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Channel: 上がり3Fのラップタイム検証
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2013 マイルチャンピオンシップ 出馬表

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斤量調整値、地方・海外減戦処理してあります。

$上がり3Fのラップタイム検証


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2013 マイルチャンピオンシップ 回顧

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先のラップの会では、当日のマイルチャンピオンシップの回顧をやろうと思っていましたが、時間がなくちょっと触れただけに終わりました。とりあえず快勝したトーセンラーのラップのみ振り返ってみたいと思います。

着順馬番馬名タイム200400600800前4F1000120014001600後4F1500Goal
1着5トーセンラー1:32.413.311.111.711.948.011.111.510.811.044.45.45.6


Mahmoud計測RL1:32.412.611.011.511.746.811.511.411.411.345.6



公式RL1:32.412.511.111.511.746.811.511.211.411.545.6



$上がり3Fのラップタイム検証

$上がり3Fのラップタイム検証

$上がり3Fのラップタイム検証

エリザベス女王杯に続き、今回もラスト1F地点は内回り2000m戦のスターティングゲートによってできた馬場上の轍を目安にできたハズですが、いつも通り0.2秒程度のズレとなりました。

トーセンラーの上がり3Fは33.3で、実際の走りの見た目ほど速くないと感じた方がいるかもしれませんが、後半4Fは44.4であり、安田記念のショウナンマイティの44.3と遜色はありません。また、残り3F目が11.5と違和感を覚えるようなラップ推移に見えますが、そもそもこの区間の京都外回り4コーナーは結構キツいコーナーでもあります。しかも残り4Fから下りを利して一気に差を詰めたものの、前方馬群につかえる形にもなっていました。この様はトーセンラーの完歩ピッチからも明らかになるでしょう。後半5F区間の100m毎の平均ピッチをご覧ください。

単位:秒/1完歩
8001000120014001600
11.911.111.510.811.0
0.437 0.424 0.421 0.419 0.431 0.422 0.408 0.403 0.408 0.421


残り3F目で脚を溜めている、あるいはブレーキを掛けつつ4コーナーを回ろうとしていたのがわかると思います。おそらく坂の下りをもう少しゆっくり下っても十分間に合ったと思いますが、今回のトーセンラーの後半のスパートはこのコースの定石通りと言える内容だったかと思います。馬の適性能力もありましたが、このような勝つための常識的な競馬を鞍上は過去に幾度となくやっていましたからね。実に絵になるレースでしたが、このコンビにとっては当たり前の競馬でもあったようです。

今回はこのあたりで。

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ゴールドシップの戦法を振り返ってみました

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今年の夏頃に、再度ゴールドシップの走りの謎を考えてみようと思い、全レースの個別ラップおよび完歩ピッチを再調査してみました。下記リンク先からExcelをダウンロードできます。スパート時で最もピッチが速くなった箇所はピンク色で表示しています。

http://ux.getuploader.com/Mahmoud1933/download/29/Gold+Ship+Lap+20131006.xlsx

共同通信杯から内田博幸騎手が手綱を取り始めましたが、スパートの様子、またスタートダッシュについては一連の流れがあるように感じます。共同通信杯=皐月賞=日本ダービー、神戸新聞杯=菊花賞、阪神大賞典=天皇賞・春、宝塚記念=京都大賞典、といったセットがあったように思います。また、悪い表現になりますが、徐々にレースぶりが乱暴になってきているとも言えるんじゃないでしょうか。

ロングスパートが武器なのは言うまでもありませんが、負けたレースは前方の勝ち馬と距離が離れ過ぎて追い付かない、あるいは追い付いた時点で余力がなかった、また、ロングスパート時にまわりの馬が余力十分で、スパートの優位性が得られなかった、といった内容だったかと思います。前走京都大賞典はまさに負けるべくレースの典型例で、他馬より重い斤量ながらもテンに無理をし、馬場差がまるで違う宝塚記念より遅いラップを前半刻み、そこから超ロングスパートに併せ打って出たところで、他馬はいくらでもペースアップできるほどの余力を残していたわけですから、当然の結果であったと思います。

高速馬場に対する弱点という面は確かにあるでしょうが、それ以上に淀みのない流れが必要でもあり、また他馬がペースを落とした時点で押し上げて、位置取りの優位性を取りに行く必要もあるかと思います。まあ、今回のジャパンカップは戦略がリセットされた状態で挑む一戦となりますから、鞍上がどのようにレースを組み立てていくのか、非常に興味深いところですね。もし、2コーナーに差し掛かる時点でペースがグッと落ちるようであれば、そこからハナを奪いに行くくらいの大胆な戦法があっても不思議じゃありません。

先のセットに組み入れなかったレースは昨年の有馬記念。映像を見てても4コーナーで一息入れているのがわかりましたが、ゴールドシップの完歩ピッチもまさにその通り。鞍上が冷静沈着に豪快な2段ロケット的スパートを決めたレースでした。今回のジャパンカップでの好走のポイントは、鞍上が冷静に状況を判断して如何に自分のペースに持ち込めるかだと思います。前日土曜日の芝レースを見ると、昨年のダービー、ジャパンカップの時より馬場の高速度が落ちており、その点はゴールドシップにとってラッキーと言えるかもしれません。「おおっ!」と唸らされるようなレースを見てみたいですね。

では最後にスピード指数出馬表(地方海外減戦、斤量調整値)を貼っておきます。

$上がり3Fのラップタイム検証

2013 ジャパンカップ 回顧

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まずは全頭個別ラップを書いておきますが、先日Tweetした物に修正を加えています。ジェンティルドンナのラスト1Fが11.6か11.7か微妙なところでしたが、11.6という値に修正することにしました。また、走破タイム、上がり3Fを0.1秒プラスしている馬が何頭かいます。

着順馬番馬名タイム20040060080010001200前6F140016001800200022002400後6F2300Goal
1着7ジェンティルドンナ2:26.113.211.812.512.812.512.775.512.812.411.511.111.211.670.65.705.90
2着9デニムアンドルビー2:26.113.612.112.912.812.512.676.512.612.411.411.010.911.369.65.505.80
3着5トーセンジョーダン2:26.113.011.612.612.912.612.775.412.812.311.511.411.211.570.75.655.85
4着6アドマイヤラクティ2:26.313.512.012.612.812.412.776.012.812.411.511.310.911.470.35.555.85
5着10ドゥーナデン2:26.313.712.212.712.612.412.676.212.712.311.511.211.011.470.15.555.85
6着11ルルーシュ2:26.313.011.812.712.812.512.875.612.812.411.511.211.111.770.75.706.00
7着1ヴィルシーナ2:26.413.111.812.512.812.612.675.412.912.411.611.411.111.671.05.705.90
8着3アンコイルド2:26.413.311.912.512.912.612.675.812.712.411.611.211.211.570.65.705.80
9着2ナカヤマナイト2:26.513.411.812.512.812.512.775.712.812.411.611.211.111.770.85.755.95
10着4エイシンフラッシュ2:26.613.011.512.612.712.612.875.212.812.411.611.311.411.971.45.756.15
11着16ヒットザターゲット2:26.613.612.012.812.612.412.676.012.612.011.411.411.311.970.65.756.15
12着12ホッコーブレーヴ2:26.713.412.112.912.812.412.576.112.712.511.411.211.111.770.65.706.00
13着14シメノン2:26.713.812.012.812.612.512.676.312.712.611.311.311.111.470.45.605.80
14着15スマートギア2:26.914.112.312.812.612.512.576.812.712.411.411.211.011.470.15.605.80
15着13ゴールドシップ2:27.514.112.213.112.712.412.476.912.312.411.211.411.411.970.65.806.10
16着8ファイヤー2:28.014.012.212.812.712.412.676.712.612.511.511.211.112.471.36.006.40
17着17ジョシュアツリー2:28.013.311.912.512.912.512.675.712.912.411.511.411.512.672.36.006.60


Mahmoud計測RL2:26.113.011.512.612.712.612.875.212.812.411.611.311.211.670.9



公式RL2:26.112.811.412.812.812.612.875.212.812.411.611.111.111.970.9



スローで流れる展開が予想された一戦。押し出される形でエイシンフラッシュがハナに立ってしまいました。前走天皇賞・秋でスイスイ追走していましたから、その流れを引き継いで行きっぷりが良かったのが災いとなりました。要はこのレース、誰もハナに立ちたくなかったのでしょうね。ですから誰もがスローな流れで競馬をしたかったわけではないと思います。M・デムーロ騎手が何とかペースを落として誰かに交わしてくれることを願ったのでしょうが、当然誰も交わそうとはしませんでした。

まあ、こんな展開になれば向こう正面でゴールドシップが動くだろうと思っていましたが、3コーナーまでで少し差を詰めただけに終わり、各馬の位置取りはほぼ変わらないまま3コーナーへ突入。そこで動いたのが武豊騎手鞍上のヒットザターゲット。それにつられる形で残り800mから各馬一気にペースアップしていきました。

2400m戦での超スローの上がり勝負といえば、エイシンフラッシュが勝った2010年日本ダービーを思い起こしますが、その時は残り600mまでペースは上がらず、実質500mほどのスパート戦でした。ところが今回はその2010年日本ダービーよりおよそ1F早い段階からのスパート戦。ペースの割には意外と上がり3Fが遅かったのはこの影響でしょう。スパートをより我慢した方が優勢になるケースでもあり、またトップスピードは劣っても末脚の持続力のあるタイプに向いた展開だったかと思います。

ジェンティルドンナはデニムアンドルビーに差される勢いでしたが、デニムアンドルビーは残り50mくらいからの数完歩で多少脚が鈍り始めたのに対し、ジェンティルドンナはゴールまでほぼピッチを落とさなかったのが凌いだ大きな要因だったかと思います。前走天皇賞・秋での厳しいペースで踏ん張った経験が生きた面もあったでしょう。鞍上ムーア騎手の手腕によるところがあったかもしれませんが、前走とは線で繋がった競馬だと感じました。このハナ差は案外大きな差なんじゃないかと思います。さすが昨年の年度代表馬という貫禄を見せてくれました。

この後はゴールドシップについて書いてみましょう。ゴールドシップの全レース個別ラップ表はこちらからどうぞ。100m毎の平均完歩ピッチ入りです。

http://ux.getuploader.com/Mahmoud1933/download/30/Gold+Ship+Lap+20131124.xlsx


今回のように最後の直線でバーチャルラインが入るグリーンチャンネルの映像は、カメラの切り替えでタイムラグが出るのですが、それでも前半800mをおよそ52秒で通過したのが確認できた瞬間、「ああ、ミスターシービーみたいな負け方をするんだな」と即座に感じました。もし先頭との差が1秒以内ならまだしも、そんな差じゃないことが見た目にもハッキリとする差でしたから、レース序盤の3分の1の時点で万事休すといったレースだったでしょう。ちなみに先に挙げた2010年日本ダービーで最後方を進んだレーヴドリアンで51.4、ゴールドシップ自身なら2走目コスモス賞の52.3に次ぐ遅さ。馬場差を考えれば実質キャリアワーストの遅い入りだったわけです。

※2013/11/29 23:27 追記
話の前後の辻褄が合わない表現をしていましたので、ちょっと手を加えておきます。加筆した箇所は赤字にしておきます。

この前半800m地点からゴールで先頭に並び掛けるためには 、ゴールドシップの前半3F目は13.1。全出走馬中、テンの2F目から1F13秒オーバーのラップを刻んだのはゴールドシップだけでした。その前半600m地点からゴールで先頭に並び掛けるためには、後半1600m1800mを1:46.7で走破しなければなりません。ちなみにこのタイムは前走京都大賞典でゴールドシップ自身がマークしたのと同タイム。また、昨年の日本ダービーでは1:46.9でした。もし向こう正面でゴールドシップが押し上げて行ったのなら、それに影響されてレースペースが上がり、結局走破タイムはもっと速くなってしまいます。すると要求される後半1600mのタイムも更に速くなってしまうのです。もうこの時点でレースの体をなしていなかったと思われます。スマートギアのやや前で1コーナーに入っていきましたが、2コーナーを回った頃には逆に2馬身後方の最後尾。これじゃどうしようもないですね。キャリア上、ここまで序盤を遅く走る事はなかったのですが・・・。

正直、何故このジャパンカップに出走してきたのか謎のファイヤーとスマートギアより離れた後方を走っていたのでは、もはやレースをあきらめていたとしか思えないくらいの出来事。序盤の映像と完歩ピッチから明らかなように、鞍上が緩く走らせていたのは間違いありません。後述しますがスパート時の反応がどうだったという以前の問題でしょう。

突然ですがジャパンカップ前日の東京10Rオリエンタル賞を見てみましょう。

http://db.netkeiba.com/race/201305050710/

先頭馬が1F12秒前後で淡々と逃げていく中、2番手追走の北村宏司騎手鞍上のミエノワンダーは、テンの1F目で先頭との差が0.2秒だったのが、1F進む毎に0.7 - 1.3 - 1.9 - 2.3 - 2.6 とどんどん差を広げられていました。先頭馬はごくイーブン的なペースながらも、残り800m地点で100%挽回不能な差となってしまいました。こんなのは追走義務違反として騎乗停止モノだと思いましたが、これが俗に言われる騎手の「体内時計」の実態だと思います。いつぞやTVで騎手の体内時計の凄さを表現するために、何秒ピッタリで時計を止められるかみたいな番組を見たことがありますが、そんなのはドラマーがやれば遥かに精度の高いモノを見せられるんですよ。で、要は騎手の「体内時計」とはそんな単純なモノではなくて、騎乗馬および相手馬の能力、馬場状態、レースの施行距離等、幾つもの事柄を複雑に擦り合せて的確なペースは何ぞやという、産み出すのが非常に難しいシロモノなんだと思います。

前述のミエノワンダーも2F目から12.5程度のラップを刻々と続けているんですね。おそらく北村宏司騎手なりにこのペースが塩梅良いと考えたんじゃないかと思います。しかし実態は逃げ馬と1Fに付き0.5秒ほど離される始末。私たち外野が「これじゃ、さすがに届かんでしょ」と思うような追走時の限界点など、実際に騎乗しているジョッキーが認識するのはさぞかし難しいのでしょう。ちなみにこのミエノワンダーを引き離して逃げた形となったソルレヴァンテの鞍上が内田博幸騎手だったのは皮肉なモノですね。


次は「反応しなかった」とされている点についてです。のんびりと2コーナーを回り終えたゴールドシップは向こう正面に入って若干スピードを上げています。少し上っている残り1200m辺りで少し気合を付けられるとスピードを落とさず3コーナーへ。向こう正面での走りは鞍上の手応え通り極めて順当です。3コーナーに入り残り900m少々辺りから少し鞍上の手が動き出しますが、ドゥーナデンの真後ろを走らせているのでまだゴールドシップはスピードを維持したまま。そして残り800mのハロン棒辺りから外に持ち出し全開の追い出し。ゴールドシップはピッチを一気に上げ、キャリアハイとなる1F間の落差およそ1.2秒ペースアップしました。

私には反応しなかったどころか、反応が悪かったとも全然見えなかったのですけどね。結局この残り800~600m区間は、全馬1秒近くペースアップしています。更にゴールドシップのコース取りは最大外。他馬との相対的な関係で「反応しなかった」と感じ取られただけなんじゃないでしょうか。また細かい話になりますが、ゴールドシップは残り800~200mの600m区間で1完歩平均0.440秒以下をマークしています。これもキャリアハイとなる最長区間での高ピッチ走法をしていたのです。過去走と比べて最低でも五分、あるいはそれ以上の反応力を見せていたわけで、「反応しなかった」というのは明らかに間違った解釈です。

しかし問題はこれだけでは終わりません。残り800~400m区間をゴールドシップは22.6で走りました。外を通ったにせよ、また瞬発力不足、スピード不足のレッテルが貼られているにせよ、馬場状態とそれまでの追走の様子からすれば、もう0.3秒くらい速く走っても不思議じゃないと私は思いました。つまり、脚の回転速度はキッチリ反応できていたものの、それ相当のスピードを得られるほどの地面反力を受けられなかった、言い換えれば芝を蹴る力が上手く出せていなかったのかなとも感じました。それが状態面のせいなのか、それまでのレース運びの影響からなのかはわかりませんが、スピードの乗りは今一つだった可能性はあると思います。ただ、その0.3秒速く走れてそれがその後のラスト400mに繋がったとしても、スマートギアとどっこいどっこいだったのは言うまでもありません。


ゴールドシップの最大の武器がロングスパートなのは間違いないところですが、このロングスパートにはカラクリがあります。その点について私の見解を書いておきます。

多くの馬はGOサインを掛けられれば、その時点で上げられるMAXピッチで走ろうとします。オルフェーヴルなんかは典型的で分かりやすいのですが、ガッツリ追われなくても一気にピッチを上げて行きます。一方ゴールドシップはガシガツと追われるとピッチを上げますが、鞍上の手が止まるとピッチを緩めていくんですね。ピッチを上げてスピードアップし、鞍上の追われる手が弱まるとスピードを維持するようにストライドを伸ばす走法に変わります。過去に勝利したロングスパートでの序盤の走りはこのスタイルでした。この例えが妥当なのかわかりませんが、幾度となく息を入れながらスパートするような感じだと思うのです。このスタイルの究極的な形が昨年の有馬記念における、ラスト300mからの強烈な末脚だったと思われます。

競走馬のスパート時の走りをクルマのギアに例えられる事が多いのですが、私の感覚では、そのギアの例えはガソリンの消費量に置き換えた形となります。つまり一気の加速時ではシフトダウンをしてアクセルをグッと踏み込み、そのまま引っ張れるだけ回転数を引き上げます。当然ガソリン=スタミナをそれ相当に消費してしまいます。多くの馬のスパートはシフトアップせずにそのままガソリンが枯れるまで走ろうとするようなイメージだと思います。一方ゴールドシップは、必要とされるスピードに上がったら即シフトアップするんですね。つまり省エネ運転となりスタミナを温存しやすい傾向にあると思うんです。そんな走りを幾つも繋ぎ合せたのがゴールドシップのロングスパートのカラクリだと見ていました。したがってハイスピードのスパート戦ともなると、他馬に対してのスタミナの優位性が保てなくなると思います。

今回内田博幸騎手が取った残り800mからの末脚勝負という形は、宝塚記念で成功した例と似ているのは確かですが、その際はスパートする時点で他馬の余力がすり減るような道中の流れ、および馬場状態の影響が大きかったわけです。しかしこのジャパンカップではスパート時の環境が180度違う形だったのですね。これでは無策だったと言われるのは無理もないかと思います。阪神大賞典までの鮮やかな勝ちっぷりは鞍上の手腕によるところが大きいと私は感じていたのですが、その後の数レースを見る限り、勝った時は何か結果論的に事が上手く運んだだけなのではないかと思うところがあります。今回鞍上が行ったレースぶりには失望以外、何も感じるところはありません。


次走予定の有馬記念ではムーア騎手に乗り替わることが決定しました。う~ん、このムーア騎手をチョイスしたのはなんかおもしろくありませんねえ。陣営に余裕などないのは十分わかりますが、ジャパンカップでこれだけ派手に負けたのですから、どうせ目先を変えるならゴールドシップに合いそうな日本人騎手を探すとか、乗りたい騎手を募集するとかw、王道的なモノを求めない方向性であった方がおもしろかったんですけどね。個人的には「蛯名ダンス」がゴールドシップに通用するのかを是非見てみたかったですねえ。まあ、「蛯名ダンス」のスタミナ負けになるような気がしますが・・・。

今回はこのあたりで。

2013 阪神ジュベナイルフィリーズ 回顧

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どうやらレッドリヴェールが勝った阪神ジュベナイルフィリーズというより、ハープスターが負けたレースといった雰囲気になっているようです。というわけで、ハープスターの走りを詳しく見て行くことにしましょう。まずは上位3頭の個別ラップをどうぞ。

着順馬番馬名タイム200400600800前4F1000120014001600後4F1500Goal
1着8レッドリヴェール1:33.912.911.311.612.147.911.911.311.111.746.05.706.00
2着10ハープスター1:33.913.211.311.712.148.312.011.210.911.545.65.655.85
3着6フォーエバーモア1:33.912.810.911.612.047.312.011.411.311.946.65.806.10


Mahmoud計測RL1:33.912.310.611.312.146.312.111.711.911.947.6



公式RL1:33.912.210.611.412.146.312.111.711.612.247.6


残り3Fから一気のスパート勝負。そのためラスト100mで脚が上がるのは仕方がないといったところ。上位3頭はなかなか力強いレースをしたと思います。

首の上げ下げのタイミングの差で5cm分負けてしまったハープスター。トレーナーからはこんなコメントが出ていました。

http://www.nikkansports.com/race/news/f-rc-tp0-20131208-1228786.html
「納得できん。勢いをつけて外に出したならいいが、中途半端な競馬だった。もったいない…」


このコメントを受けてなのか、鞍上の川田騎手の騎乗ぶりに批判の声が上がっているようです。さらにアンカツおじさんもこんなTweetをしていました。

https://twitter.com/andokatsumi/status/409595876131098625
「ハープスターはあれでも全然走っとらん。最後の直線も嫌々やで。ブエナビスタとタイプ似とって、トップスピードに乗るまで時間がかかる。結果論やけど、もっと下げて、直線はギアをシフトしながら外を回すべきやった」


通常のカメラ位置からのレース映像やパトロールビデオを見る限り、最後の直線でハープスターが取った進路は、馬群を縫うように走ったわけでもなく、全く問題ないように見えます。また、ラップを見たところで、良い走りが出来ていなかったとかわかるわけもありません。今回ハープスターが刻んだラップについて一生懸命考えても時間のムダでしょう。では、上記2名のコメントが意味するモノは何なのか、前走新潟2歳Sと比較しながら考えてみましょう。両レースの後半1000mの動き、即ち100m毎の平均完歩ピッチの推移をご覧ください。

単位:秒/1完歩
レース名8001000120014001600
新潟2歳S12.612.511.210.510.8
0.434 0.439 0.442 0.432 0.408 0.400 0.390 0.390 0.389 0.421
阪神JF12.112.011.210.911.5
0.434 0.439 0.439 0.439 0.421 0.408 0.408 0.413 0.408 0.416


ピンク色のセル箇所は、鞍上がガッツリとGOサインを送った地点です。どちらのレースもスタート後63秒ちょっと過ぎた辺り。新潟2歳Sでは残り575m近辺、阪神JFは残り565m近辺だったようです。しかし前者は直線部分、後者はコーナー部分という違いがあります。ハープスターの反応力はかなり違っていて、コーナーの走りはあまり上手ではなさそうです。

新潟2歳Sでは脚を溜めに溜めた影響も手伝ってか、残り400~100mの300m区間にわたって、相当な猛ピッチで走っていました。470kg台の馬体にしてはかなりの高回転型と言えます。ラスト100mではピッチを大きく落としていますが、これは鞍上が追うのを止めて馬が自らスピードを緩めたモノ。その区間を半分に分ければ0.410 - 0.433 というピッチ推移であり、余力タップリでゴールインしたことが伺えます。

一方今回のレースでは、新潟2歳Sでの高回転型走法が影を潜めていました。一応1F10秒台のスピードが出ていたので、前走とは少し異質な走り。また細かい差ですが残り300~200mの地点で10完歩ほどピッチが少し鈍り、その後またピッチが戻るという変わった走りをしています。ちなみにピッチが鈍り始めた直後に、川田騎手がムチを入れています。直感的に「脚が鈍ったかも?」と思ったのでしょうか。それにしても残り500~100mの400m区間を、ほぼ一定のピッチで走り続けていたのは非常におもしろいところです。ガツンと全開スパートをすれば普通はこうなりません。

また、ラスト100mも実は興味深い走りをしています。その手前の坂を上る残り200~100m区間では、半分に区切ると0.405 - 0.410 とごく常識的なピッチとなっていて、ラスト100mの前半部分では0.420となり脚がいっぱいになる形になっていたのですが、最後の6、7完歩では逆に0.412と盛り返しているんですね。前を行く2頭に割って入る形になった瞬間、ハープスターはファイトしていたのだと思います。

先日のラップセミナーで、通常のレース映像での最後の直線における内外の視覚差の話をさせて頂きました。つまりハープスターはレッドリヴェールの内にいたので、伸び脚の視覚的インパクトは少なめに感じてしまうんですね。前方2頭がバテていたのは確かですが、ラスト数完歩でのスピード差が相当大きかったのは間違いありません。

いろいろ細々とした内容になりましたが、端的に言えばハープスターは最後の直線で弾けていなかったのだと思います。それは余力が少なかったからという理由ではないのは、前段で書いたラスト数完歩でファイトした姿からもわかるかと思います。アンカツおじさんが語った「あれでも全然走っとらん。最後の直線も嫌々やで」という表現がしっくり来るなあと私は感じました。

では、何故そんな走りになったのかという話になるのですが、映像を見る限りは窮屈そうなスペースに入った雰囲気はありませんでしたね。そこで前走新潟2歳Sを改めて見て行きますと・・・。

追われ始めてから10数完歩の間は、まだ全開ピッチとなっていません。その辺りのシーンがこちら。左から2番目のピンク帽がハープスターです。
$上がり3Fのラップタイム検証


そしてピッチが全開になった瞬間がこの辺りのシーン。
$上がり3Fのラップタイム検証

一つ前の画像と違う点は、ハープスターの前方には馬が何もいない状態ですね。

将来像はさておき、まだまだレースキャリアが浅く無理もない事なのでしょうが、現段階では前方が開けた、言うなれば最大外でこそ、ハープスターはエンジン全開となるのかもしれませんね。トレーナーのコメント通りと言える部分は確かにあるでしょう。しかし、ラスト数完歩で2頭の間を突き抜けて行こうとした走りも見逃せません。ハープスターが今後どう変化していくのか、どう成長していくのか、非常に楽しみだと思います。ただ、今は少し評価され過ぎているようにも思えますが・・・。

今回はこのあたりで。

2013 有馬記念 展望

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早いもので今年最後の大一番、有馬記念まであと僅かとなりました。タイトルは展望と書いてしまいましたが、今年の出走メンバーが名を連ねた過去3年の有馬記念をちょっと振り返ってみたいと思います。今回はラップ云々ではなく、2コーナーを抜ける少し手前の残り1200mからの、100m毎の平均完歩ピッチ(単位:秒/完歩)をグラフで見ていきましょう。騎手の仕掛けどころが良くわかるかと思います。レースを先導した馬は赤線、他は1~3着馬と人気で負けた馬、今年の出走馬を対象にしてみました。まずは2010年から。



ヴィクトワールピサが1200mのロングスパートを決めた一戦。当時は派手なレースをしたなあと思っていましたが、スピードを上げてからは大きなストライドで1F11.6程度で走っていました。そして残り800m辺りでは一息入れる余裕。決して無理をしていない早めの押し上げでした。その分、最後の直線では瞬発力を発揮できたわけで、人馬一体の素晴らしいレースをしたと思います。2周目1コーナーでペースを一気に落としたトーセンジョーダンは早々と主導権を潰された格好。

また、ラスト2Fを22.3で追い込んだブエナビスタは脚を余したように見えましたが、残り900m辺りからは脚を溜める余裕がほとんどないままスパート。仕掛けが遅いというよりも、逆に早く動きすぎた側面があったとも言えそうです。どこかで脚を溜められればラストはもっとキレたようにも思います。3着のトゥザグローリーは先行位置ながらもヴィクトワールピサに惑わされることなくスムーズにレースができていると思います。それがラストの瞬発力に結び付いた感がありますね。

次は2011年。



超が三つ付くほどのスローペースでしたが、オルフェーヴルは向こう正面で先んじて勝負に出ていることがわかるかと思います。そして全開スパートのタイミングも早いですね。当時はまだ3歳でしたが、横綱らしく自力勝負で勝ち切ろうとする、鞍上の積極性が光ったレースでした。それにしてもピッチの速さは飛び抜けていますね。オルフェーヴルは今回が引退レースとなりますが、基本戦略としてはこの年と同様に脚を余さないような、自力勝負で捲ろうとする形になると思われます。最後の直線の入り口では、既にトップスピードに乗って回ってくるんじゃないでしょうか。

2着のエイシンフラッシュは最速ピッチが残り200m辺り。馬がはやる気持ちをしっかり押さえ、ギリギリまで全開スパートを遅らせるという、C.ルメール騎手らしい好騎乗。3着のトゥザグローリーは前年と位置取りが全く違うものの、ガツンと瞬発力を生かした形は同じでした。


そして昨年2012年。



ゴールドシップのデータは既にお伝えしました。例えるなら2010年にヴィクトワールピサが1200m区間で行ったスパートを、800m区間に凝縮して行ったような形。ラップタイムにも表れているように最後の直線でのスパートは爆発的な伸びでした。2着のオーシャンブルーは、C.ルメール騎手が前年の走りをトレースするかのようなレースをしてきました。気配を消すかのようにじわじわとペースアップをさせながらギリギリのところで末脚を爆発させるという、この手の走りをさせる意味においては世界ナンバーワンというジョッキーでしょう。

今回取り上げた過去3年のグラフは、実はオルフェーヴルとともに引退レースを迎える予定だったエイシンフラッシュを振り返る目的で作成していました。しかし残念なことに脚部不安のため4回目となる有馬記念に挑むことなく引退となってしまいました。昨年直前で騎乗不可能となったM.デムーロ騎手が、この引退レースでどんなレースをしてくるか、考察してみようというつもりでおりました。昨年M.デムーロ騎手が予定通りに騎乗できていたのなら、4着に甘んじることはおそらくなかったことだろうと思われますので、今回は非常に力が入る一戦だったことでしょうが・・・。

昨年のエイシンフラッシュのレースぶりですが、早めに進路を取ろうとする意気込みは積極性があって良かったとは思うものの、それはエイシンフラッシュではない馬なら成り立つ部分とも言える側面があったと思います。さしてスピードを上げていけない状況なのに馬に行く気を伝えてしまって早々とエンジン全開にさせ、その後、前が詰まり歩みを遅らせる結果になり、結局ただでさえ使える区間が短いエイシンフラッシュの末脚を、最後の直線では僅か100m少々しか使えなくした形でした。道中でずっと直後に居たオーシャンブルーと実に対照的なレースでもあり、昨今流行の「とにかく外国人騎手で!」となるのが至極当然と感じる一つの例だったかと思います。このようなテン乗りの場合、この違いが如実に分かるケースが実に多いのが現状です。


とうとう今年の有馬記念がオルフェーヴルの最後のレースとなります。それは同時にオルフェーヴルに挑戦できる最後の場でもあります。このオルフェーヴルに最も挑戦すべき馬と誰もが思ったゴールドシップには、最終的な結果はどうであれ是非ともファイトして欲しいですね。後世に語り継がれるレースになることを期待したいと思います。

今回はこのあたりで。


2013 有馬記念 回顧

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オルフェーヴルの衝撃のラストランから6日ほど経ちました。まだ余韻冷めぬといった感じですが、この2013有馬記念を振り返ってみたいと思います。全頭個別ラップと、上位入線馬および注目馬の残り1200mでの100m毎の平均完歩ピッチ表(単位:秒/完歩)をご覧ください。ちなみにオルフェーヴルと2着ウインバリアシオンとは1.3秒差、8馬身差となっていますが、この差は厳密には1.38秒前後ありました。またウインバリアシオンと3着ゴールドシップとは0.2秒差、1馬身1/2となっていますが、その差は0.25秒少々ありました。つまりオルフェーヴルとゴールドシップは1.6秒以上開いていたのが事実です。したがってゴールドシップを含め数頭は公式走破タイムより0.1秒加算して表現しています。

着順馬番馬名タイム10030050070090011001300150017001900210023002500後5F2400Goal
1着6オルフェーヴル2:32.37.7 11.7 11.9 12.0 12.4 12.8 12.4 11.7 11.6 12.1 12.2 11.6 12.2 59.7 5.90 6.30
2着4ウインバリアシオン2:33.67.5 11.4 12.0 12.1 12.3 12.8 12.5 11.8 11.8 12.1 12.4 12.1 12.8 61.2 6.20 6.60
3着14ゴールドシップ2:33.97.7 11.5 11.9 12.0 12.4 12.8 12.3 11.7 11.7 12.1 12.6 12.4 12.8 61.6 6.25 6.55
4着11ラブイズブーシェ2:34.37.6 11.8 12.2 12.1 12.3 12.8 12.4 11.6 11.8 12.0 12.7 12.3 12.7 61.5 6.25 6.45
5着7タマモベストプレイ2:34.47.3 11.7 11.9 12.2 12.3 12.6 12.4 11.6 11.8 12.2 12.7 12.5 13.2 62.4 6.40 6.80
6着3カレンミロティック2:34.47.1 11.2 11.7 12.2 12.4 12.7 12.4 11.7 11.9 12.3 12.8 12.7 13.3 63.0 6.50 6.80
7着5デスペラード2:34.47.4 11.5 11.8 12.2 12.3 12.7 12.4 11.7 11.9 12.3 12.6 13.2 12.4 62.4 6.20 6.20
8着13トゥザグローリー2:34.77.6 11.5 11.7 12.2 12.3 12.7 12.4 11.7 11.8 12.2 13.0 12.6 13.0 62.6 6.40 6.60
9着12テイエムイナズマ2:34.98.2 12.2 12.2 12.1 12.1 12.6 12.6 11.7 11.5 12.0 12.2 12.5 13.0 61.2 6.30 6.70
10着2ヴェルデグリーン2:34.97.7 11.8 11.9 11.9 12.6 12.8 12.4 11.6 11.8 12.0 12.5 12.4 13.5 62.2 6.50 7.00
11着10アドマイヤラクティ2:35.37.2 11.6 11.7 12.2 12.4 12.7 12.4 11.7 11.8 12.2 13.1 13.2 13.1 63.4 **
12着8ラブリーデイ2:35.57.1 11.6 11.8 12.0 12.4 12.6 12.4 11.7 11.9 12.3 12.9 13.0 13.8 63.9 **
13着15ナカヤマナイト2:35.77.4 11.5 11.6 11.9 12.4 12.7 12.4 11.6 11.9 12.3 13.0 13.3 13.7 64.2 **
14着16トーセンジョーダン2:35.87.5 11.6 11.7 12.1 12.3 12.7 12.4 11.6 11.8 12.2 13.0 13.3 13.6 63.9 **
15着1ダノンバラード2:37.07.1 11.4 12.0 11.9 12.3 12.7 12.4 11.8 11.9 12.3 12.8 13.5 14.9 65.4 **
16着9ルルーシュ2:42.87.0 11.2 11.6 12.1 12.6 12.6 12.5 11.8 11.9 12.5 14.8 **71.4 **


Mahmoud計測RL2:32.37.0 11.2 11.6 12.1 12.6 12.6 12.5 11.8 11.9 12.3 12.8 11.7 12.2 60.9



公式RL2:32.36.9 11.1 12.3 11.6 12.4 12.8 12.4 12.0 11.8 12.3 12.6 11.8 12.3 60.8





有馬記念当日はホームストレッチでかなりの向かい風を受ける状態となっていました。中山競馬場からほど近い気象庁船橋観測所の風速データはこちら。

http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/view/10min_a1.php?prec_no=45&block_no=1236&year=2013&month=12&day=22&view=

平均風速で約4m/s、最大瞬間風速では10m/sを越すケースもあったようです。風向きは北西から、午後には北北西からとなりました。勿論中山競馬場で同様の風が吹いていたとは限りませんが、ラップを見る限りかなり風の影響が大きかったのは間違いありません。

北北西の風なら最も影響を受ける区間は残り3~2F区間。既にスパートに入っているにもかかわらず、この区間はラップダウンしている馬が多いですね。翌23日は無風状態。気温が低いこの時期ですから馬場が乾いたとしても、そう大きな変化はないと思われます。有馬記念と翌日の馬場差は2500m戦で1.2~1.5秒くらいでしょうか。この馬場差の要因の大部分は風によるモノだと考えていいでしょう。ココは簡単に考えますと、スタートしてから1周した時点で風の影響はプラスマイナスゼロ。その後の残り3Fで1.1秒、向かい風の影響を受けたとしてみましょう。残り3F目が0.5秒、残り2~1F目はそれぞれ0.3秒遅くなったとすればいいかもしれません。まあ、例えこの値を引いても上がり3Fはオルフェーヴルが34.9見当、他馬の最速は36秒オーバーとなりますから、十分に末脚を繰り出す余力があった馬はオルフェーヴル唯1頭ですね。

バックストレッチでペースが上がっているのは追い風の影響があったと考えていいでしょう。ですから1周目の序盤も少なからず向かい風の影響があったでしょうから、前半1000m60.8というのはかなり速いと見るべきなんじゃないでしょうか。それにしても昨年に引き続き福永祐一騎手は見事なペースメーカーぶりを発揮していますね。公式ラップの前半はギクシャク感がありますが、私が計測したラップだとスムーズさを感じられると思います。ハナに立つまで一気にスピードを上げた後は徐々にペースダウンしていたはずです。そのため各馬しっかりと折り合って追走できていましたし、ペースが速くてもあまり馬群が縦長にならなかったと思われます。その前半1000m地点では先頭からブービーまで約1.7秒くらいの差でした。あっ、折り合いに関してオルフェーヴルは別でしたね。序盤でもある意味次元の違う走りをしていたようです。

まあ、このレースは各馬それぞれどうだったかはあまり意味がなくて、見た通りの内容という他ありません。例えるなら4年に1度のオリンピックで、2大会連続で大本命に推されて取るメダルの色が金か銀か、という世界の頂点に立つアスリートと、未だ国際試合経験がなく国内大会の常連組との戦い、そんな図式のレースと言えるでしょう。そんな中、やはりゴールドシップについては触れておかなければなりませんね。今回のレース分を更新したゴールドシップの個別ラップ表はこちらからダウンロードできます。

http://ux.getuploader.com/Mahmoud1933/download/31/Gold+Ship+Lap+20131222.xlsx

鞍上がR.ムーア騎手に変わりましたが、だからと言って奇策を講じることなどあり得ないわけで、戦前から極めてオーソドックスなレースをしてくるだろうと予想していた方は多かったと思います。で、まずは注目のスタートダッシュですが、やはり最初の数完歩は行き脚付かず。その後100m少々押して馬群に取り付き、後方から5番手辺りの位置取り。至って普通に追走していたと思います。そのまま流れに乗りバックストレッチでペースが上がったところでは、少し追っ付け気味に追走。その勢いのまま3コーナーでは外を通って徐々に進出。しかし残り700m辺りで前方のアドマイヤラクティが横にいたトーセンジョーダンを外に張り出し気味となり、その影響でゴールドシップが若干つかえる形。その数秒後、外からオルフェーヴルが交わしていったのですが、ここでもR.ムーア騎手はまだ全開追いとなりませんでしたね。バックストレッチでちょっと押し上げた分、まだ全開スパートは遅らせるべきとでも感じたのでしょうか。

結局残り400mのやや手前で、外から押し上げてきたウインバリアシオンに併せ打って出る形で全開追い。対オルフェーヴルとしては、この時点でもはや白旗を上げていたと見えなくもないですが、スパートを我慢させた割にはピッチがもう一つ上がらずといった印象でした。

鞍上の動きは前任者みたいに派手ではありませんでしたが、後半1000m強のロングスパート的な走りにはなっていたのだと思います。ただ、過去にロングスパートをして好走した時は、以前のエントリーでも触れたように、言わば何度も息継ぎをしながらのロングスパートでしたが、今回はズルズルとメリハリがないロングスパートとなってしまった感があります。4コーナーからのスパート力が今一つだったのは、それまでの走りの負荷が大きかったのでしょう。結論的には3歳時から全くと言っていいほど成長がなく、斤量増の分、着順を下げているように思います。まあ、この馬、他馬より限界に対するセーフティマージンを少し大きく取って走っているようにも思えなくないので、どこかで一発のチャンスをまだまだ期待したい気持ちはあります。


さて、引退レースを華々しい走りで飾ったオルフェーヴル。真の強い馬とは何かを知らしめたレースでしたね。向かい風の影響で各馬スピードを上げたスパートができない中、1頭だけ涼しい顔して4コーナーをビュンと駆け抜けていきました。それも最大外で前方に何も風除けがない状態でもありました。

オルフェーヴル同様、先頭で残り3Fから突き進んだのがカレンミロティック。しっかりとピッチを上げてスパートをかけているんですが、向かい風に負けてスピードが上がらなかったんですね。一方オルフェーヴルの進路だけは無風状態でもあるかのような、走りの歴然とした違いがありました。みなさんお判りでしょうが、これはオルフェーヴルのスピード能力が高いからではありませんね。スパート時における余力が段違いだからですね。

負荷が少ない状態であれば、大バテしたルルーシュでさえ余裕で1F11秒そこそこで走れるわけです。しかし今回のようなレースになれば、オルフェーヴルより後方に位置した4着ラブイズブーシェでさえ、ラストスパートは顎が上がって耐え忍ぶような形になっていたのです。そんな中オルフェーヴルは掛かり気味で追走していましたし、その通りの余力もタップリありました。距離適性や馬場適性とか、そんなモノは全く無意味となるほどの、競走馬としての素の強さが抜けているわけで、追走時のスピードレンジが圧倒的なんですね。

今までのレースでは、その追走時のスピードレンジの違いで勝負する機会が少なかったため、というか、そんな自力勝負に持ち込まなかったため、着差を広げる結果とはならなかったのですが、ようやく最後の最後に来て、きっちりハマるレースとなりました。個人的には、負けたとはいえ昨年の凱旋門賞が大パフォーマンスだと感じていたので今回の結果はビックリとまではいきませんでしたが、誰の目にもハッキリとわかるようなビッグパフォーマンスで締めくくったのは大いに価値がありましたね。先輩3冠馬であるナリタブライアンは何度もブッちぎっていましたし、ディープインパクトも他を圧倒するレースが多かったですが、その2頭に何らヒケを取らないこの走りを披露できたのは本当に良かった思います。これでこの3頭の3冠馬の比較論は、誰もがこの先何十年も楽しめることになりますね。お疲れ様、オルフェーヴル!


というわけで有馬記念の回顧はこれで終わりにしますが、最後に私的な恨み辛みを少々。まあ妄想話ですから読み飛ばして結構です。

展望エントリーで完歩ピッチ表を掲載したのは、エイシンフラッシュの分析とルメール騎手の手綱捌きを話したかったからですが、実はこのルメール騎手の手綱捌きで好走した馬とよく似た走りを前走で披露していた馬が居ました。ステイヤーズSを勝ったデスペラードがその馬です。

4コーナーで既に追われ始めていたデスペラードですが、その外をユニバーサルバンクに捲られてしまいました。ところがホームストレッチに向くと、ピッチを一気に上げユニバーサルバンクを差し返すだけでなく3馬身半もの差を付けてしまいました。いわゆるファイトバックとなるケースとは全く異質の、非常に内容の濃いレースをしていたんですね。

この馬は久々の芝戦で大外一気を決めたように、ストレッチランナータイプなのですが、実は結構高回転型でもあります。したがって最後の直線が短いコースでも勝負できるストレッチランナーなんですね。この秋は4戦目でしたが徐々に走りの質を上げ、ステイヤーズSでグッと弾けてきましたから、今回は最高潮となる可能性が高かったのです。したがってこの有馬記念で馬券に絡んでくる自信は相当ありました。内を狙ってくるのはわかっていましたし、力的にもその戦略は当然の事。何か飛ばす馬がいて馬群がバラけてさえすればと・・・。

ラスト1Fの内訳は6.2-6.2としましたが、坂を上ってからのラスト100mの方が少し速いラップとなっていたようです。しかも自身最速ピッチでゴールインするとは・・・。オルフェーヴルとのグラフの値は何と真逆にあるという非常識的な結果となりました。3着のゴールドシップとは0.5秒弱の差。少なくともマトモならゴールドシップは必ず捉えていたと思いますねえ。約0.7秒差のウインバリアシオンともいい勝負ができていたかもしれません。あんな不利を受けたのなら、いつものノリさんならレースを止めてしまってもおかしくないのですが、手応えがかなりあったんでしょうね・・・。まあ、来年の阪神大賞典ではゴールドシップを打ち負かしますよ!、と負け犬の遠吠え・・・。


年内にあと1回、ロードカナロアのエントリーを起こす予定でいます。しかしまあ、違うカテゴリーでの超A級ホースを同時期に2頭見られたというのは、確率論的にそうそうないことだと思います。ここ2、3年で競馬ファンになられた方は運が良かったですねえ。今後のバイブルとなるに相応しい2頭のエントリーで2013年を締めくくるつもりです。

今回はこのあたりで。

2013年度代表馬 ロードカナロア

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2014年最初のエントリーとなります。今年も引き続き当blogの御愛好、よろしくお願いいたします。

さて、年末にエントリーを起こす予定でしたがすいません、随分遅くなってしまいましたが、ロードカナロアについてちょっと書いてみたいと思います。

ロードカナロアについては回顧エントリーやコメント欄でいろいろ書いてきましたが、引退した今、正直に言いますとここ数年、個人的に最も思い入れがあった馬と言うか、最も応援してきた馬でもありました。このロードカナロアに魅入られた形として非常によく似ていたのはサイレンススズカ。ともにデビュー前から坂路調教で抜群の走りを見せて評判になっていたのですが、それじゃあ血統構成はどうなのか見てみると、それは非常に将来性を感じるモノであり、そんな期待通りに新馬戦を圧勝。ところがそのまま連戦連勝とはいきませんでしたね。

しかし、「コイツはいつか必ず天下を獲る!」と思い続けたのはどちらも同じ。ロードカナロアは4戦目から5連勝したものの、私としては何か今一つしっくり来ない感じがしていて、高松宮記念、函館スプリントSを連敗した時は少し失望しかけましたが、岩田騎手に乗り替わってからは私が見込んでいたポテンシャルがようやく徐々に開花していった感を持ちました。というわけで、この後は身贔屓ありきとしての話になるかもしれませんがご了承ください。

それでは、引退レースで圧勝劇を演じた2013香港スプリントを振り返ってみましょう。

公式Resultはこちら。2F毎のSectional Timeも掲載されています。

http://racing.hkjc.com/racing/Info/Meeting/Results/English/Local/20131208/ST/5

2着馬に付けた差は0.81秒。1200m戦のG1としては異例となる大差となりました。同じく引退レースで2着馬をブッちぎったオルフェーヴルが付けた差は約1.38秒。距離係数を考えればロードカナロアの方がより差を付けたと言えるかもしれません。そのオルフェーヴルに何らヒケを取ることのない素晴らしいラストランでした。

公式ラップに基づき、日本式のラップはこんな感じになると思います。

勝ちタイム:1:07.1
12.3 - 10.9 - 11.2 - 11.0 - 10.6 - 11.1 [ 5.4 - 5.7 ]

前後半の各3Fは34.4 - 32.7。奇しくもサクラバクシンオーの引退レースとなった1994スプリンターズSとほぼ同等。また、そのサクラバクシンオーの前後半は32.7 - 34.4。これ以上ないくらいの非常に興味深いラップ構成となりました。

それにしてもロードカナロアの末脚はキレにキレていましたね。末脚を温存して最後方からレースを進めた馬のような強烈なキレ味でした。ラスト2Fは2番目に速い馬を0.49秒も上回っていますし、2F毎のスプリットタイムでは唯一後傾ラップを刻んだ形。この末脚を4番手の位置取りからマークするわけですから、まさに世界が驚愕した異次元の走りでした。この結果、2013年の World's Best Racehorse Rankingsでは128のレートが与えられ5位にランクイン。高評価してくれましたね。ちなみにTimeform Global Rankingsではオルフェーヴルを1上回ったレートになっています。この辺りはなかなかおもしろいところですね。個人的には同レートで良いんじゃないかと思います。

今回ロードカナロアが高レートを与えられたのは、2着のSole Powerがそれなりのレートを持っていたからだと思いますが、少々相手が弱かったというか、2着以降のレベルはもう一つといった一戦だったようです。ちょっとこちらをご覧ください。

http://www.hkjc.com/english/racinginfo/racing_course_time.htm

香港シャティン競馬場でのStandard Time一覧です。Group Raceだと1200mのStandard Timeは1:08.90。このタイムを上回ったのはロードカナロアのみ。一方1600mのStandard Timeは1:34.20。ロードカナロアが勝った20122013安田記念で11着となったグロリアスデイズが豪快に差し切った香港マイルでは、6着Moonlight CloudまでがStandard Timeを上回っています。日本国内での競馬場で想定される基準タイムと照らし合わせても、ロードカナロアがチギった馬たちの走りが少々物足らなかったのもまた事実でしょう。まあ、1200m戦としては少々ペースが緩かった面もあるでしょうが。

前走20122013スプリンターズSは内容的には完勝だったと思いますが、他馬とはあまり差のない競馬となりました。その要因としては、自身が刻んだラップがテンの2F目が最速となりその後ラスト1F目まで徐々にラップが落ちるという、ロードカナロアにとってはおそらく初めてとなる、典型的なスプリント戦の流れでレースが進んだ影響があったと思います。しかし、その経験がしっかり生きる形、つまり香港スプリントでは道中少しペースが緩んだだけで、ロードカナロアの余力は強大なモノとなったようです。この辺りの進化力がロードカナロアの素晴らしいところの一つだと思います。馬群に引っ張られて自身のMAXギリギリの走りができた馬との決定的な違いがこの部分なのでしょう。

私が算出したスピード指数を基に考えると、国内でのロードカナロアの最高パフォーマンスは20122013安田記念です。回顧エントリーでいろいろ書きましたが、2着ショウナンマイティとは最終的な着差通りにほぼイーブン。この2頭はそれぞれ違うカテゴリーからの参戦でしたが、ショウナンマイティはその後毎日王冠を6着と敗退したまま休養入り。これもある意味20122013スプリンターズS組と同様、限界に近い走りをした反動が出たのかもしれません。一方ロードカナロアは再度スプリント戦に出走しても何食わぬ顔で対応していました。結局、常にセーフティーマージンを持ってロードカナロアはレースを行っていたとも言えるわけで、競走馬としての器の大きさは群を抜いていたと私は思います。


さて、前述したように2013香港スプリントの走破タイムおよび前後半のラップは、否が応でもサクラバクシンオーを意識させる内容でしたので、以前のエントリーの繰り返しみたいな内容になってしまいますが、日本の競走馬のレベル云々について書いてみたいと思います。参照エントリーはこちら。

ロードカナロア VS サクラバクシンオー、タイキシャトル 1/2
http://ameblo.jp/mahmoud1933/entry-11565057354.html

ロードカナロア VS サクラバクシンオー、タイキシャトル 2/2
http://ameblo.jp/mahmoud1933/entry-11565606600.html

サクラバクシンオーの3~5歳時となる1992~1994年と、ロードカナロアの3~5歳時となる2011~2013年における、中山芝1200m戦の平均走破タイムを比較してみましょう。対象レースは3歳以上500万下、1000万下(旧900万下)、1600万下(旧1500万下)、オープン(オープン特別、Gレースをまとめて)。良馬場限定で1~5位入線馬の平均タイムとなります。

クラス平均走破タイム平均前半3F平均後半3F最速上がり3Fレース数
500万92~941:09.5934.1735.4234.67
01~031:08.3133.8134.5033.68
-1.28-0.36-0.92-1.0
1000万92~941:09.7134.0635.6534.810
01~031:08.6934.2334.4633.318
-1.02+0.17-1.19-1.5
1600万92~941:08.7733.7335.0433.98
01~031:08.0334.0134.0232.812
-0.74+0.28-1.02-1.1
オープン92~941:08.6233.6035.0234.19
01~031:07.8633.7734.0933.16
-0.76+0.17-0.93-1.0


走破タイムは概ね1秒程度速くなっています。特筆すべきポイントは前後半のラップ差。約20年を経て、前半3Fはあまり変わらずというか、逆に遅くなった面がある一方、後半3Fで一気に1秒スピードアップしています。言い換えれば上がり3F区間で、1Fあたり0.3秒以上速く走れるようになってきたのです。つまり、同クラスの20年前の競走馬と現在の競走馬が一緒にレースを行うと、前半を同じように走って上がり3Fだけで6馬身ぶっちぎってしまうことになります。

上がり3Fに関して付け加えておくと、1992~1994年の中山芝コースでのレースには、延べ7444頭が入線していて、最速上がり3Fは33.9。33秒台は2頭のみマークし、34秒台は198頭がマークしていました。一方2011~2013年においては、延べ8603頭が入線した中、最速上がり3Fは32.8。32秒台は3頭、33秒台は276頭、そして34秒台に至っては1928頭がマークしているという、全く違う世界でのレース模様といえる結果となっています。

仮に20年経って競走馬がレベルアップしているとして、そのレベルアップの度合いが前述のタイム差とイコールなのかどうか、常識的な観点からすれば答えはすぐ出ると思いますが・・・。


日本の競走馬がレベルアップしている根拠として、私が目にするその要因の一つ目としては血統レベルの上昇という論拠。中でも「古い血統は現代では通用しない」というのがあるみたいです。何故そのような考え方に至ったのか私にはサッパリわかりませんが、例えばサクラバクシンオーの5歳時に日本で種牡馬デビューとなったブライアンズタイム。ナリタブライアンを初めとして数々の産駒が大レースを勝ちまくっていましたが、確かに最近では芝で活躍する馬はめっきり減ってきてはいます。”スピード不足”というレッテルを貼られているのかもしれませんが、そんなブライアンズタイム産駒でも現在26頭しかいない、芝1200m戦で1分6秒台をマークした馬の中に2頭名を連ねているんですね。まあ、その2頭の母父は最強スプリンターと称されるDayjur、そしてサクラバクシンオーなんですけどね。また、あのヒシミラクル産駒でも中山芝1200m戦で33.9-33.6の1:07.5で走れたりもするんです。まあ、私は単に「種牡馬○○だから」という血統の見方をしませんから、この特定の種牡馬産駒の話は別にどうだっていいのですが。

そもそも日本の競走馬の血統は、昔から海外の血が多く入ってきており、例えば現在大多数の競走馬の血統中に含まれるNorthern Dancerの血を持つ馬なんかも、以前から多数輸入されているわけです。競走馬の血統というのはグローバル的に考えるのが当然なのですが、日本もまさにその通り。そうそう、オルフェーヴルなんか典型的な例だと思いますよ。血統表には昔に輸入された馬が多く存在しており、カタカナ表記の馬がズラリと並んでいます。何か近年、輸入繁殖牝馬のレベルが上がったというのも目にしますが、そんなオルフェーヴルに楽々とちぎられる馬たちのレベルって一体・・・、てな話になるんじゃありませんか。逆に血統レベルが下がっている可能性もあったりして・・・。

まあ、血統論はいろんな形があってしかるべきであり、妥当性のある血統的判断は難しいモノだと思います。ただ、やみくもに「血統レベルが上がった」という見方は、未だ凱旋門賞を勝てていないゆえに抱く海外コンプレックスの影響とも私は思えますし、また以前のエントリーで書いたように、産駒は親の劣化コピーが基本です。非常に強かった馬の産駒だからといって良い馬が出るのが当たり前だとか、代を経てレベルアップしていく、みたいな考え方は、私も昔よくやりましたがダビスタのような競馬ゲームの非現実性を、知らぬ間に現実の世界に引きづり込んでしまった人たちが多いのかな、とも思います。

次に、調教技術が進化したという点。これは間違いなく進化したと思います。しかし、重要なのはどのような方向性で進化したのか、というのがポイントでしょう。私の考えを結論的に言えば、多様性において進化したということ。違う言い方をすれば、能力をより引き上げるという意味においての進化はほとんどないだろうということです。そもそもどんな世界においても技術力の進化というのは、例えばコンピューターの発展とともに時短や精密性といった部分がより向上したのは確かですが、基本的にはその影響により新たな切り口が見い出されるという結果に繋がるのがほとんどであると思います。また、競走馬の調教を人間ライクに考えてしまっては良くありません。人間は実際の試合と同等、あるいはそれ以上の負荷を掛けて鍛えるのが常ですが、同様のことを競走馬に行えば、どうなってしまうか答える必要もないことですね。それに、人間のアスリートなら自分自身でトレーニングの内容を理解し実践していけるわけですが、競走馬相手ではなかなか一筋縄ではいかないでしょう。20年前の日本競馬がまだ手探りの状態で行われていたのであれば、その20年前の競走馬を現在の調教で鍛えれば能力向上が見込めるのかもしれませんが、そんなことが実際に起きるのは何十年前になるのやら、と考えるのが自然じゃないかと思います。

競走能力の平均レベルという意味においてはハッキリとはわかりませんが、現代のアメリカの競走馬はSecretariatに代表されるような破壊的な強さを見せる馬がめっきり居なくなったと感じます。この辺りについてはドーピング云々という話も関係してくると思いますが、そのドーピング疑惑においては人間の陸上競技でもありますね。例えばハンマー投、円盤投などの投擲種目の世界記録は1980年代の旧東欧勢の記録が現在でも更新されずに残っています。中でも女子円盤投は1990年以降、誰一人として世界歴代10位に入ることさえありません。投擲の瞬間、いかに強大な力を出せるかが全てであり、いわゆる筋肉増強剤の効果が如実に現れる種目だからとも言えるでしょうか。まあ、女子の記録ではトラック種目でもちょっとあやしいのが一杯残ってはいますけれども・・・。

素人考えになりますが、ドーピングで競走馬の筋肉が増強されたところで果たして骨や腱が耐えられるのか?みたいな疑問が湧いてきます。人間の例と同類に考えるべきではないんじゃないかとも思います。ドーピングの影響で一気に次元が違う能力になるんだ、という考えは私には全くありません。馬も人も、その世界で頂点に立つかどうかのレベルでは、素質なしには語ることができないと思いますから。

結局私が言いたいのは、例えばダービーの歴史こそ英国や米国と比べれば浅いものの、日本でも80年もの歴史があるわけで、少なくともここ20年くらいのスパンでは競走馬の能力のドラスティックな変化というのは存在しないということです。ちなみにここ3年スプリンターズSと同日に行われている1000万下特別戦の勝ちタイムは、全てスプリンターズSの0.9秒落ち。前述のような上がり3Fだけで1秒も違ってくるというのは、1000万下とG1のクラス差以上とも言えるくらいのタイム差であり、要はそれくらいの馬場差が存在するであろうと考えるのが妥当でしょう。というわけでサクラバクシンオーが1:07.1で走った1994スプリンターズS、ロードカナロアが1:06.7で走った2012スプリンターズSの馬場差を考えていきましょう。

まずは私が設定している中山芝コースの基準タイムを書いておきます。左が1994年当時、右が2012年当時となります。

1200m : 1:09.7 - 1:08.6

1600m : 1:35.5 - 1:34.0

1800m : 1:49.8 - 1:48.3

2000m : 2:02.7 - 2:01.1

2200m : 2:15.8 - 2:14.0

2500m : 2:36.2 - 2:34.0

では1994スプリンターズS開催週の、各レースの馬場差を弾き出す画面を見てみましょう。

1994年12月17日(土)


1994年12月18日(日)


この両日とも風の影響は全くと言っていいほどなかったようです。馬場差判定に関しては、緩く流れたレースやメンバーが低レベルのレースは除外します。概ね-10、即ちマイルで基準タイムより1.0秒速く走れる馬場かと思います。次の計算式で基準タイムとの差を弾き出してみましょう。馬場差を割った1.4は1200m戦の距離係数です。

( 1:09.7 - 1:07.1 ) - ( 1.0 ÷ 1.4 ) ≒ 1.89

サクラバクシンオーは基準タイムより1.89秒速く走ったと判定してみました。

次は2012スプリンターズS開催週の様子。

2012年09月29日(土)


2012年09月30日(日)


1994年とは違ってペースが緩むレースが多く判定は難しいのですが、前日の500万下マイル戦の勝ちタイムが1:32.5、当日の500万下2200m戦の勝ちタイムが2:11.0でした。開幕週の京成杯オータムハンデで1:30.7が出たくらいの馬場ですから、最終週といえどまだかなりの速さが残る馬場状態ですね。しかしスプリンターズS当日は午後から南東方向からの風が強まり、走破タイムに影響が出ていた可能性があります。上記の高速決着となった2レースと同じ馬場差水準で、スプリンターズSの走破タイムを捉えては良くないとも思いますが、私はスプリンターズS時の馬場差を-13と判定しています。したがって基準タイムとの差は次の通り。

( 1:08.6 - 1:06.7 ) - ( 1.3 ÷ 1.4 ) ≒ 0.97

ロードカナロアは基準タイムより0.97秒速く走ったと判定してみました。2頭の差は0.92秒。18年を経て日本の競走馬が全体的に1200m戦で0.92秒速く走れるようになっていたら、この2頭はイーブンとなります。まあ、2012スプリンターズS時の馬場差判定をもう少し甘くする考え方もアリかもしれませんが、それでも走破タイムという観点からロードカナロアを上と見るのはあまりにも無理筋過ぎますね。したがって、国内1200m戦で2頭が実際走った結果の速さ比べなら、間違いなくサクラバクシンオーが上です。大事なことなので2回書きます。国内1200m戦で2頭が実際走った結果の速さ比べなら、間違いなくサクラバクシンオーが上です。

サクラバクシンオーと対抗するためにロードカナロアの1200m戦での実績を持ってくるのなら、やはり2012、2013香港スプリントで考えなければなりません。どちらも同ローテーションで秋シーズン叩き3走目。スプリンターズSより上の走りをしたと見るべきでしょう。ちなみに2012年の勝ちタイムは1:08.50で前述のStandard Timeとの差は-0.40。同日の香港マイルを勝ったAmbitious Dragonの勝ちタイムは1:34.12。ラスト2Fが22.39ですからもう少しタイムが縮まるはずですが、Standard Timeとの差は-0.08。距離係数を考慮するとロードカナロアの-0.40差はマイル換算で-0.5秒ちょっとになります。ぶっちぎった2013年ばかりクローズアップされますが、スピード指数的観点から言えば2012年もかなりの高レベルの走りだったんですね。勿論2013年は好位からの超高速スパートで突き放したのですから、あのTreveと同じ構図です。実際の走破タイム以上の価値が与えられる内容でした。この香港シャティンでの走りと、サクラバクシンオーを比較しないことには話がはじまらないのですが、その答えは易々と見つかるわけでもなく・・・。

あまり使いたくない表現になりますが、冒頭で書いたように私はいわゆる”ロードカナロア基地”みたいなモンです。一方、サクラバクシンオーは現役当時、大嫌いな馬でした。サクラユタカオーと別厩舎になりますがサクラスターオーを除けば、”サクラ”の冠名が付く馬はみんな嫌いでしたけどね。ええ、サクラバクシンオーの馬券もほとんど買いませんでした。しかし引退する最後の5歳時の秋シーズンは、さすがに「こりゃ凄いわ」と思わざるを得ませんでしたね。59kg背負った毎日王冠のあの行きっぷり。スピードの次元が極めて高いのを感じさせられました。続くスワンSはある意味納得のレコード勝ち。この一つ前の西脇特別(900万下)のメンバーレベル、走破時計、ラップを踏まえると、1分20秒を切った勝ちタイムは引退レースのスプリンターズSと同等以上の価値があったと思います。

でも、次走のマイルCSを見れば距離適性を含め、この馬の本質が非常に良くわかるわけで、速く走る能力はケタ違いであっても、それがイコール強さとは言えないタイプでもあったんですね。スバリ、ロードカナロアを当時サクラバクシンオーと戦っていたノースフライトに置き換えれば良いのです。そのノースフライトはスワンSではサクラバクシンオーに追い付けませんでしたが、再度同じ条件でやれば少し差を詰められる予感はありました。一方マイル戦では、ガチで戦えば半永久的にサクラバクシンオーはノースフライトに勝てなかったと思います。競馬と言うのは単なるタイムトライアルではありませんから、やはり”追う者の強み”というのが存在しますからね。

私の目から見れば、サクラバクシンオーはラストシーズンで完成形の走りをしていたと思います。一方ロードカナロアは、天井知らずで引退していったと思っています。どちらが強いかというのは、幾つもの走りから推測される最高形で判断すべきと私は考えていますから、実際走った内容によりプラスアルファできるのはロードカナロアの方だと感じます。ただ、前々から言っているようにロードカナロアは純粋なスプリンターだと全く思えません。したがって日本のスプリンター史上、最高の実績を上げたのは間違いありませんが、”史上最強スプリンター”と称されるのには違和感を覚えます。まあ、ありきたりの表現になりますが、「速さのサクラバクシンオー」、「強さのロードカナロア」だと思います。この”速さ”や”強さ”の価値観は人それぞれでしょうが、1200m戦では「速い者が強い」という論理が成り立つところもあるでしょう。

というわけで以前と代わり映えしない内容を長々と書いてしまいました。いろいろ反論等あると思います。基本的にはリプライしませんが、ご意見を書いて頂ければ幸いです。少なくとも後10年は掛かるような気がしますが、サクラバクシンオーやロードカナロアを凌駕するかもしれないと感じさせる名馬が登場したら、このエントリーとコメントが大いに参考になるのではないでしょうか・・・。

今回はこのあたりで。

その名の通りのバンドワゴン

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現3歳馬で個性的な走りをしていると感じさせられる馬はミッキーアイル、バンドワゴンだと思います。ミッキーアイルはどうやらマイル路線に進むみたいでちょっと残念な気がしますが、バンドワゴンは1800m戦、2000m戦を連勝していますから、今年のクラシック戦線においては最たるキーホースになるんじゃないかと思います。そんなバンドワゴンを今回取り上げてみましょう。

デビューからの2連勝はともに5馬身(0.8秒)差以上の圧勝劇。このようなケースは久しぶりだなあと感じたのでちょっと調べてみました。1986年以降のサラブレッド平地競走において、バンドワゴンを含め28頭が5馬身(0.8秒)以上の差を付けてデビュー2連勝を飾っているようです。その内15頭がダート戦、11頭が芝戦、2頭がダート戦→芝戦での2連勝でした。

昨年の朝日杯FSの覇者アジアエクスプレスもこの28頭の中に含まれていますが、芝戦での該当馬となるとバンドワゴン以前は、2003年に1200m戦を2連勝したナカヤマバスターまで遡ることになるようです。さらにその前では1998年セイウンスカイとなりますから、芝中距離戦でのこのパフォーマンスは15年ぶりの出来事でした。そしてバンドワゴンを除く27頭の中でデビュー3連勝を飾ったのは8頭のみ。3連勝目の最大着差はダンディコマンド、キュリオスレディーの2馬身1/2(0.4秒)差。そもそも3連勝全てで5馬身(0.8秒)以上の差を付けたのは1986年以降だとタマモクロスだけかと思います。今回のきさらぎ賞でバンドワゴンがまたブッちぎりの快走を見せてくれると、「テンポイントの再来!」というキャッチフレーズを使っても良いんじゃないか、というくらいワクワクさせてくれます。また、全てのレースで逃げながらも上がり3Fがメンバー中最速という形になれば、それもまた快挙と言えるでしょうね。

さて、バンドワゴンのレースぶりからミホノブルボンとイメージをダブらせる方が居るんじゃないかと思います。というわけでバンドワゴンが2連勝したレースとミホノブルボンが逃げ切った皐月賞、日本ダービーを比較してみましょう。どちらも逃げていますから刻んだラップは誤差を踏まえつつ公式ラップを見ればOKですし、スプリングSから古馬G1級の走りをしていたミホノブルボンと2歳時のバンドワゴンの走りをガチで比べても無意味ですから、どんな脚の使い方をしていたのか完歩ピッチで比べてみましょう。下記の画像は後半1200mでの完歩ピッチ推移のグラフです。



ラップの上げ下げの差こそ全く異なりますが、意外と脚の運び方は結構似ていると思います。共通事項はどちらもトビが大きい点。バンドワゴンは新馬戦の上がり3F区間をちょうど75完歩、平均ストライド8mで走りました。残り350m辺りの全開区間では推定値8.05~8.10m程度までストライドが伸びていたようです。

ミホノブルボンについて少し振り返っておきますと、まず新馬戦の強烈な末脚が印象的でしたね。上がり3Fは33.1だったのですが、1F毎のラップで見ると徐々に上げていく形の後傾ラップを刻んでいました。ラスト1Fは5.3-5.5の10.8程度、8mを僅かに下回るくらいの、やはり大きなストライドで走っていました。スピード感あふれる走りとはいえ、一気にトップスピードに乗せてくるというタイプではなかったのが伺えます。そしてグラフにある皐月賞および日本ダービーですが、故戸山調教師の目論見通り、後続馬の末脚のキレを鈍らせるように1F12秒程度で淡々とラップを刻み、尚且つ自身はスパートする余力を持っていたという、非常に重厚な逃げ脚を持つ優駿だったと思います。

さて、バンドワゴンは逃げながらも他馬を圧倒する上がり3Fをマークしたように、字面上はスピードに良いモノを持っています。今回の直前追い切りでも残り1F過ぎで進路が塞がり掛けるアクシデントがあり、10完歩少々ピッチを緩めるシーンがありましたが、その後進路が空くと即座にキッチリ再加速できていたんですね。トビが雄大ながらも瞬発力は悪くないと思います。いわゆる「逃げて差す」的な走りでこの2戦圧勝してきました。

大きく差を広げながらもゴール寸前までしっかり追われていたので、余力といった部分はさほど無かったかもしれません。反応の良さ、そしてピッチの落ち具合から見て、弱点があるとすればロングスパート的な流れになった時でしょうか。おそらくスパートの持続力という点の優位性はあまりないんじゃないかと感じます。とはいえ、道中はゆったりとした走りでスピードを維持できていますから、単なるスロー専門の逃げ馬という風情ではなく、前述のミホノブルボンのようなレースをする資質はあるかもしれませんね。ペースが速かろうが遅かろうが、スパートを遅らせる展開に持ち込むと類まれな強さを発揮できるタイプかと思われます。

新馬戦の後、ラップと血統表を眺めながら若干スピード寄り的な馬かもなあ、と考えたりしていましたが、その走りを詳しく何度も見て行く内に、同じようなレベルとまでは行かなくとも、また重厚感は劣るものの、ミホノブルボン的な存在になる可能性があるんじゃないかなあと、段々楽しみになってきました。ちょっと頭の高い走法ゆえに距離の限界というのが訪れると思いますし、新馬戦から素質全開といった感じで走っていましたから、今後の上積みにどこまで期待を持てるかがポイントになりますが、今回のきさらぎ賞も前2走同様、5馬身ブッちぎって欲しいですね。一般的な成長曲線を描くのであれば、他のメンバーとの前走比較からして、大きな差を付けて勝つ可能性は十分あると思います。底を全く見せない圧勝劇の連続で皐月賞にコマを進めてもらいたいですね~。

今回はこのあたりで。

2014 ドバイワールドカップデー 回顧

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今年のドバイワールドカップデーでは、日本馬が期待通りに活躍してくれました。ジャスタウェイとジェンティルドンナが勝利するのを戦前から予感していた方は多くいたことでしょうし、また印象に残るような勝ち方を見せてくれたと思います。というわけで、このドバイワールドカップデーをちょっと振り返ってみたいと思いますし、前エントリーでコメントを頂いた方に対するリプライとなるように書いていきましょう。

昨年はラップタイムの自動計測結果がレース後すぐにわかったはずですが、今年はそのTrakusのサイトが重くて全然閲覧できませんでした。しかし、走破タイムはレース映像に表示されており、何と言ってもドバイデューティーフリーの勝ちタイムは衝撃的でしたね。そのレースにおけるTrakusの計測データをまずは検証してみましょう。Trakusのトップページはこちら。

http://www.trakus.com/portal.asp

『Meydan』のバナーをクリックすれば今年のドバイワールドカップデーのラップデータが閲覧できます。

ドバイデューティーフリーの個別ラップ一覧はこちら。

http://tnetwork.trakus.com/tnet/t_Sectional.aspx?OtherInfo=MEY&EventID=57580

200m毎のレースラップはこのようになっています。

14.28 - 10.74 - 10.96 - 11.14 - 11.37 - 12.04 - 12.06 - 11.45 - 11.48

残り200mではもう独走状態となっていたジャスタウェイは、ラスト200mを11.48で走破したことになります。一方、私はラスト1Fを11.8くらいじゃないのかと当日Tweetしました。この差は何なのか、私なりに解説してみます。

このTrakusのサイトでは各馬の100m毎のラップも発表されています。スクリーンショットになりますが全頭分の100m毎のラップはこちら。



『Total』の部分は100m毎のラップを合算した値。『走破タイム』は文字通り、発表された各馬の走破タイムです。最少で0.31秒、最大で0.41秒Time Gapがあるんですね。1000分の1秒単位の値を切り上げ、あるいは切り捨てした影響で少々誤差が出るとしても、これはあまりある誤差ですよね。今回ハナを奪ったトウケイヘイローのテンの100mは8.83。日本式の走破時計に換算する場合、概ね1.2秒マイナスすればOKというのは、過去多くのエントリーで書いてきました。その8.83から1.2マイナスすると7.63。何か遅くないですか?

例えば東京競馬場のダートコースには1300mや2100mという施行距離があるので、公式ラップでテンの100mのラップは良く目にする事ができます。大体7.0~7.4くらいの値がほとんどかと思います。前述のトウケイヘイローの換算値となる7.63。これは非常識と言えるラップなのは間違いありませんね。つまり上記のTime Gap分を、このテンの100mのラップからマイナスすると、より現実味のあるラップになるのです。トウケイヘイローのTime Gapは0.36。したがって最終的な換算値は7.27秒となり、まずまず常識的な範囲になろうかと思います。おそらくですが、Trakusのタイム計測の仕組み上、静止位置からのタイム計測開始のポイント判断に関して、何かしら難点があるんじゃないでしょうか。で、それはそれとして、各馬のトータル走破タイムを発表しているのですから、100m毎のラップの合算値と整合性が取れるよう、キチッと調整するのが筋なのではなかろうかと思うんです。実際に調整しているポイントは、どうやらラスト200m区間をマイナスしているようでして、これじゃJRAとあんまり変わらんやろ、というのは言い過ぎでしょうか・・・。

こういった考えの根拠となるシーンをもう一つ見て頂きましょう。ジャスタウェイのゴール入線時を1:45.52辺りになるよう、レース映像にタイムコードを入れてみた状態の、ラスト400m、200m、ゴール板を先頭馬が通過した瞬間のスクリーンショットです。上記の通り、公式通過タイムはラスト400m地点が1:22.59、ラスト200m地点が1:34.04ですね。







どちらも公式通過タイムは間違っていますね。また、ジャスタウェイのラスト200mは、11.48というラップになるわけありませんね。ラスト200m区間における100m毎のラップの合計値である11.90が正しいのが一目瞭然でしょう。ちなみにこのレース映像ですが、3~4コーナーを映しているカメラと最後の直線を映しているカメラは同期が取れていません。0.2秒少々ズレていますね。

というわけで、テンの200mの値を調整した日本式の全頭個別ラップはこんな感じとなります。



昨年の天皇賞・秋と比べると、結構似ている部分が多いなと感じます。

http://ameblo.jp/mahmoud1933/entry-11656886455.html

その昨年の天皇賞・秋では、ジャスタウェイ以外の馬達は軒並み中間点までに1F11秒そこそこの速いラップを刻んでいました。一方ジャスタウェイは他馬に惑わされることなく、鞍上の福永祐一騎手が見事なペース配分で導き、それが末脚の爆発力を産み出したと言えたわけですが、今回のレースは他馬と同じように道中スピードを上げていたんですね。にもかかわらず、末脚の破壊力は昨年の天皇賞・秋とほぼ同等。この5か月でもう一段パワーアップしたと捉えてもいいんじゃないでしょうか。

ちなみにトウケイヘイローが近走ハナを奪ったレースにおけるテンの1Fを踏まえると、日本式走破タイムへの調整値マイナス1.2秒というのは、若干少なめに設定しているのが何となく感じ取って頂けるかと思います。今回テンの100~200m区間を5.45で走っていますし、東京競馬場のコースレイアウトを考えると、今回のテンの200mはもう少し速くなってもおかしくありませんから、更に0.1あるいは0.2秒マイナスして考えて良いかもしれません。今回ジャスタウェイがマークした勝ち時計は、1800m戦の日本レコードである1:44.1とほぼ同等と見て良さそうですね。素晴らしいの一言以外、何もいらないという驚愕のレースだったと感じました。

では、この日の芝1000m戦であるアルクォズスプリントと比較しながら、ジャスタウェイの走りをスピード指数的に考証してみましょう。このドバイ・メイダン競馬場と同じように直線1000m戦、馬場を半周する1800m戦が施行距離となっている新潟競馬場の、現在私が設定している基準タイムは1000m戦が55.5、1800m戦が1:46.6です。これを基に指数を算出してみると・・・。

アルクォズスプリントの日本式走破タイムは55.0。基準タイムより0.5秒速いのですが、これに1.8を掛けて1800m戦のタイム差に置き換えると0.9秒速いことになります。ドバイデューティーフリーの日本式走破タイムは1:44.3。基準タイムとの差は何と2.3秒。スピード指数の値としては13ほど、ジャスタウェイが上ということになります。まあ、スピード指数の値の基準は様々ですが、例えばロードカナロアが国内でマークした1200m戦の最高値は99と私は算出しています。アルクォズスプリントの勝ち馬Amber Skyが、もし前述のロードカナロア並みの指数を叩き出したとすると、ジャスタウェイのスピード指数は112。私の指数上、芝戦で110オーバーとなったのは、あのサイレンススズカまで遡らなければならなくなります。まあ、少なく見積もっても110の大台に到達していると考えて良さそうです。芝1800m戦というのは、サイレンススズカの絶対領域だったのですが、遂にそのレベルまで到達した、ひょっとすると超えるかもしれないのがジャスタウェイなのだ、という表現も、あながち間違いとは言えない可能性があると思います。ちなみにRacing Postの速報版ではAmber Skyのレートが120、ジャスタウェイが130だそうですが、この走破タイム的考証ならば、ジャスタウェイは133あるいは134くらいでもいいんじゃないの、と思えてしまいます。それくらい強烈な今回の走りだったわけで、これに対抗し得るのはFrankelを持ってくる以外、手はないだろうと断言したいくらいの気持ちでさえあります。

今後はどんな路線を歩んでいくのでしょうか。マイル戦は気持ち短い気がしますが、これだけのハイラップを追走しながら末脚を爆発できるのですから、何ら問題はないかと思います。逆に12F戦では、このようにレースが流れることはありませんから、覚醒する前みたいにスローの追い込み寸足らず、みたいなケースもあるでしょうか。まあそこは、あらかじめ取り分を決めておいて、武豊騎手鞍上のトウケイヘイローとセットで参戦すればいいんじゃないですか。あのTreveを打ち破る可能性は十分あると見ます。あっ、武豊騎手はキズナとのコンビがありますから凱旋門賞だと困りますねえ・・・。


さて、もう1頭の勝者ジェンティルドンナについても簡単ではありますが触れておきましょう。確かにメンバーに恵まれたところはあったと思いますが、少なくともここ数年、ドバイシーマクラシックに参戦する馬を振り返れば、全体的な層の厚さは日本馬がトップだと感じていますし、今回マトモな競馬ができれば、ジェンティルドンナはまず負けないだろうというくらいの力の違いを見せてくれたと思います。鞍上ムーア騎手が最後の直線では苦労していましたが、結局はなんてことのない内容だったですね。おそらく昨年のJCでの走りを参考にして、今回は溜めて末脚の爆発力を引き出す目論見があったのかと思います。そのため1コーナーからは強引なまでに抑え込んで内に入れましたよね。あのシーンで勝負はほぼ決していたのではないでしょうか。

これでG1を6勝目となりますが、3~5勝目の3戦は全てハナ差決着。しかしどれも恵まれて勝ったわけではなかったと思います。典型的な「勝った馬が一番強い」を地で行く名馬だと言えるでしょう。昨秋ジャスタウェイに離されたように打点の高さはもう一つかもしれませんが、G1で勝ち切るという馬はホントに一握りな存在であるわけで、その最たる例は一緒に参戦したデニムアンドルビーとの差。昨年のJC回顧で、案外大きなハナ差なんじゃないかと書いた覚えがあるのですが、今回は大きく明暗を分けた形となりました。正直、数値的な部分でジェンティルドンナの強さを表現するのは難しいのですが、端的に牡馬混合の12F戦国際G1を3勝というのは凄いんじゃないでしょうか。

この馬に関しては、やはりオルフェーヴルとの死闘となった2012JCが非常に印象的でして、あのようなレース展開がジェンティルドンナのゾーンと言えるのだと思います。今回のレースはちょっとドタバタしたものの、基本的にはその2012JCを再現するかのような戦略だったと思いますし、もう一丁、どこかで栄冠に輝くといいですねえ。若干カテゴリーは違う雰囲気がありますが、鞍上を変更してもキッチリ答えを出せるところは、ウオッカにダブるところがあります。次の目標はJC3連覇なのでしょうか。それとも凱旋門賞?

今回はこのあたりで。

2014 産経大阪杯 回顧

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先日の産経大阪杯を簡単に振り返ってみましょう。まずは全頭個別ラップから。

着順馬番馬名タイム2004006008001000前5F12001400160018002000後5F1900Goal
1着7キズナ2:00.313.312.512.912.411.963.012.111.311.211.011.757.35.556.15
2着3トウカイパラダイス2:00.512.912.012.012.011.760.611.811.712.011.912.559.96.056.45
3着4エピファネイア2:00.613.312.212.812.412.062.712.111.411.211.311.957.95.706.20
4着8カレンミロティック2:00.812.811.812.012.111.860.511.811.711.912.412.560.36.006.50
5着2ショウナンマイティ2:01.013.312.012.712.312.062.312.011.411.411.612.358.75.906.40
6着1フラガラッハ2:01.813.612.112.912.311.962.812.011.411.311.712.659.0

7着5メイショウマンボ2:02.513.112.312.612.412.062.412.211.511.611.813.060.1

8着6ビートブラック2:03.813.012.112.011.911.660.612.011.812.413.113.963.2



Mahmoud計測RL2:00.312.811.812.012.111.860.511.811.712.012.012.359.8



公式RL2:00.312.811.312.512.011.960.511.811.711.512.412.459.8



Twitterで幾つか情報を頂きましたが、当日はかなり風が強かったようですね。神戸気象台の気象データはこちら。

http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/view/10min_s1.php?prec_no=63&block_no=47770&year=2014&month=4&day=6&view=p1

平均でも7~8m/s、最大で10m/sを越す風が吹いていたかもしれません。風向きからするとホームストレッチは向かい風、バックストレッチはやや追い風気味で3~4コーナーも少し風が追っていた可能性があります。

レース展開は前3頭と後ろ5頭の2分戦といった形。3番手と4番手の差は前半400m地点で0.2秒差だったのが、その後の600mで更に1.7秒差まで広がりました。私が計測したレースラップを見てもずっと1F12秒前後で前3頭が走っているのに対し、後方勢は勝手に抑え込んでいる状態と言えるでしょう。

勝ったキズナのレースぶりは見た通りの印象で、改めて表現しなくても良いでしょう。一つだけ補足すれば上記の通りの風だったのなら、58kgを背負って2:00.3という勝ちタイムに対する上がり3F33.9は、ハイグレードな末脚だったと見て良いかもしれません。

まあ、このレースの注目点は当然エピファネイアのレースぶりだったでしょう。キズナとの馬連1.6倍という圧倒的な人気を背負って、差し届かず3着となった瞬間の場内の雰囲気はどうだったのでしょうか。私はその頃、どんな喧噪の中なのか全く知らずに、宮崎の青島でもうすぐ5歳となるウチのアンライバルド号と潮だまりで遊んでおりました。心の中では「エピファネイア、届かず4着にならんかな」と淡い期待を寄せながら・・・。

上記の個別ラップを見るだけで、というかレース映像を見れば敗戦理由は想像付くと思いますが、鞍上のコメントを検証する意味でも、この2頭が本格化前の3戦目となるラジオNIKKEI杯2歳Sと今回の完歩ピッチの推移を比較してみましょう。この産経大阪杯で2着となったトウカイパラダイスも含めてあります。そうすることによってレースの質も少し見えてくるのではないでしょうか。

●ラジオNIKKEI2歳S

14.2 - 12.7 - 13.2 - 13.1 - 13.2 - 12.8 - 11.8 - 11.6 - 11.1 - 11.7 ・・・ 1着エピファネイア

14.0 - 12.8 - 13.1 - 13.1 - 13.2 - 12.9 - 11.9 - 11.6 - 11.2 - 11.7 ・・・ 3着キズナ



福永祐一騎手のコメントの中に「4コーナーまでにグッと来てくれないのは休み明けの分でしょうか」というのがありました。鞍上がハミを取らせようと右手をグイッと動かしたのは4コーナーに差し掛かった残り490m地点辺り。実はエピファネイアが最速ピッチをマークしたのは残り600~500m区間。鞍上がまだ追い出し始める前の地点なのですが、既にエピファネイアのピッチ力は下降線をたどり始めようとしている頃の出来事だったんですね。おそらく福永祐一騎手はこの後更にピッチを上げて加速し始めるモノと予想していたんでしょう。まあ、ラジオNIKKEI杯2歳Sのような瞬発力を期待していたのかもしれませんが、ラップタイム的にも、完歩ピッチ的にも、エピファネイア自身は1F早い段階でスパートし始めていたわけでした。

良い意味でも悪い意味でも、高低差の激しいラップを刻むような一瞬のキレ味をデビュー戦から見せ付けていたエピファネイアですから、ガチの4Fロングスパート戦となればキズナに対して分が悪くなるのはやむを得ない結果だったと思います。そんな不利な条件下に自ら飛び込んで行って、キズナと真っ向勝負しようとしたのはスポーツライクに好勝負だったと言えるでしょう。でも・・・、これ、JRAの競馬ですよね?

2着のトウカイパラダイスのラップと完歩ピッチを良く見てください。トータル的に見れば結構厳しいペースで走って来ていますが、風の影響を考えると値よりキツさは少し低くなるものと思われます。また、どんどん飛ばしていったわけでなくて極めてイーブンに道中走っているのがわかるかと思います。向かい風の影響もありラップは大して伸びていませんが、残り370m辺りから追われると、しっかり手応え通りに反応しています。後続を引き離すようなハイラップで前3頭が引っ張っていったわけでは決してありません。対キズナは別として、トウカイパラダイスに負けたのは斤量差を踏まえた上での、序盤で自らトウカイパラダイスとの差を大きく広げてしまった位置取りの差でしかありませんね。この序盤の位置取りの問題というのは、昨年のJCでゴールドシップが大惨敗した要因や、この鞍上が導いた一昨年の日本ダービーでのワールドエースと根っこは同じでしょう。まだ多頭数なら、玉突き的に先団と差が開いてしまう不可抗力もあるでしょうが、今回は8頭立てでしたからね。前半3F目がトウカイパラダイスは12.0、エピファネイアは12.8。ここで勝負が半ば決していたと思われます。せめて4番手ショウナンマイティの直後にさえ付けていれば何とかなった可能性は高かったでしょう。

まあ、この前半3F目でペースを落とし過ぎたのはエピファネイアだけではなく、後方勢5頭は同類でもあります。で、キズナは豪快に差し切ったわけですし、勝った馬にケチを付けるのは野暮というもの。ショウナンマイティは本来キズナと同じような位置で競馬をしてきた馬ですから、単騎4番手は想定外だったように思います。またフラガラッハも一気の追い込みの競馬に徹してきたわけですし、相手関係から言ってもココは一発狙う位置取りをするのは当然。以上3頭はある意味正当性を感じられる競馬とも言えます。そして残り2頭。メイショウマンボに関してはコーシローにあれこれ言うのは酷なのでスルーしておきましょう。ですから、競走馬の質的に考えればエピファネイアだけは、このような競馬をした正当性を見出すのが難しいと言えるのではないでしょうか。

エピファネイアは昨秋、春シーズンとは違った積極性は感じられるレースをしてきたわけです。コースは違いますが昨年の菊花賞では前半1000mを61.6、1200mが74.0、1400mが86.6でしたので、今回の産経大阪杯よりおよそ1300m辺りまで速く走っていたのです。

●2013 菊花賞 回顧

http://ameblo.jp/mahmoud1933/entry-11646041689.html

「秋2戦がスローペース、今回の速い流れに対応し切れない分もあったのかもしれません」

ん?何を言ってるのか良くわかりませんが・・・。

そんな菊花賞のレースぶりを見て、この産経大阪杯ではキズナを抑えて1番人気になったんじゃないのですかねえ。しかも次走予定が香港2000m戦と発表があったわけですし。G2とはいえ大注目の一戦でこれだけの人気を背負ってこんなコメントを返すとは、福永祐一恐るべし。

どうしてこうも前方の馬との間隔を平気で広げてしまうんですかね。いわゆる体内時計なんか実際のレースに於いては全く機能しないんですから、何故基本的に届く位置で競馬をしようとしないのか不思議でしょうがありません。

いやね、道中静かにスムーズな追走をさせる事とか、ムダな動きをしないとか、彼の技術力は相当高いと思うんです。確かな腕はあるのは間違いないです。しかし、前述のコメントとか見てしまうと何か腹が立ってきませんか?多額の馬券売り上げで成り立っているJRA所属のジョッキーという意識、どこにあるんでしょうか。私は文字通り他人事である今回の結果だったのですが、どうにも我慢の限界が来たようです。

彼は福永洋一さんの息子である以上、私は心の中でずっと応援してきました。例え親の七光りでもいいんです。福永洋一さんの遺伝子を持つ男がジョッキーになったことだけでもうれしい出来事でしたし。そして、もしトップジョッキーになる日でも来れば、それはさぞかし喜べる時であろうと・・・。

ようやく昨年、彼は所帯を持った事ですし、もう偉大な天才ジョッキーと重ねて見守ることは止めにします。さらば、福永祐一騎手(なんのこっちゃw)

今回はこのあたりで。

イスラボニータとゴールドシップ

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今年の共同通信杯を勝ったイスラボニータは勝ちタイムが1:48.1、上がり3Fが33.2でした。そして2年前の同レース勝ち馬ゴールドシップは勝ちタイムが1:48.3、上がり3Fが33.3。どちらも57kgを背負って叩き出したこのタイム。非常に似通った内容なのですが、この2頭は全く異なったイメージで捉えている方がほとんどだと思います。というわけで、イスラボニータとゴールドシップの共同通信杯での走りを比べてみたいと思います。

やっつけ感アリアリですが、この2頭がハナ面を並べ、走破タイム1:48.3でゴール板を入線したと仮定した際の、道中の位置取りの違いを見て行きましょう。ゴール入線時はこんな感じです。



ハナ差、イスラボニータが差し切ったというイメージとしてみました。





まずはタイム計測地点。ゴチャゴチャして非常に見にくいですが、騎手の頭の部分を色で囲ってみました。イスラボニータは黄、ゴールドシップは赤です。勝ちタイムは0.2秒差ありますが、実走タイムとしてはこの2頭の差は0.1秒未満だと思います。2012年ではゲートの出が特に良かった馬がいたのと同時に、ゴールドシップはどうしても良くありません。

序盤は2014年の方が速く、前半800m、残り1000m地点ではイスラボニータが前方にいる形となります。



約0.6秒程度イスラボニータが先行しています。

次は残り600m地点。



2頭の位置取りは逆転しています。上がり3Fは0.1秒差ですから、イスラボニータの1馬身弱前方にゴールドシップが進出してきました。公式ラップ上の残り1000m~600m区間は2012年が24.6に対して2014年は25.4も掛かっていますから、この位置取りの逆転は当然の形ですね。


次は残り460m地点辺りでしょうか。



残り600m地点ではゴールドシップの方がよりスピードに乗っていましたから、この2頭の差は少し広がっています。

次は残り200m地点。バーチャルラインを引いてあります。



2頭の差はまだ1馬身弱あるでしょうか。ちなみにイスラボニータはこの画像の少し手前が残り200mを通過したタイミングとなります。最初の画像のように1:48.3を走破タイムとしてタイムコードを挿入していますので、ラスト1Fは遅くとも11.2となります。この残り200mでイスラボニータが先頭に立った今年の共同通信杯の公式ラスト1Fは11.6という、全くもってふざけたラップが発表されています。

次は残り100m地点。



2頭の差は少しだけ縮まってきましたが、まだ3/4馬身差ほどあります。また、この地点のタイムコードは1:42.60。イスラボニータはラスト100mを5.7以下で走破したのがお判り頂けるかと思います。

そして冒頭の画像通り、イスラボニータはラスト100mの脚でゴールドシップを差し切りました、といった流れにしてみました。上がり3Fだけを見れば、イスラボニータは相当強く思えませんか?


まあ、これはトリックみたいなモノでして、やはり残り600mまでの過程を考慮しないと優劣付けちゃあきませんよね。前半4Fをゆっくり入って、大げさに言えば残り1000mのスパートっぽい2012年と、前半3Fをさほどゆっくり行かずに中盤でグッと溜めた2014年。どちらが残り600mでスパート余力を残しやすかったか、その判断で見解が分かれるところかと思います。で、残り600mの画像から、この2頭の前を行く馬が映っていましたね。2012日本ダービー馬ディープブリランテです。ゴールドシップと共にこの年のクラシックを制した馬ですから、何かしら、その強さが伺えるのではないかと思います。ちなみに残り1000m地点では7番手相当の位置取りだったわけですが、そこからじわじわと自力でレースを引っ張っていった形となっていました。イスラボニータ対ゴールドシップの比較ではなく、単にレースレベルという意味においては、2012年の方が厳しいレースだったのではないかと私は思います。ちなみにこの2頭のラップはこんな感じでした。

13.3 - 11.8 - 12.7 - 12.6 - 12.5 - 12.1 - 11.0 - 11.0 - 11.3 [ 5.55 - 5.75 ] ・・・ ゴールドシップ

13.2 - 11.5 - 12.3 - 12.6 - 12.9 - 12.4 - 11.1 - 10.9 - 11.2 [ 5.55 - 5.65 ] ・・・ イスラボニータ


とはいえ、イスラボニータは何回やっても勝つだろうという圧巻の走りを見せました。特に目立つのが雄大なストライド。完歩ピッチの推移もゴールドシップと比べてみましょう。



前半300~500m区間以外全ての区間でイスラボニータはゴールドシップより遅いピッチで走っています。両者似たような走破タイムですから、ストライド走法の現役馬の代表格であるゴールドシップよりも、イスラボニータのストライドは大きいんですね。当レース時の馬体重はゴールドシップが506kg、イスラボニータが462kgでもあり、より一層イスラボニータのトビの大きさが目立ちます。ピッチ走法、ストライド走法、どちらが有利かというのは状況によって様々となりますが、個人的にはどちらかと言えば、果てしなく伸び続けるんじゃないのかと思わせるストライド走法が好きです。

このレースでイスラボニータが最もストライドを伸ばしたのがラスト2F目。この200m区間を10.9程度で走りましたが、この時のストライド幅は8.05mほどではないかと予想されます。要は1F25完歩を切っているんですね。残念ながら春シーズンの全休が決まってしまいましたが、同期のバンドワゴンとほぼ同じようなストライド幅なのです。もし2頭がスパートして競り合えば、同じリズムで走り合うシーンが見られたかもしれなかったのですが・・・。


さて、冒頭で書いたようにイスラボニータとゴールドシップは大げさに言えば180度違うイメージですよね。でも、鈍重なイメージのゴールドシップよりゆったりとしたリズムで走るイスラボニータ。何故そんなイメージとなるのでしょうか。

上記のグラフで小さな円が付いている部分が鞍上に追い出された地点です。残り600m辺りから早々と追い出されたゴールドシップは鞍上のアクション通りの動き。一方イスラボニータは最後の直線で内から外へと進路を取り、軽く気合を付けられながらも基本的に持ったままで坂を上り、残り300mを切ってからようやく全開の追い出し。しかしイスラボニータ自身は外へ持ち出され始めた頃から既に全開のピッチ。非常に前向きで反応力が抜群ですね。この様は2012凱旋門賞でのオルフェーヴルの反応とダブるところがあります。走法は正反対ですが、全力で走りたくてウズウズしているのはソックリなんじゃないでしょうか。

また、イスラボニータは序盤でも走りたがりな部分を現しています。好発からガッツリ抑え込まれてテンの1Fはうまくいきましたが、その後、外からスピードを上げた馬に釣られているんですね。以上の内容から、走る事への前向きさに溢れていて、悪い表現をすれば手応え詐欺っぽくなる要素がありそうですから、距離延長やロングスパート戦に対する不安を感じるところは仕方がないかもしれません。しかし、この馬格でありながらこれほどの雄大なストライドで走るということは、脚の可動域が相当広いからでしょうし、走っているフォームは実に美しいと思います。そしてラスト400m区間だけでも、5、6回ほど手前を替えていました。器用さも十分あるように感じます。デビューからずっと直線の長い左回りコースのみ走ってきましたが、右回り中山競馬場のコーナーワークも何ら問題ないタイプなのではと思います。

イスラボニータにはもう一つ好材料があります。それは鞍上の蛯名正義騎手。”蛯名ダンス”とか”トントン乗り”などど形容される騎乗フォームを開発中だと思われますが、これは当然騎乗馬が走るテンポに合せなければなりません。この共同通信杯でイスラボニータがスパートした時のテンポは138bpm。一方、今年の桜花賞を快勝したハープスターのそれは155bpm。テンポが速くなればヘッドバンキングが苦しくなるとか、ドコドコとベタ踏みのツーバスが苦しくなるとかと同じように、”トントン乗り”も同じ事が言えると思うんです。1F区間で言えばハープスターなら27回トントンするところをイスラボニータなら25回で済みます。この2回の差、大きいと思いますよw

ハープスターの名を出したのでちょっと余談を書きますが、先日の桜花賞でハープスターは上がり3Fを約81完歩で走っていました。これは馬体重が60kg軽い2着のレッドリヴェールとほぼ同じ。過去エントリーでも書きましたが極めて高回転型の走法です。しかし、新潟2歳Sではラスト1Fを25完歩で走ったなんて言ってる人がいるんですね。

ハープスターは新潟2歳Sや桜花賞ではラスト100mを迎えるまで1完歩が0.4秒切っています。仮に1完歩を0.4秒ちょうどのピッチで1Fを25完歩で走ったのなら、そのラップタイムは10秒ちょうどとなります。ハープスターなら1Fを9秒台で走らなければ25完歩をクリアできません。トビが大きく見えた父ディープインパクトのイメージをダブらせるかのようにハープスターを持ち上げたいんでしょうけど、ウソネタで競馬ファンを騙してはいけませんね。今では、そんなウソはすぐバレてしまいますから。


最後に走るテンポに関するネタを一つ。入場行進の際に使われる曲のテンポは120bpm。1秒間に2歩進む形です。一方、馬が走る際の足音は前述のようにそれ以上のテンポですからスピード感があるわけです。競馬で馬が走るシーンを映画で使う場合、より疾走感を高める場合は1.3倍くらいでしょうか、早回しで映像が流れたりもしてますね。で、馬が走る=スピード感、というのが当たり前なんですが、どんな世界にも例外的存在というのが現れるのも常でありまして、先月、目がテンになるような走りを見せる馬が居りました。その名はウオッカの長男坊ボラーレです。

3/16のデビュー戦、スタートダッシュこそ、それなりに走っているかなと思いましたが、道中は何か1頭だけ雰囲気がまるで違いましたね。2コーナーからバックストレッチにかけて、このレースに勝ったネオジェネシスと同じくらいの1F13.3秒程度のスピードで走っていたのですが、その時のテンポは117bpm。何と行進曲のテンポより少し遅いんですね。人間が歩くリズムとほぼ同じくらいのテンポでのっしのっしとボラーレは走っていました。1F13秒を超えるペースなのに、ボラーレは1Fを26完歩で走破していました。

ということはですよ、もし1F11秒そこそこのスピードで走ったのなら、とんでもないレベルのストライド長を拝めるのかも!とワクワクしながら次走を楽しみにしていたのですが、その2戦目はあえなくタイムオーバー。夢は幻となりそうな気配が・・・。しかし、このボラーレのリズムは”トントン乗り”の初心者にとって打って付けなのは間違いありませんね。第二の蛯名騎手を目指しているアナタ、ボラーレへの騎乗を直訴してみましょうw

今回はこのあたりで。

2014 天皇賞・春 展望

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バンデが出走できなくて個人的にはかなり興ざめしてしまった今年の天皇賞ですが、そのバンデがいない分、何が逃げるのか、どんなペースになるのか、展開的にはいろいろおもしろいレースになりそうです。また、このメンバーならハナを主張すればスンナリ逃げられそうにも思えてきますね。そうなると自分の思い通りのペースに持ち込める可能性がありますから、変幻自在の逃げを打てる横山典弘騎手鞍上の、大外デスペラードが前走に引き続き逃げることになるのかなあと考えています。

このデスペラードは前走京都記念で見事な差し返しを見せたわけですが、昨年のステイヤーズSでも、結果的に後ろの馬に一旦差されてから差し返して勝っているんですね。コーナーでは加速がもう一つなのですが、直線に入ると一気にギアが入るという、言わばストレッチランナーの範疇にある馬だと思います。したがって鞍上は別に逃げに拘ってはいないとは思いますが、ある程度後続馬にマージンを築いてレース後半を迎えることになれば、ロングスパートなしに最後の直線のみのスパートに持ち込む事もできるわけです。というわけでデスペラードが逃げるとすると、上位人気4頭はどんな競馬になるか、あるいは差し届くためにはどの辺りの位置取りが限界点となるのかを、ちょっと考えてみたいと思います。

今春の京都開催開幕週は恒例行事的に超高速馬場となりました。土曜日はホントに速い馬場でしたね。過去最高レベルあるいはそれ以上かも、と思えるほどの馬場状態でしたから、日曜日のマイラーズCは1分30秒台必至と見ておりました。しかし、ワールドエースが勝ったマイラーズCの勝ちタイムは1:31.4。日曜日の他のレースも前日ほどの快時計という雰囲気ではありませんでした。土曜日の夜に水でも撒いたのか・・・、と思えなくもない感じでしたし、今週はそこそこ雨が降ってましたのでかなりの高速馬場には違いなくとも、2012年と2013年の中間くらいの速さの馬場に落ち着くのかなと金曜日の段階では想定しています。

さて、横山典弘騎手の逃げと言えばやはりセイウンスカイですね。京都大賞典、菊花賞では後続馬との間隔の取り方は違っていましたが、基本的には最後の直線でしっかり末脚を伸ばすという戦法だったのは同じです。デスペラードも似たようなイメージの逃げを打ったとしたら、こんなラップ推移となるかもしれません。前述の馬場状態を勘案して3:14.0で走破すると仮定してみました。

13.0 - 11.8 - 11.5 - 11.6 - 11.7 - 11.8 - 12.3 - 12.8 - 12.6 - 12.6 - 12.8 - 12.9 - 12.0 - 11.8 - 11.3 - 11.5

テンからしばらく頑張ってペースを上げて、1周目のホームストレッチでは2番手と差を広げる形。バックストレッチではペースを落として坂をゆっくり上ってゆっくり下り、4角までじっくり脚を溜められるようなレースが最高形でしょう。もしこんな形の単騎逃げでレースが進めば、キズナはどんなラップを刻むことになるでしょうか。

キズナの鞍上武豊騎手は、久しぶりに自信に満ちあふれたコメントを出しています。その言葉通り、1週前の追い切りも素晴らしかったのですが直前追い切りも実に圧巻の内容。その辺りは先日Tweetしたので見てもらえばわかると思います。おそらくイメージ的には「必ず差し届く」というレースで挑んでくるんじゃないでしょうか。末脚には絶対の信頼感を得ているように感じます。とにかく先頭との位置関係がポイントになりますね。少々やっつけ的ではありますが、前述のデスペラードをきっちり差し切るための限界ギリギリのラップ推移はこんな感じかと推察してみました。

14.3 - 12.2 - 12.0 - 12.0 - 12.1 - 12.1 - 12.4 - 12.7 - 12.3 - 12.3 - 12.6 - 12.1 - 11.2 - 11.2 - 11.1 - 11.3

前後半が1:39.8 - 1:34.1となります。デスペラードとの差は中間点辺りで最大3.4秒差。それを2周目の坂上となる残り4F地点で、その差1.7秒差までじわじわと詰める必要があります。ちなみに2012年ビートブラックが逃げ切った際、残り4F地点で3番手を進んだナムラクレセントとはまだ2.4秒もの差が付いていました。また、フルゲート18頭立てですから、最後方の位置取りのままでは1.7秒差まで詰めることは不可能なんですね。デスペラードが後続馬を離して逃げていると仮定していますから、少なくとも10番手くらいには位置を押し上げているのが条件となります。もし馬群が固まった展開になったとしても、ペースがよほどキツくて上がりの脚に各馬差が出るような形にならない限り、この残り4F地点で「キズナ、まだ後方3番手!」みたいに実況されるようであれば、キズナ頭の馬券を握りしめている方は頭を抱えてしまうことになるでしょうか・・・。


ウインバリアシオンは2012年にかなりシビアなラップを刻んでいました。前後半が1:41.2 - 1:33.6という内容。ちなみにディープインパクトは前後半を1:39.5 - 1:33.9で走破していましたから、後半はディープインパクト以上のラップで走っていたんですね。これは当然、前半をあまりにもゆっくり走ったからこそマークできたラップなわけで、勝ち負けでき得るペース配分では全くありません。また、前走日経賞では、ロングスパートではなくラスト3F特化型の末脚を繰り出していましたので、アンカツおじさんが乗っていた時のような後方待機策は取らずにある程度中団辺りからの競馬となるんじゃないかと予想しています。キズナと同位置からのロングスパート戦となれば、キズナに分があるように感じます。

前年の覇者フェノーメノは、やはり昨年同様スムーズな流れに乗って競馬をしたいクチだろうと思います。馬群全体が適度にバラけて淡々とレースが進む形がベストでしょうか。今回は陣営のトーンが低いのが気になるところ。鞍上は一点集中できる環境下にあると無類の強さを発揮するジョッキーですが、何か曇りがあると脆さを覗かせることがしばしば見受けられます。本当にデキが今一つなのかは良くわかりませんが・・・。

さて問題のゴールドシップ。同馬のデビューからの個別ラップ表を更新してありますのでご自由にダウンロードしてください。

http://ux.getuploader.com/Mahmoud1933/download/33/Gold+Ship+Lap+20140323.xlsx

前走阪神大賞典のゴールドシップの個別ラップはこちら。

13.7 - 12.0 - 12.7 - 12.7 - 12.4 - 12.5 - 12.9 - 12.7 - 12.8 - 12.7 - 12.5 - 12.5 - 11.6 - 11.2 - 11.7

アッと驚く先行策というレースになりましたが、この前半の入りくらいは少なくともオープンクラスならどの馬でも軽く走れると思います。元々、俊敏な反応力ではないものの押せばスピードを必ず上げていましたから、何も突然イメージチェンジしたわけでもないと思います。また、緩いペースのまま残り3Fまで走れたのですから、ラストでこれくらいキレるのも当たり前の話ですね。皐月賞のラスト4Fスパートを1F分、遅く始動しただけですから。”New ゴールドシップ”という論調には異を唱えたいと思います。

R.ムーア騎手が乗った昨年の有馬記念、そして岩田騎手が乗った前走阪神大賞典。どちらもごくスタンダードな騎乗ぶりだったと思います。そして調教の走りも加えて鑑みると、以前のエントリーで書いたようにガッツリ長い脚を使えているわけではないなあと改めて感じます。長く脚を使えるように見えていたのは、やはり内田騎手の手綱捌きの影響だったと思えるわけで、押す手を緩めれば脚もすぐに緩める馬であって、その繰り返しが長い末脚という姿となって現れていたのだと思うのです。今回手綱を取るC.ウィリアムズ騎手も、スタンダードな騎乗スタイルで挑んでくるんじゃないかと予想してまして、「直線で差し切る」という形を採るような気がしています。

C.ウィリアムズ騎手といえば”番手おじさん”と呼ばれているようですが、その手腕が発揮されて前目に位置取ることができれば勝機は十分あると思います。前走のように後方馬より追い出しを遅らせるような展開になれば、意外に感じられるほどのキレる末脚を使うケースがあるかもしれません。ただ、結局中団辺りでの競馬となれば、坂の下りでスパートしてくる馬に併せ打たねばならなくなりますから、その対応をどうするかがポイントになりそうです。慌てずに落ち着いて乗って来られると怖い1頭になると思いますが、さて・・・。

最後にスピード指数出馬表(地方・海外減戦)を貼っておきます。



実際どんな展開になるか、ゲートが開くまで正直わかりません。超スローもアリだと思いますし、案外スイスイ流れるレースとなるかもしれません。楽しみな一戦となりそうですね。今回はこのあたりで。


2014 天皇賞・春 回顧

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既にレース後随分と時が経ってしまいましたが、今年の天皇賞・春を振り返ってみましょう。まずは上位4頭とゴールドシップの個別ラップをご覧ください。

着順馬番馬名タイム200400600800前4F1000120014001600中前4F1800200022002400中後4F2600280030003200後4F3100Goal
1着7フェノーメノ3:15.113.7 12.1 12.1 12.5 50.4 12.5 11.8 12.0 12.5 48.8 12.6 12.5 12.7 12.4 50.2 11.4 11.8 11.0 11.5 45.7 5.65.9
2着12ウインバリアシオン3:15.113.7 12.2 12.4 12.8 51.1 12.6 11.7 12.0 12.8 49.1 12.6 12.3 12.6 12.1 49.6 11.2 11.6 10.9 11.6 45.3 5.75.9
3着6ホッコーブレーヴ3:15.113.3 12.1 12.6 12.6 50.6 12.6 11.8 12.0 12.6 49.0 12.5 12.6 12.7 12.2 50.0 11.5 11.9 10.9 11.2 45.5 5.55.7
4着14キズナ3:15.214.1 12.4 12.5 12.5 51.5 12.9 11.8 11.9 12.7 49.3 12.4 12.2 12.5 12.2 49.3 11.1 11.6 11.0 11.4 45.1 5.65.8
7着8ゴールドシップ3:15.414.4 12.4 12.5 12.4 51.7 13.0 11.7 11.9 12.8 49.4 12.4 12.1 12.3 12.1 48.9 11.4 11.6 11.0 11.6 45.6 5.75.9


Mahmoud計測RL3:15.112.8 12.1 12.1 12.5 49.5 12.2 11.8 11.7 12.2 47.9 13.0 12.8 12.9 12.5 51.2 11.7 11.8 11.4 11.6 46.5



公式RL3:15.112.8 12.0 12.1 12.4 49.3 12.4 12.1 11.3 12.5 48.3 12.9 12.9 12.9 12.3 51.0 11.7 12.0 11.1 11.7 46.5



ラスト2F目は各馬10.9~11.0程度で、ココを速く走れたかどうかというのはレース結果にさほど影響はなかったと思います。何がポイントだったかは、この地点でのスパートがフレッシュな状態で行ったか否か、それに尽きると思われます。フレッシュだったのはフェーノメノ、ホッコーブレーヴの2頭。フレッシュじゃなかったのはキズナ、ゴールドシップの2頭。その中間的存在がウインバリアシオンだったと言えるでしょう。

やや後方寄りといえる10番手辺りを進んだホッコーブレーヴで、中間点での先頭との差は2.2秒。そこから2周目の坂の下りとなる残り800m地点ではその差0.8秒と1F毎じわじわ差を詰める形。しかも、坂の下りでペースアップはあったものの残り600m地点から4コーナーまでは先団のペースは上がらずじまい。少し前に位置していたフェノーメノとともに、最後の直線で満を持してスパートできる態勢となったようです。

一方、キズナ、ゴールドシップはロングスパート戦を強いられる展開。最後方辺りに位置すれば当たり前ではあるのですが、馬群に取り付く際に脚を使い、坂の下りからも4コーナーまで息を入れられるシーンはあまりなかったようです。というわけで、個別ラップ表に載った馬たちの完歩ピッチ推移も見て行きましょう。



フェノーメノは残り500m辺りからGOサインが出ていますが、余力十分で最後の直線を迎えることができています。一瞬ウインバリアシオンに交わされたと思いますが、スパート時のフレッシュ度の違いで差し返しに成功。きっちり勝つ競馬をした鞍上の手腕が光りました。天皇賞・春の2連覇は実に見事でした。

ウインバリアシオンは坂の下りで一気に動いていきましたが、まだ全開とは程遠い軽いスパート。4コーナーを回って一気にピッチを上げグンと伸びて行きましたが、ラスト1Fはさすがに失速気味。とはいえ、道中ではホッコーブレーヴと並んで最もゆったりとしたリズムで走れるにもかかわらず、猛スパートができるというのは実に乗りがいのある馬ですね。良い内容の競馬でしたが少し展開に泣いた形と言えそうです。

ホッコーブレーヴは明らかに一発を狙った溜めに溜める競馬。末脚を溜めたいジョッキーは位置取りを最後方に近いところに求めがちですが、田辺騎手は違いましたね。もう一列前にいられたらまとめて差し切るシーンまであったかもしれません。道中は掛かり気味に見えますが、ゆったりしたリズムで走れていますからこういうタイプは距離延長に対応してきますね。

大きく出遅れてしまったゴールドシップですが、2012有馬記念のルーラーシップ同様、ウィリアムズ騎手が急かすことなく追走させていましたので、出遅れの不利は見た目のイメージほど大きくはなかったと思います。しかし、ゴールドシップなりのスタートが切れればどんな位置取りとなるかによって、レース結果が違ったモノになった可能性は高いですね。まあ、さすがに前走並みの先行位置を取るためにはガシガシ追われなければ無理だったと思いますが。また、向こう正面で少々脚を使った影響があったものの、一般的なイメージほど継続的な長い脚が使えるわけではないのが、このレース内容によってハッキリしたのではないでしょうか。そのイメージは内田博幸騎手とゴールドシップそれぞれの特徴が見事に調和したからこその結果であり、スタンダードな乗り方をされたここ3戦は、どれも標準的なタイプの差し馬の内容だったかと思います。

ゴールドシップの個別ラップ表を更新しました。以下のリンク先からご自由にダウンロードしてください。

http://ux.getuploader.com/Mahmoud1933/download/34/Gold+Ship+Lap+20140504.xlsx

さて、最後に問題のキズナ。日本ダービー、産経大阪杯、そして今回のレースのラスト1000mの完歩ピッチを比較してみましょう。



日本ダービーは残り600mからほぼ一定といえるピッチで最後の直線をズドンと伸びて行きました。今回の天皇賞・春では残り900mからの800m区間で、その日本ダービーと似たようなピッチでの超ロングスパートという図式だったのです。ラスト100mでピッチが落ちたのはやむを得ないとも言えるでしょうし、残り800mから前を行くウインバリアシオンの仕掛けを追っ掛けたため、このレース中最速ピッチをこの区間でマークしてしまった影響も考えられますが、いずれにせよ非常に息の長い末脚を使っていたと思うんですね。ラスト3F目はラップが落ちていますが、これは4コーナーでのコースロスに寄るところが大きく、実質等速に近い形で800mほど走っていたと考えられます。これはキズナらしい走りの形だと私は思いますし、日本ダービー時よりしっかりスケールアップしていると感じます。しかし、鞍上は「もうひとつある上のギアに入りませんでした」とのこと。ちょっと酷な願望かと思うものの、鞍上がそう信じていた気持ちは十分わかりますし、その論拠もあります。

競走馬が追い切りで追われる際、その時の余力はレース時よりも遥かにタップリありますから、かなりピッチを上げてスパートするケースがほとんどです。例えばオルフェーヴル。レースにおいても少し溜めが効いていたら1完歩を0.390秒くらいの高回転走法を繰り出してきますが、調教時にはワンランク速い0.380秒くらいまで回転が増します。ちなみにロードカナロアも調教時の方が脚の回転力は若干上回ります。そしてキズナですが、ラジオNIKKEI2歳Sやロンシャンの2戦のように、超スローペースでは1完歩を0.420秒を切るくらいまでピッチを上げられますが、そんな時は失速するのが必ず早まります。また調教時では、追われてからも0.420秒程度しかピッチを上げず、良い意味で楽に走っているケースがほとんどでした。

ところが前走産経大阪杯では残り500mからの300m区間にわたって、1完歩0.420秒を切るという、キズナにとっては飛び抜けたキャリアハイとなる高回転型末脚を使っていたんですね。これは産経大阪杯直前の追い切りや天皇賞・春の1週前追い切りよりも高ピッチの内容だったのです。こんな末脚を鞍上から感じ取っていた武豊騎手が、キズナが更なるギアを身に付けたと思うのは当然の事だったでしょう。しかも、更にダメを押すような事がありました。それは今回の直前追い切り。残り300m地点から追われたのですが、そこから20完歩丸々、1完歩0.400秒ちょうどという、タイプが正反対である同期のライバル、エピファネイアに迫らんとするほどまで、ピッチを引き上げる走りをしていたんですね。この時点でキレ具合も含めて末脚は誰にも負けない確信めいたモノを武豊騎手は思い浮かべていたのかもしれません。

さて、上記の完歩ピッチ推移からして、その更なるギアを繰り出す余力はなかったと私は思うのですが、4F毎4分割にしたラップ推移のバランスからも検証してみましょう。

●2014天皇賞・春 キズナ

51.5 - 49.3 - 49.3 - 45.1


●2006天皇賞・春 ディープインパクト

50.6 - 48.9 - 49.4 - 44.5


ディープインパクトの走破タイムをキズナの走破タイムと同じに換算した、各4F区間の1F平均ラップはこのような値となります。

●キズナ

12.875 - 12.325 - 12.325 - 11.275


●ディープインパクト

12.768 - 12.339 - 12.465 - 11.229


僅かな差に思えますが、中間点を軸とした8F区間をキズナの方が速く走っていますね。最初の4Fでゆっくり入った余力分を、ラスト4Fを前にしてそれ以上吐き出しているかのように思えます。実際、2周目の坂の上りとなる残り1200mからの1F区間を、ディープインパクトは12.8と脚を使わずに上ったのに対し、キズナは12.5と0.3秒速いラップとなっていました。昨年の京都大賞典での先行勢のように、この坂を少し急いて駆け上がると上がり4Fで影響が出がちなんですね。これは、レース序盤がさほど速い流れとならなかったのに、早々と縦長気味の隊列になってしまったのが要因となったように感じます。武豊騎手は「キズナのペースで」レースを運ぶ算段だったと思いますが、後方ありきではどうしても他馬の隊列の影響を受けてしまうのは当然ですよね。もし、先頭馬が同じペースで馬群がもっと密になっていれば、それに引きずられてキズナもラップ的に序盤を速く、中盤を遅く走れてロングスパートへの溜めができていた可能性もあったことでしょう。それでも、鞍上が期待するほどのギアは出せなかったという気がしますが、キズナなりのレースで勝機は十分あったんじゃないでしょうか。

詰まるところ、ディープインパクトはディープインパクトなんですよね。いくらその子どもでも、真似をしようと思ってもできないんですよ。キズナにはキズナの道があるはずなんです。傷が癒えた後はその道をしっかり見据えて追い求めて行って欲しいと思います。

産経大阪杯以降、武豊騎手はスペシャルウィークの菊花賞をやるか天皇賞・春をやるか、果たしてどっちなのだろうと、ずっと考えてきましたが、前述の通りの直前追い切りを見ると、その菊花賞寄りのレースになるのかなあと思えてきておりました。それでもペース次第というか、流れ次第で何とか勝ち切ってくれないものかとも願っていました。まあ、十数年経っても、良くも悪くも武豊騎手なんだなあと・・・。

今回はこのあたりで。

2014 オークス 回顧

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Twitterでオークス、特にハープスターについていろいろ触れましたので回顧エントリーは書かないつもりでしたが、いろいろ質問等ありましたので、値を使ってハープスターの走りについてのみ、ちょっと書いておきます。まずは上位3頭の個別ラップをどうぞ。

着順馬番馬名タイム20040060080010001200前6F140016001800200022002400後6F
1着9ヌーヴォレコルト2:25.812.8 11.6 12.0 12.9 12.8 12.6 74.7 12.5 12.4 12.0 11.6 11.2 11.4 71.1
2着10ハープスター2:25.813.5 11.8 12.0 12.5 12.7 12.8 75.3 12.4 12.6 11.9 11.4 11.0 11.2 70.5
3着5バウンスシャッセ2:25.912.7 11.3 12.1 13.0 12.7 12.6 74.4 12.6 12.4 12.1 11.8 11.2 11.4 71.5


Mahmoud計測RL2:25.812.4 10.7 12.1 12.8 12.7 12.7 73.4 12.7 12.6 12.0 11.9 11.8 11.4 72.4


公式RL2:25.812.4 10.6 12.2 12.8 12.7 12.7 73.4 12.8 12.5 12.0 12.0 11.3 11.8 72.4



残り400m通過時


残り200m通過時


残り100m通過時


ゴール入線時

上位3頭はクビ、クビという僅差の勝負になりました。ラスト1Fの内訳は端数を使うとこんな感じかと思われます。

11.45 [ 5.70 - 5.75 ] ・・・ ヌーヴォレコルト

11.25 [ 5.50 - 5.75 ] ・・・ ハープスター

11.35 [ 5.65 - 5.70 ] ・・・ バウンスシャッセ

ハープスターは残り100mあたりから内に切れ込んでいるので、通常のレース映像だと伸びているように錯覚しますが、実際にはヌーヴォレコルトとの差はラスト100mでほとんど変わっていません。また、バウンスシャッセのラスト1Fはほぼ等速で駆け抜けています。

上記の画像通り、ハープスターは残り200m地点で先頭のヌーヴォレコルトとは0.25秒程度の差だったのが、残り100m地点ではあと僅かの差まで詰めています。つまり、ラスト100m区間ではそれまでの勢いが影を潜め、ヌーヴォレコルト、バウンスシャッセとの比較論的に表現すれば、ラスト100mを失速気味にゴールインしたと言えるでしょう。脚を余して負けたとは決して言えませんね。では、ハープスター自身の走りを新潟2歳S、桜花賞と比べてみましょう。まずはその2レースの個別ラップから。

レース名タイム200400600800前4F1000120014001600後4F
新潟2歳S1:34.513.5 11.4 12.0 12.6 49.5 12.5 11.2 10.5 10.8 45.0
桜花賞1:33.313.5 11.5 11.7 11.9 48.6 11.8 11.1 10.7 11.1 44.7


馬場の速さの違いがあったとしても、今回のオークスの上がりは新潟2歳S、桜花賞と比べて少し物足らない値だと私は感じます。次に100m毎の平均完歩ピッチの推移を見ていきましょう。



桜花賞は残り500mから一気にスパート。緩→急のスピード変化は非常に激しいです。残り3F目の11.1(あるいは11.2)の100m毎の内訳の落差はかなり大きいです。一方、今回のオークスでは新潟2歳Sと良く似たタイミングでスパートを開始しています。桜花賞より100mほど始動が早い分、どちらのレースも一気に全開とはいかずに残り400mを過ぎてからMAXスパートという形になっています。この辺りがハープスターの良さでもあり、また川田騎手も上手にスパートを御していると思うんですね。これはアンカツおじさんパターンと言えるでしょう。Twitterで「どっかの競馬回顧でコーナーで置かれて徐々に加速できずにいきなりギアを上げたから最後鈍ったと見ましたがどうなんでしょう?」と質問を受けましたが、そんなことは決してありませんね。最後に鈍ったのは、これだけ長い区間スパートしていれば当然の事になりますし、他馬との比較からでもハープスターは長く脚を使えています。

スパートまでの走りを見ると、桜花賞の前半では極めて一定のリズムで走っています。これはなかなか珍しいというか、文字通り自分のペースで走っている証ですね。今回のオークスではスタート直後から後方の位置取りとはいえ、前半500m辺りまでは徐々にピッチを落としている雰囲気はありませんでした。それが2コーナー辺りから前方の緩いペースに付き合う形になり、残り700mまで延べ1000mにわたって2400m戦らしいスローの追走劇。それなりに対応しているとは思うものの、多少ギクシャク感があります。

で、スパートの話に戻りますが、今回のMAXピッチは残り300~200m区間。息の長い末脚が使えていると思います。しかし、中盤でしっかり緩めて追走していたわりにはピッチが上がり切らなかった、上げられなかった雰囲気も多少感じられます。その要因としては次の事が考えれます。


●東京競馬場の最後の直線でのダラダラ坂

中山、阪神競馬場の最後の直線での坂は勾配が急ですが、この坂に突入するのはスピードを全開にしてから上るという形になるケースが多いですね。高めていたスピードを利して坂を上っていくわけで、違う言い方をすれば、その坂で加速していくという形にはなりづらいんですね。一方、この東京競馬場および新中京競馬場では、坂で加速する形になることが多くなります。ハープスターはこの坂の影響が大きかった可能性があります。こんな感じになってしまう馬はちょくちょく見かけます。その逆の例ならブエナビスタはこの坂でも一気にピッチを押し上げて走っていました。


●長い距離を走るのが苦手かも

前述の通り桜花賞での前半の走りは、ハープスターの特徴を良く現している面が感じられます。端的に言えば1F12秒を切るペースでの走りがハープスターのリズムに合っていて、1F12秒半ばから後半のペースの走りは上手と言える内容ではない感じです。スタミナがあるなしは別として、現時点ではレースでゆったり走る内容が悪く、字面上のラップ以上にスタミナを浪費した可能性があると見て良いかもしれません。


●ニシノアカツキに寄られた影響

ハープスターは最後の直線で大外に持ち出した直後、ニシノアカツキに寄られて再度外に持ち出す形になりました。ここでハープスターは加速を若干削がれた形になったかなと思ったんですが、このシーンを1歩毎見て行きましたが、さしたる影響は感じられませんでした。少なくとも川田騎手あたりのジョッキーならば、こんなケースは重々承知の上で乗っているでしょうから対応はキッチリできていますね。で、TwitterでRTされた中に「ここでの距離ロスが大きかった」云々というのがありました。というわけで画像を見てもらいましょう。


まずはハープスターが予定通り大外に持ち出したシーン。この後ニシノアカツキに寄られます。



ハープスターが更に外へ行くことを余儀なくされたあたり。



どんどんニシノアカツキが外に張り出しています。




ハープスターはようやく真っ直ぐ走れる状態になったあたり。


さてハープスターはどれくらい外に膨れたでしょうか。5mくらい?
仮に5m外に張り出されたとしましょう。2番目の画像から最後の画像まで時計にして4.10秒。この間、ハープスターは10完歩走っています。距離にして70m少々くらいでしょうか。計算すればいいのですが、どうせなら大きな紙に底辺5cm、斜辺70cmの直角三角形を書いてみて、その高さを測ってみれば良いと思います。距離ロスがどの程度なのか、体感できるでしょう。

正面からのパトロールビデオで見ると、前後位置を抜きに横移動だけ目に付いてしまいがちです。真横にブッ飛んだように感じる方がいらっしゃるかもしれません。でも、その横移動とともに前方へ相当な距離を走っているんですね。こんな状況はレースにおいてよく見られる光景です。これを「距離ロスが大きい」なんて言ってたら、競馬なんか成り立ちません。まあ、ニュアンス的に文字通りの意ではなかったのかもしれませんが、競馬を生業としている方がこんな見方をしているとは・・・。


●蹄鉄が外れかかった影響

蹄鉄が外れかかった写真とレース映像を同期させると、少なくとも残り100m手前あたりでは既に蹄鉄が浮いている状態になっていました。走りにその影響が出たと考えるのもアリかもしれません。ただ、一つだけ言えることは、明らかな影響があればジョッキーが感じ取っているだろうという事。川田騎手のコメントに「内にササり気味」というのがありましたが、それが蹄鉄の影響だとは少々考えにくいですし、走りがぎこちなかった的なコメントはなかったと思います。この問題に関してはハープスターが喋らない限り、誰も判断が付かない事象だと考えるべきでしょう。ハープスターのラップと完歩ピッチの推移から考えて、もし蹄鉄の問題がなければ軽く差し切っていたという考えは成り立たないと思われます。


レース後、川田騎手に対する不満の声が相当ありましたね。ハープスター頭の馬券を買っていた方なら、そんな気持ちになるのは無理もありません。ただ、彼は阪神JFで馬群を割ろうとして差し届かずとなり、トレーナーからこっぴどく叱られたという経緯がありました。まだ力を付け切っていないヌーヴォレコルト他、メンバーが手薄なチューリップ賞でも再度チャレンジする機会がありましたが、彼はその術を放棄して大外あるのみ、というレースを行っていたわけですから、桜花賞、オークスも同様に乗ってくるのは規定路線だったのは周知の事実だったでしょう。

実際、このオークスでも川田騎手は与えられたミッション通り、上手く乗っていたと思います。3コーナーでの挙動(下げたように見えた)についても質問を受けましたが、このシーンもちょっと見て行きましょう。






川田騎手は最後の直線で大外に持ち出す事が大命題でした。この大命題の補足としては阪神JFのレース通り、馬群を割るような形には持っていかない、というのもあったと思います。この2枚の画像ですが、外のニシノアカツキがよろしくない位置にいますね。ニシノアカツキどう捌くか、それがこの局面での問題点でした。



このシーンでは少し下げてニシノアカツキを外から交わしていこうという意図が見えます。



Rは緩いとはいえコーナー区間ですから、コースロスを防ぐ意図も感じられます。



ここでニシノアカツキの真後ろに付き、後は大外に持ち出すタイミングを計るのみ。


結局今回のハープスターとニシノアカツキの関係は、桜花賞でのベルカントとの関係と全く同じです。ハープスターにとっては微妙な位置に1頭いたという図式ですね。

したがって、結果は2着でしたが川田騎手の騎乗ぶりにケチをつけるところはほとんどないですね。ハープスターの長所を上手く生かした騎乗だったと思います。スタミナ勝負は未知数ですし良いタイプではないと見ていますが、この同世代牝馬相手なら、もうちょっと中盤流れた方が勝てる可能性は高かったかも、という気がします。

まあ、キズナにしろハープスターにしろ、後方ありきというレースは他力本願的要素が必ず高くなります。しかし陣営のレース後コメント等は、その他力本願となってしまう部分が軽視されているように感じます。まあ、言葉通りに受け止める気はさらさらありませんが、「ハープスターが一番強いことは間違いないですから」と言うならば、他力本願ではない強いレースをさせるよう仕向ければいいんじゃないですか。それができないわけですから、負け犬の遠吠えに聞こえてしまうのは仕方ないですね。


今のところ、札幌記念をステップに凱旋門賞に挑むとのスケジュールが発表されています。札幌競馬場は最後の直線が短いですが、コーナーのRはゆったり目ですから、この参戦は悪くないと思います。コーナー区間でのスパート反応がどのようなモノになるのか気になりますね。

このハープスターのスタイルは勝てるレースを勝ちに行ける戦法では決してありませんが、嵌れば難敵を倒す可能性が高い一面もあります。一か八かで挑むのも戦略としては十分アリだと私は思います。是非ロンシャンの舞台に立って、Treveを始め欧州馬にチャレンジして欲しいですね。

今回はこのあたりで。

2014 日本ダービー 回顧 その1

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とりあえず全頭個別ラップをUPしておきます。感想等はまたその内に。

ワンアンドオンリーのラスト2Fは11.2 - 11.4としましたが、11.1 - 11.5と判断しても良いかと思います。非公式な値ですのでその点を留意して頂ければ転載ご自由にどうぞ。

着順馬番馬名タイム200400600800前4F1000120014001600中4F1800200022002400後4F2300Goal
1着2ワンアンドオンリー2:24.612.9 11.3 12.3 12.2 48.7 12.4 12.6 12.4 12.3 49.7 12.2 11.4 11.2 11.4 46.2 5.60 5.80
2着13イスラボニータ2:24.712.9 11.2 12.1 12.2 48.4 12.5 12.6 12.3 12.3 49.7 12.3 11.5 11.3 11.5 46.6 5.65 5.85
3着3マイネルフロスト2:24.913.0 11.4 12.3 12.3 49.0 12.3 12.6 12.3 12.4 49.6 12.1 11.4 11.3 11.5 46.3 5.70 5.80
4着14タガノグランパ2:24.912.9 11.4 12.2 12.2 48.7 12.3 12.7 12.3 12.4 49.7 12.1 11.5 11.3 11.6 46.5 5.70 5.90
5着5トゥザワールド2:25.013.3 11.6 12.2 12.0 49.1 12.3 12.8 12.3 12.4 49.8 12.0 11.4 11.2 11.5 46.1 5.65 5.85
6着6ショウナンラグーン2:25.113.8 11.7 12.3 12.0 49.8 12.4 12.7 12.3 12.2 49.6 11.8 11.4 11.1 11.4 45.7 5.60 5.80
7着4アドマイヤデウス2:25.113.3 11.3 12.3 12.4 49.3 12.3 12.6 12.3 12.3 49.5 12.1 11.5 11.2 11.5 46.3 5.70 5.80
8着10ベルキャニオン2:25.213.1 11.5 12.1 12.2 48.9 12.4 12.7 12.3 12.4 49.8 12.0 11.6 11.2 11.7 46.5 5.70 6.00
9着8スズカデヴィアス2:25.413.1 11.6 12.3 12.1 49.1 12.4 12.7 12.4 12.3 49.8 12.1 11.5 11.3 11.6 46.5 5.70 5.90
10着18ワールドインパクト2:25.613.2 11.4 12.2 12.0 48.8 12.4 12.7 12.3 12.4 49.8 12.1 11.4 11.5 12.0 47.0 5.80 6.20
11着1サウンズオブアース2:25.812.9 11.2 12.2 12.2 48.5 12.5 12.6 12.4 12.3 49.8 12.2 11.5 11.6 12.2 47.5 5.90 6.30
12着16レッドリヴェール2:25.813.2 11.9 12.4 12.1 49.6 12.2 12.6 12.4 12.4 49.6 12.0 11.5 11.4 11.7 46.6 5.70 6.00
13着11ハギノハイブリッド2:25.913.3 11.8 12.4 12.1 49.6 12.3 12.6 12.3 12.4 49.6 11.9 11.6 11.4 11.8 46.7 5.70 6.10
14着15サトノルパン2:26.313.7 11.7 12.4 12.0 49.8 12.3 12.6 12.4 12.3 49.6 12.0 11.5 11.4 12.0 46.9 **
15着9アズマシャトル2:26.713.6 11.5 12.3 12.3 49.7 12.4 12.6 12.2 12.3 49.5 12.1 11.8 11.6 12.0 47.5 **
16着17トーセンスターダム2:28.112.6 11.1 12.2 12.3 48.2 12.5 12.6 12.2 12.5 49.8 12.2 11.6 12.7 13.6 50.1 **
中止12エキマエ*12.6 10.7 11.6 12.2 47.1 12.5 12.1 12.7 17.7 55.0 *******


Mahmoud計測RL2:24.612.6 10.7 11.6 12.2 47.1 12.5 12.1 12.7 13.6 50.9 12.2 11.6 11.4 11.4 46.6



公式RL2:24.612.5 12.6 11.8 12.2 49.1 12.5 12.1 12.7 13.6 50.9 12.2 11.6 11.1 11.7 46.6

2014安田記念の公式ラップが酷過ぎる件

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安田記念の公式ラップは次の通り。

12.3 - 11.1 - 11.7 - 12.0 - 12.0 - 11.8 - 12.1 - 13.8

各ハロン棒の通過タイムはこうなりますね。

12.3 - 23.4 - 35.1 - 47.1 - 59.1 - 1:10.9 - 1:23.0 - 1:36.8

「大逃げした馬が残り1F区間で差されたわけではないのに、ラスト1Fが何故13.8なんだ?」と感じた人は、競走馬の常識的ラップを把握されている方でしょう。その辺りを取り急ぎ検証してみましょう。

4着に入線したダノンシャークは残り3Fで先頭と0.1秒差。残り400m、そして残り200mでは先頭に立っていました。ゴール入線時は先頭と0.6秒差。公式ラップを基にダノンシャークの上がり3F38.2を1F毎に区分けするとこんなラップとなります。

11.7 - 12.1 - 14.4

ラスト1Fでいきなり2.3秒も失速した形となります。ダノンシャークは故障してゴールインしたわけではありませんでしたよね?

では、幾つか画像を見て行きましょう。まずは2つのレース映像にタイムコードをいれたゴール入線時のスクリーンショットがこれです。

ゴールタイムを1:36.83としてみました。


次はこの画像です。

東京競馬場の残り200mのハロン棒を外ラチから撮影した画像です。赤枠で囲まれた設置物を覚えておいてください。



このスクリーンショットは安田記念の2つ前となる東京9Rの物です。残り200mのバーチャルラインを引くとこんな感じになります。赤枠の設置物が先の画像と同じ物であるのがわかるかと思います。意外にバーチャルラインの角度がないと感じる方が多いんじゃないでしょうか。

では安田記念のレース映像を見て行きますが、残念ながらグリーンチャンネルの映像では残り200m地点でアップ映像となっていますので、別のレース映像を使って見ましょう。

赤枠の設置物は同じ物ですが、注目点は黄枠の馬場の蹄鉄後。バーチャルラインの上と下にある馬場のへこみを覚えておいてください。



先の画像と同じ角度でバーチャルラインを残り200mのハロン棒に合せてみました。黄枠の馬場のへこみ、少しわかりづらいですが、この2つの画像でバーチャルラインの角度が大凡あっているのがわかって頂けるかと思います。


残り200mを先頭馬が通過した瞬間です。黄枠の馬場のへこみ、上記2つの画像と同じですね。先頭のダノンシャークは1:23.9辺りで通過したことになります。



こちらは残り400mの通過時。つまり、公式ラップでは残り400mを1:10.9、残り200mを1:23.0で通過したことになっていますが、掲載した一連の画像から判断すると、1:11.2 - 1:23.9で通過したとみなすべきでしょう。したがってダノンシャークの上がり3Fの1F毎のラップは、

12.0 - 12.7 - 13.5

と考えられます。冒頭の公式ラップから算出したラップと全く違いますね。そしてもう一つ残り100mのラップからも検証してみましょう。



この画像は残り100m地点をスタンドから撮影した物。外ラチの赤枠の設置物を基に残り100mのバーチャルラインを引いたスクリーンショットを見てください。



グランプリボスは残り100mを6.5~6.6で走っていると考えられます。残り200mで先頭のダノンシャークにほぼ並んでいましたから、公式ラップからの計算値ではラスト1Fが13.8となりますが、それならば7.2 - 6.6 といった具合にラスト100mで加速していったことになってしまいますね。

したがって、上位2頭の上がり3Fの内訳はこんな感じとなるでしょう。

37.1 : 12.1 - 12.3 - 12.7 [ 6.30 - 6.40 ] ・・・ 1着ジャスタウェイ

37.2 : 12.0 - 12.3 - 12.9 [ 6.35 - 6.55 ] ・・・ 2着グランプリボス

ジャスタウェイの真骨頂がよくわかりますね。


最後にちょっと余談を。長年現地で競馬を見られている方でも、レース映像による残り200m地点での内外の馬の差を、上手に判断できる方がほとんどいらっしゃらないようです。

2014 オークス 回顧
http://ameblo.jp/mahmoud1933/entry-11863862695.html

このエントリーで残り200m地点での先頭ヌーヴォレコルトとハープスターの差が0.25秒程度だと画像で説明しましたが、例えば御大柏木集保氏は判断の手順がわからないものの、ラスト1Fをヌーヴォレコルト11.8に対しハープスター11.1と0.7秒もの差があったと推定されていました。また、同様に0.7秒ほど差があったのではないかと見られていた他のプロの方もお見受けしました。要は、競馬を生業としている方々に、レース映像から公式ラップがおかしいと気付く土壌がほとんどないことを意味しているんじゃないかと感じるんです。だから、何も変わりやしないと・・・。

今回はこのあたりで。

ジェンティルドンナについて少しだけ

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ジェンティルドンナについていろいろ書こうと思っていたんですが、ちょっと時間がないので2年続けて走ったジャパンカップとドバイシーマクラシックについて簡単に振り返っておきます。

まずはドバイシーマクラシックのTrakusデータはこちら。

2013年
http://tnetwork.trakus.com/tnet/t_MeydanA.aspx?EventID=46915&Date=3/30/2013&Type=TBRED&Venue=14

2014年
http://tnetwork.trakus.com/tnet/t_MeydanA.aspx?EventID=57581&Date=3/29/2014&Type=TBRED&Venue=14

換算方法は割愛しますが、日本式の2400m戦のラップにするとこんな感じとなります。

2013年
走破タイム : 2:26.09
13.46 - 11.91 - 12.00 - 12.34 - 12.25 - 12.37 - 12.55 - 12.17 - 11.79 - 11.60 - 11.33 - 12.32

2014年
走破タイム : 2.25.32
14.17 - 11.94 - 12.09 - 12.20 - 11.73 - 11.91 - 11.91 - 11.82 - 12.17 - 11.85 - 11.67 - 11.86

では、2013ジャパンカップでの走破タイム2:26.1と同タイムに他の3レースの走破タイムを合せてラップバランスを見てみましょう。手順としては2012ジャパンカップは各1F毎のラップに0.25秒プラス、2013ドバイシーマクラシックはラスト1Fに0.01秒プラス、2014ドバイシーマクラシックは前半の1F毎のラップに0.06秒プラス、後半の1F毎のラップに0.07秒プラスしてみました。




残り4F目から11秒台に押し上げた2レースは、2013ドバイシーマクラシックがSt Nicholas Abbeyに完敗。2013ジャパンカップは辛勝という形でした。一方、2012ジャパンカップは残り3Fまで抑えに抑え込んで、斤量差を生かした超瞬発力戦。それがオルフェーヴルに競り勝ったポイントでしょう。

とすると、スローのキレ味勝負タイプに見えがちですが、そんな様相とは違う戦いで完勝したのが前走2014ドバイシーマクラシック。テンの1F目がかなり遅かった影響もあり、ジャスタウェイの勝ちタイムと比較すると見劣りしてしまいますが、それでも道中はずっとシビアなラップを刻み続けていました。レベル云々はさておき、イメージとしては1989ジャパンカップでのオグリキャップに近いですね。端的に言えばマイラー的要素を生かした走りだったと私は感じました。

やはり昨年の天皇賞・秋でハイペースを追っ掛けて身が入ったというか、古馬になってしっかり成長できた感があります。タイプこそ違いますが、ウオッカ、ダイワスカーレット、ブエナビスタといった名牝たちと同じ軌跡を描いていると思います。まあ、京都記念はスルーしておきますが・・・。

さて、今回の宝塚記念はどうなるんでしょうか。ペースの速い遅いに関わらず、3コーナーで押し上げることなく進めるのが理想的な形でしょうか。このジェンティルドンナはコーナーでの加速力が良くありませんから、3~4コーナーでのRの緩い区間を利用してスピードアップし、4コーナーは溜めて回るか、あるいはRを大きく取って回ってくるかもポイントになるでしょう。昨年の同レースではゴールドシップとの差が0.6秒。今年はその差をかなり縮める事ができるんじゃないかと思っていますが、さて・・・。

今回はこのあたりで。

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