は、最後の直線の長さは東京競馬場と同じようなモノですから問題ないと思いたいのですが、厄介なのがフォルスストレートでしょう。ここで馬群が一気にペースアップしてしまうと、現代の日本競馬の基本的な弱みが露呈しやすいのかと思います。オルフェーヴルとキズナはレース戦略が異なりますが、今年の英インターナショナルS的なレースとなった際の対応力は、お互いそれぞれ求められることだろうと思います。まあオルフェーヴルは昨年の経験をスミヨン騎手が上手に生かしてくるはずですが・・・。

今回はこのあたりで。

2013 凱旋門賞 展望 その3

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オルフェーヴル、キズナともども、無事にフランスに着き順調にスケジュールをこなせそうな様子で何よりです。凱旋門賞のプレップレースとして2頭が選んだフォワ賞、ニエル賞まであと10日ほどとなりました。今回のエントリーでは、そのニエル賞でキズナと対戦予定のFlintshire、そして先頃行われたバーデン大賞を快勝したNovellistを再度取り上げてみます。


Flintshireは現在Novellistと人気を分け合うような形で1番人気に押されているようです。まだキャリア4戦の3歳牡馬ですが、ここ2戦の勝ちっぷり、そして名門A.ファーブル厩舎所属ということで評価が高くなっています。まずは前走パリ大賞を振り返ってみましょう。

凱旋門賞と同じ舞台のロンシャン2400m戦でしたが、勝ちタイムは2:28.57。フランス競馬は走破タイムやラップに関してかなりファジーというか、いい加減さが目立ちますが、レース映像上の各カメラが同期しているものとすると、日本式勝ちタイムは2:27.8程度と思われます。映像表記のラップによると後半1000mは58.93、上がり600mは34.89:11.79-11.09-12.01となります。

Flintshire自身の上がりはこんな感じでしょう。

後半1000m:58.3
上がり600m:34.3 11.4 - 10.9 - 12.0 [ 5.8 - 5.6 - 5.5 - 5.4 - 5.7 - 6.3 ]

ラスト100mは相当緩めていますから、字面上の値だけで判断しては良くないケースですね。ラスト100mはおそらく5.9~6.0くらいで上がれる余力があったと思われます。なかなか力強い末脚を繰り出していたと感じましたが、Flintshireにとっては少々相手が弱かったと言えるレースだったかと思います。2、3着馬はレベルに疑問符が付く英ダービーの4、5着馬でしたから、現段階ではようやくマトモな3歳牡馬が登場したと言ったところでしょう。

次は3走目となるリス賞。このレースは仏ダービー、オークスが行われるシャンティイ競馬場で行われた2400m戦。勝ちタイムは2:28.03でした。このシャンティイ競馬場は最後の直線が600mもありますが、3~4コーナーがかなりタイトで、その区間はグッとペースが落ち直線に入ってしばらくしてから一気にスピードアップするようなイメージがあります。このレースもラスト400mのスパート争いでした。

最後の直線ではやっつけ的にハロン棒が立っていますが、フランスらしく設置場所も実にやっつけ的であります。正しいラップなんか全然計測できません。というわけでゴールまでのラスト70完歩の、10完歩毎の平均ピッチを調べてみました。パリ大賞ともどもご覧ください。単位は1完歩に要する秒数となっています。

・パリ大賞典
0.428 - 0.417 - 0.417 - 0.420 - 0.434 - 0.444 - 0.474

・リス賞
0.451 - 0.424 - 0.417 - 0.413 - 0.421 - 0.424 - 0.442

70完歩は距離にすると500m少々くらいになります。パリ大賞典は最後の直線に入って直ぐに全開スパート。早々と勝負を決めるような末脚だったと思います。一方リス賞は残り400mからのスパート勝負。手応え通りに良い反応を見せました。どこまでスピードレンジが高いのかわかりませんが、スタンダード的な欧州系差し馬という力強いイメージです。まだキャリアが浅いですから、今秋は一段とパワーアップしていそうな気がします。

Flintshireの9代血統表はこちら。

http://ux.getuploader.com/Mahmoud1933/download/18/Flintshire.pdf

Northern Dancerの4・6 x 3・6のクロスに加えてTourbillonを内包するイルドブルボンの4 x 4というところが珍しいですね。


その1で取り上げたNovellistが先日のバーデン大賞を勝ちました。返し馬の段階からかなり暴れており、超スローペースとなったことから序盤はハナに立つシーンがありましたが、まずまず順当に勝ち切りましたね。最後の直線ではここでの恒例行事的に各馬大外に持ち出しましたから、どんなラップで上がって来たかはさっぱりわかりません。したがってFlintshire同様完歩ピッチをキングジョージ、サンクルー大賞典と併せて書いておきましょう。

・バーデン大賞
0.428 - 0.408 - 0.404 - 0.412 - 0.424 - 0.436 - 0.440

・キングジョージ
0.420 - 0.428 - 0.432 - 0.432 - 0.436 - 0.444 - 0.456

・サンクルー大賞典
0.424 - 0.416 - 0.428 - 0.436 - 0.444 - 0.447 - 0.453

超スローペースなのである意味当然ではありましたが、キングジョージとは打って変ったような高ピッチでガッツリとスパートしていました。良い意味での鈍重なイメージを抱いていましたが、意外にもこのようなレースの対応力を持っていたようです。ただし、一気に全開にし過ぎた影響からか、ゴール前は脚が上がり気味。これはラジオNIKKEI杯2歳Sの時のキズナと似ているように思います。やはり短期的な瞬発力勝負だとこの馬の良さは出ないんじゃないかと思います。

同馬の3走前となる、走破タイム2:31.12で勝ったサンクルー大賞典の上がり500mの100m毎のラップはこんな感じだと思います。

6.0 - 5.7 - 6.0 - 6.2 - 6.4

4角2番手から早めに抜け出し押し切った内容でしたが、レースペースはかなりゆったりとしたモノ。道中しっかりと流れるレースの方が良いのだろうと思います。高速での差し比べとなると少々減点する必要がありそうですね。2年前のデインドリームのようなレースをされるのが日本馬にとって苦しい形になるように思います。

今回はこのあたりで。

2013 セントウルS 展望

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年内引退が決まっているロードカナロアですが、その最終章の第一弾セントウルSを考えて行きたいと思います。まずはスピード指数出馬表(斤量調整値、地方・海外減戦)をどうぞ。

$上がり3Fのラップタイム検証

指数的には3頭が抜けている状態ですが、注目点はハクサンムーンとロードカナロアの位置関係でしょう。ではハクサンムーンについてちょっと触れてみます。

ここ3走、高松宮記念3着、CBC賞2着、アイビスSD1着と内容のある走りを連続して見せており、スピード指数も92-92-93(絶対値)と安定しています。元々2012年出石特別(1000万下)で指数92をマークしており、3歳時の初夏の頃から既に現在のような力は発揮していたと思います。この指数92というのは基準値を12上回っているのですが、前半3Fで+3、後半3Fで+9という内訳になっています。ここ3走のそれは(+5:+7)、(+3:+9)、(前2F+2:+11)であり、いずれも後傾ラップ的な形。一昔前ではまずお目にかかれないような逃げ馬スプリンターという風情です。これがハクサンムーンの持ち味ということでしょう。

前走アイビスSDで刻んだラップはこちら。

11.9 - 10.4 - 10.5 - 10.6 - 10.8 [ 5.3 - 5.5 ]

ハクサンムーンの良さが見事に引き出されたのが良くわかるラップ推移でした。ラストも余力十分で非常に好内容だったと思います。少々強引な例えになりますがキズナのラストスパートのようなイメージ。で、このタイプは一気にエンジンを吹かしてしまうと良くありません。テンの2F目をどれだけマイペースで運べるか、それに尽きます。

このセントウルSのメンバーを見渡すと、今回もマイペースの逃げを打てるのが濃厚と言えるでしょう。ついついロードカナロアがいつハクサンムーンを捕まえに行くかを考えてしまいますが、勝敗を決するポイントは、ロードカナロアが香港スプリントのように前半で前を行くハクサンムーンにどれだけプレッシャーを与えられるか、という点ではないかと思います。今回斤量差が2kgありますから、もし残り3F地点でハクサンムーンとの差が0.4秒程あると、例え差し切れたとしてもゴール板間近になるような気がします。

心情的には余裕残しでロードカナロアが差し切るところを期待していますが、今回ばかりはこの2頭、結構噛み合う勝負になるんじゃないかと見ています。スタートダッシュ時に岩田騎手がどう手綱を捌くのか、注目してレースを見たいと思います。

今回はこのあたりで。

2013 セントウルS 回顧

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斤量に関する考え方はいろいろありますが、良く耳にする一つが出走馬陣営からの「背負い慣れた斤量」というフレーズ。他馬の斤量がいくつだろうが関係なく、斤量を単に絶対的な値として考えている典型例ですね。じゃあハンデ戦の意義は一体・・・、といつも思ってしまいます。何故、相対的な見方を軽んじるのだろうと・・・。

今年の高松宮記念ではロードカナロアとハクサンムーンの着差は約0.18差。斤量が2kg差ある今回は逆に約0.07秒差。斤量2kgでおよそ0.25秒影響があったという結果でした。単純計算上ではまずまず妥当な差と言える範囲内だと思います。そんなセントウルSの上位2頭の走りを振り返ってみましょう。

まずは上位3頭のラップをどうぞ。

着順馬番馬名タイム200400600前3F80010001200後3F1100Goal
1着13ハクサンムーン1:07.511.911.010.933.811.011.111.633.75.556.05
2着9ロードカナロア1:07.512.211.010.934.111.010.911.533.45.556.00
3着4ドリームバレンチノ1:08.112.411.010.934.311.011.011.833.85.706.10


Mahmoud計測RL1:07.511.911.010.933.811.011.111.633.7



公式RL1:07.512.010.910.933.811.010.911.833.7



テンの1Fを私は11.9と計測しましたが、公式ラップ通り12.0と見ても問題ありません。また残り2F目を11.1としましたが、11.0との中間くらいだと思われます。いずれにせよ、ハクサンムーンは残り2F目から残り100m地点まで、1F11.0前後のイーブンに近いペースで走り続けていました。展望エントリーでハクサンムーンの持ち味を「少々強引な例えになりますがキズナのラストスパートのようなイメージ」と書きましたが、まさにそんなイメージのレースをやってのけたと思います。

かのシルポートの好走時のポイントが、テンの2F目を10秒台に入れない事なのは有名な話ですが、このハクサンムーンもそれに近いですね。この阪神競馬場の1200mコースはテンの2F目の半分以上が3コーナーに掛かっているので速くなりようがないとも言えますし、その次の残り4~3F区間は緩やかな曲線コースでしかも下りですから、ここで逆にペースを上げやすい側面もあり、今回のようなラップを刻みやすいコースとも言えます。ただ、通常の1200m戦は前半200m辺りでレース中の最高速をマークするのが普通であり、テンの1F目が11.9~12.0と決して遅くないのにもかかわらず、このようなイーブンスピードでレースが進んだのにはそれなりの理由があったかと思います。

まあ、レースの前半部分を上手く走ったのが最大の勝因かと思いますが、それだけでは勝てるはずもありません。坂があるとはいえラスト100mはラップが示す通り相当脚が上がっています。行かせればとことん行ってしまうハクサンムーンをギリギリまでコントロールし、余力をきっちり使い切るレースぶりは見事だったと思います。鞍上の酒井学騎手は前走完勝したアイビスSDの経験を、上手く1200m戦にカスタマイズしてきましたね。ズバリ好騎乗と言えるでしょう。

さてハクサンムーンにクビ差届かなかったロードカナロア。心情的には残り3F地点で0.4秒差あっても差し切って欲しいなあと思っていましたが、0.3秒差を詰め切れずに終わりました。前半でハクサンムーンにプレッシャーを与えるべく追走劇とならなかったのが一番の敗因かと思いますが、今回はあれ以上のテンの走りはちょっと難しかったように映像からは感じられました。というわけで、ハクサンムーンとロードカナロアの走りを、ラップタイムとともに完歩ピッチで見て行きましょう。下記の表は100m毎の平均完歩ピッチ(単位:秒/1完歩)となっています。

馬名
20040060080010001200
ハクサンムーンラップ11.911.010.911.011.15.556.05
完歩0.3710.3900.4130.4150.4080.4100.4100.4040.4040.3910.4010.420
ロードカナロアラップ12.211.010.911.010.95.556.00
完歩0.3760.3930.3980.4130.4110.4100.4150.4140.4000.4030.4080.424


テンのダッシュにおいて、ハクサンムーンは2F目からマイペース状態ですが、ロードカナロアはおよそ100mほど長く高ピッチで走っていることがわかります。鞍上の手応え通り、行きっぷりが良くありませんでした。斤量の増減の影響が大きいのは加速時におけるわけですが、さほど速くないペースながらも対ハクサンムーンでは明らかに分の悪い走りをしています。

昨年のセントウルSで初めて岩田騎手とコンビを組みましたが、前半から押して行かせて、その経験が1走毎に実を結び、香港スプリントの完勝に繋がったわけですが、今年初戦の1400m戦阪急杯では、テンの行きっぷりがもう一つ。逆にその事が安田記念では吉となりましたが、この辺りはロードカナロアが本質的なスプリンターではない事を良く現しているのだと思います。

ラストスパート時の2頭の踏込のタイミングもかなり違いますね。ロードカナロアは残り2Fから全開。コーナーを回って手前を変えたのが47.7秒辺り。残り約350m地点でした。ちなみに直前の坂路追い切りでラスト1Fを11.7で駆け抜けましたが、その際の全開区間の10完歩のピッチはこれと同じ0.400秒/完歩でした。

ハクサンムーンが全開ピッチとなったのは残り300mを過ぎてから。コーナーを回って手前を変えたのが53.0秒辺り。残り約250m地点でした。最後の直線に向いてもスパートを我慢させていましたね。ただ、そのスパートは長く持たずラスト100mは何とか踏ん張った形。高回転型のスプリンターであり、どこかで脚を使ってしまうとガクンとペースが落ち込むタイプですね。まあ、このレースに関して言えば、いくらイーブンペースと言えどもギリギリ破綻しない高レベルのペースを刻んでいたと言えるわけで、同馬の過去最高のパフォーマンスを見せた会心のレースだったと思います。

以上の事から次走スプリンターズSでは、マトモならどんな結果になるかは容易く想像が付くかと思いますが、中山競馬場と言えどもレースは他馬との関係性に準じて流れるわけで、2010年ウルトラファンタジーが作った流れになる可能性はゼロではありませんね。



最後にもう一つ余興的な話を書いておきましょう。以前のエントリーと関連しますが、サクラバクシンオーならこの条件下でも取りこぼすことはないと思う方、いらっしゃると思います。ただ、約20年前と比べ、現在ではスプリント戦特化型の馬が増えているようにも思います。というわけで以前のエントリー、

ロードカナロア VS サクラバクシンオー、タイキシャトル 1/2
http://ameblo.jp/mahmoud1933/entry-11565057354.html

ここに挙げた平均走破タイムを使ってちょっと考えてみましょう。

サクラバクシンオーの現役時1992~1994年と、ロードカナロアの時代である2011~2013年での平均タイムを書いておきましょう。左から1200m、1600m、2000mの各平均タイム(カッコ内は1F平均ラップ)となります。

1992~1994年 : 1:09.613( 11.602 ) - 1:35.160( 11.895 ) - 2:01.967( 12.197 )

2011~2013年 : 1:08.480( 11.413 ) - 1:34.256( 11.782 ) - 2:00.513( 12.051 )

タイムの速い遅いは関係ありません。ここでは1600m戦を基準として1200m戦での平均ラップ比率(1200m戦1F平均ラップ / 1600m戦1F平均ラップ)で比較してみましょう。

1992~1994年 : 0.975

2011~2013年 : 0.969

要は2011~2013年の方がマイル戦に比べてより1200m戦で速くなっているのです。1992~1994年の1600m戦1F平均ラップ11.895に0.969を掛けると11.523となり、1200m戦の平均走破タイムが1:09.137となります。該当レース数が少ないとはいえ上記のエントリー記載の表中の値を使えば、現在の1000万下スプリンターは、旧900万下のそれよりも0.476秒速くなっているという推論が成り立ちます。つまり、サクラバクシンオーとロードカナロア各々の1000万下(旧900万下)との力量差を算出し、それにこの0.476秒という値で差し引きすれば、どちらが上かという一つの比較論が生まれるんじゃないでしょうか。さて、みなさんはどうお考えになりますか?

今回はこのあたりで。

2013 凱旋門賞 展望 その4

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いよいよ凱旋門賞への前哨戦が始まりますね。メンバー的な注目度は3歳戦のニエル賞ですね。日英の今年のダービー馬の対決という図式は非常に興味深いモノでしょう。ということでニエル賞、フォワ賞出走馬の9代血統表をUPしてみました。血統的にも楽しみなレースとなりそうです。

http://ux.getuploader.com/Mahmoud1933/download/19/2013+Prix+Niel.pdf

http://ux.getuploader.com/Mahmoud1933/download/20/2013+Prix+Foy.pdf


ニエル賞の出走メンバーを種牡馬別で見るとDansili3頭、Galileo、Monsun2頭、他はDr Fong、グレイトジャーニー、ディープインパクトが各1頭づつ。当然のようにDansili、Galileo、Monsun産駒が複数頭出走してきました。

Dansiliという種牡馬はRail Linkやハービンジャーが有名なところですが、個人的に非常に好きな種牡馬です。今やNorthern Dancerがクロスするのは当たり前なのですが、Dansiliはデインヒルの仔ですから、Northern Dancerの母Natalmaを伴ってMahmoud→Blenheim→BlandfordおよびGainsboroughのリードが明確な形になる他、Dansiliの母方のハイハットの世代がちょうど良い位置に存在し、Gainsboroughの仔HyperionとBlenheimの仔Donatello IIが更にスタミナをアシストするという形態になりやすい等、Dansiliの母Hasiliは優れたスタミナの血を多く持ち、欧州の12F路線にはうってつけの種牡馬だと思います。

Flintshireは母父Sadler's Wells強調型で近親度はかなり高いですが、迫力度はそれなりに十分あります。ちなみに先頃愛チャンピオンSでAl Kazeemを打ち破った4歳牝馬The Fugueは、このFlintshireと父、母父が同じですね。個人的な好みで言えばThe Fugueの方が好きな配合です。

一方、Monsun産駒と言えばNovellistになると思いますが、そのNovellistはドイツ血脈を巧みに生かした配合馬。ところが今回出走するMonsun産駒2頭はNearco、Hyperionでリードする形でいわゆるアウトブリード配合。Dansili産駒3頭とは両極端ですね。このあたりは実におもしろいところです。

今年の英ダービー馬Ruler Of The WorldはGalileo産駒ですが、Mr.Prospectorの4x3を始めとする目が眩むほどの近親度が強い配合馬ですね。Ruler Of The Worldに関してはまだ取り上げていませんが、日本ダービー回顧でのコメントの一部を転載しておきます。


「英ダービーを勝ったRuler of the Worldは残り3F目からの一気の瞬発力で他馬を圧倒した形。この区間は1F10秒半ば~後半くらいの脚を使っているようです。ピッチもまずまず速くて言わばエピファネイアのようなタイプですね。その分、ゴール前の急坂はかなり失速しており、スタミナよりもスピードでダービーを制したと言って良いでしょう」

「英ダービーと同日に行われたコロネーションカップを比較すると、St Nicholas Abbeyの優位性はかなり大きいですね。同じダービーの時点なら、キズナはRuler of the Worldにヒケを取ることはないと思います。両頭とも秋までの成長度合いがカギになるでしょう」


Ruler Of The Worldは前走愛ダービーは離された5着と大敗しました。英ダービーより走破時計が随分と速かったのが敗因との声があるそうですが、その愛ダービーはほぼ5Fに近いロングスパート戦となっており、Ruler Of The Worldは一気の脚で差を詰めた段階で脚を無くしていました。ハッキリ言えばスタミナ負けだったと思います。伝統的な欧州12F路線の馬というイメージは全く感じられない馬で、おそらくタイプが近いエピファネイアの方が強いんじゃないかと私は思うくらいです。まあ、ロンシャンの舞台ならエプソムに近い戦いができるかもしれませんが。


オルフェーヴルが出走するフォワ賞には、Going Somewhereというブラジルから挑戦する馬が出走します。昨年2400m戦を2:22.20という非常に速いタイムで勝ちました。南米では助走距離が非常に長く、日本式に換算すれば0.3~0.5秒ほど足してやる必要がありますが、昔のジャパンカップみたいな淀みのない速い流れの中を差してきた馬です。時計勝負になれば結構戦える可能性がありますね。まあ南米馬と言っても特有の血統構成であるわけではなく、違和感はまったくありません。どんな走りをしてくるか要注目です。

我が日本馬ですが、キズナの現地での追い切りは武豊騎手のコメント通り、あまりピリッとしたところがありませんでしたね。そもそも本質的な部分は変わることなどありませんから、単純な瞬発力勝負への課題はこの先もずっと続くことでしょう。とにかくロンシャンではスムーズにスピードを上げられるかがポイントになると思います。FlintshireやRuler Of The Worldにスパート時の踏み出しで差を付けられるのは織り込み済みですから、例え負けたとしても弥生賞のようにゴール前で追い込んでくる走りが出来れば十分だと思います。とにかくゴールまでリズム良く駆け抜ける感覚を武豊騎手が掴むことが出来れば本番では楽しみになると思います。

オルフェーヴルはやはり肺出血の影響がどうなのか懸念されますが、今回は余力十分で走り終えるレースとなればいいんじゃないかと思います。また、スミヨン騎手が昨年の経験を踏まえてどんなレースをしてくるのかも興味深いところでしょう。まあレースの流れ次第ではありますが、残り1Fを過ぎるまで持ったままで乗ってきて欲しいですね。そうなると本番への視界は大変明るいモノとなるでしょう。そうそう、ステラウインドにも頑張ってもらわなければ・・・。

今回はこのあたりで。

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2013 ニエル賞・ヴェルメイユ賞・フォワ賞 回顧

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「日本人初の快挙」というフレーズを聞くと、とても誇らしい気持ちになりますね。それまで届かなかった世界の頂点に立つと、ずっと抱えていたコンプレックスから解放され、堂々と胸を張れる存在になるわけです。いくら実力的には世界のトップと言われたところで、それを証明する実績はどうしても欲しいモノ。

今の日本競馬はまさにそんな感じで、日本馬の凱旋門賞制覇は文字通り世界の競馬の頂点に立つ一つの大きな証となるはずです。1999年でのエルコンドルパサーの2着から、すぐに頂点に手が届くだろうと思い続けて今年で14年目。記憶にまだ新しい昨年はすんでのところで頂点を掴み損ねてしまいましたが、今年は昨年以上に大きな期待を持って凱旋門賞へ挑む事になりそうなのはうれしい限り。

競馬の楽しさの大きな特徴の一つは、言うまでもなくレース予想にありますね。他のスポーツより遥かに緻密な事前予想が我々競馬ファンにはできるわけです。これはある意味、大一番を迎える際のワクワク感という部分も、より一層大きく感じられることに繋がります。今回、凱旋門賞の前哨戦2レースを日本馬が勝ったことで、そのワクワク感は最高潮に達してしまいましたね。凱旋門賞までの3週間は、ある意味凱旋門賞を日本馬が勝つことよりも至福なひと時かもしれません。というわけで、思わずにやけてしまうくらいのレースだったニエル賞・フォワ賞、そして我が日本馬の強力なライバルとなるべく鮮烈な走りを見せ付けられたヴェルメイユ賞を振り返ってみたいと思います。

この日のロンシャン競馬場は、晴天ながらも前日までの雨の影響が大きく残る馬場状態。直線1000mのG3戦では、昨年より2.05秒も遅いタイムでの決着でした。日本の馬場状態で言えば重というよりも不良に近い感じだったと思います。

まずはニエル賞から。当年の日英ダービー馬がロンシャンの舞台で激突するという歴史的な一戦でもありました。世代レベル云々は別としても、非常に好メンバーと言えるレースだったかと思います。

今年は3年前とは違い、レース毎の計時のズレは全くありませんでした。また、レース中にリアルタイムで表示されるラップタイムもキチッと精度のあるモノだったようです。では上位4頭のラップを見て行きましょう。左から前半1400mまでの1F平均ラップ、後半1000mのラップ、残り1000~600m区間のラップ、上がり600mのラップ、上がり600mの200m毎のラップ、となります。


13.47 - 63.37 - 26.18 - 37.19 - 13.41 - 11.76 - 12.02 ・・・ レースラップ

13.77 - 61.3 - 25.3 - 36.0 - 12.6 - 11.5 - 11.9 ・・・ 1着 キズナ 58kg

13.70 - 61.7 - 25.5 - 36.3 - 12.9 - 11.7 - 11.7 ・・・ 2着 Ruler Of The World 58kg

13.65 - 62.2 - 25.5 - 36.7 - 13.1 - 11.6 - 12.0 ・・・ 3着 Ocovango 58kg

13.69 - 62.1 - 25.4 - 36.7 - 12.9 - 11.7 - 12.2 ・・・ 4着 Flintshire 58kg


中間点まで10m上って下るというコースですから、前半が遅くなるのは当然としても、やはり予想された通りゆっくりとした流れ。残り1000mからは上位馬こそ1F12秒後半までペースが上がったものの、残り3Fからは再度ペースが緩み、大まかに言えば残り2Fのスプリント勝負。酷い例え方をするならば日本の新馬戦みたいな様相ですね。まあ、如何にもトライアル戦といったレースでした。

フォワ賞でのオルフェーヴルの勝ちっぷりは、体調さえ問題なければメンバー的に想定内の範疇でしたから、さほど驚くところはなかったのですが、このニエル賞でキズナが馬なりで前方馬群を飲み込もうとしたのはさすがにビックリしました。日本の同期馬相手でも、一瞬の瞬発力には見劣りさえする馬でしたから、正直目を疑うような光景に見えました。その辺りはもう少し細かくラップを見ると謎が解けそうです。というわけで各馬の上がり3Fの100m毎のラップを見て行きましょう。フレームレート30fpsの動画解析で100分の1秒単位のラップを出すのはあまりよろしくないのですが、100m毎のラップ推移のニュアンスを感じてもらえばと思います。話半分でどうぞ。


6.50 - 6.11 - 5.80 - 5.71 - 5.77 - 6.13 ・・・ 1着 キズナ 58kg

6.74 - 6.14 - 5.84 - 5.84 - 5.81 - 5.89 ・・・ 2着 Ruler Of The World 58kg

6.84 - 6.24 - 5.91 - 5.70 - 5.78 - 6.22 ・・・ 3着 Ocovango 58kg

6.67 - 6.18 - 5.87 - 5.80 - 5.91 - 6.25 ・・・ 4着 Flintshire 58kg


残り500mまで全くペースが上がっていないというか、むしろ各馬ペースを落としている感じです。そしてホームストレッチに入ってもすぐにはスパート合戦にならず、残り300~200m区間で最速となるスパート勝負。緩から急への落差がかなり大きいレースでした。

キズナが馬なりで先行馬群に並び掛けようとしたところは、他馬のスピードが上がる前にいち早く始動したからと考えられ、ひと夏を越して瞬発力に磨きがかかったわけではないと思います。一気に各馬を交わし去るように思わせつつも、結局ジリジリと伸びているように見えたのは、ある意味キズナらしいレースだったと言えるでしょう。詳しくは後半で書きたいと思います。

僅差の2着にはRuler Of The Worldが飛び込んできました。当年の日英ダービー馬のワンツーとは、このニエル賞の格が上がるようにさえ感じます。前走愛ダービーは前エントリーで書いたように不向きな展開となり大敗してしまいましたが、今回は持ち前の瞬発力を生かせる絶好の展開となりました。

もったいなかったのは前を行くTriple ThreatとFlintshireとの間に割って入れなかったところ。Flintshireの外へ進路を採ろうとするも、その2頭の間にスペースが再び生まれ、結局外に持ち出そうとしたロスが大きかった形となりました。マトモならキズナを差し切っていたことでしょう。さすがに脚を十分に溜められる展開になると強いですね。前述の通り前を行く2頭の間を割れなかったのは、馬場が重い影響が若干あったように思います。良馬場ならもっと鋭い脚を使えるんじゃないでしょうか。ただ、本番凱旋門賞では、ここまでスパート位置が遅くなることはさすがに考えにくく、自身に向く展開を望むのは少々難しいように思います。

1番人気に推されていたFlintshireは、結局ピリッとした脚を使えないまま4着に敗れました。今年の欧州3歳牡馬は、レース毎に適性が合った馬が上位に来るという図式であり、強者揃いという雰囲気ではありませんね。陣営が語っていたようにデキが今一つの中、キズナが勝てたのは、相手のレベルに助けられた面があると同時に、3歳牡馬の中ではキズナの能力が一歩抜けていると解釈しても良いんじゃないかと感じました。

さて次はヴェルメイユ賞を見てみましょう。ニエル賞のラップ表記に準じてTreveのラップはこんな感じでした。


13.66 - 61.21 - 25.62 - 35.59 - 11.92 - 11.61 - 12.06 ・・・ レースラップ

13.77 - 60.4 - 25.4 - 35.1 - 11.9 - 11.3 - 11.9 1着 Treve 54.5kg

Treveの上がり3Fの100m毎のラップはこんな感じでしょう。

6.14 - 5.77 - 5.61 - 5.67 - 5.71 - 6.17

キズナとは残り600mまでほとんど同じですね。しかしその後はちょうど100m分、早くスパートを開始しています。トップスピードはニエル賞の面々より明らかに速いですね。Novellistが勝った今年のキングジョージと同じように前走はスーパーレコードを叩き出したのですが、それに恥じないスピード感あふれる素晴らしい末脚を披露しました。また、ホームストレッチで抜け出す際、小刻みに左へ右へとデットーリ騎手が導いていったのですが、Treveはそのタイミングに合わせて器用に手前を変えていました。こんな部分や反応の良さを見ると、ブエナビスタと少々イメージが被ります。日本勢に強敵が現れたと言っていいでしょう。


次はフォワ賞。このレースのラップも同じように表記してみましょう。

14.53 - 59.79 - 24.41 - 35.38 - 11.98 - 11.39 - 12.01 ・・・ レースラップ

14.57 - 59.5 - 24.4 - 35.1 - 11.8 - 11.3 - 12.0 ・・・ 1着 オルフェーヴル 58kg

オルフェーヴルの上がり3Fの100m毎のラップはこんな感じでしょう。

5.90 - 5.88 - 5.74 - 5.55 - 5.76 - 6.25

真打オルフェーヴルは肺出血明けがどうか心配していましたが、全く問題なくまざまざと力の違いを見せつけてくれました。まあ、極めて順当な走りでしたね。他の2レースに比べて前半は1F平均1秒ほど遅い超スローペース。上がり3Fは35.1とTreveと同等。ペースを考えれば物足らないと感じるかもしれませんが、注視すべきポイントは残り1000mからの400m区間。1F平均12.2程度にペースが一気に上がっていました。値そのものは速いわけではないものの、日本の競馬場での良馬場と比較すると1Fにつき0.5秒くらい重い馬場とも言える状態ですから、5Fのロングスパート勝負と見えなくもないレースだったと言えるでしょう。それでいてあの余裕たっぷりの走り。さすがオルフェーヴルという内容だったと思います。

また、前半の超スロー区間での折り合い具合はなかなかのモノでしたし、全体を通しても行儀良い走り。ラスト1000mである程度の十分な負荷も掛けられましたから、トライアルレースとしてはベストに近い形だったと感じました。この要因はラビット的にリードしていった、ステラウインド鞍上の武豊騎手の手腕に因るところが大きかったでしょう。



さて、この後は各3レースの勝ち馬を比較しながら、もう少し深く考察してみましょう。というわけで、この3頭の後半150完歩の、10完歩毎の平均ピッチ(単位:秒/1完歩)を見て行きましょう。この値は前述の個別ラップより遥かに精度の高いモノになります。どの地点からピッチを速めて行ったのか、また、どれくらいそのピッチを維持したのか等、ラップタイムより各馬の動きを掌握できるかと思います。

・キズナ 58kg(150完歩=66.76秒 : 約1085m、上がり3F 36.02 : 6.50-6.11-5.80-5.71-5.77-6.13)
0.467-0.467-0.460-0.474-0.471-0.457-0.460-0.454-0.427-0.420-0.421-0.424-0.423-0.427-0.424

・Treve 54.5kg(150完歩=63.87秒 : 約1054m、上がり3F 35.07 : 6.14-5.77-5.61-5.67-5.71-6.17)
0.458-0.460-0.450-0.448-0.447-0.433-0.431-0.420-0.397-0.401-0.404-0.400-0.404-0.407-0.427

・オルフェーヴル 58kg(150完歩=63.20秒 : 約1059m、上がり3F 35.08 : 5.90-5.88-5.74-5.55-5.76)
0.447-0.444-0.446-0.428-0.434-0.427-0.427-0.420-0.408-0.397-0.397-0.397-0.397-0.410-0.441


まずはキズナから。日本ダービー時のピッチはこちら。
http://ameblo.jp/mahmoud1933/entry-11542169605.html

ピッチが上がったのは残り70完歩辺り。4コーナーを回り切った残り500mの地点。武豊騎手のコメントに、「調教で少し重さを感じていたので、早めに動くようにしましたが、思いのほか反応も良くて」とありましたが、レース映像と照らし合わせるとまさにその言葉通りにキズナは動いていましたね。まだ追われていないのでスピードこそMAXではありませんが、ピッチは明らかにこの時点で上げていました。そして日本ダービー時と同様、ゴールまでほぼ変わらぬピッチで駆け抜けて行きました。ただ、日本ダービー時とは異なる点が二つあります。その一つ目はスパート時に刻んだラップが遅いのにピッチが速くなっている点。

よく耳にするのが欧州の力の要る馬場だとピッチ走法が合うという話。これは私の解釈だと、「力の要る馬場」=「時計が掛かる馬場」とするなら、地面反力が弱くなる分、ストライドが縮まるのは当たり前、となります。ピッチ、即ち脚の回転速度はデータ的に、スパート時の余力に応じて異なってきます。元々、基本ピッチというのは馬場状態に関係なくほぼ一定だと思うのです。現に日本ダービー時と今回のニエル賞での、ゆったりとした追走時のピッチはほぼ同じです。つまり、今回のスパート時には、日本ダービー時のそれより余力が少々あったゆえに、より速いピッチとなった可能性があるのではないかと思います。そこで思い出したいのがラジオNIKKEI2歳S。超スローの影響で一気にピッチを上げてしまったがために、ラストで大きく失速してしまいました。まあ今回はそのレースほどではありませんが、日本ダービーよりは若干合わない展開だったと言える部分があったのではないかと思います。

二つ目はラスト10完歩でもピッチが変わらなかったのに、ラスト100mでラップを0.4秒ほど落とした点。日本ダービー時はホームストレッチのラスト1完歩目で手前を変えたのに対し、今回はラスト12完歩目で手前を変えました。ここの解釈はちょっと難しいですね・・・。まあ、キズナを応援する意味で好意的な要因だったと考えてみましょう。例えば手前を変えれば十分ピッチを維持する余力があったのに、手前を変えるのがヘタなのでスピードが落ちてしまったとか、Flintshireを交わし去ってソラを使ってしまったとか・・・。あるいは最後に来て馬が馬場の緩さを気にしてセーブ気味に走ったとか・・・。一つ目の話にも関係しますが、今回の馬場状態は、今一つ走りにマッチしてなかったように感じました。いずれにせよ、陣営のコメント通りに本番ではデキが向上すれば、もうワンランク上の走りを期待しても良いんじゃないかと思います。

Treveのピッチ推移からは、小脚を使うようなイメージで一気に全開スパートできるタイプに見受けられます。前述のようにブエナビスタとダブりますね。また高ピッチを維持する能力もなかなかのモノ。ラストは少し緩めていましたが、さすがにラップの字面通りに脚を使い切ってゴールインしたと思われます。まあ、このような上がり勝負だとキズナは明らかに分が悪いですね。

ですが、本番は斤量差が変わります。Treveは据え置きの54.5kgに対してキズナは2kg減の56kg。今回の上がり3Fは単純に1秒もの差がありますが、その差のいくらかは確実に縮まります。その上、レースの流れはこの両レースのようにはなりませんから、更に差が縮まって逆転ゾーンに入る可能性は十分あるでしょう。

オルフェーヴルのピッチは相変わらずのモノで惚れ惚れしますねえ。そして前段で述べたように全開スパートに入る前の、フォルスストレートに入ってから加速した様がピッチからもわかることでしょう。0.400秒を切る全開ピッチに入ったのはラスト60完歩目から。残り400mの僅かに手前の辺りでした。それまでステラウインドの真後ろで走っていましたが、外に進路を採った途端、全開ピッチとなりました。ですがラップタイムからもわかるようにまだトップスピードに上げていません。鞍上のスミヨン騎手の手の動き通りに、まだオルフェーヴルはGOサインを待っている状態。昨年の凱旋門賞では外に持ち出されたら即トップスピードに乗ってしまいましたが、今回は違いましたね。さすがスミヨン騎手、しっかり修正してきましたし、オルフェーヴル自身も「ワシはもう準備できとるけど、まだなんやな、まだなんやな」と言わんばかりに我慢が利いていました。実に素晴らしい!

その我慢が利いていた影響からか、延べ40完歩もの間、同じピッチでオルフェーヴルは駆けて行きました。そしてもう一つ特徴的だったのはラスト10完歩でのピッチの遅さ。スミヨン騎手が早々と手綱を抑えて何度も後ろを振り返っていましたが、オルフェーヴル自身も道中楽に追走している時のように、ゆっくり抑えて走っていました。ラップタイム上はラスト100mで大きく落ち込んでいますが、Treveのそれとは明らかに内容が異なります。そのまま脚を使い切って駆け抜けたのなら、おそらくラスト1Fを内訳5.70-5.85の11.55くらいで走り切る余力があったと思います。対Treveではキズナと逆に、斤量差が1.5kg増えてしまいますが、例えスローのキレ味勝負になったとしても、キレにキレるTreveとは十分互角に戦える可能性は十分あるんじゃないでしょうか。まあしかし、スミヨン騎手の心中は、昨年もそうだったかもしれませんが、「100%勝つ!」という自信に満ち溢れているような気がします。

では最後に、今回の結果を受けての簡単な凱旋門賞を展望してみますが、まだエントリーで取り上げていない仏ダービー馬Intelloは、前述のように欧州3歳牡馬グループの1頭に過ぎないのではないかと見ています。仏ダービー勝利の要因は位置取りの差が大きく、さすがペリエ騎手というレースだったかと思います。また愛チャンピオンSを勝った4歳牝馬The Fugueは、配合的にちょっと怖いなと思っていますが、Treve以上の器とは現段階では思えません。したがって、オルフェーヴルがやられる可能性が最も高いのは、やはりNovellistではないかと考えています。

もし末脚のキレ味の要求度が高いレースとなれば、Treveは非常に怖いもののオルフェーヴルがNovellistに負ける可能性はゼロと言っていいでしょう。しかし、どんなラビット馬が出るか現段階ではわかりませんが、基本的に一昨年のデインドリームのようなレースを目指してくる可能性はかなりあると思います。それに真っ向勝負に出るとスタミナ的な不安点がちょっとあるのではないかと感じます。まあ、スミヨン騎手はきっと対応してくると思いますし、もしその2頭がヤンチャな勝負に出れば、その時はキズナがきっちり捉えてくれるでしょう。我が日本馬2頭のどちらかがカバー出来得る範囲は、かなり広いモノだろうと思っていますし、鞍上の二人にも相当期待を寄せています。歓喜の瞬間を味わえる事を信じながら、10/6の決戦の日まで、ワクワクしっぱなしで待ち続けたいと思います。

今回はこのあたりで。

2013 凱旋門賞 展望 その5

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ここ数年の凱旋門賞の公式レース映像と、現地で撮影されたいくつかの映像とを比べていろいろ調べてみました。すると公式レース映像上に使われている各カメラの同期具合が大体掴めてきました。定点カメラは全て同期が取れていましたが、ゲートに設置されているカメラと車載カメラは、およそ4コマ分、約0.13秒のディレイ映像となっているようです。ちなみにJRAの移動カメラはディレイ幅がもっと大きいですが。

前回のエントリーで前哨戦の回顧を書いたのですが、その際は日本式の計時タイミング調整をせずにそのままのタイムで前半のラップを表記しました。その3戦は全て1秒マイナスすれば日本式の走破タイム換算値となります。

今回のエントリーでは、過去5年の凱旋門賞を振り返りながら、オルフェーヴルに期待する走りはどんな形になるのか、ちょっと考えてみたいと思います。というわけで過去5年の凱旋門賞勝ち馬のラップと完歩ピッチを表にしてみました。ラップタイムは100分の1秒単位になっていますが、前回と同様にラップ推移のニュアンスを感じ取ってもらえばOKです。

勝ち馬勝ちタイム前1400m後1000m上がり3F残1000~600m残600m残500m残400m残300m残200m残100m前1400m/後1000m残1000~600m/上がり3F残600~200m/残100m
2012Solemia2:37.3891.9965.3939.0026.396.816.606.316.346.376.571.0051.0150.987

0.4670.4720.4570.4490.4480.4410.4290.4340.4390.439
2011Danedream2:23.7986.6557.1434.9522.195.845.745.675.745.806.161.0830.9520.935

0.4360.4340.4380.4360.4330.4310.4210.4220.4280.442
2010Workforce2:34.3090.4563.8538.6925.166.646.316.306.366.426.661.0120.9750.962

0.4690.4730.4670.4770.4620.4440.4410.4490.4520.453
2009Sea the Stars2:25.6088.0257.5834.3923.195.875.615.455.595.716.161.0921.0110.917

0.4880.4710.4700.4680.4620.4510.4380.4450.4620.472
2008Zarkava2:27.6089.7557.8534.2623.596.085.705.545.445.675.831.1081.0330.975

0.4510.4610.4390.4260.4360.4220.4110.4010.4210.423


表の右3列についてですが、一つ目は前半1400mにおける1Fの平均ラップを、後半1000mにおける1Fの平均ラップで割った値です。1を境に値が小さければ前傾ラップ、大きければ後傾ラップとなりますが、このロンシャン2400m戦は中間点を頂上として10mの高低差がありますから、後傾ラップになるのが当然です。二つ目は後半1000m区間での前半400mにおける1Fの平均ラップを、後半600mにおける1Fの平均ラップで割った値です。通常の競馬場では1以上の値になるのですが、この後半1000mから下り坂の影響で一気にスピードアップし、上がり3Fより速いペースとなるケースがあります。三つ目は上がり3F区間での前半500mにおける100mの平均ラップを、ラスト100mのラップで割った値です。ここは必ず1以下の値になりますが、ゴール間際での末脚の衰えを判断するのに役立つかと思います。

2008年Zarkavaと2009年Sea the Starsは、ともにインの後方から上がり3F34秒前半となる爆発的な末脚を繰り出して他を圧倒しました。ですが、後半1000mを詳しく見てみると、少し末脚の趣が違います。Zarkavaは進路がなかったせいもありますが、残り3Fから最後の直線の序盤にかけては脚を溜める形。残り400mを過ぎてからエンジン全開となったようです。仕掛けを遅らせた分、ラストまで脚色はしっかりとしていました。僅かな区間で一気に勝負をつけた、いかにもスミヨン騎手らしいレースでした。

一方Sea the Starsは、坂の下りからペースを上げ、残り500mを過ぎてから全開スパート。踏み出しが早かった分、ラストは失速気味となりましたがスピード・パワーあふれる素晴らしいレースだったと思います。ピーク時は1Fを25完歩で走り抜けるという、実に雄大な走りながら瞬発力も兼ね備えた優駿でした。

ナカヤマフェスタが惜しくも2着となった2010年は、後方からレースを進めた勝ち馬Workforceの位置取りでさえ、コース形態を考えると緩みのない流れと言えるレース。このWorkforceはムラのあるタイプでしたが、このレースではスタミナ力が少し上回っている分、ナカヤマフェスタをきっちり捉えたという感じでしょうか。

レコード決着となった2011年のDanedreamが刻んだ後半1000mのラップは迫力十分。坂の下りでかなりペースアップしつつも、最後の直線では力強い伸びを見せていました。実に息の長い末脚を使ったような感じです。

昨年の勝ち馬Solemiaは前目に位置していましたが、実質前傾ラップと言えるほど速い流れを追走していました。昨年の回顧エントリーでも書いたように思いますが、残り400mまでペースを落として脚を溜められたのが大きなポイントでした。もう少し早く動いていれば、オルフェーヴルをファイトバックする余力はなかったと思います。この日の馬場状態に対する適性が優れ、持続力あるスタミナを持っていた同馬とはいえ、やはりペリエ騎手恐るべし、という結果だったのではないかと思います。

この5頭の勝ち馬は位置取りこそ違えども、道中は全馬最内に付けて追走していました。凱旋門賞では内を突かなければ勝機はない、とよく言われますが、最後の直線での仮柵が外されたグリーンベルトの幅員はかなり広いモノであり、まあ、どこを通っても問題はないはずでしょう。つまり、内に入れるメリットは前半1000m辺りからフォルスストレートに入るまでのコーナー部分で距離ロスをいかに防ぐか、その一点にに尽きるかと思います。

中山競馬場のように最後の直線が短い競馬場では、コーナーで加速していく必要があり、ストライドロス的な要素により外を回るデメリットが軽減される場合がありますが、このロンシャン2400m戦のコースではフォルスストレートまで一気に加速する事はあまりありませんから、外を回ることによる距離ロスが単純に響いてくるんじゃないかと思います。最内の馬より3mほど外を回れば、約180度近くコーナーを回った段階で約9m、時計にして0.6秒ほど差が付いてしまうわけで、これが現実的にはスパート時の余力の違いに現れてくるのです。

さて、オルフェーヴルはこのロンシャンの地で計3走しましたが、改めてその走りを振り返ってみましょう。上記の表に則したラップ表をご覧ください。

レース名走破タイム前1400m後1000m上がり3F残1000~600m残600m残500m残400m残300m残200m残100m前1400m/後1000m残1000~600m/上がり3F残600~200m/残100m
2013フォワ賞2:40.47101.0059.4735.0824.395.905.885.745.555.766.251.2131.0430.923

0.4450.4360.4340.4280.4260.4030.4010.3950.3980.434
2012凱旋門賞2:37.4493.3664.0838.0326.056.646.045.916.146.376.931.0411.0270.898

0.4420.4470.4580.4410.4320.3980.3980.4080.4270.433
2012フォワ賞2:33.4696.4557.0134.9122.105.605.515.645.745.966.461.2080.9500.881

0.4240.4220.4180.4130.3920.3880.3980.4050.4150.426


昨年のフォワ賞は今年と同様に超スローペースとなりましたが、今年と違うのは残り1000mから一気にペースが上がって完全なロングスパート戦となった点です。最後の直線では他馬を軽く交わしていきましたが、ラスト1Fは脚が上がっていました。こんなレースをしたのは初めての経験だったわけで、800m近くハイスピードのまま走り続けたからやむを得ないところではありますが、対欧州馬という観点からするとオルフェーヴルの弱点になり得ると感じさせるレースでした。したがって2011年にDanedreamとガチンコレースをしたら、最後の直線の中程でDanedreamを抜き去るとは思うものの、おそらくラスト100m辺りからファイトバックされてしまうのだろうと思います。

まあ、この昨年のフォワ賞を終えた時点では、良い経験をしたなと思っていたのですが、それが本番凱旋門賞では少し裏目に出た可能性も否定できません。実際のレース映像からもわかることですが、完歩ピッチを見れば一目瞭然、残り500mから一気に全開走行となったのは、前哨戦でフォルスストレートの終わりからスパートを掛けたことで、その地点から行っちゃっていいとオルフェーヴルが学習したからと言える側面があったかもしれません。

凱旋門賞のレース映像を改めて見直してみましたが、鞍上スミヨン騎手の手の動きとは裏腹に、オルフェーヴルは大外に持ち出された途端、ホントにガツンと行っているんですね。そして問題の大失速。ラップタイム上では相当バテているように見えますが、足の運びは案外そうでもない感じというか、ヘロヘロになっている様でもないように見えます。バテたのには間違いないですが、それプラス何らかの要因での大失速となったしか思えません。ゴール板直線に内ラチアタックできる余裕が何よりの証拠でしょう。

今年のフォワ賞も値的にかなりの失速ぶりに見えますが、さすがに今回はスパートするのを我慢させましたし、明らかに残り100m少々を完全に流していましたから、ラスト100m区間の失速率も0.97前後に抑える余裕はあったことでしょう。というわけで、似たようなタイプでもあるZarkava的なレースとなるのが理想かと思いますし、そうなれば1頭抜け出してからの悪癖も出ずに済むんじゃないでしょうか。見ている方はハラハラしてしまいますが、残り400mまでは進路がヘタに開かない展開の方が勝利の近道になるように思います。まあ、レースの流れがどうなるかは水物ですから、Danedreamのような末脚を使ってくる馬がいると、それがオルフェーヴルにとって最も脅威の存在となるでしょう。その可能性を秘めた馬はおそらくNovellist1頭だけではないかと予想していますが、さて・・・。

今回はこのあたりで。

2013 凱旋門賞 展望 その6

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キズナのダービー制覇は非常にドラマチックなモノでしたが、キズナにドンピシャ嵌ったようなレースではなかったと思います。レース後半もう少し早い段階で流れが動き出せば、より理想的なレースができたように感じました。ということで、キズナの本質を良く現したレースといえば毎日杯になると思います。そのレースをもう一度振り返ってみましょう。

距離200400600800100012001400160017001800
ラップタイム13.411.512.011.911.911.211.211.15.76.3
完歩ピッチ0.4200.4380.4320.4380.4420.4460.4520.4450.4470.4420.4430.4280.4280.4340.4280.4320.4420.455


残り800mから一気にペースアップしていますが、鞍上の動きと完歩ピッチを見るとわかるように、正しくは残り700m付近からスパート開始しています。おそらくこの残り700~600m区間と、最後の直線での残り400mからが最高速をマークしていたと考えられますが、残り700m~200mまでの500mに亘って、ほぼ変わりのないスピードのまま走り続けていたように思います。残り200mからの坂を考えると、600m分スピードを維持していたと見ていいかもしれません。

ダービーでの走りもそうでしたが、3F、あるいは4F区間でペースの緩急を付けずにトータルバランスで勝負するタイプの馬なのです。ラジオNIKKEI2歳Sでは、超スローからの一気のペースアップに張り合って失速してしまったように、相手に合わせたレースをするのが良くなくて、この毎日杯のように馬群がバラけて自らじわじわスピードを上げていくのが理想的なんじゃないかと思います。

で、長く脚を使えるのは確かなのですが、いわゆるステイヤー的な耐えて脚を使うというタイプでもないんですね。この辺りが、正攻法でレースをできない弱点でもあると思うのです。その毎日杯以降のレースぶりは、やはりこの馬の特性には合っていて、この本番凱旋門賞でも同様のレースをしてくるのは間違いないと思います。

スピード指数的な観点になりますが、ダービー時のパフォーマンスだと3.5kg差あってもオルフェーヴルの領域にはちょっと届かないと思います。なのでひと夏越した成長を期待すると常々書いてきましたが、前走ニエル賞は、欧州3歳牡馬の一線級相手だったということを考えれば、しっかり成長してきたなと思わせる部分は十分ありました。まあ、その欧州3歳牡馬がレベル的にもう一つかなと思うものの、レースの流れ的にはキズナにあまり合わないレースだったので、そこで勝ち切ったという点は評価に値するものだと思います。後はフォルスストレートから流れが速くなって、残り1Fを過ぎてから失速する馬が出てくる展開に期待したいところです。ラビットと思われる馬がどの程度のペースで引っ張るかわかりませんが、有力馬の脚質的には500m少々ある最後の直線の冒頭から、ガッツリとしたスパート合戦になるんじゃないかと思っていて、そこで少し置いていかれるのを承知の上でラスト50mで届くかどうか、そんな勝負を掛けて欲しいと思います。オルフェーヴルとは正反対のタイプですが、早い段階でオルフェーヴルが他馬を捻りつぶしたとしたら、日本馬ワンツーも十分期待でき、最後に差し込んできたキズナと写真判定になるような競馬になるとたまりませんね。強い星の下に産まれてきたキズナですから、運を味方に付けられるような気がします。

今回はこのあたりで。

2013 凱旋門賞 展望 最終章

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2013 凱旋門賞 展望 最終章

凱旋門賞の展望記事も今回で終わりとなります。前哨戦回顧も含めると延べ8回、思い付くまま書いてきましたが、みなさんお付き合いありがとうございました。

さて、前日にNovellistが出走取消というビッグニュースが飛び込んできました。今年のキングジョージでの大レコードは、Treveの仏オークスの大レコードと並んで、いやそれ以上にセンセーショナルなレースだったと思います。ドイツ血脈を見事に生かした重厚なスタミナを武器に日本馬の最大のライバルと思っていましたが・・・。中団から早めに押し上げて流れが速くなる導火線に火を点ける存在が1頭いなくなったことになると思います。おそらくオルフェーヴルにとっては最も厄介な存在だっただけに、これでレースをしやすくなる方向になるんじゃないかと思われます。

出走馬の9代血統表をUPしてありますのでご興味のある方はどうぞ。

http://ux.getuploader.com/Mahmoud1933/download/23/2013+Prix+de+l%27Arc+de+Triomphe.pdf

この一連のエントリーであと2頭取り上げる予定でいました。それはThe FugueとLeading Lightです。前者はDansili産駒軍団の中で最も注目すべき配合馬でしたが、馬場を嫌ってなのか出走回避となりました。というわけでLeading Lightについてちょっと触れておきます。

現在5連勝中で、ここ2走は16F戦と英セントレジャーを勝っていますから、いかにもステイヤー然とした雰囲気が感じられる馬ですね。レースぶりはズバリ先行スタイルと言えるのですが、非常に味のあるレースを行っています。近3走はYouTubeでレースを見ることができますが、ここ2戦では最後の直線で他馬に交わされてからファイトバックして勝利をおさめています。逃げた3走前も一旦並ばれていましたね。強力な二枚腰の持ち主で、私的には大変好きな馬です。ちなみに2走前の英アスコットG3戦のラップはこちら。

http://www.turftrax.co.uk/pdf/tracking_21-06-13/ASC210613R5_2M.pdf

レース映像からは、このラップ計測システムの値もちょっと合っていないと見受けられます。このアスコットでのレースでは、ラスト2Fほとんどスピードが落ちていません。後半3F近く、ほぼ同じようなピッチのまま、耐えて踏ん張り続けて走っていました。前走セントレジャーでは、追い出されて良い反応を見せつつも瞬発力では他馬に劣りますが、ゴールに近付くにつれ周りの馬が失速していく中、Leading Lightは低い失速率を武器に再度先頭に立つというレースをしていました。かといって、ズブさという雰囲気も感じないんですね。まさにど根性の塊というべき馬で、タフさという面ならば昨年の勝ち馬Solemia以上と言える存在ではないかと思います。良馬場でのロンシャンの戦いならばちょっと苦しいかと思われますが、当日馬場の重さが残るのはほぼ確定的でしょうから、欧州3歳牡馬軍団の中では筆頭格ではないかと感じます。

今年の凱旋門賞は日本馬2頭にとても大きな期待がかけられる一戦ですから、心情的予想をしないと野暮な話になると思います。というわけで最終結論を書いてみましょう。

◎キズナ
前哨戦を見る限り少し不安点があるのは確かですが、ダービー時からキッチリ成長していることを信じたいと思います。そして鞍上武豊騎手への期待。ニエル賞後のコメントを聞いていると、あくまでも表面的には実にクールに、その内面はかなりの自信と「やってやるぞ!」という熱き心を感じました。全てが上手く運んで行き、そのマージンを結集して最後の1完歩で先行馬を交わすという神がかり的なレースをしてくれることを期待します。

○オルフェーヴル
昨年の凱旋門賞で見せた鮮烈な末脚。スーパーホースだというのは世界中で認識されていると思います。確かに凱旋門賞馬という勲章が得られるのに越したことはないのですが、私的にはもはや記録よりも記憶に燦然と残る名馬だと思いますから、オルフェーヴルのファンの方々には申し訳ないのですが、今回も鮮烈な走りをしながら何故か負けてしまう、という姿の方が絵になると思います。まあ、マトモなら取りこぼすことはない大本命馬という認識でOKでしょう。

▲Leading Light
時計の掛かる馬場状態になると怖いと思っていた1頭です。スパート時にはオルフェーヴルが簡単に交わせる相手だと思いますが、その一方であっさりケリをつけられる馬でもなさそうです。今回は斤量の関係上J.オブライエンが乗れないのは少しマイナスかもしれませんが、追っている間はバテないのが脅威ですし、レースをコントロールできる存在でもあるのは怖いところでしょう。

△Treve
今回でまだ5戦目となる同馬。この秋2戦目となりますから、大きな上積みがあっても不思議じゃないですね。そうなると大いなる強敵になるのは当然といったところでしょう。ただ、前走並みのパフォーマンスとなるのなら、5kg差あってもオルフェーヴルが捻じ伏せてくれるだろうと思います。


Leading Lightは父がMontjeu、母父はGone Westです。それと同じ父、母父だったのが2005年英ダービー馬Motivatorでした。そして、MotivatorはTreveの父でもあります。Leading LightとTreveは、そのMontjeuの血を引いているのを凄く感じさせる血統馬でもあります。14年前のエルコンドルパサーの仇を是非とってもらいましょう!

今回はこのあたりで。

2013 凱旋門賞 回顧

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私たち競馬ファンというか馬券ファンは、最終コーナーの時点で予想をしたら的中確率が格段に上がるほどの経験を積んでいますから、フォルスストレートの終わりから最終コーナーにかけて馬場の外目をTreve、そしてキズナとオルフェーヴルが上がっていくのを見て、「この3頭の勝負だ!」と感じた方が多かったのではないでしょうか。そして「あとはTreveを捕まえるだけだ」とも思ったことでしょう。

ただ、その最終コーナーでの予想も外れるケースがあります。その内の一つは”手応え詐欺”に騙されるケース。Treveを捕まえるだけと言っても、そのTreveが”手応え詐欺”である必要性を同時に感じたところもあったのではないでしょうか。

既に追われ始めているオルフェーヴルとキズナを尻目に、残り400mからTreveは満を持してスパート開始。その”手応え詐欺”であって欲しいという希望は儚く消え、猛ピッチでTreveはひたすら伸びて行きました・・・。

というわけで圧巻のレースを見せたTreveと、我が日本馬2頭のレースぶりを振り返ってみたいと思います。まずはこの3頭の前哨戦の走りを再度見てみましょう。2013 凱旋門賞 展望 その5 で書いたラップ表に準じた内容をご覧ください。

勝ち馬日本式勝ちタイム前1400m後1000m上がり3F残1000~600m残600m残500m残400m残300m残200m残100m前1400m/後1000m残1000~600m/上がり3F残600~200m/残100m
Treve2:35.8295.3960.4335.0725.366.145.775.615.675.716.171.1281.0850.937
Ave.13.63Ave.12.09Ave.11.690.4600.4480.4440.4280.4210.4010.4000.4010.4030.419
オルフェーヴル2:40.47101.0059.4735.0824.395.905.885.745.555.766.251.2131.0430.923
Ave.13.78Ave.11.89Ave.11.690.4450.4360.4340.4280.4260.4030.4010.3950.3980.434
キズナ2:36.6495.3661.2836.0225.266.506.115.805.715.776.131.1121.0520.975
Ave.13.62Ave.12.26Ave.12.010.4590.4720.4650.4620.4570.4260.4210.4210.4240.429


そして今回の凱旋門賞の内容です。

馬名日本式走破タイム前1400m後1000m上がり3F残1000~600m残600m残500m残400m残300m残200m残100m前1400m/後1000m残1000~600m/上がり3F残600~200m/残100m
レースラップ2:31.0490.5360.5134.7425.776.085.745.515.535.786.101.0691.1130.939
Ave.12.93Ave.12.10Ave.11.58










Treve2:31.0491.7559.2934.5924.706.005.675.515.535.786.101.1051.0710.934
Ave.13.11Ave.11.86Ave.11.530.4340.4380.4420.4320.4130.3940.3880.3950.4010.410
オルフェーヴル2:31.7091.7259.9835.1024.886.125.675.615.645.836.231.0921.0630.927
Ave.13.10Ave.12.00Ave.11.700.4440.4460.4570.4230.4050.3960.3910.3980.4070.420
キズナ2:32.0891.9960.0935.5024.596.015.735.715.775.916.371.0931.0390.915
Ave.13.14Ave.12.02Ave.11.830.4520.4590.4650.4450.4230.4090.4110.4280.4390.448


レースラップの上がり1000m、600m、400m、200mはレース映像で表示されたラップを使っていますが、その他の値は独自に弾き出した物です。100分の1秒単位にしていますが、100m毎のラップ推移のニュアンスを感じてもらえばと思います。

表の右3列についてですが、一つ目は前半1400mにおける1Fの平均ラップを、後半1000mにおける1Fの平均ラップで割った値です。1を境に値が小さければ前傾ラップ、大きければ後傾ラップとなりますが、このロンシャン2400m戦は中間点を頂上として10mの高低差がありますから、後傾ラップになるのが当然です。二つ目は後半1000m区間での前半400mにおける1Fの平均ラップを、後半600mにおける1Fの平均ラップで割った値です。通常の競馬場では1以上の値になるのですが、この後半1000mから下り坂の影響で一気にスピードアップし、上がり3Fより速いペースとなるケースがあります。三つ目は上がり3F区間での前半500mにおける100mの平均ラップを、ラスト100mのラップで割った値です。ここは必ず1以下の値になりますが、ゴール間際での末脚の衰えを判断するのに役立つかと思います。

レース序盤では、キズナはほぼ想定通りの位置取り。そしてオルフェーヴルは入らなかったのか入れなかったのかわかりませんが、内ではなく外目を追走。十中八九最内に入れてレースを進めると思っていたので、非常にヤキモキしながらレース前半を見ていました。Treveはその2頭の間の最外目を追走。

前半の上り坂が終わりコーナー区間に入っても、坂の下りに見合った感じのペースアップはなく、オルフェーヴルは少しペースが合わない雰囲気。そして残り1000m手前でTreveがしびれを切らしたようにオルフェーヴルの外へ馬体を併せて行きました。ちなみにそのタイミングではAl Kazeemが前方のオルフェーヴルに追突するような形で躓いていました。

ロンシャン2400m戦は中間点にハロン棒が立っており、以前はここでラップを採っていましたが、何分にも内ラチから相当離れているので現在は前後半を1400m-1000mというスタイルで考えています。今回のレースでの計時タイミングは概ね1秒マイナスすれば日本式走破タイムに換算できると判断しましたので、前後半の1F平均ラップは12.93-12.10という配分。これはウルトラスローと呼ばれた2010年日本ダービーに少し似ていますが、このロンシャンでの残り1000m地点からもまだ下っているコース形態ですから、その2010年日本ダービーほどのスローとまではいかないレベルでしょうか。過去の凱旋門賞との比較なら、Zarkavaが勝った2008年における2番手集団のペースにかなり近いと言えそうです。遅い方に分類されるほどのスローでの戦いとなりました。ただ、オルフェーヴルを0.7秒近く引き離したTreveのゴールインに合わせた話ですから、各馬それぞれのスロー度合いは異なるモノだったかもしれません。

先ほどペースバランスが2008年の2番手集団に近いと書きましたが、大きく異なる点は残り1000mから残り600mまでがかなり遅い点。それまで1F平均12.93で流れたのに、この下りとフォルスストレートを含む区間でも1F平均12.89と一向にペースが上がりませんでした。更に厳密に言えば、フォルスストレートの中間点くらいにあたる残り700m地点まで、逆にペースダウンするような展開でした。そうです、オルフェーヴルが最も折り合いを欠いていたのがこの区間だったのです。完歩ピッチの落とし方もTreve、キズナと比べるとギクシャク感があるというか、ゆっくりとペースダウンする動きとは見えない状態だったかと思います。そしてTreveは、前に馬がいない状態でゆったり走る事ができ、キズナもそれに続く形。オルフェーヴルにとってはかなり不運な事象だったかと思います。

凱旋門賞での残り1000mのレースパターンは概ねこんな感じです。

・コーナー区間での下りを利して徐々にペースが上がる。
・その勢いのままフォルスストレートに突入。
・フォルスストレートの後半から最終コーナーまでの100~150m区間ではペースが落ち着く場合がある。

ペースの上がり幅は毎年様々ですが、概ね京都外回りの下りのようなイメージだと思います。先日の京都大賞典のように一気にペースアップするケースもありますね。少なくとも坂を下ることによって自然にペースアップする範疇を外れることはあまりありません。で、最終コーナーの手前で一息つくような形になり、後半800~900mにわたる2段階的ロングスパート戦になるのが基本的スタイルかと思われます。

よく「フォルスストレートで動いてはいけない」と言われますが、そもそも論として、このフォルスストレートは馬群全体のペースが上がっていることが多いんですね。その状況下で「動いた」と見えてしまう馬は、最後まで脚が持たない形となるのは当然なのでしょう。

それが今年のレースでは、いわばブレーキを踏みながら坂を下って行き、コースが平坦になれば余計ペースが落ちる、といった感じでした。先行勢が積極性に欠いており、特異例と言える流れだったと思われます。Novellistの出走取消の影響だったかもしれませんし、何よりもファイトバッカーであるLeading Lightが、前半行き脚が全く付かなかったためか、後半でも前に出てきませんでしたね。これは予想外の出来事でした。偶発的なオルフェーヴル殺しの展開となったのは言い過ぎでしょうか・・・。そして動いてはいけない禁断のフォルスストレートで、Treveが動いていったのは状況を的確にジャッジした当たり前の行動だったとも言えるでしょう。

勝者Treve。何もケチを付けることのない圧勝劇でした。おそらく最も多くの距離を走ったのがこの馬でしょう。ただ、残り1000m手前でペースが緩んだ際、外に持ち出したのはストライドロスという観点から言えば好判断だったかと思います。距離ロスを覚悟の上でストレスなく走らせたのは勝因の一つだったかもしれません。とはいえ、それを以ってしても、あのホームストレッチで追われてからの瞬発力は強烈でした。

このTreveは420kg台の馬体、一方オルフェーヴルは450kg台です。表中の完歩ピッチは馬格の小さい馬だと比較的速くなります。またスパート時のMAX値は、それまでの余力度合いによって同じ馬でも異なってきます。前哨戦でのTreveはほぼ0.4ちょうど。オルフェーヴルの方がピッチは若干速いです。そしてオルフェーヴルは昨年の凱旋門賞での厳しい流れの中、やはり0.4をきっちり切ってきたスパート力を見せていましが、Treveの前々走仏オークスでは、一度も0.4を切ることなくスパートしていました。例え5kgの斤量差があろうとも、瞬発力勝負でオルフェーヴルはTreveに対し、少なくとも五分には持ち込めるだろうと考えていた根拠はここにありました。ところがTreveはオルフェーヴルを凌駕するほどの猛ピッチでスパートしていったのです・・・。

先頃、このTreveと同等の馬体重であるハナズゴール号のエントリーを起こしまして、Excelをダウンロードされた方は気付いたかと思いますが、ハナズゴールが1F10秒台の猛スパートを掛けた時のピッチとほぼ同等だったんですね。オルフェーヴルがやすやすと離されるのがどうにも腑に落ちなかったのですが、こうやってTreveのピッチを測ると、前2走では気付かされなかった更なる爆発力を秘めていたんだなと、納得した次第です。ホンマにキレッキレですやん。


さて、オルフェーヴルのこの結果はいろんな見方があると思います。前述の掛かった地点からホームストレッチに入るまで、Treve、そして入れ替わるようにキズナが壁のような形でオルフェーヴルの外側を併走していました。鞍上のスミヨン騎手は、この区間でどんな心境だったのでしょうか。

私の見方としては、昨年のように外に出して一気に行ってしまう事を絶対避けなければならない、というのが大命題であったかと思いますので、フォルスストレートを通る間は単独で外に持ち出す事をやるつもりがなかったのだろうと考えました。もし外に出すとしたら、それはTreveの真後ろに付けるのが絶対条件。でもその位置にはキズナがいましたとさ・・・。でも、結局キズナと並んだ形でTreveの後ろに付けましたから、このあたりはロスなくスミヨン騎手は捌いていたと思います。

ラスト1Fないし100mにおけるバテ方、悪さをしでかす両方を含めた悪癖を出さないために、仕掛けを遅らせられたらと私は考えていましたが、そういった面ではスミヨン騎手が上手く対応したのではないかと思いました。ガッツを感じられない騎乗ぶりに見えた部分があったかもしれませんが、オルフェーヴルの特徴を生かすためには悪くない判断だったかと感じました。ホームストレッチに向いてTreveの真後ろ。ある意味絶好のポジションでもあったかと思います。仮に池添騎手が乗っていたとしても、このホームストレッチでは同様の位置取りだったかと想像します。というわけで、昨年と今年の上がり3Fにおける100m毎の平均完歩ピッチを比べてみましょう。左から右へゴールに向かっていく順番になります。

2013年:0.405 - 0.396 - 0.391 - 0.398 - 0.407 - 0.420
2012年:0.432 - 0.398 - 0.398 - 0.408 - 0.427 - 0.433

今年は最終コーナーの手前で既に軽く追い出しに掛かっています。したがってピッチは上がっていますね。また、残り500m弱辺りまでは追う動作を時折り緩めたりしています。これは昨年のフォワ賞でも見られた光景。この3Fトータルで見ると長い区間、ピッチを比較的落とさず走らせることに成功しています。これはスローで流れた影響もあるとは思いますが、末脚がラスト1Fで破綻した昨年より遥かに上手くスパートさせていたと言えます。追い出しのタイミングは相手に依存する部分があるのでしょうがないとはいえ、できればもう一呼吸待ちたいくらいだったかもしれません。

もし、今回の末脚の爆発力が今一つだったとすれば、前述のリズムを崩すほどのフォルスストレートでのペースダウンにより掛かってしまった部分でしょうか。そして、やはり常識的にそうなるのですが、昨年を上回る能力を発揮する、あるいは昨年と同等の力を出せるというのは無理筋だった部分もあるかと思います。どの程度かは別として、ピークを過ぎていたところがあったかもしれません。

4着となったキズナ。この状況下では良いレースをしていたと思いますし、それは画面からも良く伝わってきていました。仏ダービー馬Intelloには先着を許したものの、他の3歳牡馬に対しては前走に引き続き先着していますから、悪くない走りだったでしょう。しかし、個人的にはキズナに向かない典型的なレースになったと思いますので、そのあたりを触れて行きましょう。

過去に何回かキズナの完歩ピッチを取り上げてきました。例えばこちら。

2013 日本ダービー 回顧 その2 ~キズナ、321完歩の軌跡~
http://ameblo.jp/mahmoud1933/entry-11542169605.html

2013 凱旋門賞 展望 その6
http://ameblo.jp/mahmoud1933/entry-11628185287.html

毎日杯、そしてダービーのように、平均的なピッチでズドーンと伸びるレースがこの馬の真骨頂であるわけです。一方、スローからの一気の瞬発力勝負になると、ラジオNIKKEI2歳Sのようにラストで失速してしまうわけです。今回の凱旋門賞での走りは、明らかにラジオNIKKEI2歳S型となってしまったのです。

影響を受けた内容は違うものの、オルフェーヴルが掛かってしまった要因と同じ、レース後半のペースがキズナにとって非常にアンラッキーなモノとなってしまいました。変な表現になりますが、余力があり過ぎる追走ペースになって一気にエンジンを吹かせる状態は良くないとも言えます。今回の前半のペースならば、坂の下りから一気に速くなるくらいで良かったかもしれませんね。キズナが好走する条件としては、後半ペースを上げるためのペースメーカーが必要だったと思います。

キズナは確固たる自分のゾーンというモノがありますが、それは他馬と競るようなガチンコ勝負への対応力があまりないように思うんです。競馬の本質には少しそぐわないところがありますね。例年の凱旋門賞だと、そのゾーンにマッチする可能性があったのですが、ちょっと残念なレースの流れだったようです。このようなキズナの特性上、今後のレース運びはいろいろ難しい面があるでしょう。でも、こういうタイプの馬は好きなんですよね。果てしなく伸びていくんじゃないかと思わせるような馬って。なので、やはりこのロンシャンの舞台で爆走を期待したいですね。


最後に斤量の話題について少々。Treveとオルフェーヴルの5kgの斤量差、これは大き過ぎるんじゃないの、という意見が多く出たと思います。その値の妥当性は抜きにして、牡牝、そして年齢差による負担重量の違いは競馬の本質でもあると思うので、G1競走なのに斤量差があるのはけしからん、というのはよろしくないです。ここ数年、日本では牡馬を蹴散らす名牝が目立ちましたが、長い歴史で見れば2kg差あっても牝馬劣勢と思える結果だと思うんです。凱旋門賞では牡牝の差は1.5kg。ですからTreveとオルフェーヴルの斤量差は、年齢差による3.5kg差が実質的な物と見ればいいんじゃないでしょうか。つまり、その3.5kg差が妥当なのかどうかと。

また、4歳以上牡馬の59.5kgという値そのものが重すぎるんじゃないかという意見もありますね。私はいつも書いているように、あくまでも相対的な斤量差で考えるべきと思ってますので、その値には異論は全くありません。ちなみにキングジョージでは4歳以上牡馬は60.5kgですからね。で、確かに馬格が小さい馬は斤量が増えると負担がより大きくなる傾向にあるとは思いますが、そうなると450kgの馬体で61kgを背負って2:25.8のレコードをマークしたエリモジョージは何だったのか、という話にもなるわけです。私はどちらかといえば、基本的斤量を少し重くして、その分スピードが若干でも落ちる方が故障に繋がりにくいのでは、とさえ思うことがあります。そしてそれは、騎手を減量苦から少しでも開放する方向に繋がるとも思います。

まあ、年齢差による負担重量の違いは何が妥当なのか、これは非常に難しい問題だと思います。どの馬も年齢的な成長曲線は違いますし、データ的な検証というのはかなり難儀なモノになりそうですね。ただ、日本競馬を見てきた私の個人的な見解は、この凱旋門賞の時期での3.5kg差という値はちょっと大きいと思います。スバリ、日本的に2kg差でいいんじゃないでしょうか。

今回はこのあたりで。

※2013/10/09 12:30 追記
JRAの場合、今月までは2200m戦以上だと年齢差のアローワンスは3kgでしたね。文末あたりの表現は不適切でした。それでも凱旋門賞では2kg差でいいと思います。

2013 菊花賞 回顧

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2010年のローズキングダムと同様、あるいはそれ以上に1頭だけ力が抜きん出ていた今回のエピファネイア。距離不安が囁かれていた3000m戦と言えども、2400m戦のダービー、そして前走神戸新聞杯の内容からすれば、他馬が逆転するにはエピファネイア自身の自滅待ちという今回のレースだったと思います。2010年のローズキングダムは”消極的自滅”という形で2着に敗れましたが、エピファネイアは前走で馬群に入れず折り合わせて直線早々と先頭に立つというレースぶりでしたから、もし、その自滅があるとすれば”積極的自滅”という形と予想していました。そのあたりの可能性を探るエントリーを戦前起こす予定だったものの、時間がなくスルーしてしまいましたが、余計な話をしなくて良かったと思えるほど、胸がスカッとする圧勝劇となった今回の菊花賞を振り返ってみましょう。それでは掲示板に載った5頭、および最後方からレースを進めたマジェスティハーツの計6頭の個別ラップをご覧ください。この6頭でどんなレースだったか全貌が掴めると思います。

着順馬番馬名タイム2004006008001000前5F12001400160018002000中5F22002400260028003000後5F2900Goal
1着3エピファネイア3:05.213.312.311.812.411.861.612.412.612.912.412.863.112.711.912.111.712.160.55.86.3
2着14サトノノブレス3:06.013.412.412.312.512.162.712.412.713.012.012.462.512.811.812.011.712.560.86.06.5
3着10バンデ3:06.012.912.511.712.411.761.212.412.612.912.412.763.012.812.112.212.112.661.86.16.5
4着17ラストインパクト3:06.313.512.312.012.211.761.712.412.713.012.312.863.212.811.712.211.912.861.46.26.6
5着1ケイアイチョウサン3:06.313.712.512.112.611.962.812.612.713.011.912.462.613.112.011.911.512.460.95.96.5
13着18マジェスティハーツ3:08.114.812.512.412.612.264.512.512.512.911.812.161.812.611.612.212.313.161.8



Mahmoud計測RL3:05.212.912.511.712.411.761.212.412.612.912.412.763.012.812.112.211.812.161.0



公式RL3:05.213.012.511.712.311.761.212.113.012.712.612.663.012.812.112.011.812.361.0



馬場状態は9Rから不良発表。その頃に幾つかTweetしましたが、走破タイムやラップから考えれば不良というイメージとは程遠い馬場。菊花賞の発走前には雨もあらかた止み、水を多く含んだ馬場には違いないものの、おそらく良発表であった今年の宝塚記念と同等か、あるいはそれ以上に速い馬場でした。その宝塚記念の回顧でも書きましたが、もう現行の4段階の馬場状態の表現は止めた方がいいですよね。

では、レースの前半から順を追って見て行きましょう。ネコタイショウとバンデのハナ争いがどうなるか注目されましたが、バンデがスタートダッシュを決め難なくハナに立ちました。1F目は12.9となかなか速かったですね。ところが2F目は12.5と1986年以降では2番目に遅いラップ。このバンデは積丹特別とセントライト記念のイメージだと淡々とラップを刻むタイプに見えてしまいますが、今回騎乗の松田大作騎手が手綱を取った前走兵庫特別では、スローに落としてメンバー中唯一の上がり3F33秒台でぶっちぎっていたわけで、その再現を松田大作騎手は考えていたフシがありますね。しかし、こんなペースならネコタイショウの池添騎手は黙っていないはずであり、バンデの後ろではなく外に併せる形で1周目の坂を下って行きました。したがって前半3F目は下りの影響もあって自然と1F11秒台へペースアップ。問題のエピファネイアも同じようにスピードアップしていきました。3000mという距離が持つかどうかは別として、自身に合う前半のペースはこんなモノでしょう。

バンデ鞍上の松田大作騎手は、やはり前述のような戦略を取るつもりだったのか、1周目の4コーナーにあたる前半4F目で再度ペースを落とし始めました。すると「隙あらば逃げよう」的に、ネコタイショウが外から交わし気味に1周目の最後の直線へ侵入し、前半5F目は再度11.7程度へペースアップ。ギクシャクした感のあるこの前半5Fでしたが、ペースがグッと落ちて折り合いが破綻するかもしれない状況になりかけていたエピファネイアにとっては、この再度のペースアップは少々ラッキーだと言える局面だったでしょう。

もっとも、この1周目のゴール前残り300mあたりからの前半5F目というのは、必ずと言っていいほどペースが上がる区間でもあります。一般的にズブいとされているゴールドシップも、この同じ区間を昨年の菊花賞、今年の天皇賞・春では11.4と自らかなりペースを上げているんですね。先日の京都大賞典ではこの区間は前半2F目に該当しますが、追っ付けられれば1F11.2くらいまでスピードが上がってしまいます。つまり、この地点はスパートする場所なんだということを馬が理解していると言えるでしょう。ちなみに、2011年スプリンターズSでビービーガルダンが放馬してしまったことがありましたが、その放馬中をカメラが追っていたので貴重な単独走のラップを採ることができました。ビービーガルダンは中山競馬場の4コーナーを回った途端、自分の意思でスパートを掛けていたんですね。ですから、この菊花賞のように馬場を2周するレースの場合、この1周目の最後の直線というのは騎手にとってかなり気を使う場所なんだろうと思います。2着に入ったサトノノブレスはこの前半5Fを実にスムーズに走らせていましたし、最後方のマジェスティハーツもペースの上げ下げを最小限に止めるように走らせているのがわかります。また、最終的な差を考えれば、逃げたバンデはこのあたりをスムーズに行けていたのなら2着に粘り込めたのではないかと思います。

前半5Fを過ぎてからは、さすがにペースが落ち着き3000m戦らしい流れとなりました。向こう正面で先頭と最後方の差が詰まってからも、3コーナー手前の坂では勾配に見合った形でペースが緩み、残り4Fからの下りでペースアップ。このメンバーの総合的なレベルで考えれば僅かにスロー気味と言える流れだったと思いますが、スタミナに難のある馬ではちょっと勝負にならないレースでもあったことでしょう。また、レース中のアクシデントとしては3コーナーで脚を無くしたネコタイショウにタマモベストプレイが引っ掛かった点。残り1200mでほぼ同じ位置取りだったラストインパクトが12.8で行った区間を、タマモベストプレイは13.4というラップを刻んでしまう形となりました。その後、この2頭の差は最大で0.8秒まで開きましたが、不利無くとも馬券圏内までは難しかったでしょう。


当blogでエピファネイアを最初に取り上げた時点では、菊花賞でこのような横綱相撲と言えるレースができるまでになるとは、正直全く予想できませんでした。新馬戦ではとにかく瞬発力が並み外れていて、とても3000m戦を先行抜け出すタイプには思えませんでした。今のエピファネイアの姿を見ると、つくづく競馬は奥深いモノだと感じますね。ゆくゆくG1を勝つ馬は、それなりに成長したからこそというか、そういった資質を持っているからこそなんですが、このエピファネイアに関しては陣営の影響度が凄く現れていて、いかにも人の手によって成長させた感がたっぷりありますね。長期的な視点で地道に馬を造り上げた結晶と言えるでしょう。その走りの成長ぶりについては、機会があればお話ししたいところです。

強い馬が正攻法で強いレースをするというのは、見ていて実に気持ちがイイですね。”折り合い選手権”というフレーズをいつしか目にする機会が多くなりましたが、今回のエピファネイアの姿こそ、”折り合い選手権”の真の王者だと思います。勇気こそ、王者の姿なり。


最後に前述した馬場状態について補足しておきましょう。8Rの2歳500万下1200m戦と9Rの3歳以上1000万下2000m戦では、重から不良と変更されたように、馬場の悪化度が多少進んでいたと思いますが、その後は雨が治まりつつあって、12Rの3歳以上1600万下1200mの走破時計とラップを見ると、9R、11R、12Rは馬場状態がほぼ同じくらいだったと思われます。それに基づいて菊花賞でのエピファネイアのスピード指数を考えると、ここ2年の勝ち馬オルフェーヴル、ゴールドシップにかなり近いレベルにあると言えそうです。今回の勝利を以ってエピファネイアをステイヤーだと判断されるならアレですが、私はより距離が短い2000mや2400m戦の方が向いていると考えますから、日本の現役最強クラスの古馬相手に互角にやり合える水準に達したと考えて間違いないでしょう。順調ならこの後はジャパンカップに出てくると思いますが、2kgの斤量差がモノをいう形になるかもしれませんね。非常に楽しみな一戦となりそうです。

今回はこのあたりで。

2013 天皇賞・秋 展望

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ごくごく簡単な展望エントリーとなります。では、スピード指数出馬表(斤量調整なし、地方・海外減戦)を貼っておきます。斤量が2kg軽いコディーノ、ジェンティルドンナは指数に4をプラスして見ればOKです。

$上がり3Fのラップタイム検証

4歳牝馬で宝塚記念以来の出走、そして単勝2倍台前半の1番人気に推されているジェンティルドンナは、2010年の覇者ブエナビスタと状況が似ています。ですが、スピード指数的なところでは、ジェンティルドンナはまだブエナビスタの領域には達していないとも言えます。強力6歳世代のエイシンフラッシュ、トゥザグローリーあたりが全盛期の力を発揮すると、昨年の3歳時よりしっかり成長していなければ結構苦しい戦いになるんじゃないかと思いますが、少なくともここ10年の中では出走メンバーの平均レベルは最も低い今年の一戦でもあります。

注目の馬場状態ですが、前日土曜日不良から翌日日曜日は一気に馬場が回復した例として、2011年11月19~20日、2007年10月27~28日を挙げておきます。

丸1日経つと前者はマイルでおよそ4秒、メイショウサムソンが天皇賞・秋を勝った後者はおよそ3秒速くなっています。ということで2011年の例にならえば今年の勝ちタイムは1:58.6前後、2007年並みの馬場の回復度なら2分をギリギリ切れるかどうか、くらいになるんじゃないでしょうか。軽いタイプの馬は敗因を馬場状態の影響とするケースがあるように思います。

せっかく楽しみにしていた天皇賞・秋ですが、おそらくリアルタイムでレースを見るのは不可能な状況。馬場状態の推移をTweetしたりしたかったのですが残念ながら無理そうです・・・。

今回はこのあたりで。


2013 天皇賞・秋 回顧その1

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取り急ぎ天皇賞・秋の全頭個別ラップを書いておきます。

着順馬番馬名タイム2004006008001000前5F12001400160018002000後5F1900Goal
1着7ジャスタウェイ1:57.513.411.811.411.411.559.511.711.711.611.311.758.05.755.95
2着9ジェンティルドンナ1:58.212.811.511.111.411.858.611.911.911.711.912.259.66.056.15
3着6エイシンフラッシュ1:58.513.211.711.111.311.959.211.911.911.711.712.159.35.956.15
4着13アンコイルド1:58.613.011.611.011.511.858.911.811.911.712.012.359.76.16.2
5着1コディーノ1:58.813.111.611.011.411.959.011.811.911.611.912.659.86.26.4
6着2ナカヤマナイト1:59.113.511.611.311.411.759.511.811.811.711.812.559.66.16.4
7着8ヒットザターゲット1:59.213.812.111.811.411.260.311.411.611.811.912.258.96.06.2
8着17ヴェルデグリーン1:59.313.912.211.711.511.360.611.311.511.511.912.558.7

9着12フラガラッハ1:59.514.112.311.611.511.260.711.311.611.711.912.358.8

10着11トウケイヘイロー1:59.712.611.411.011.511.958.411.911.911.712.513.361.3

11着10トーセンジョーダン1:59.813.411.611.011.311.759.011.812.011.912.312.860.8

12着4トゥザグローリー1:59.813.512.011.411.311.559.711.711.711.712.013.060.1

13着14オーシャンブルー2:00.013.711.911.811.411.560.311.411.611.812.212.759.7

14着5レインスティック2:00.314.012.211.911.411.260.711.411.511.812.112.859.6

15着3ダイワファルコン2:00.412.911.411.111.412.058.811.811.911.912.613.461.6

16着16ダノンバラード2:00.513.011.711.011.411.758.811.911.812.212.613.261.7

17着15レッドスパーダ2:02.012.911.611.111.411.758.711.911.912.113.214.263.3



Mahmoud計測RL1:57.512.611.411.011.511.958.411.911.911.711.911.759.1



公式RL1:57.512.611.311.111.511.958.411.911.911.611.512.259.1



ピンク色のセル部分は自身の最速ラップをマークした区間となります。1頭だけ明らかに違いますが、そこに至るまでのプロセスも違いますね。抜けていたのは末脚だけではなく、道中も抜きん出た走りをしていたかと思います。

今回はこのあたりで。

2013 天皇賞・秋 回顧その2

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前回のエントリーのコメントのリプライでいろいろ書いてきましたが、幾つか簡単に補足しておきましょう。改めてラップ表を書いておきます。

着順馬番馬名タイム2004006008001000前5F12001400160018002000後5F1900Goal
1着7ジャスタウェイ1:57.513.411.811.411.411.559.511.711.711.611.311.758.05.755.95
2着9ジェンティルドンナ1:58.212.811.511.111.411.858.611.911.911.711.912.259.66.056.15
3着6エイシンフラッシュ1:58.513.211.711.111.311.959.211.911.911.711.712.159.35.956.15
4着13アンコイルド1:58.613.011.611.011.511.858.911.811.911.712.012.359.76.16.2
5着1コディーノ1:58.813.111.611.011.411.959.011.811.911.611.912.659.86.26.4
6着2ナカヤマナイト1:59.113.511.611.311.411.759.511.811.811.711.812.559.66.16.4
7着8ヒットザターゲット1:59.213.812.111.811.411.260.311.411.611.811.912.258.96.06.2
8着17ヴェルデグリーン1:59.313.912.211.711.511.360.611.311.511.511.912.558.7

9着12フラガラッハ1:59.514.112.311.611.511.260.711.311.611.711.912.358.8

10着11トウケイヘイロー1:59.712.611.411.011.511.958.411.911.911.712.513.361.3

11着10トーセンジョーダン1:59.813.411.611.011.311.759.011.812.011.912.312.860.8

12着4トゥザグローリー1:59.813.512.011.411.311.559.711.711.711.712.013.060.1

13着14オーシャンブルー2:00.013.711.911.811.411.560.311.411.611.812.212.759.7

14着5レインスティック2:00.314.012.211.911.411.260.711.411.511.812.112.859.6

15着3ダイワファルコン2:00.412.911.411.111.412.058.811.811.911.912.613.461.6

16着16ダノンバラード2:00.513.011.711.011.411.758.811.911.812.212.613.261.7

17着15レッドスパーダ2:02.012.911.611.111.411.758.711.911.912.113.214.263.3



Mahmoud計測RL1:57.512.611.411.011.511.958.411.911.911.711.911.759.1



公式RL1:57.512.611.311.111.511.958.411.911.911.611.512.259.1



まずは馬場状態。極悪状態の前日土曜日から一気に回復してきたわけですが、日曜日当日の1Rから既に相当回復していたようです。おそらく1Rとメイン天皇賞・秋とでは、マイルで1秒も違わない程度だったかと思います。昔からそうですが、要は排水性能が抜群なんでしょうね。また、道悪状態で競馬が行われても馬場の損傷度が少ない面があるのでしょう。

9Rの3歳以上1000万下1400m戦の国立特別では、勝ちタイムが1:20.3となかなか速い時計が出ました。ただし、軽量52kgのネオウィズダムが2着に4馬身差を付けたモノであり、上位馬の平均走破タイムという見方をすれば、東京競馬場秋開催特有の高速馬場というタイムではありません。また、大して速くないペースながらも先団6頭の後方は大きく離れる展開となったこのレース。7番手サクラディソール以降の馬たちは「何をやっとるんや!」という酷い内容でしたが、緩いペースで追走していた馬の中でも最速上がり3Fは33.3止まり。この9Rでも馬場の高速度はさほどでもない状態だったでしょう。この1時間15分後、更に急速に馬場が回復することは常識的に考えづらいと思います。

この東京競馬場2000m戦の前半2F区間はコーナーが多いので、速いラップを刻むのは難しいコースレイアウトです。それを以っても前半3F目はかなりペースアップしています。ちなみにトウケイヘイローの前半2~4Fにおける1F毎の平均完歩ピッチは 0.427 - 0.426 - 0.435 という推移(単位:秒/1完歩)。コーナー部と直線部を同じピッチで走ってもスピードの違いは出ますが、それでもバックストレッチでは必要以上にスピードが上がった印象。この前半2F区間は2000m戦しか使われない部分なので、バックストレッチより馬場の乾き方が少なかったかもしれません。これは7着ヒットザターゲット鞍上のレース後コメントからも伺える事でしょう。

というわけで、ジャスタウェイの勝ちタイム1:57.5は、かなりレベルの高い走破タイムだと思います。2着馬を4馬身、3着馬を6馬身ちぎったなりの内容と言えるでしょう。そしてこの質の高い走りを実現した源は、鞍上の巧みなペース配分だったのは言うまでもありません。まあ、馬場状態が少々イレギュラーだったにしても、ジャスタウェイ以外の馬がバックストレッチで自身の最速ラップを刻むというのは、なかなかおもしろい流れでしたね。後方待機組でさえ上がりがかなり掛かったのは、そんな理由からだったわけです。

ジェンティルドンナは次走JCで乗り替わりとなりました。昨年のJCではホームストレッチでの攻防はさておき、勝因の半分以上は4コーナーまでの乗り方にあったと思うので、その功績を反故するような今回の鞍上交代劇はちょっと残念な気がしますが、G1を4勝し年度代表馬になった馬が今年未勝利という結果なら、陣営が乗り替わりを決断するのはやむを得ないところでもあるでしょう。個人的には今年の3戦、条件が合わないレースばかりで、どう転んでも勝利はなかったように感じましたが、「こんなハズじゃない」と陣営が思う気持ちはわからんでもないです。まあ厳しい世界というか何というか・・・。

信頼を勝ち取るために日本人騎手には奮起してもらいたいと思うものの、ちょっと度が過ぎていないかという気がしないでもないですね。どうなんでしょ・・・。

今回はこのあたりで。

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ちょっとお知らせです

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既にTwitterで告知させて頂きましたが、今秋の日曜日、11/17にラップ講座みたいなイベントを開催する運びとなりました。詳細は下記の日夏ユタカさんのTweetをご参照ください。

https://twitter.com/hinatsuyu/status/399860459689357312


https://twitter.com/hinatsuyu/status/399860821133516801

Twitterでの繋がりの延長線上と言える少人数のイベントとなります。お問い合わせは、わこうさん@wakou1、日夏ユタカさん@hinatsuyu、このお二人にお願いいたします。ラップ計測のデモはやりますが、その他はアドリブばかりの、講座とは名ばかりのモノとなりそうな気が・・・。

また、ハナズゴールのラップ表を更新しました。こちらでDLできます。

http://ux.getuploader.com/Mahmoud1933/download/27/Hana%27s+Goal+Lap+20131110.xlsx

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